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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

1.侵略の始まり

 小惑星の群れの中に明らかに人工物と思われる数個の陰があった。

後にガミラスと呼ばれる侵略者の先遣隊であった。

太陽系最外周の軌道はかつてあった第10番惑星の残骸がなす小惑星の集団があちこちにあり
絶好の隠れ場所を提供してくれていた。

彼等はガミラス本星の寿命が長くないため、新しい移住先を求め、銀河系にやって来たのだ。

もともとガミラスが存在する大、小マゼラン雲は過去にガミラス殖民政策で移住した殖民星が
独立した勢力があちこちで敵対しており、その同盟軍との争いがもう何百年も続いていた。

このため、ガミラス大本営は移住先の確保のため、大、小マゼラン雲での戦争は継続するが、
新しい可能性としてマゼラン雲の隣りにある巨大星雲である銀河系への移住を考えたのだ。

巨大な星雲である銀河系は仮に知的生命体が存在したとしてもその密度は低く、
特に外縁部は充分冷却された星系が多いのでガミラスが望む岩石型惑星も多い事が期待された。

漆黒の宇宙空間を割って1つの影が小惑星の陰に潜んだ艦隊のそばにやって来た。

後に地球側から高速巡航型クルーザーと呼ばれる重巡だった。

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このタイプはもともと艦隊前衛で偵察に用いるため、探知・探査装備が勝れているのだ。

また、発見された場合、急速離脱するための加速性能にも勝れている。

ワープして脱出すれば速度は関係ない様に思えるが相手の科学力や技術力が判らない場合、やたらと
目前でワープを行って自らの手の内を明かす事は極力控えるのがガミラスの方針だった。

クルーザーは1隻の戦闘艦に横付けすると通路を伸ばし、数名のヒューマノイドが移乗した。

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「それで、その目で見た敵の様子はどうだった? 事実のみを報告せよ。」会議室のテーブル左奥に座った
太陽系派遣軍総司令、レッチェンス提督は会議室に入ってきた2人の部下を鋭い目で見ながら報告を促した。

「ガンツ、提督に詳細にご報告しろ」シュルツ大佐が部下のガンツ少佐に偵察結果の報告を命じた。

ガンツは責任を押し付けられた様な気分でシュルツに非難の目を向けたが、確かに観測員に張り付いて
情報収集をしたのは自分なので姿勢を正すと報告を始めた。

「この太陽系には先遣隊が報告してきた通り、確かに移住可能な岩石惑星が複数存在しております。

もちろん、環境整備は少し必要ですが、大、小マゼラン雲の惑星に移住して戦争状態を継続するよりは
遥かに安全に居住出来ると考えられます。

エネルギー・プラントを設置出来るガス型巨大惑星(木星型惑星)も4つ存在しております。

次にこの星系を偵察した先遣隊が報告してきた原住生命の文明の程度について報告します。

我々が位置するこの太陽系の外縁部には文明の存在を表すものはほとんどありませんでした。 しかし、
第3惑星から第5惑星の間には頻繁な宇宙船による航行が見受けられました。

そして傍受した電波の発信状況からして第3惑星がこの文明の主星だと考えられます。 云々・・・。」

窓のない会議室の船体外側に漂流してきた小ぶりの宇宙塵がぶつかりコトリと音を立てた。

報告を聞き終わったレッチェンスは黙ったままだった。 

会議室に無限とも思われる沈黙が流れた。

「原住生物の文明の程度を知りたいものだな・・・。」レッチェンスは一人言の様に呟いた。

「司令、その事でしたら付け足す報告が御座います。」シュルツが発言を求めた。

眉をしかめつつ、発言を促すレッチェンス提督、ガンツは報告を続けた。

「実は第9番惑星に小規模な前線基地を2つ発見しております。 

ただ、この基地からは大きなエネルギー反応は検出されず、単なる深宇宙観測基地だと判断したので報告が
遅れました。

申し訳有りません。」

「何だと!それでは彼等は恒星間航行能力を持っているかもしれないではないか!」レッチェンスは
2人を怒鳴りつけた。

「ウウム・・・。これはまずいぞ。 全艦隊に無線封鎖と灯火管制を徹底しろ! 

我々の超光速通信を傍受出来るとは思えんが用心に越した事は無い。 それとガンツ!軍事関連の報告は無いか?」

「はあ、今のところ、戦闘艦や戦闘は観測されませんでした。 平和な惑星系・・・という印象を受けました。」

レッチェンスはシュルツとガンツに背を向け、腕組みしながら右手で顎をなで始めた。

これはレッチェンス提督がその頭の中で問題を検討し始めた事を表していた。

こうなると何を言っても聞こえないを知っているシュルツとガンツは無言でガミラス式の敬礼をすると退出して行った。

時は2190年4月10日 地球はまだ異文明の侵略が始まった事に気付いていなかった。

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 ガミラス側指揮官レッチェンス提督(大将)、シュルツ大佐、ガンツ少佐の上官、勇猛果敢にして沈着冷静、
戦略家、戦術家としての名声も高い。

現ガミラス総統、デスラーの教育係だった事もあった位である。

後にヤマトと死闘を演じるドメル将軍も彼の一番優秀な弟子だった。

唯一つ欠点があるとすれば正義感が強く、この太陽系の侵略には反対だった事位であろうか。

太陽系には宇宙浸出を果たしたばかりの原住民が居り、ここは彼らの星系だとデスラーにも進言した。

また、太陽系はサンザー系からあまりにも遠く離れており、補給線が延びきってしまうのも反対の理由だった。

しかし、デスラーもガミラスの星としての寿命が長くないのを知っており、次の移住先を確保するのを急いでいたので聞き入れて貰えなかった。
 
他の戦線、ダイヤ戦線、ルビー戦線、サファイア戦線、オメガ戦線の進捗もはかばかしく無かった。

「ボウも大変だな・・・。」レッチェンスは独り言を言った。

太陽系は14万8千光年の彼方ではあるが2番惑星、3番惑星、4番惑星とちょっと手を加えれば
居住可能な惑星を3つも持っており、エネルギー・プラントが設置可能な木星型惑星も4つあるガミラスに
とってはヨダレが垂れんばかりの好条件を備えた星系だったからである。

中間点のバラン星に一大基地を設けて派遣軍の補給を確実な物にしている事を考えて見てもこの侵略戦争の
重要さが解ろうと言うものだ。

自分が何んと言おうと、「ボウ」はこの作戦を推し進めるだろう。

だったらこの自分が老骨に鞭打ってもこの戦線を引き受けよう。

自分の意志とは反対の行動を取らなければならない悲しみが彼の胸を突き抜けていった。

彼は、冥王星(9番惑星)を偵察させ、小規模ではあるが地球人の基地がある事を確認すると発見されない様、
小ワープをくりかえし、木星型惑星である天王星に水素・メタンの採集プラントを作らせた。

本来、木星(5番惑星)か土星(6番惑星)がエネルギー採取には向いていたが、まず、安全にエネルギー補給を確保する事を優先としたのである。

また、ガミラス軍人が幾ら勇猛でもやはり、腹は減る、食料補給も重要だった。

 こちらはバラン星から定期便で届けられる宇宙食と栄養剤でしのがなければならなかったが、ワープの技術を持つガミラスにとっては解決出来ない問題ではなかった。
 
武器・弾薬もバラン星から届けられた。やはり、最優先事項はエネルギーの確保だった。
 
資源の質は悪かったが天王星(7番惑星)にプラントを設け、とりあえずの態勢が整った所で侵略を開始した。

最前線基地の設置候補として選ばれたのは当然、冥王星(9番惑星)であった。

ここには、米ソがそれぞれ観測基地を持ち、足の長い巡航艦で地球との連絡を行っていた。

軍の指揮下にあるとはいえ、どちらも観測が主目的の平和な基地であり、クリスマス等は合同で行っていた位であった。

ガミラスが襲来して来た時、米国基地はあっと言う間に叩かれ、跡形もなかったが、ソ連基地にはたまたま、
タシュケント級重巡「ゴルバチョフ」が帰還するための発進準備を終えており、すぐさま、謎の敵を迎撃した。

 「ゴルバチョフ」が時間を稼いでくれている間にソ連隊は太陽系以外の星系からの侵略が始まった旨、
地球に警告した。
 
しかし、それが精一杯だった。

ファラガット大尉、率いるガミラス宙兵隊が強襲艦で乗り付け、250名からなる、屈強な宙兵を送り込んできたのである。

 ソ連人の大半は学者や研究者であったのでガミラス宙兵には抵抗出来ず全滅した。

また、大型巡航艦「ゴルバチョフ」も艦首の有人部分を破壊され、宇宙の彼方へ流れていった。

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2190年6月5日、地球ではこの日、侵略者来訪のニュースで大混乱が起こっていた。

大半の国は仮想敵国の仕業だと相手を非難するだけだったが冷戦を続けていたにもかかわらず、米ソは違った見方をしていた。

「仮想敵国の小さな観測基地を潰した所で何の意味がある。
 
これは本当に外部からの侵略の証だと思う。」と。

米ソの代表は紛争当事者であるにも係わらず、相手を非難する事は一切しなかった。

また、この時点ではまだ公表されていなかったが、実は国連の最上部は10年前に他星の文明存在の証拠を入手していたのだ。

これも後に判明した事だが大、小マゼラン雲で行われていた戦闘で損傷したガミラス艦が誤ワープで太陽系
近傍に出現、漂流して来たもので、明らかに発見時点の過去、最近まで作動していた痕跡があった。

そこで国連はファースト・コンタクトが最悪だった場合を想定してのシナリオを用意、米ソ艦隊の合同訓練を行っていたのだ。

また、冥王星に早期警戒用の基地を設けた。

その基地が両方とも叩かれたのだ。

異文明の侵略が始まったのはほぼ確実だった。

 そして、米国のニミッツ提督を主将とし、ソ連のマカロフ提督を副将とする、連合艦隊が土星方面に向けて発進していった。

しかし、この艦隊、表向きの任務は侵略者の撃退だったが本当の目的はありとあらゆる情報を出来るだけたくさん取る事だった。

何も解らないまま全力でぶつかるのは蛮勇でしかない。

 だから、この艦隊は力足らずに全滅するとも出来るだけ長く戦って相手の情報を取ることが使命だった。

そのために、米ソとも宙兵隊を一個中隊づつ、引連れていた。

彼らを土星の衛星上に展開させ、戦闘を第三者の目で観測させるのが目的だった。

 「オレは爬虫類がダメなんだ。」ソ連の宙兵隊長、イワノフ中佐は部に言った。

「大丈夫ですよ中佐、冥王星からの最後の通信では、相手は人型との事。 爬虫類では二足歩行は出来ません。」部下が慰めた。

「そんな事は解ってる!じゃあ地球人は空を飛べるか?」イワノフ中佐は部下に言った。

「それは・・・。」と言って部下は黙ってしまった。

「科学の力は何でも可能にする。自分の目で確かめるまではどんな憶測も禁物だ。」彼は自分に言い聞かせる様に言った。

「だから相手が爬虫類だったらと思うと・・・ああっ嫌だ!」いかにも嫌そうに体の前で腕を交差させて震えてみせた。

副官のミハエル少佐は苦笑した。

戦えば誰よりも強いイワノフだったがやはり、人なのだなと、妙に納得させるものがあった。

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土星遠征艦隊、出発の時、遠征軍を指揮するニミッツ大将、マカロフ中将、マッカーサー少将、アイゼンハワー中佐、イワノフ中佐。

留守を守る 欧州連合のシェーア大将、トロンプ中将、カニンガム少将、ビューティー少将、アジア同盟の藤堂中将、李中将、沖田少将、は一同に会していた。

ニミッツ大将とシェーア大将はお互い何も言わずに固く手を握り合った。

沖田が、そして全員が敬礼した。

言葉は一言も交わされ無かった。

送る方の思い、送られる方の思い、どちらも同じだったからである。

                             時に2191年1月1日、まだヤマトは計画すら存在しなかった。
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by YAMATOSS992 | 2012-03-24 21:00 | Comments(3)
Commented by なごみ at 2013-10-20 11:17 x
私事が一段落し、落ち着いて拝読できる時間を持てるようになりましたので、早速伺いました。
面白いです、わくわくと拝読しました。
映像にはなっていないこの年代の出来事は本当に興味深いです。

リメイク版では、ガミラスの地球侵略の目的が旧作とは違っていますが、どうして変えたのか私には理解できません。
やはりガミラス星の衰退と、それによる移住、そして遊星爆弾はやはり地球環境をガミラス星と同じにする…というのが、分かりやすかったですよね。
「ガミラス人は酸素の代わりに放射能」という設定は、ガミラス人を魅力的に描jき、地球人と仲良くするシーン(メルダとか)を描く上で、不都合な設定になってしまったからなのでしょうかね?

ヤマト発進の8年前で沖田艦長が少将なのですね。
しかしこの作戦、とても重要で、しかし辛いですね;;;;

余談ですが、リメイク版の公式設定資料集で、沖田艦長の年齢がまだ57歳だと知って愕然としました。
あの白髭白髪っぷり、70歳近いか、もしくは70歳代かと思ってました…
YAMATOSS992さまはいかがですか……?

長々とすみませんでした。
Commented by yamatoSS992 at 2013-10-20 14:46 x
 再度のご訪問ありがとうございます。
ヤマト2199が発表される前はガミラスの侵略開始時期の設定が不明確でしたので
実は自分で年表を作って合理的に事件や事故、作戦が行われる様にしました。
その結果、ガミラスの侵略開始は2190年ですが、地球側にその
侵略行動が知れ、米ソ連合艦隊がその迎撃に向かうのは2191年としたのです。

沖田艦長の年齢が57歳だと言うのは論理的には理解出来ます。
歳取った軍人が現役だというのは余程追い詰められていた・・・
って表現でも55歳が限界かと思います。
しかし、画面に出てくるあの風貌はどう見ても70代ですよね。


ヤマト2199でのガミラスの拡大政策の意味はスターシャへのデスラーの歪んだ愛の形として
語られはしますが・・・問題多いです。

放射能問題は確かに必要でない設定として2199計画時に取り止められたと聞きます。

どうしてか? なごみさんはお気づきでしょうか?
                      (次のコメントに続きます。)

Commented by yamatoSS992 at 2013-10-20 15:22 x
74ヤマトとヤマト2199はそのテーマが全く異なった物に変わった事です。
74ヤマトのテーマは”絶対に諦めず前に進めば明日が手に入る”でした。
ヤマト2199のテーマは”知的生命体同士であれば、例え異星人とも理解しあえる。”と
変わっていました。
もちろん、これは私的見解であって監督がはっきり明言した訳ではありません。
しかし、現在の地球上は同じ地球人同士が宗教や思想を巡って
血泥の争いを繰り広げています。
理想を語れるアニメの世界だからこそ、こうした相互理解の可能性について語ってみたかったのでは
ないでしょうか?

遊星爆弾攻撃の必然性は全く無くなってしまいますが・・・。