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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

3.レアの観測隊

土星の衛星上には、米ソの観測隊が陣取っていた。

土星の衛星の一つ、『レア』には米国宙兵隊一個中隊が、タイタンの隣の衛星『ディオーネ』には
ソ連宙兵隊一個中隊が、それぞれ陣取り、乗ってきた強襲揚陸艦に充分な偽装を施すと上空で
行われている地球と侵略者の戦闘状況と侵略者について解った事、全てを地球に向けて打電し続けた。

 「凄い決戦だな。俺達は運が良い。」米宙兵隊の指揮官ドナルド=アイゼンハワー中佐は軽口を
たたいて見せた。

副官が言った。「でも今の戦況では米ソの連合艦隊が全滅するのも時間の問題です。

そうなれば我々は強襲揚陸艦「ベイブリッジ」で帰途についても、すぐに敵に発見され、
揚陸艦ごと全滅させられます。」

 「だから、こうして奴等の情報を送りつつ、敵艦隊が去るのを待っているんじゃないか!
ゆったりと構えて奴等が去るのを待っていれば良い。」双眼鏡を覗きながらアウゼンハワー中佐は応えた。

 「それに我々の隣の衛星『ディオーネ』にはソ連の観測チームがいる。 もし、我々が発見され、
攻撃を受けて『ベイブリッジ』を失ったとしてもベイブリッジから離れて隠れていれば後で
ソ連隊が拾ってくれるさ!」いとも涼しげに言う司令官に自分も自信を取り戻した副官であった。

しかし、内心、アイゼンハワー中佐の心は震えていた。

「もし、侵略者に発見されれば相手が駆逐艦でもベイブリッジでは太刀打ち出来ない。
 
 今は入念に偽装して隠してあるから発見される恐れは少ないがしかし、「帰還準備中に発見されたら・・・」と
思うと足がガクガクと震えそうになった。

ベイブリッジが発見されても宙兵隊は隠れていれば大丈夫だと副官には言ったがそんな甘いものではない事を
アイゼンハワーは良く知っていた。
 
空の強襲艦が発見されれば、必ず周囲の捜索が行われる・・・。逃げ切ろうにも酸素の限界もある、
ここは地球上ではないのだ。

また、「自分達が発見され、ベイブリッジを失ってもソ連の観測チームが拾ってくれる。」と楽観視して見せたが、
もし、そうなったらソ連隊はどうするべきか、アイゼンハワーは良く知っていた。

自分達の他に観測チームがいる事を絶対に侵略者に悟られてはならない。

それが彼ほどの勇者をも恐れさせているのだった。

「だが、俺達は本当に運が良いのかもしれん。 大半の宙兵隊や陸軍はやる事も無しに、ただ訓練に日々を
送っている・・・。
 
そんな中で、俺達はじかに戦う訳ではないが、こうして戦闘の一翼を担っている。

神に感謝しなければな・・・。アーメン」

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アイゼンハワーが自己との戦いを演じている時、ガミラスの勇将レッチェンスもまた、自己との戦いを
演じていた。

地球艦隊は刻々と変る戦況の報告をしていたが、それはガミラスでも同じ様に行う事だ。

しかし、その中に、両者とは別の視点から見た報告が混じっていたのだ。

「明らかに観測者がいる・・・。」地球艦隊の執拗な粘りはガミラスの情報を取るためだと、彼は読んだのだ。

しかし、地球軍の抵抗は激しく、ガミラス艦隊を分散させる事などとても出来ない状況だった。

(もともと戦力の分散は用兵上、一番してはならない事だったが・・・。)

比較的手空きの重巡に周囲の宇宙空間を探索させてみたがそれらしい艦艇は発見出来なかった。

と、なれば衛星上が怪しい、なにせ、土星の衛星は34個もあるのだ。

隠れるにはうってつけの場所だった。

「うーむ、34個か・・・。」地球軍のずる賢さに歯噛みするレッチェンスだった。

と、その時、レッチェンスの部屋のドアがノックされた。「入れ!」とレッチェンスは命じた。

「デスラー総統 ばんざい!」と敬礼をしたのは冥王星を制圧した時、活躍した強襲艦隊の指令官だった。

彼の名はファラガット大尉。  勇猛果敢さではガミラスでも右に出るもののない宙兵隊指揮官だった。

「その敬礼は、デスラー総統に対してだけすれば良い。私なぞには挙手だけで充分だ。

で、何か用が有るのかね。  食い物は期待しない方がいいぞ。」とニヤリと笑って見せた。

 ファラガットは言った。 「確かに宇宙食と栄養剤だけの食事にはあきあきしていますが、
今回は違うお願いです。」

「ほう、脳みそまで筋肉で出来ている様な君が・・・さて、何かな?」

「ハハッ脳みそで腕立て伏せは出来ませんよ。総司令。」

「私は地球軍のあの粘りに疑問を持っています。」真顔に戻った彼は言った。

彼はレッチェンスと同じ推理をしていたのだ。 

グッと眉を上げたレッチェンスは部下の成長を喜んだ。

だが、それを表には出さずに質問をした。

「君は私にどうしろと言うのかね。言っておくが艦隊の分散は出来んぞ。」

ファラガットは大尉は驚くべき進言をした。

「自分達、宙兵隊は冥王星制圧時に少し活躍しましたがその後、何の活動も出来ない唯の遊兵と
化しています。

衛星上に陣取っていると予想される彼らを捜索、撃滅する任務を与えて下さい。

船は今まで通りの強襲艦で構いません。」若者らしい血気にはやった作戦だと思ったレチェンスは質問した。

「調べなければならない衛星は34個もある。 ひとつひとつ調べている内に会戦は終わってしまうぞ。」

ファラガット大尉はちゅうちょする事無く言った。

「我々宙兵隊員は250名おります。また、衛星の中には調査の必要がない小さいものが大半を占めています。

我々は部隊を4大隊にわけ、比較的大型の衛星の昼夜境界線付近だけを調査するのならそんなに
時間は掛らないでしょう。」

 レッチェンスは唸った。 

<確かに全部調べていたら時間が掛りすぎる、だが、兵員を運ぶ輸送船(強襲揚陸艦)が隠せる大きさの
衛星に絞って調査すればそんなに時間はかかるまい。 それに宙兵隊なら会戦に影響はない。>

「確かに観測目的なら20名もいれば十分だな。 それの3倍の兵力で攻められれば敵はひとたまりもあるまい。

よしっ すぐ準備にかかってくれたまえ。」ファラガットは今度は無言で挙手の礼をすると部屋から出て行った。

十五分後、再びファラガット大尉から通信が入った。

「強襲艦4隻出撃します。」との報告だった。

<やはり、やっておったか、 先刻のガンツ少佐にしろ、ファラガット大尉にしろ、自分で考え、
わしの作戦を先読みして準備する能力を持っている。

こうした優秀な人材がデスラー総統の周りから遠ざけられているのが今のガミラスの実態なのだ。

レッチェンスは比較的総統の側にいるドメルに全てを任せるしかない自分の非力さに溜息をついた。

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 「急いでくれ、艦長! これ以上、奴らに我々の情報を与える訳には行かない。」ファラガットは
強襲艦「ルツアイ」の艦長を急かした。

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「解ってるよ。ボーヤ ありったけの艦隊を繰り出し、それでも足らずに強襲艦まで使うとうは!

お偉方は何を考えてるのかね~っ 全く!」

艦長は艦隊戦に参加出来ないうっぷんを晴らす様に言った。

 「しかし、今度の敵は今まで以上の強敵だそうですね。」

「ああっ、宙雷戦隊2個が戦闘開始から5分でやられた。 全滅だったそうだ。」

「ええっ、たった5分で軽巡2隻と駆逐艦10隻がやられたんですか?で、こちらの戦果は?」
艦長は聞いた。

「今のところ、なしだ。」ファラガットは悔しそうに言った。

「えっ」あんぐりと口を開けるしかない艦長だった。

「敵は宙雷戦隊撃滅用の大型戦艦を持っている。大口径の長距離砲と特殊なミサイルで武装した新型艦だ。」

「それなら、今のガミラスにもあるじゃないですか」

「ああ、似たような巡航艦はある。しかし、こいつは、ガミラス戦艦よりずっとでかい。 しかも、我々の軽巡並の装甲しか持っていない。」

「なんですって!軽巡並みの装甲で戦艦より大きい図体ですか? そんな船は役にたたんでしょう。」

「ああ、機関が小さければな、 こいつは我々のデストロイヤーのゆうに5倍の出力を持っている。」

「そんな化け物を作るのはどんな奴らでしょうかね。」

「解らん!それを確かめに我々が出撃してきたんだ!」ファラガットは配下の強襲艦4隻をそれぞれ大きい目の
衛星に振り分けて自艦は12番衛星を目指した。

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 他の強襲艦も1隻づつ大型の衛星を中心に捜索を始めた。

昼夜の境目が一番怪しい。 観測すべき戦闘を衛星の反射光が照らし出し、夜の部分に自隊は隠れる・・・、
自分だったらそうする、との分析だった。 

一番大きいタイタンは見過ごした。

この衛星には大気が有る、しかも、黒くにごった大気だった。
 
隠れるだけなら最適の場所だが観測には向かない・・・

彼は次に大きい12番惑星の「レア」に目標を定めていた。

そして、「レア」上の昼夜境界線でうごめく、米宙兵隊を発見したのだ。

ニヤリとしたファラガットは敵本隊のど真ん中に強襲艦を強行着陸させた。

宇宙服姿から自分達と良く似た生物であると考えたのだ。

「軟体動物や甲殻類じゃなくて良かったな。ボーヤ」艦長がからかった。

「ああ、多分、我々と同じ人型をした生物だ。しかし、その実力は肉弾戦をしてみなければ解らん。」装備を
整えたファラガットは真っ先に強襲艦を飛び出した。

驚いたのは米国宙兵隊である。 ガミラス兵は銃撃戦もなく、いきなり肉弾戦を挑んできたのだ。

「解っているじゃないか!こいつら!」アイゼンハワー中佐は嬉しくなった。 

久しぶりの実戦が肉弾戦とは何んと幸運な事か!

 彼は月面柔術の達人だったのだ。

月面柔術とは地球上で行われる柔道を基本として、宇宙空間の特性変化を持ち込んだものだ。

宇宙は無重力である。 しかし、慣性は働く、したがって、投げ技や組技を組み合わせないと
相手にダメージを与えられないのだ。

アイゼンハワーは黒帯である、相手の力を利用した投げ技だけでも充分、相手を投げ飛ばせるのだった。

彼は副官にあえて強襲揚陸艦「ベイブリッジ」の発進準備をさせた。 

ガミラス強襲艦は強行着陸をしたために地面にめりこんでそのままでは発進不可能であると踏んだのだ。

組み合うアイゼンハワーとファラガット、互いに宙兵隊用のゴツイ、ナイフを構えていたがアイゼンハワーは
何故か、そのナイフを捨てた。

 プライドを傷つけられたファラガットは怒りにまかせて切りかかったが、アイゼンハワーはスルリとそれを
かわしつつ、投げを打った。

再び切りかかるファラガット。

だが、結果は同じだった。

そして、そこここで、米国宙兵隊員はガミラス宙兵隊員を翻弄していた。

ベイブリッジから発進準備が出来た旨、連絡が入った。

 「楽しかったぜ!坊や。俺はこれで失礼するぜ!」

アイゼンハワーは地面にへばり込み、肩で息をしているファラガットに挨拶した。

悔しそうにその後を見送るファラガット。

しかし、ベイブリッジは衛星「レア」を離れて幾ばくもしない内に、警戒・偵察活動をしていたガミラス重巡に
捕まり、爆沈して果てた。

 それを見ていたファラガットは思わず叫んだ。

「オヤジ!」

ガミラスの家族形態は地球とは異なっていたが地球流に表現すれば彼の気持ちはその一言に
集約されたものだった。

 衛星『ディオーネ』に駐屯して観測していたソ連中兵隊も同じ運命を辿ったが、それを見送った
ガミラス兵は誰と無く敬礼していた。

何んと勇猛果敢な宙兵隊だったろう。  しかも、他星系人とためらう事無く、肉弾戦を行える勇気を
持っていた彼らに尊敬の念すら持ったファラガット大尉だった。

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ファラガットの報告を聞いたレッチェンス大将は思った。

宙兵隊も猛者ぞろいか・・・。やはり、この星系に手を出したのは失敗だったかもしれない。

とんでもない連中の様だ。

近くに重巡が遊弋していたから倒せたが、もし、あのまま帰還されていたら詳細な
報告をされてしまう所だった。

 武装が少ないが勢力範囲が広い星系の軍は好戦的で強い。

ハイデルンが赴任していたオメガ戦線がそうだ。

 あそこの戦艦は前方を攻撃するビーム砲しか持っていない。円錐形の艦体を持ち、大型のビーム砲塔を
3列(3連双2段)持っている。

だから敵に後ろを見せたら何の抵抗も出来ず沈むしかない。

当然、何のためらいも無く、突撃を掛けて来る。

 自分達がガミラスとすれ違った時、ガミラス艦が残ってしまったら背後から攻撃を受けてしまう。
 
だから、二つの艦隊が正対している内にガミラス艦隊を全滅させる必要がある。

そのため、勇猛果敢な突撃をしてくる、生き残りそうなガミラス艦には特攻を仕掛ける事も辞さない連中だ。


地球艦体は基本的にガミラス艦と酷似した武装を持っているが、ガミラス艦が後部兵装は防御に使う目的で積んでいるのだが、地球艦は違う。

敵に横腹を見せて戦う様に設計されているのだ。

 一番広い面積を敵に見せてもそこにハリネズミの様に主力ビーム砲を積む。
 
そして 突撃時にもガミラス艦に勝るとも劣らないビームやミサイルを発射出来る。

 何と、恐ろしい発想だろう。

 だが、レッチェンスはそこでニヤリとした。

<そうか、彼らは惑星国家にすらなっていない。 だから互いに強力な武装をし、軍事的な協力が
不慣れなのだ。 これは我が軍にも勝機があるかもしれん。>

 しかし、レッチェンスの分析は大きく間違っていた。

我が地球の歴史を紐解くとおもしろい事が解る。

威力のある新型兵器は主に防衛側が開発、使用している事だ。

北欧でその名を馳せたバイキングの使用した船は鎧張りの頑丈な木造船だったが、決してそれ以上でも、
それ以下でもない、 唯の戦士を運搬する強襲揚陸船であった。

船同士の戦いは相手に横付けし、大量の兵士を送り込むと言う、地上戦の延長線上にあるものだったので
ある。

対して紀元前に長らく地中海で活躍したフェニキュアは戦闘専門の軍艦を持っていた。

彼らは海上交通の利権を一手に握っていたが、あちこちに出没する海賊に悩まされていた。

当時は1枚帆の帆船が主流であり、船足は遅かった。

海賊は中型の手漕ぎ船で運動性を確保し、単独航海をするフェニキュア船を襲ってきたのだ。

手をやいたフェニキュアはその解決策として、海軍を作り、戦闘専門の軍艦で武装した。

商船は船団を組み、その船団を軍艦が守るのだ。

 もちろん、今の軍艦の様な砲はない、有ってもせいぜいカタパルトと呼ばれる投てき兵器が主だった。

しかし、彼らはもっと強力な武器を持っていた。

船首から前方に延びた衝角、通称「ラム」である。

これをを振り立てて、敵艦のどてっぱらに穴をあけて沈めてしまうのである。

 また、戦闘時の速度と運動性は3段に並んだ櫂で確保しているが、櫂をしまって、重心をずらして
わざと横腹を突き出し、敵艦の櫂を折ってしまうと言う荒業も持っていた。

海賊は目的の商船を沈めてしまってはもともこも無いが、商船を防衛する側は海賊など沈もうがどうしようが
知ったことではなかった。

好戦的なバイキングは唯の輸送船を使い、本当は平和裏に事を運びたかったフェニキア人は
強力な戦艦を持つ、戦争とは全く、矛盾したものである。

だが、その屈折した地球人の思いが今回のガミラス侵略に生きた。

平和時にも仮想敵国を作り、訓練に励んで来たからこそ、米ソは連合軍を組織出来た。 

平時からお互いを仮想敵国として研究してきたからこそ、相手の軍の内容も判り、協力も出来た。 

とうとう、地球人の好戦性が本当に役に立つ時代が始まったのである。

                        土星会戦が終了したのはレアの観測隊が全滅した20分後だった・・・。
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by YAMATOSS992 | 2012-03-26 21:00 | 本文 | Comments(0)