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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

5.遊星爆弾示威攻撃

 「沖田、防衛会議の感触はどうだった?」土方竜大佐は土星会戦で米ソ艦隊が文字通り、命を賭けて取った
侵略者の情報に基づく、防衛会議の基本戦略方針について沖田少将にたずねた。

「どうもこうもないよ。 なにせ米ソ合同艦隊が全滅させられたんだ。 各国、各勢力ともパニックになっているよ。

まあ、それでもシェーア大将の音頭取りで防衛計画の大要は決まったがね。」沖田は手にしたグラスに入った
ウイスキーをチビチビと舐めた。

「具体的には?」自分のグラスを廻しながら土方は上目遣いに沖田に聞いた。

「木星圏を絶対防衛圏として地球の生命線を確保する、当然、地球ー木星間の交通路もだ。」

「ウム、それは当然だ、 地球のエネルギーは各国、各勢力とも木星プラントに頼っているからな。

それで米ソの艦隊再編成後の反抗作戦についてはどうなった?」

「いやいや、まだそこまで煮詰まった話は出来る状態ではないよ。 残念ながらな。」沖田は溜息をついた。

「相手の目的がはっきりしないのでは戦略の立てようがない・・・か。」

「しかし、土方、ここだけの話だが、土星会戦時に敵は気になる武器を使いよった。」沖田は防衛会議出席者
ではない土方に極秘事項を告げた。

それはガミラスが土星会戦の勝機を掴むために使用した遊星爆弾の事だった。

大質量兵器が艦隊戦に使われる事は地球では考えにくいものだったからである。

沖田はこれが本来は戦術兵器としてではなく、戦略兵器として敵の拠点攻撃に使われるものだと看破したのだ。

そして、防衛会議で戦略攻撃の標的として地球が狙われた場合を考え、火星軌道上に迎撃システムを
構築する様に提案したが、異星からの侵略に混乱した会議ではその重要性が認められる事はなかった。

「その戦略兵器を迎撃出来る兵器や艦艇を今から用意しておく必要があるな。」土方も沖田と同じ考えだった。

「藤堂長官とも良く打ち合わせて置くよ。 長官なら南部重工業とのパイプも太いからな。」沖田は土方と
グラスを合わせた。

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 冥王星からそれほど離れていない宙域にガミラスは遊星爆弾の発射施設を建設していた。

土星会戦の時に使用した遊星爆弾は工作艦を使った応急的設備で発射したのだが、地球に対する本格的
戦略攻撃のためには専用の設備が必要、とのレッチェンスの判断で発射施設がつくられているのだ。

 「シュルツ副指令、設備の完成はもうすぐです。間も無く遊星爆弾の第一発目を地球に対して発射できます。」

工事の進捗状況を視察に来たシュルツ大佐に工事責任者のヨルク技術中佐は説明した。

「ウム、早く遊星爆弾が、どの様な効果を挙げるか、見てみたいものだな。 出来るだけ早くな・・・。」シュルツは
意味ありげに言った。

「発射するだけなら、今の完成状態でも充分行えますが・・・。」ヨルクは応えた。

「ヨルク君、早まってはいかんよ。 折角発射するのだったら、きちんと最終誘導まで行って地球に命中
させなければ実験としても意味がない。 確かに早い成功は勲章ものかもしれんが・・・。」 シュルツは
横目でヨルクを見た。

ヨルクは自分の任務に強い圧力が掛けられているのを感じた。

「はっ、出来るだけ火急速やかに遊星爆弾発射システムを完成いたします。」ヨルクは最敬礼をした。

「ウム、よろしい。 レッチェンス様も期待しておられるぞ」シュルツはニヤリと笑うと視察を終わり、基地へ
帰っていった。

 実はシュルツは土星会戦で見た地球人の底力に畏怖を抱いていたのだ。

レッチェンスは土星にエネルギー・プラントを設け、木星圏侵攻に必要な資源やエネルギーの備蓄が整うまで、
木星ー地球間の交通路に通商破壊艦隊を複数放って地球側の経済や軍備の妨害を行うつもりだった。

しかし、そのためには時間が掛る、その間に地球側に軍備を増強されたらと思うと居ても立ってもいられない
シュルツだった。

彼はレッチェンスに遊星爆弾による戦略核攻撃を提案していたが、レッチェンスは地球側に体力がある内は
戦略攻撃はこちらの手の内を明かすだけで簡単に迎撃されてしまうと考え、シュルツの案を退けていた。

レッチェンスは戦略核攻撃を行うのは最低でも木星圏を制圧した後だと考えていたのである。

しかし、シュルツは一刻も早い戦略核攻撃こそ地球側の機先を制し、ガミラスの勝利を確実にするものだと
思っていた。

ガミラス侵攻軍と言えど、決して一枚岩ではなかったのである。

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 「目標補足! 距離1万キロ! 射程距離までまだ大分あるが、本当に良いのか? ライニック大尉?」
艦長が聞いた。

「見ていてください。 艦長。」フローラー・ライニック大尉は自信たっぷりに言った。

彼女の前にはこのドイツ駆逐宇宙艦Z-7の武装を全て官制する射撃指揮装置があった。

そして、今、そのモニターには何も写っていない様に見えた。

だが、彼女が見詰めるモニターの上にはピパーと呼ばれる指輪大のリングが映っていた。

そして、両手の指先を動かすとそのピパーの位置が微妙に変る、ピパーが目標と完全に重なった。

「ピパー・オン・ターゲット!! (照準完了!)」フローラーは艦長に報告した。

「ファイア!(撃て!)」間髪入れず艦長が命令を下した。

ドイツ駆逐宇宙艦Z-7は駆逐宇宙艦にしては大口径のフェーザー砲を持っていた。

6インチ単装フェーザーを3基の砲塔に別けて積んでいたのだ。

その全門のフェーザー・ビーム条が遥か1万キロの彼方で一点に交わった。

たちまち、その空間に標的命中の証である小爆発が起こった。

「シュミレーターでは何編も見せてもらっていたが、実際の標的でも同じなんだな・・・。」艦長は感嘆した。

「シュミレーターと実際が違っていてはシュミレーターで訓練する意味がありません。」フローラーは笑った。

「しかし、見事なものだ。さすが、オリンピック常勝選手だ。 感心したよ。」艦長は和やかに笑った。

しかし、フローラーの心は曇っていた。

彼女は冬季オリンピック、バイアスロンの選手だ。 何度もメダルを手にしていた。

しかし、侵略者の出現が地球にオリンピックなどを行う余裕をなくさせていた。

いや、彼女の心が曇っているのは侵略者相手とはいえ、実際に命のやりとりをしなければならない事だった。

<何匹、いや何人殺すのか・・・。> 彼女はこれから続くであろう長い戦いを思った。

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ドイツ駆逐宇宙艦Z-7は木星ー火星の間に広がる小惑星帯にいた。

ここは他の宙域に比べれば漂う岩塊の密度が高く、演習にはもってこいの空間だったからだ。

とはいっても見た目は他の空間と何も変らなかったが・・・。

Z-7の遥か前方で先程の演習で見たのとは比較にならない大きな爆発が起こった。

「なんだぁ! この宙域では本艦しか、演習をしていないはずだぞ!」艦長が血色ばんだ。

「隕石です。 外宇宙方面から進入して来た隕石と小ぶりの小惑星が衝突した様です。」観測員もかねる
フローラーが報告した。

「同方向から後、三個続いて飛来してきます。」

「外宇宙? 彗星ではなく・・・複数の隕石がか?」艦長はいぶかしんだ。

外宇宙方面から飛来する隕石は大抵、彗星に由来するものか、彗星が引き連れて来たものである。

群れとはいえ、隕石だけで飛来するのは考えにくい現象だった。

「大変です。 艦長! あの隕石群の進行軌道上には地球があります。 衝突確率70%です。」フローラーは
恐るべき予想を口にした。

「地球防衛軍に警報! ライニック大尉、データを至急本部へ送れ!」艦長は命令を発した。

「了解!警報とデータは送りました。 しかし、艦長、本艦は迎撃しないのですか?」フローラは
不満そうだった。

「現在の本艦はミサイルを持っていない。 迎撃は無理だ。 地球本部に任せよう。」

艦長はフェーザーでは隕石を細かく砕いても地球大気圏に突入した時、燃え尽きる大きさにまで小さくするのは
不可能と判断したのである。

ミサイルなら爆圧で軌道をそらせる効果が期待出来たが、それも今は使用されない核や反物質の
爆発型弾頭のものである必要があった。

いたずらに目標を小さくしてしまうが、軌道はほとんど変えられないフェーザーや爆縮型弾頭の
反物性ミサイルではかえって最終迎撃がしにくくなるとの判断が艦長にはあった。

「そうですね・・・。任せましょう。」フローラーも不承々、承知するしか無かった。

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「こちらでも捕らえました。 かなり大型の隕石、3個です。」月面にある地球防衛軍基地でもZ-7が警告した
隕石群を捉えていた。

「迎撃可能なマス・ドライバーは何基あるか?」基地指揮官は尋ねた。

宇宙時代に入り、隕石による地球被災の可能性が本格的に心配される様になったが、地球の地表まで
達する様な大型の隕石が飛来する事など非常にまれな事なので、それ専用の迎撃設備など存在しなかった。

そこで月表面上から宇宙空間へ資源を運搬するのに用いるマス・ドライバーで岩塊や爆発物を打ち出し、
迎撃するのが一般的だった。

「あることはありますが・・・。」副官は言葉を濁した。

「この隕石の軌道から言って迎撃可能なのはM・D-01のみです。 1個迎撃するのが精一杯です。」

マス・ドライバーは本来、兵器ではない、精密照準で速射する様には出来ていなかった。

「仕方が無い。 我々は出来る事をやろう。 地球本部へ警報! 運が良ければこの迎撃で残りの2個の軌道が
変って地球に当たらずに済んでくれるのを祈ろう。」
月面にあるマス・ドライバー、M・D-01は着々と隕石群の迎撃準備を進めた。

「この反物質弾頭、一体、何時作られたものなんだい?」作業員の一人がマス・ドライバーの装填口に
迎撃用の爆弾をセットしながら、同僚に話かけた。

「俺が知る限り、演習以外でこのM・D-01が隕石迎撃に使われた事はないからなぁ。 爆発するかどうかも
判らないぜ。」同僚の作業員は無責任な反応をした。

しかし、装填された反物質弾頭はまるで昨日作られたかの様にピカピカに輝いていた。

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 ガミラス冥王星前線基地の司令室でレッチェンスは目の前の大型モニターに写っている宇宙空間を
見詰めていた。

背後に人の気配がした。 シュルツ副指令だった。

「報告します。 ヨルク技術士官の処刑が終了しました。」シュルツはレッチェンスに機械的に告げた。

「ウム、死体は宇宙空間に捨てたまえ・・・。」

「それは宇宙葬にすると言う事ですか?」シュルツは意外な命令・・・という顔をした。

反逆者は八つ裂きにして荒野に放置するのがガミラスの伝統だったからである。

 ヨルク技術中佐は遊星爆弾発射設備が完成する前に発射実験と称して遊星爆弾を4発も地球に向けて
発射したのだ。

しかも自分からガミラスを名乗り、地球に対する降伏勧告付きで!だ。 

これはレッチェンスの戦略方針から真っ向から反対する行為であり、立派な反逆罪であった。

その結果、レッチェンスが恐れた通り、一発は地球に命中させる事に成功したが残りの3発はことごとく
迎撃されてしまった。

<これで地球側は遊星爆弾の迎撃システムを構築するに違いない・・・。>

<ヨルクはこんな事で効を焦る様な男ではなかったはずだが・・・。>レッチェンスは信頼していた部下に
裏切られた悲しみで一杯だった。

「シュルツ、ヨルク技術中佐は有能で真面目な男だった。 何が彼に今回の様な罪を犯させたのか、判らん。」

「技術者とはいえ、彼も軍人でした。 やはり、手柄を立てたかったのでしょう。」シュルツは自分がけしかけた事
などおくびにも出さず、さらりと言った。

「そうか・・・。君も彼が軍人だったと思うか・・・。 ならばせめてそれに相応しい弔いをしてやれ・・・。」
レッチェンスはシュルツをギロリと睨んだ。

「ハッ! しかし奴は反逆者です! 弔ったりしたら示しがつきません!」

「だから、『宇宙に捨てろ!』 と言ったのだ。 お前の裁量としてな!」シュルツに背を向けたままレッチェンスは
言った。

「ハッ! 了解しました。 仰せの通りに致します。」シュルツは心の中でニヤリとしつつ、退室した。

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地球防衛軍司令部は重苦しい空気に包まれていた。

先日、地球に落下し、日本の三浦半島を直撃、甚大な被害をもたらした隕石の正体が判明したのだ。

隕石の落下直後に、地球は英語とロシア語の入り混じった奇妙な通信を受け取っていた。

その解読が先程出来上がって来たのである。

『我々はガミラス帝国、地球よ、滅亡か、我々の奴隷になるか、選択せよ。 我々は星すら動かす力をもつ、
抵抗が無駄な事は今回の攻撃で判ったはずだ。 良い返事を待つ。』

先日の隕石の落下は明らかに人為的なものの疑いが濃かった。

それが、ガミラスと言う敵の示威攻撃だった事がはっきりしたのだ。

土星会戦の結果と合わせて文明の程度に大きな開きがある事も判った。

しかし、このまま何もせず、敵の軍門に下るのは戦争に明け暮れていた地球人の誇りが許さなかった。

<長い戦いになるな・・・。>藤堂は沖田の顔を見た。

しかし、沖田は何故かいぶかしげな表情をしていた。

長い会議が終わると藤堂は沖田に理由を聞いた。

「長官、今回の敵の示威攻撃だが、何かタイミングがおかしい。

確かに遊星爆弾による戦略核攻撃は脅威だが、木星より内側が我々の勢力圏にある内は迎撃は不可能では
ない。

今回の会議でも遊星爆弾の迎撃に関してはどの国、どの勢力とも意見の一致を見た。

次の攻撃はたぶん、迎撃が成功するだろう。

まるでガミラスは自分の手の内を明かしてくれている様だ。」

「それはまだ敵に隠し玉があると言う事だろう?」

「そうかもしれん。 しかし、わしは敵の内部にも問題があると踏んだ。」

「我々にもまだ勝機があると言う事かね?」沖田の性格を良く知っている藤堂は確かめる様に聞いた。

「勝機? それは諦めさえしなければ何時でもある。」沖田は歴戦の勇者のみが見せる微笑を見せた。

                                    

                        時に2192年7月20日 ガミラスの遊星爆弾の示威攻撃が行われた。
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by YAMATOSS992 | 2012-03-30 21:00 | 本文 | Comments(0)