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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

9.突撃駆逐宇宙艦

  左舷、目の前の宇宙空間に巨大な鉄の塊が浮いていた。

数人の宇宙服姿の人間が取り付いて何か作業をしていた。

「何処に曳航してゆくんでしょうね。」 それを見詰めながら、副長が艦長に尋ねた。

応えは無かった。

副長は古代守の方を向いた。

古代はその鉄の塊に敬礼していた。

「艦長・・・。」

「あ、すまん。 あれはドイツの装甲艦だったからな~っ。 解体するスクラップ屋は苦労するぞ。」
古代守は副長の方に向き直って言った。

彼等は第36輸送船団を護送して木星宙域に差し掛かろうとしていた。

この宙域では3日前、ドイツ船団がガミラス艦隊に襲われ、全滅したのだ。

ガミラス艦隊はワープが出来る利点を生かした一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)戦法を多用する様に戦術を変えて来ていた。

装甲艦ヘッセンとその配下のZ級駆逐宇宙艦2隻はその攻撃に4日間耐えたが徐々に駆逐宇宙艦を失い、
最後の2日はヘッセン1隻で奮闘したが、何十箇所もガミラス重巡の大口径フェーザー砲に撃ちぬかれ、
とうとう沈黙した。

しかし、流石にドイツの装甲艦、元がどんな形だったか、わからない位にダメージを受けても爆発する事は
無かった。

「シャルンホルスト」クラスの装甲艦とは構造が違って艦体を満遍なく装甲する方式だったので1枚当たりの
装甲板厚は薄かったが、それが何層にも重なる構造は非常に頑強でガミラス艦の執拗な攻撃にも致命的な
ダメージを受けるまでにかなりの時間が掛った。

<苦しかったろう・・・。>古代はその間の「ヘッセン」の艦長を始め、乗組員達の苦闘を思って心の中で涙した。

古代は自分が護衛している第36輸送船団に目をやった。

今回の護衛は艦隊型駆逐宇宙艦「かげろう」型が4隻、突撃駆逐宇宙艦「ゆきかぜ」型が4隻と変則的だった。

「かげろう」型は艦隊に編入され、宙雷戦隊を構成したり、主力艦を防衛したりするのが目的の
艦隊型駆逐宇宙艦だ。
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艦体中央に反物性ミサイルの垂直発射管(VLS)を18門攻撃兵装とし、2連双5インチレーザー砲塔を3基を
ミサイル防衛用に持っている、そして、今は艦体両側に翼の様なパイロンを張り出し、片側3基、合計6基の
反物性ミサイルを追加装備ていた。

これは、本来の駆逐宇宙艦の主流をなす姿だと言えた。

それに対し、「ゆきかぜ」型は今までになかった突撃駆逐宇宙艦という分類だった。

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「かげろう」型より一回り小さい艦体で進行方向にミサイルを発射する、艦艇というより、航空機型の戦闘方式を
とる新型艦だ。

光速兵器も5インチと小ぶりではあるが、一応、3連双フェーザー砲等を2基持っている。

ミサイル発射管は3基と少ないが、次発装填が可能なので連射が効く、また、主攻撃兵装は反物性ミサイル
だったが、他にも目的別に幾種類かのミサイルを積んでいた。

この突撃駆逐宇宙艦という艦種は元々は艦隊戦を目的に開発されたものではなかった。

小型で運動性が高く、防御兵装は最低限、攻撃兵装に重点を置いたその設計は実は遊星爆弾迎撃システムに
組み込まれる事を前提に設計されていた。

そして構造が簡易なため今までの艦隊型駆逐宇宙艦よりも量産が効くという利点もあった。

だが、問題だったのは今までの艦隊型駆逐宇宙艦が旧式化して退役したり、ガミラスとの戦いで損耗した
場合、新たな艦隊型駆逐宇宙艦を設計、配備するだけの余裕はもはや地球側には無かった事だ。

否が応でも新種の突撃駆逐宇宙艦で全ての任務を賄わなければならないのだ。

遊星爆弾の迎撃はもともと建造目的がそれなのだから運用に問題はなかった。

艦隊に配備され、今までの艦隊型駆逐宇宙艦と同じ様な使い方、すなわち主力艦を守って防御弾幕を張る
護衛艦の役割、敵艦隊近傍まで接近してミサイルを放って攻撃する宙雷戦隊の役割、をするのも問題なく
こなせると思われた。

一番、憂慮されたのが船団護衛の任務だった。

艦隊型駆逐宇宙艦は非常に大雑把に言ってミサイル・キャリアーである。

自らは余り、運動せず、発射したミサイルに運動させ、敵を追いかけさせる、また、船団に接近する
敵のミサイルはレーザーで迎撃する、そうした艦艇運用型のコンセプトで設計されていた。

それに引き換え、突撃駆逐宇宙艦は航空機、それも大型の戦闘機としてのコンセプトで設計されていた。

小さい艦体に多くのミサイルを積むためにミサイルの航続距離を少なくして小型化し、その運動性の少なさを
艦自体の運動性で補う考え方だった。

当然、推進剤やエネルギー消費は艦隊型駆逐宇宙艦より多くなると推定された。

まともに戦っていては直ぐに推進剤切れで戦闘出来なくなり、ガミラス艦隊の餌食になるのは目に見えていた。

地球ー木星間の通商路は日本にとっても生命線である。

何んとしてでも、突撃駆逐宇宙艦の有効な運用方法を確立する必要があった。

幾つかの案が浮上しては消えていった。

そしてある程度、煮詰まった案が出来、今回、第36船団の護衛に通常の艦隊型駆逐宇宙艦4隻に加えて
突撃型駆逐宇宙艦4隻を余分につけて実戦評価する事になったのである。

古代守の指揮する「ゆきかぜ」以下、「みねかぜ」、「うみかぜ」、「かわかぜ」の4隻は新戦法の訓練を積んで
初実戦に望むのである。

「艦長、早く腕試しをしたい・・・と言いたい所ですが、相手がガミラスじゃ遠慮しておきたいですね。」副長が
守に話かけた。

「そうでもないさ。 オキタ・フォーメーションやネルソン・タッチは俺たちが迅速に行動して戦闘の主導権を
握れば戦いを有利に進める事が出来る。 今までの訓練結果にもっと自信を持てよ。」守は部下の不安を
打ち消してやった。

しかし、彼自身はガミラス艦のワープ能力が戦闘にどの様に影響するか、一抹の不安をいだいていた。

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 突撃駆逐宇宙艦「ゆきかぜ」のブリッジで古代守は一人緊張した面持ちでスクリーンを見詰めていた。

そこには接近してくるガミラスの重巡2隻の姿が映っていた。

列車の様に繋がったタンカーを護衛して木星に達する寸前の所でガミラス通商破壊用重巡艦隊に発見されて
しまったのである。

<エネルギーがギリギリしか無い!>

木星のプラントで水素やメタンを受け取った後なら充分、太刀打ち出来るのだが・・・

「悪い時に来てくれた・・・。」内心、最悪の結末を想像している自分に気が付いた。

副長の方を見ると心配そうに彼はこちらを見ていた。

部下を不安がらせてはいけない! 彼はおもむろに命令を発した。

「ゆきかぜ 以下突撃駆逐艦4隻はガミラス艦の迎撃に向かう

陣形は鶴翼! 戦術はA!「かげろう」以下艦隊型駆逐艦4隻はタンカーの護衛に専念しろ!」

「了解!」操舵手は命令一下、「ゆきかぜ」の艦首をガミラス艦の方に向け、突撃を開始した。

「ネルソン・タッチで行きます!」射撃管制官が叫んだ。

ネルソン・タッチとは19世紀英国の名提督ネルソンが多用した戦術である。

単縦陣、縦に繋がって横腹を見せている敵艦隊に対し、風上から一直線に突撃し、相手の単縦陣を横切る時
こちらの左右の全砲門を開いて左右の敵艦に至近距離から弾雨を浴びせて仕留める戦法の事だ。

突撃中は敵艦隊の砲の数が圧倒的に勝っており、撃たれっぱなしの危険な状態になる様に思われるが、
こちらは突撃中で前面を相手に見せており、目標としては小さくなったのと同じ効果があるのだ。

しかも、当時の射撃指揮は稚拙で砲手に任されており、波浪のある海上では距離が開くとたちまち命中率が
下がったのである。
 
ネルソン自身も長距離射撃は当たらないと言って嫌っており、舷々合い摩する距離に接近するまで発砲
させなかった。

 こんな旧式な戦法をどうして地球軍は採用したのであろうか?

ガミラス艦はどうした訳か主砲を前方に撃てないのだ。

必ず、艦首を振って単縦陣で斜めに突撃してくる。

古代はこの2隻の間を目がけて艦隊を突撃させた。

「ゆきかぜ」型のフェーザー砲ではガミラスの重巡の装甲には歯がたたない。

艦首から発射する反物性ミサイルが頼りだ。

しかし、至近距離からの射撃なら別だ。

しかも後部の噴射口内部にビームをぶち込まれたら、流石のガミラス重巡もひとたまりも無い。

「ゆきかぜ」と「かわかぜ」を先頭に鳥が翼を広げた様に拡がった地球艦隊は反物性ミサイルを発射しつつ、猛烈な速度で近づく。

ミサイルの第一射目は敵のフェーザー砲で迎撃された。

猛烈な爆煙が辺りを覆った。

フレアとチャフが詰められたダミーだったのだ。

ガミラスも地球艦隊も相手を見失う。

しかし、古代守はニヤリと笑った。

『戦術Aクイック発動!」命令一下、地球艦隊は二たてに別れ、二隻一組の単縦陣に移行した

そして何のためらいも無く、爆煙の中に突っ込んだ。

「ゆきかぜ」の左舷にいきなり先頭のガミラス重巡の噴射口が現れた。

敵艦隊の分断に成功したのだ。

射手が反射的にビーム砲の引き金を引いた。

6条のビームがその噴射口に吸い込まれたと思ったら「ゆきかぜ」は忽ちガミラス艦隊を横切った。

続いて僚艦の「うみかぜ」もフェーザーを叩き込んで通りすぎた。

後続のガミラス艦も「みねかぜ」、「かわかぜ」の攻撃を受けていた。

先頭のガミラス艦が小爆発を起こしたがその姿がユラリと歪んだと思ったらその姿は消えた。

「ワープしたな。」古代守は唇を噛んだ。

後続のガミラス艦はやはりワープしようとしたがユラリと歪んだと思ったと同時に大爆発を起こして宇宙のチリと
なった。

たぶん一隻目もワープ中の亜空間内か、通常空間に戻った時に爆沈するだろうと思われた。

もし、生還したとしても修理に時間を取られるだろう。

一応、古代守の護衛の任務は果たせたと言えた。

しかし、これでエネルギーを使い切ってしまった艦隊は木星軌道上を漂流する羽目になってしまった。

「こんな時に別のガミラス艦隊がやって来たら一巻の終わりですね。艦長。」副長がコーヒーを手渡しながら
古代守に言った。

「それはそれ、運命さ、しかし、俺は『ゆきかぜ』の幸運伝説を信じるよ。」守には「ゆきかぜ」の運の良さに
自信があったのだ。

「『雪風』は第2次大戦中に活躍した『陽炎』型駆逐艦の一隻である。

この艦は殆ど全ての海戦に参加したにも係わらず、戦死者3名と言う幸運艦なのだ。

ある時など海戦後食料倉庫の中から米軍機の発射した5インチロケット弾が発見された事が、あった。

そして、その隣りは火薬庫だったのである。

もし、ロケット弾が食料で受け止められずに火薬庫に飛び込んでいたら爆沈は免れなかったろう。

 日本の敗戦後、「雪風」は中華民国の「丹陽」として再び弾雨の中にいたが幸運はまだまだ続いていた。

中華人民共和国の駆逐艦隊に追われた時、あまりの酷使に機関が故障を起こして動けなくなってしまった。

もうだめだ!艦長以下全乗組員がそう思った時、追撃して来た敵の駆逐艦が次々と爆発を起こしたのである。 

やはり、機関の酷使が原因のボイラー爆発であった。 

それも三隻全てがである。 

これはもう何か特別な力が働いているとしか思えなかったのである。

駆逐宇宙艦になってからも幸運は続いていた。

だから古代は落ち着いていられたのである。

根拠の全くない自信であったが、明日をもしれない任務に明け暮れる駆逐艦乗りには必要な心の拠り所だった
と言える。

数隻の作業艇が近づいて来た。 

エネルギー補給のためである。

突撃駆逐宇宙艦隊はプラントに戻れるだけの最低量のエネルギーを貰い、プラントで完全補給した後、
今度は満載のタンカー船団を護衛して地球に戻るのだ。

日本プラントに着くと古代守は「かげろう」型の艦隊が先に入港しているのを確認した。

よかった。あれ以上のガミラス艦はいなかった様だ。

「かげろう」のパイロンに吊るされた反物性ミサイルの数は揃っており、使われた様子は無かったからだ。

「ゆきかぜ」型より大分古い「かげろう」型はフェーザー砲すら持たず、攻撃手段は反物性ミサイルだけだ。

砲塔は二連双レーザー砲を三基持っていたが、これらは対ミサイル防衛用で出力も少なく、もし、「ゆきかぜ」型の留守に船団が別のガミラス艦隊に襲われたら苦戦は免れなかったろう。

 とにかく、船団が水素とメタンで腹を満たす間、半舷上陸だ。

護衛艦隊司令、古代守大尉は自分も腹を満たすべく、ケータリングに向かっていった。



 地球ー木星間航路でのガミラス艦隊の跳梁激しさを増す、地球軍かなり苦戦を強いられる。

                                                    ヤマト発進まで2026日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-13 21:00 | 本文 | Comments(2)
Commented by あんどろー梅田 at 2015-05-22 22:37 x
将兵の気心に

心揉まれる心情


少しずつ 少しずつ

拝読させて戴いています
Commented by YAMATOSS992 at 2015-05-23 08:12
あんどろー梅田さんいらっしゃい。

ガミラスに比べテクノロジーに大きく劣る地球防衛軍に強みがあるとすれば不屈の闘志と臨機応変の応用力だけです。

そしてこの後、「木星圏での覇権」を巡る戦いが戦われ」、「太陽系の天王山」となります。