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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

10. 木星圏、波高し!

 「こりゃ~っ・・・。 なんと言う・・・。」スクリーンに写っている光景を見た副長が呟いた。

土星宙域でガミラスの交通路の通商破壊工作を行っている第2特務戦隊は土星の衛星、ミマスの陰に
ガミラス艦隊が集結しているのを発見したのだ。

その数は大小の艦艇を取り混ぜて60隻余を数えた。

「これは地球ー木星交通路の襲撃を狙ったものではない・・・。」艦長も生唾を飲み込んだ。

「デアフリンガー」を旗艦とする第2特務戦隊は「シャルンホルスト」が旗艦を努める第1特務戦隊と
通商破壊任務を交代し、戦場に着くと、定位置である土星の輪の中に艦隊を潜ませ、ガミラスの輸送船団を
狙って網を張っていたのであるが、単独航行をするガミラス戦艦を発見、
測距用のカール・ツァイス製大望遠鏡でその行く先を確かめたのだ。

その結果、ガミラスの大艦隊を発見した。

彼等が集結する理由は一つしかない、「デアフリンガー」の艦長、リンデマン大佐は配下の重巡「リュッツオー」と軽巡4隻に脱出を命じた。

彼等は命令どおり、土星の輪の中をゆっくりとその場から遠ざかっていった。

しかし、リンデマン艦長は「デアフリンガー」をその場に留まらせた。

彼はガミラス艦隊の動向を偵察、逐次、地球陣営に通報するつもりなのだ。

これはガミラスに発見されたら確実に撃沈されるであろう決死的行動だった。

だが、リンデマン艦長にとっては自艦の安全よりガミラス艦隊集結の情報を一刻も早く味方に届け、更には
敵の次の動向を探る事の方が重要だった。

「すまんな・・・。」艦長は誰に言うともなく呟いた。

「大丈夫ですよ。 見敵必戦は我が英国海軍の伝統です。 あ、 この艦はドイツ艦でしたっけ・・・。」副長の
スミス少佐が笑った。

彼は同じ欧州連合の英国出身の軍人だ。

そして、確かに、見敵必戦は英国海軍の伝統だった。

過去、英国の生命線が海上交通路にあった時代、英海軍は多数の船団を護衛するため、軽巡洋艦を
多数配備した。

しかし、敵対するドイツが放った通商破壊艦は重巡クラス以上の強力な武装を持っていて、とても正面から
戦ったら適うはずもない絶望的な戦いになる事が多かった。

しかし、それでも英国軽巡は怯む事なく、強大な敵に立ち向かった。

運が良ければ敵に大きな傷を負わせて本拠に帰らざるを得なくさせる事が出来るかもしれない・・・。

もし、武運つたなく自艦が撃沈される事になっても敵が本来、味方の輸送船に打ち込むはずの弾薬を
浪費させ、味方の輸送船の被害を減らす事が出来る・・・と言う考え方だった。

今の「デアフリンガー」の置かれた状態も同じだった。

今、ガミラスが見せているのは明らかに木星圏への侵攻準備のための集結であった。

彼等は最終的には撃沈されるであろうが、それまでの間、取れるだけの情報を取って木星圏にいる
地球陣営に送り続ける・・・。

その悲壮な決意の元、「デアフリンガー」は情報を取り続けた。

同じ任務なら配下の軽巡に命じる事も出来た。

そして軽巡1隻の損害の方が地球軍には良いとも言える・・・、しかし、軽巡は反物性ミサイルは多数搭載
していても装甲板は皆無なのだ。

発見され、攻撃されたらひとたまりもなく、撃沈される、しかし、「シャルンホルスト」型の装甲艦である
「デアフリンガー」なら一面ではあるが分厚い装甲板を持ち、ガミラスの攻撃に対する耐性は格段に
高いので発見され、撃沈されるまでの時間をより多く稼ぐ事が出来るとリンデマン艦長はふんだのだ。

そして何よりこうした決死の任務を部下に与えたくなかったのも本音だった。

<生き残ってくれ・・・。>彼は心の中で祈りつづけた。

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 ガミラス冥王星前線基地は次々と発進する艦艇の発する轟音で満たされ、いつもの静かな佇まいとは
打って変わった忙しさだった。

「閣下、私は本当に後詰めで良いのですか?」シュルツは新型の大型戦艦と共に留守番を命ぜられ
戸惑っていた。

「前にも言ったろう。 シュルツ君、君は残って大型戦艦の乗員訓練をしていてくれと。」レッチェンスは眉を
吊り上げながら言った。

「閣下、私はそんなに頼りないのですか!」シュルツは今回の遠征に同行されない事に安心すると同時に
軍人としての誇りを傷付けられた気持ちだった。

しかも彼より階級が下のガンツ中佐は今度の侵攻では別働隊の指揮者を任されているのだ。

「シュルツ、わしは君の能力を買っておるよ。 まして君が殖民星出身だからと言って差別しているつもりもない。

それを言ったらガンツ中佐も君と同じ星の出だ。 そして、決して彼の方が君より勝れているわけではない。

しかし、人には適材適所という事がある。

君は基地にいてそこから全般の状況を判断して戦略を立て、戦術を選ぶ能力に秀でているとわしは思う。

だから君は基地にいて、もし、この作戦でわしが戦死する様な事態になった時、的確な判断を下すためには
基地にいてくれた方が都合が良いのだ。」レッチェンスはシュルツの肩に手を置いて諭した。

<まして地球軍にこの基地を破壊されたら我々は太陽系での足がかりを失ってしまう・・・。 地球軍の艦艇の
能力から考えたらその恐れは少ないが用心するに越したことはない。>レッチェンスはシュルツに別れを
告げ、旗艦の艦長席に座った。

スクリーンにガンツ中佐の顔が写った。

「別働隊、予定任務に向け、発進します。」ガンツは快活に言った。

彼は自分が研究していた作戦が全面的に採用され得意の絶頂だった。

「よし、うまくやれよ。 ガンツ。」レッチェンスはウインクしてガンツの発進を見送った。

「本艦も発進準備出来ました。」副長が報告した。

レッチェンスは乗艦した駆逐型デストロイヤーを発進させた。

ブリッジから見える駐機場に大型戦艦が威容を見せて停泊していた。

<いつ見ても美しい船だ。>レッチェンスは何度か、この戦艦を本国で見かけた事があったが、いまだ指揮
した経験はなかった。

<この戦いが終わったら一度、訓練航海に同行させてもらうとするか・・・。>

レッチェンス提督は思いを残したまま冥王星基地を発進していった。

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「ガミラスが動いたか! どの部隊からの情報か?」シェーア大将は木星防衛司令部に飛び込むと報告を
求めた。

「はっ、現在、土星宙域にいるドイツ第2特務戦隊からの情報であります。」参謀長が応えた。

「リンデマン大佐の通商破壊部隊か。 敵艦隊の規模は?」

「今のところ、戦艦20隻 巡航宇宙艦15隻、駆逐艦25隻、ですが時間と共に増大中との事です。」

「そんなに多数か・・・。」シェーア大将は驚いた。

普通、一度に指揮出来る艦の主力艦の数は精々10隻が良い所だった。

特別に勝れた指揮者がいるか、部隊を別けてくるか、さもなければ地球人の知らない指揮方式があるか、
どちらにしても地球側にとっては非常事態である事に変わりはなかった。

シェーア大将はドイツ艦隊の提督であったが、欧州連合の最高指揮者であり、国連宇宙軍の最高指揮者でも
あった。

彼はすぐさま前線から届いた貴重な情報を各国、各勢力の宇宙軍指揮者に連絡した。

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 眼下にはおどろおどろしい海が広がっていた。

水素とメタンの海である。

その表面には時折、人類の木星進出を拒否するかの様に電光が走った。
 
木星は人類の進出を許してはくれなかった。

こうして水素とメタンの海の上に浮かび、それを採取する事が人類に許された唯一の開発方法だったのだ。

木星は太陽系で一番大きなガス惑星である。

その実態は水素とメタンガスの混合したガスの塊で分厚いガス層の下には金属水素のコアがあると
推定されている。

ガス層の奥に入ったら最後、強大な重力に捕まり、脱出不可能となる恐ろしい惑星であった。

地球人はこの惑星の水素ガスとメタンガスをエネルギー・資源として採取、活用していた。

そのため巨大なエネルギー採取プラントを各国とも建設していた。

だがこれ等の施設は軍事施設ではなかったので攻撃には非常に脆かった。

そこで各国の設備を極力、一ヶ所に固めて防備する計画が立てられ、実行された。

「ついに来たか・・・。 全ての現場主任に連絡!作業員を中央待避所に集合させろ!」欧州連合プラントの
責任者、リットリオ技術大佐は部下を退避させる司令を発した。

悔しいが、彼等、プラント技術者は今は軍を信じて退避カプセルでじっとしているしかない。

しかし、彼等は襲来するであろうガミラス艦隊が彼等の想像を超えた大軍である事を知らなかった。

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「山南君、寺内君、管野君、ガミラスが押し寄せてくる。 訓練の成果を見せる時が来たぞ。」沖田提督は
日本艦隊の艦長達に激をとばした。

日本艦隊は戦艦「英雄」、「栄光」、を基幹とし、重巡航宇宙艦を改装した早期警戒艦「たかお」、「あたご」、を
耳目に、立体攻撃の主役として「ゆきかぜ」型突撃駆逐宇宙艦10隻を擁するものだった。

「英雄」クラスの14インチフェーザー砲ではよほど接近しないとガミラス艦の装甲は破れない事は土星会戦で
米ソの艦隊が全滅した時に判明していた。

そこで沖田提督とその配下の艦長達はそのハンデを補う方策を模索し、訓練を繰り返していたのだ。

「新戦法が通用するといいですね。」山南大佐が沖田に言った。

「大丈夫さ、山南君、あれだけ研究し、訓練を重ねた方法だ。 ガミラスにも必ず通用するさ。」沖田は
自信たっぷりに応えた。

寺内大佐、管野少佐も闘志に燃えた目で頷いた。

「さあ、諸君、時間がない、所定の場所に展開! ガミラス艦隊を迎撃する!」沖田は全艦隊に命令を発した。

プラントから遥か離れた土星よりの宙域に50万キロの間隔をおいて早期警戒艦「たかお」と「あたご」が
専位した。

そしてアジア連合のプラント正面には戦艦「英雄」と「栄光」が単縦陣で横付けする様に防御態勢をしき、

10隻の突撃駆逐宇宙艦はその陰にガミラスから隠れる様に待機していた。

もちろん、アジア連合には中国も朝鮮も東南アジア諸国連合もいたが、彼等の持つ艦艇は殆ど駆逐宇宙艦で
艦隊戦には向かず、中国の李中将が宙雷戦隊を幾つか組ませて指揮する事になっていた。

拠点防衛には小回りが利いて配置に融通が利く宙雷戦隊が向く、沖田はプラントの直衛は李中将の
宙雷戦隊に任せ、日本艦隊はプラントから離れた所を遊弋してガミラス艦隊を迎撃するつもりだったのだ。

他のプラントを防衛する艦隊も同じ様に展開を始めていた。

日本艦隊の右舷には南半球艦隊が展開していた。

南半球艦隊は戦艦「ミナス・ゼラース」、「アルミランテ・ラトーレ」、「リヴァダヴィア」、「オーストラリア」、
「ニュージーランド」と比較的新しい戦艦群を擁しており、自信に溢れた布陣だった。

左舷には欧州連合艦隊がいた。

ドイツ艦隊からは国連宇宙軍総旗艦に指定されている「フレードリッヒ・デア・グロッセ」、「ケーニヒ」、
英艦隊からは「アイアン・デューク」、「ウォースパイト」、 仏艦隊からは「ジャン・バール」、「ストラスブール」
伊艦隊からは「レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「ダンテ・アリギェーリ」と、錚々たる布陣だったが、欧州連合の艦は
比較的旧式で速度が遅いハンデを負っていた。
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しかし、沖田は過去に剣を交えた事があるシェーア大将の腕は畏怖していた。

反対に南半球艦隊は実戦経験が少なく、そのハンデを補うため英艦隊のトロンプ中将が指揮を執っていた。

トロンプ中将は英艦隊の至宝と言われた男だったが着任してから日が浅く、艦隊を手足の様に操る所まで
訓練しきれていなかった様だった。

だが、沖田は地球の七つの海を約4世紀に渡って支配した英国艦隊の伝統を信じていた。

<今、我々が負けたら地球に後は無い・・・。>今の地球はエネルギーや資源を全て木星に頼っていた。

ガミラスの侵略が明らかになった時点で、太陽光発電やMHD(直接核)発電、化石燃料の再開発等、木星に
頼れなくなった時の事を考えた対策が行われていたが、とてもガミラスの侵略を跳ね除ける為に必要な量を
賄うのには程遠かったのだ。

まだ、ガミラス艦隊の現れない空間だったが、沖田は遥か彼方の土星宙域を見詰めていた。

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「艦長!ダメージ・コントロールが間に合いません! どんどんエネルギーが失われていきます!」機関長が
叫んだ。

「裏側に敵を廻らせるな! 裏側の敵はミサイルで対処! 表の敵は主砲で攻撃!」リンデマン艦長は
満身創痍となった装甲艦デアフリンガーを操って木星圏に立てこもる地球艦隊のために時間を稼いでいた。

全部の敵を引き付けておける訳ではないが、少なくともデアフリンガーが引き付けている敵は木星圏の戦闘に
参加出来ないのだ。

しかし、ガミラス艦隊を指揮しているレッチェンス大将もいつまでも装甲艦一隻にかまけているつもりはなかった。

駆逐型デストロイヤー(地球側は戦艦と信じていたが・・・)を「デアフリンガー」の艦首側に1列、艦尾側に
1列5隻づつ、2列の単縦陣に別けて突撃させた。

「くそっ、奴等の中にも切れ者がいる!」リンデマン艦長は歯噛みした。

「シャルンホルスト」型の装甲艦は底部の分厚い装甲板面を敵に向けて戦う様に設計されている。

だからこの面はたとえ、ガミラスの戦艦(駆逐型デストロイヤー)のフェーザー砲といえども撃ちぬけない、
しかし、装甲板の裏側、艦橋や居住区、武装や機関などの重要区画のある面は殆ど装甲がないに等しい。

つまり、裏に廻られ、重要区画にフェーザーをつるべ撃ちに浴びせられたら最後なのだ。

レッチェンスは配下の10隻の駆逐型デストロイヤーを2列の単縦陣に別け、「デアフリンガー」の艦首と艦尾を
かすめる進路を取らせた。

「デアフリンガー」は両方の敵に同時に対応する事は出来ない。

必ず、どちらかの単縦陣に背面を晒す事になってしまう。

「デアフリンガー」のスクリーンに迫り来るガミラス艦隊の単縦陣、2列を睨みつけた。

艦尾方向をすり抜け様としている列の先頭の戦艦(駆逐型デストロイヤー)は他の艦と変わった塗装をしていた。

艦尾第3砲塔から推進用の噴射口にかけての後部が真っ赤に塗られていたのだ。

リンデマン艦長はこの艦がこの大艦隊の総旗艦だと直感した。

そして、不敵な微笑を浮かべると操舵手に命じた。

「信地旋回、艦尾方向からくるサルに突撃だ!」

「はぁ、サル?ですか? あ!」操舵手は一瞬とまどったがスクリーンの左手に写っているガミラス艦の特徴に
直ぐに艦長の意図を察した。

「デアフリンガー」はバーニャ・ノズルを吹かし、クルリと艦首、艦尾を入れ替え、3基のメイン・ノズルを全力で
吹かして突撃した。

反対側に取り残されたガミラス艦単縦陣はチャンスとばかりに「デアフリンガー」の背面に攻撃を集中してきた。

<至近距離まに近づくまで持ってくれ!>リンデマンは祈った。

居住区が打ち抜かれて様々な思い出が宇宙に吸い出されていく・・・、次は主反応炉か! リンデマンは
目を瞑った。

しかし、数秒が過ぎても彼も部下も無事だった。

『遅くなりました! 伝令終了です!』スクリーンには先に退避させたはずの僚艦「リッツオー」の艦長、
マイヤー大佐が写っていた。

マイヤーは「リッツオー」に航空機で言うバック・トウ・バックの姿勢を取らせ、「デアフリンガー」の背面を
守っていた。

「馬鹿もん! 何故帰って来た。 俺は貴様等に生き残って欲しかったんだぞ!」リンデマンは怒鳴った。

「『シャルンホルスト』型の装甲艦は2隻で1隻です。 片割れを残しては帰れません。」マイヤーは子供の様に
笑った。

「ここで採った情報は全て軽巡部隊が本部に送っています。 大丈夫、司令、彼等は生き残りますよ。」

「よし、それじゃ、思い残す事なく突撃出来るな。 目標は総旗艦だ。 相手に採って不足はないぞ!」

「了解!」 2隻の装甲艦はバック・トウ・バックの姿勢のまま、錐を揉む様に回転しつつ、突撃していった。



地球とガミラスの太陽圏の覇権を争う戦いの天皇山と言われた、木星会戦が始まろうとしていた。
                                                             
                                                    ヤマト発進まで1482日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-20 21:00 | 本文 | Comments(0)