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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

12.木星会戦(怒濤編)

ヒッペルトもやられたのか・・・。

レッチェンスは木星圏の威力偵察に出した重巡艦隊の末路に眉をひそめてた。

ヒッペルト中佐はガミラスの重巡艦長の中でも切れ者で通った男だった。

それが任務遂行中に6隻中、4隻を失い、残り2隻も1隻は大破、もう1隻も中破という有様でしかも、敵状は殆ど偵察出来なかったのだ。

本人も艦と運命を共にしてしまった。

仕方ない、面倒だが、ここはまず、欲張らずに遠距離からの戦略偵察を行うとするか・・・、レッチェンスは冥王星前線基地に連絡をとった。

「先に試験配備された『高速宙母』を至急、派遣しろ!」レッチェンスは留守を預かるシュルツ大佐に命じた。

「『高速宙母』でありますか・・・、まだ受け取りが完全に済んでおりませんで・・・。」シュルツは口ごもった。

「何! 作戦に使用出来ないと言うことか!」レッチェンスは仕事の遅い部下は大嫌いであった。

「宙母を回航して来た要員は帰ったのか?」

「いえ、まだ居ります。 その回航委員長が問題でして・・・。」

「どういう事だ。?」レッチェンスは事情を聞いた。

要するに、『高速宙母』は新型艦で今までのガミラス艦と推進機関の方式など様々な部分が違っていて
その引継ぎに時間が掛っているのだ。

しかも、その引継ぎを仕切る回航委員長が完全主義者で中々、引継ぎの終了を認めなかった。

「判った。 その回航委員長とやらを出せ!」レッチェンスが委員長の呼び出しを要求するとシュルツ大佐は内心喜んだ。

<あの頑固者に司令のカミナリが落ちるか・・・フフッ>

しかし、現実はシュルツの期待した様には進まなかった。

「お初にお目に掛ります。 『高速宙母』回航委員長のピラウア少佐です。」

スクリーンに出た回航委員長はガミラス人の女性将校だったが、ガミラスも直接戦闘する部隊以外には
女性兵士も多く、レッチェンスも慌てなかった。

「ピラウア少佐、前線基地の要員ではまだ『高速宙母』の運用は無理との事だが、回航要員でなら
運用できるか?」

「はい、回航要員でなら出撃可能です。 しかし、搭載機の離着艦訓練は間に合いませんし、要員も
足りません。」

「いや、それは構わん、宙母そのものが出撃できればいいのだ。 『高速宙母』で遠距離からの戦略偵察を行って貰いたい。」

「了解しました。」ピラウア少佐は女であるがゆえに中々最前線に出して貰えなかったもどかしさが一気に晴れる気がした。

「冥王星前線基地副指令、シュルツ大佐、『高速宙母』出撃します!」

今まで引き継ぎ作業中は無表情だったピラウア少佐の顔は歓喜に溢れていた。

さっきまで疎ましく思っていた女性将校だったが、シュルツは喜び勇んで出撃してゆくピラウアの顔に
ガミラス本星に残してきた娘の顔が重なり複雑な思いにかられた。

<わしの娘もこうやって戦火の中に飛び込んでゆく日がくるのか・・・。>

シュルツ大佐は艦体の四方に腕を伸ばし、十字形をした円盤型の「高速宙母」が回転しながら木星圏へ
向かって発進してゆくのを何時までも見詰めていた。

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「トロンプ司令・・・。これは一体何でしょう?」参謀はスクリーンに写った奇妙な物体に思わず上司に問いかけた。

スクリーンにはまるでヒトデの様な物体が写っていた。

その物体はゆっくりと回転しながら南半球連合の艦隊の前を高速で横切っていった。

「UFOってこんな感じの物なのかな?」トロンプは子供の頃、見た記録のUFOの写真を思い出していた。

「とはいえ、今の状況ではこれはガミラスのものと考えるべきだろう・・・。 こちらの早期警戒艦に正体を
探らせろ!」

このUFOに一番近い位置にいたのは早期警戒艦「シドニー」だった。

この艦はもともと軽巡で速度は速かったが武装も軽装だったので早期警戒艦に改装するにはその武装を
ほとんど全部降ろさなければならなかった。

そんな艦で正体不明の物体を調査させるのは心配だったが、今は贅沢は言っていられなかった。

「シドニー」はその物体よりも僅かだが土星よりの空間にいたので電波管制を敷いて接近を図った。

木星圏にいる艦隊から見るとその物体の底面しか見えないので判らなかったが、「シドニー」が
接近してみるとその物体の背面が見てとれた。

その物体の背面の形状はやはり見た事のないものだったが、その色はお馴染みのガミラス艦の緑色だった。

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「シドニー」は南半球艦隊のみならず、全艦隊にガミラスの偵察艦来襲の警報を発した。

そして「シドニー」は僅かに残された6インチフェーザー連双砲塔1基からビームをガミラス艦に浴びせかけた。

しかし、そのガミラス艦は反撃もせず速度を上げるとみるみるうちに遠ざかって行った。

もっともこのガミラス艦は撤退した訳ではなく、アジア連合艦隊、欧州連合艦隊の前も横切って偵察の
任務を果たしていった。

早期警戒艦「たかお」もこのガミラス艦を追尾しようとしたが簡単に振り切られてしまった。

「たかお」の広瀬艦長は反物性ミサイルを持っていない事が悔しくてしょうがなかった。

だが、ガミラスの偵察艦はそんな地球艦隊を嘲笑うかの様に速度を更に上げると宇宙の闇に消えていった。

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「やはり新型艦の威力は侮れないな。」レッチェンスは「高速宙母」が戦略偵察してきた情報に唸っていた。

木星圏をはなれ、ほぼ土星圏との境といって良い位置から採った情報だったが、レッチェンスが欲しかった
地球艦隊の規模と配置の情報はほぼ完璧に網羅されていた。

後は実際に交戦して相手の実力を確かめる必要があったが、その威力偵察に使うべき重巡はもはや消耗
し切っていた。

やはり、手順は守らないと結局、余分な手が掛るものである。

とはいっても、失った艦を惜しんでいても作戦は進展しない、レッチェンスは注意すべき戦力はプラント群の
両翼を固めている戦艦群だと考えていた。

そして、欧州連合の艦隊の性能についてはヒッペルトの重巡艦隊が偵察できた断片的ではあるが情報がある。

しかし、反対翼を固めている南半球連合の艦隊については性能の情報がない。

そこで、再度、威力偵察を行わせる事にした。

だが、今回はその任務に投入できる重巡はおろか軽巡すらなかった。

レッチェンスは一人の艦長を呼び出した。

「ヤクート大尉であります。お呼びでありますか。」スクリーンにごつい男が出た。

彼の顔は傷だらけでその歴戦ぶりを窺がわせた。

「ウム、ヤクート君、君には地球艦隊の左翼を固めている艦隊の威力偵察を行ってもらいたい。」

「偵察だけ・・・でありますか。 どうせ攻撃するなら撃滅を図りたいのですが。」

「とりあえずは偵察だけだ。 一隻だけなのだ。 決して深入りするな!」レッチェンスは釘をさした。

ヤクート艦は駆逐型突撃艦である。

本来なら巡航艦を出したかったが、巡航艦は重巡はおろか軽巡も消耗しきっていた。

レッチェンスは駆逐型デストロイヤーを出す事も考えたが、駆逐型デストロイヤーは基幹戦力である、もし、
戦闘で喪失すると、即、戦力低下に繋がるので出す事を躊躇ったのだ。

釘はさしたものの、ヤクート大尉は多分、自らの劣勢も返り見ず、地球艦隊に真っ向から挑戦するだろう。

レッチェンスはその戦闘状況を再び、高速宙母に観測させ、情報をとるつもりだった。

レッチェンスは年齢を重ねるにつれ、老獪になる自分に嫌気がさして来ていたが、今はガミラス軍の勝利が全てと割り切った。

ヤクート艦はたった一隻で南半球連合艦隊のいる方角に小ワープしていった。

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「再びガミラス艦出現!12時方向、距離5万!」戦艦「オーストラリア」の艦橋に探知報告が響く。

「数量は・・・、駆逐艦一隻です。」トロンプ中将はまだ若かったがこれが威力偵察である事に直ぐ気が付いた。

だとしたら、なるべく早く始末して情報を取られない様にしなければならない。

そう判断したトロンプは配下の宙雷戦隊に迎撃に向かわせると同時に敵艦が小ワープによる
一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)攻撃を戦艦に掛けてくる事を想定して自艦「オーストラリア」以下、
配下の戦艦に極力、左右均等に攻撃が出来る様、フェーザー砲塔を互い違いに両舷方向に向けさせた。

地球の宙雷戦隊を充分に引き付けるとヤークトは反物性ミサイルの雨がくる前に小ワープした。

そして南半球艦隊の右舷に出現すると旗艦「オーストラリア」に向かってミサイルを放つとまた小ワープして
位置を変えた。

「全く良くやるわね。ヤクート大尉・・・。」 ヤクートの戦いと地球軍の反応を偵察していた「高速宙母」の
ピラウア少佐はあきれていた。

ヤクート大尉は一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)攻撃を連続して加えていたが単純に同じ位置を往復していた
のでは忽ち位置を特定されてミサイルや機雷の待ち伏せ攻撃を受けてしまう・・・だから、彼は往復の複時の
帰還座標をランダムに少しずつずらしていた。

しかし、その座標が安全である保障など何処にもないのだ。

しかも木星という大質量がそばに存在しているのに・・・である。

レッチェンスからヤークトに帰還命令が下った。

レッチェンスも失わないで済む部下は失いたくなかったのだ。

しかし、その命令は一歩遅かった。

その時、ヤークト艦は一撃離脱攻撃をするために小ワープで地球艦隊に接近した、が、
戦艦「ミナス・ゼラース」が発射したフェーザー・ビームの直撃を受けてしまった。

頑強な装甲を持つ事で知られるガミラス艦も駆逐艦はほとんど無装甲で有り、戦艦のフェザー砲を
弾き返す事は出来ず、爆沈した。

ある程度予想していた結果であったが、レッチェンスは苦渋に満ちた顔を隠さなかった。

木星圏に吹く嵐は激しさを増していった。

                                                    ヤマト発進まで1481日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-30 21:00 | 本文 | Comments(0)