ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

15.火星基地攻防戦(1)

ガンツ中佐の提案どおり、木星の浮遊大陸に設けた観測基地から発進したパトロール艇による哨戒はまもなく
効果を上げた。

月基地のマス・ドライバーをガミラスに破壊された地球軍は今度は火星衛星軌道上で反物質弾頭を備えた
大型ミサイルを組み立てて、発射、木星会戦で生き残った数少ない艦隊型駆逐宇宙艦に誘導させて迎撃
していた事が判明したのだ。

シュルツはその報告を聞くとすぐさま艦隊を派遣してそのミサイルを誘導している駆逐宇宙艦を叩こうと
考えたが、ガミラスもまた、木星会戦で大きく傷ついており、バラン星から新しい艦艇を補給する必要に
かられていた。

木星会戦の結果、ガミラス艦隊の中心戦力である、汎用戦闘艦、駆逐型デストロイヤーはほぼ全艦が
大なり小なり傷ついていたからだ。

当然、今、作戦を行い、ただでさえ損耗している艦隊を更に傷つける事は得策ではなかった。

「ガンツ、何か妙案は無いか・・・。」レッチェンス大将を失って戦略案や戦術案を一人で立てなければならなく
なったシュルツは必然的にガンツ中佐を副官として重用する、いやせざるを得なくなっていた。

シュルツ大佐は古いタイプの軍人であり、大艦巨砲主義者であった。

従って、突撃艦の様な駆逐型ミサイル艦は戦力としてあまりあてにしていなかった。

レッチェンス司令から譲られた大型戦艦を投入する事も頭の隅を過ぎったが、まだまだ戦力を残している
地球陣営の中に虎の子の大型戦艦を向かわせる勇気はシュルツには無かった。

何やかにや言ってもガミラスは一応、有利に戦局を進めている、それなのに、この優柔不断ぶりである。

そんなシュルツの姿を見てガンツ中佐はこのままで本当に大丈夫なのか、不安になったがそんな彼も
シュルツと一連托生なのは変わらなかった。

シュルツもガンツもガミラスの被征服星の出身であり、戦果を挙げられなければその配下の部隊ごと始末され
かねない立場だったからだ。

「司令、せっかく、宙母が2隻も配備されているのですから機動部隊を編成してみてはいかがでしょう。」

「機動部隊? 宙母部隊か? そんな脆弱なものが役にたつのか?」シュルツは懐疑的であった。

確かに宇宙での戦いでは宙母は使い方の難しい艦艇であった。

宙母は艦載機を運用して艦隊の攻防力を担う役目があったが、艦載機は有人である以上、必ず帰還を前提と
した運用をしなければ成らなかった。

すなわち、帰りの燃料や推進剤を必要とする有人機は母艦から大きく離れる事は出来ず、艦隊戦では
近接防御が主任務にならざるを得なかったのだ。

それならば母艦から無人機を発進させれば、帰還を考えなくても良いので有人機の倍の距離にいる敵を攻撃
出来るのである。

これはすなわち、ミサイルを主兵装とする駆逐宇宙艦の用法に他ならない。

従って、ガミラスでも宙母は比較的贅沢な兵器と考えられており、あまり重用される事は無かったが、有人機の
融通の利く運用性は偵察や局地攻撃、反乱鎮圧などに価値を見出され、冥王星前線基地にも新型の十字型
高速宙母が配備されたのだ。

ガンツ中佐はその艦載機の融通の利く、運用性に着目した。

また、ガンツは1隻目の高速宙母を回航してきたピラウア少佐から高速宙母とその艦載機の有効な運用法を
学んでいた。

その秘策を秘めて2隻の高速宙母が冥王星前線基地を発進していった。

シュルツはガンツから作戦の説明を充分受けていたのだがそれでも自分が慣れ親しんだ艦艇型で無い
宙母の姿に不安を隠しきれないのだった。

*********************************************

「早期警戒艦『シドニー』より入電!遊星爆弾1基、地球に向かっています。」

「よろしい、護衛艦などはついていないか?」艦隊型駆逐宇宙艦「ゆうぐも」の艦長は問いただした。

「遊星爆弾だけでの飛来との報告です。」

「よし、本艦はこの遊星爆弾の迎撃に向かう、目標軌道データに従い、変針せよ」

「ゆうぐも」はこの遊星爆弾の迎撃に向かうべく、大きく面舵をとり、加速した。

ガミラス側は地球軍が的確に遊星爆弾を迎撃してくるので以前の様に一度に大量に投射するのをやめていた。

複数の遊星爆弾が固まって飛来するとそのなかの1発に反物質爆弾の命中があった場合、被弾した
遊星爆弾が破壊されるのはもちろん、周りの遊星爆弾も猛烈な対消滅爆発の影響を受けて軌道を
外されてしまう。

これでは、ガミラス側はいくら自然物を利用しているとはいえ、遊星爆弾が幾つあってもたまったものではない。

反対に今の様に遊星爆弾を1基だけ発射すると地球側はその1基のために大型反物質爆弾と大型ミサイルを
1基づつ、消耗しなければならなくなる、木星という資源、エネルギーの供給源を絶たれた地球にとってこの
様な消耗戦は避けたいところであった。

そのために地球側は火星軌道に艦隊型駆逐宇宙艦を単艦、交代で常駐させていた。
e0266858_1616284.jpg

e0266858_1639142.jpg

本来、反物質弾頭大型ミサイルの誘導だけなら艦隊型駆逐宇宙艦の必要はない、遊星爆弾を感知する
早期警戒艦がミサイルの誘導もすれば済む事である。

それをあえて艦隊型駆逐宇宙艦をその誘導艦に当てているのは、遊星爆弾が単独飛来した場合、
通常サイズの反物質弾頭ミサイルで迎撃し、あえて破壊を狙わず、命中軌道を外させる事が出来るためで
あった。

今回の遊星爆弾迎撃に向かった「ゆうぐも」は比較的古い設計の「かげろう」型の駆逐宇宙艦だったが、
ミサイル・プラット・フォームとしては充分な能力を持っており、この種の任務にはうってつけの艦であった。

「ゆうぐも」が遊星爆弾を探知、その軌道を変えるためのプログラムを施したミサイルを発射した時である。

ガミラスの高速宙母から発進して地球軍、駆逐宇宙艦を捜索していた艦載機がミサイルの発射炎を探知、
「ゆうぐも」の位置を知った。

ガミラス艦載機はブーメラン型をした全翼機であったが、これは大気圏内での運用を考慮したというより、
ミサイルなどの外装兵装をより多く積むための設計であった。

1機6発の艦載機にしては大型のミサイルが宙母1艦で攻撃機20機のミサイル、計120発が「ゆうぐも」に
襲い掛かった。
e0266858_5182762.jpg

「ゆぐも」は個艦防御兵装として5インチ連双レーザー砲塔を3基、計6門を持っていたが、120発もの
ミサイルの同時攻撃を迎撃することは出来ず、また、突撃型駆逐宇宙艦と違って運動性能は大きく劣って
いたためかわす事もかなわず、爆沈して果てた。

通常だったら宙母艦載機の航続距離くらいであれば「ゆうぐも」は容易に高速宙母の存在を探知出来たはず
だった。

しかし、今回、ガミラス冥王星前線基地の副官、ガンツ中佐は高速宙母の回航員であったピラウア少佐から
秘策を授けられていた。

宙母の攻撃半径の足枷となっているのは有人艦載機の航続力が半分しか使えない事であった。

つまり、艦載機は攻撃するための往路に加え、宙母に帰還するための復路に全航続力を別けて使わねば
ならないのだ。

これでは艦隊型駆逐宇宙艦の方がよほど遠距離の敵を攻撃出来ると考えるのが自然であり、ガミラスでも
その考えのもと、宙母は艦隊戦には使わず、惑星制圧戦に使う艦艇として用いられてきた。

しかし、有人である事の融通性の高さを生かす研究は宙母関係者のなかで地道に行われており、ついに
コロンブスの卵的発想が宙母の運用に画期的な道を開いたのである。

それは複数の宙母による機動部隊の結成であった。

しかし、これは単に宙母がかたまって行動するのではなく、一種の艦載機のシャトル運用とも言うべき
用法だった。

1隻の宙母が艦載機の航続距離ギリギリのところで敵に向かって機を発進させて攻撃を行い、機はそのまま
フライ・バイして敵のいる宙域を慣性で脱出、安全な宙域で前もって待機していた別の宙母に攻撃機を
回収させるというものだった。

もちろん、2次攻撃が必要ならば回収した宙母で燃料、推進剤、武装の補給を受けて再度、攻撃をかけ、今度は
出発した宙母に帰れば良いのである。

そして、このフライ・バイ攻撃は訓練を積みさえすれば、ワープの出来るガミラス艦なら最終的には1隻の
宙母で実行可能なものだったが、今回は初回という事もあり、錬度不足の搭乗員や艦艇の乗組員のことを
考えてガンツは機動部隊での運用に絞って作戦を行った。

しかし、それがガミラスに幸運をもたらすとは誰も考えてはいなかった。

*********************************************

ガミラスの放った機動部隊は火星からかなり離れてはいたが攻撃機を回収する役割の高速宙母は火星よりの宙域にいた。

いくらガミラスの軍人が精神力を鍛えられているとはいえ、自分の搭乗している艦載機が燃料切れを起こして
慣性航行に移った時、何も無い無の空間を目指して飛ばざるをえなくなるのは避けたい事だったのである。

このため、「ゆうぐも」を攻撃した6機の攻撃機は火星を目指して飛ぶ様に作戦行動が決められていた。

比較的火星よりの宙域でもう1隻の高速宙母は20機の攻撃機を回収する作業を始めた。

有重力下での空母への着艦作業は海上に浮かぶマッチ箱に降りる様だと形容される様に難しい物の代表の
様に言われるが、無重力下ではランデブーして着艦アームを宙母が伸ばして艦載機を艦内に引き込めば
済むのである。

着艦の順番待ちの時にも事故の起きる確率は有重力下の時に比べれば格段に少なかった。

だが、いくら離れているとはいえ、この宙域は完全に地球軍の勢力圏内である。

高速宙母は艦載機の回収作業を進めつつも、火星方面にいるであろう地球軍の動きに気を配っていた。

着艦待ちをしている機のパイロットも警戒措置の一環として火星の表面を機載の偵察用望遠モニターで
観察していたが、その結果、驚くべき事が解かった。

「ゆうぐも」が撃沈されても、さすがに直ぐには次の駆逐宇宙艦は姿を表さなかったが、高速宙母が初めての
作戦で艦載機の回収に手間取って時間が掛ってしまっていると次の駆逐宇宙艦が姿を表した。

地球軍もいつまでも遊星爆弾の脅威に耐えられなかったからであった。

ある意味、かつてシュルツがヨルクに圧力を掛けて実施させた遊星爆弾示威攻撃の恐ろしさが地球陣営に
染み渡っていたといえる。

しかも彼は単に次の迎撃任務に就く駆逐宇宙艦を発見しただけでなく、その発進基地をも見つけたのだ。

それは火星最大の火山であるオリンポス山の麓にある、宇宙艦発進口であった。

しかし、高速宙母の艦長は慎重だった。

もう1隻の高速宙母も呼び寄せると2隻で連携して詳細偵察行動に入った。

その結果、地球軍の火星基地は死火山であるオリンポス山の地下深く、既に冷えて固まったマグマ溜まりに
出来た大空間を利用して作られている事をも突き止めた。

これは元々、高速宙母が戦略強行偵察任務を重要な任務として設計されており、強力な探知装置を幾種類も
持っていたから出来た事であった。

オリンポス火山の標高は25,000mもある。

マグマ溜まりにある空間の上の岩盤の厚さはそこまでは無かったが、流石に高速宙母の艦載機の攻撃力では
分厚い岩盤に守られた地球軍の火星基地には手が出せなかった。

そこでガミラスの機動部隊は一度、冥王星前線基地に帰り、シュルツやガンツと戦略を練り直す事にし、
すぐさまワープに入ると火星宙域を後にしていった。

**********************************************

機動部隊が持ち帰った地球軍の火星基地に対する情報はシュルツやガンツ、冥王星前線基地、首脳部を
色めきたたせた。

木星圏のプラント奪取はかねてからの計画であってが、火星にこれほど大規模な防衛拠点が設けられていた
とはガミラスにとって大問題であり、この拠点を潰さない限り、遊星爆弾による戦略核攻撃はおろか、
地球を艦隊で襲撃したとしても背後を突かれ、苦戦する羽目に陥るのは目に見えていたからだ。

普段はあまり声を掛けられない作戦スタッフや技術将校も含め、大規模な作戦計画が練られていった。

「なんだい、この無茶苦茶なスケジュールは! 1日で20個の遊星爆弾を発射しろって司令部は何を考えて
いるんだい、一体!」
ガミラスの遊星爆弾発射用の施設では下士官が理由も聞かされずに押し付けられたノルマに悲鳴を
あげていた。

しかも、地球軍にこの作戦がある事を悟られぬために、無駄と判っていても1日、1基の遊星爆弾攻撃は
休まず続けられていた。

また、技術部や前線工廠でも新しい作戦に向けて新装備の開発・製造が急ピッチで推められていた。

開発とはいっても、遊星爆弾の軌道修正用補助エンジンとその制御システムであり、冥王星前線基地の
技術レベルでも充分対応出来る物で更にその製造数も量産という程の数ではなかったので前線工廠で数は
揃えられた。

突貫工事の末、この新作戦、「地球のたそがれ」の準備が出来たのは地球時間で7日後だった。

まず、その先遣として再び高速宙母2隻で編成された機動部隊が発進していったが、シュルツは機動部隊の
活躍に気を良くし、それがまるで自分の案だったかの様にガンツに得意そうな顔を見せた。

ガンツは<やれやれ、またか・・・。>と思ったが大事の前の小事と感情を顔に出さない様に極力、努めた。


「ガミラス艦出現! 距離10万! 数は2隻! 例の新型艦です。」土星宙域で警戒に当たっていた
早期警戒艦「シドニー」はガミラスの機動部隊を捕らえた。

「新型艦? 木星会戦の時、目撃したあの艦か? あれは戦略偵察艦だろう・・・。 それが何故、艦隊を
組んでいるんだ?」
「シドニー」の艦長は高速宙母と1度、会敵していたが、あの時は艦載機を使わなかったので、
それが宙母だとは想像も出来なかったのだ。

それに火星軌道で艦隊型駆逐宇宙艦「ゆうぐも」が撃沈された時に得られた情報では攻撃してきたのは
ガミラスの小型無人攻撃機だという事だった。

地球軍はまだ本格的な宙母を運用した実績がなく、シャトル運用という考えがなかった。

従って「ゆうぐも」を撃沈したのが高速宙母から発進した有人攻撃機であるとは考えもつかなかったのである。

もし、艦載機のシャトル運用という考えがあれば、攻撃機の飛来方向ばかりを探査して、進行方向を探査せずに
何の手掛かりも得る事が出来ない、しかも敵の攻撃機の回収作業が火星宙域で行われていたにも係わらず、
それに気付かないなどという無様な事にはならなかいで済んだはずであった。

だが、早期警戒艦「シドニー」の艦長は古参のベテランであった。

ガミラスの艦隊の正体が機動部隊である事までには気が付かなかったが、戦略偵察艦が行動しているという
事は敵が大きな作戦を計画している証であると考えたのだ。

「シドニー」は早期警戒艦である、通常の巡航宇宙艦とは比較に成らない探査能力を持っていた。

対してガミラス高速宙母は船体下面に偵察用探知装置が集中して装備されており、船体上部にある
航行用コスモ・レーダーの探知範囲や精度は駆逐型デストロイヤーとほとんど変わらなかったので
地球の早期警戒艦に目を付けられている事には気が付かなかった。

「シドニー」はガミラス機動部隊が充分遠ざかると探知情報を地球防衛軍司令部へ送り、ガミラス軍大作戦
行動に対する警告を送った。

                                                    ヤマト発進まで1278日
[PR]
by YAMATOSS992 | 2012-05-27 21:00 | 本文 | Comments(0)