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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

16.火星基地攻防戦(2)

 「土星宙域にいる早期警戒艦がガミラスの戦略偵察艦がこちらに向かっているとの情報を送ってきました。」
情報士官が参謀本部に報告した。

参謀本部長、伊地知少将はその報告を聞くと地球衛星軌道上にいる突撃駆逐宇宙艦隊に迎撃を命じた。

彼はガミラスが戦略偵察を行うとしたら地球本土上陸作戦の兆しと決め付けていたのだ。

地球衛星軌道上に配置された突撃駆逐宇宙艦隊は本来、遊星爆弾迎撃の最後の砦だったのだが、
だからと言ってガミラスの戦略偵察を許す訳にはいかなかった。

第5宙雷戦隊と呼ばれるその艦隊の指揮官は古代守少佐だった。

彼はこの任務のため、木星会戦には参加出来なかったので敵艦来襲の報に喜び勇んで飛び出して行こうと
した。

だが、そんな彼に待ったを掛ける男がいた。

「慌てるな。 坊や、 何処に行けばいいのか、本当にわかってるのかい。」血気に逸る古代少佐に声を
掛けたのは地球近傍の宙域の哨戒を担当している早期警戒艦「たかお」の艦長、永倉大佐だった。

「このまま、最後に観測された位置の方向に真っ直ぐ突き進めば出会うんじゃないですか?  大佐。」
古代はムッとして応えた。

「だから若いって言うんだ。 相手はワープ出来るんだぞ。 一直線に来るとはかぎらん。 いや、本気で
地球本土を戦略偵察する気なら冥王星方向から真っ直ぐ来る様な真似はせんよ。」

確かに永倉大佐の意見はもっともだった。

<しかし、それなら俺は何処へ向かえば良いんだ?>古代守は当惑した。

「その為に、俺たちがいるんだよ。  今、地球は月基地と2隻の早期警戒艦がつくる三角形の警戒網を
作っている。

ガミラスの戦略偵察艦がどの方向から来ようとこの警戒網には必ず引っ掛かる、だからその情報に従って
迎撃すれば良い。

幸い、今、来ているのは偵察艦だ。 迎撃するのは2隻の突撃艦で充分だ。 本来はやりたくないが君の
艦隊を3つに別けてそれぞれの警戒艦や基地の指揮に従えば確実に迎撃出来る。」永倉大佐は古代に戦術を
授けた。

早速、古代は配下の突撃艦を3分隊に別けて各早期警戒艦と月基地の配下に置き、偵察艦の襲来に備えた。

しかし、実際は全く違った方向に戦局は動いていったのだった。

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 火星のオリンポス山地下大空洞を利用して作られた地球防衛艦隊秘密基地は土星宙域にいる早期警戒艦
「シドニー」からの情報に緊張が走っていた。

しばらくぶりに遊星爆弾の大量投射が観測されたのだ。

その数、10基、もはや艦隊型駆逐宇宙艦、1隻で対処出来る数ではなかった。

幸い、10基の遊星爆弾は固まって飛来してきている、これならば反物質弾頭を付けた大型ミサイルで
迎撃すれば1、2基は破壊、その他は大きく機動をそらせる事が出来る。

火星の衛星フォボスの近傍にあったミサイル工廠から反物質弾頭大型ミサイルが発射され、
艦隊型駆逐宇宙艦「あさぎり」によって誘導、飛来する遊星爆弾を迎撃した。

しかし、「シドニー」は更に10基の遊星爆弾、投射を観測した。
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「ガミラスめ、何を焦っている・・・。」火星秘密基地の司令、鴨志田少将はガミラスが遊星爆弾による
戦略核攻撃を本格化させたものと考え、フォボスのミサイル工廠に更に1基の反物質弾頭大型ミサイルの
用意をさせた。

だが、この遊星爆弾攻撃はいままでの地球に対する戦略核攻撃ではなかった。

2投射目の遊星爆弾群が木星軌道に到達した時、浮遊大陸哨戒基地から発進して遊星爆弾群を待っていた
ガミラス駆逐型ミサイル艦が遊星爆弾を先導するかの様に同速で航行し始めた。

また、そのころ、火星軌道では「あさぎり」が遊星爆弾迎撃の最終工程に入っていたが、ガミラス機動部隊も
また、作戦位置に付き、攻撃機を発艦させていた。

そして「あさぎり」は遊星爆弾群、第1陣の破壊・ミス・リードをさせる反物質弾頭大型ミサイルを命中させる
一歩手前で撃沈されてしまった。

もはや、火星軌道周辺で遊星爆弾、第1陣を防ぐ事は出来ない。

すぐさま、火星秘密基地から地球へ遊星爆弾迎撃失敗の報が飛ぶ、戦略偵察艦の迎撃のために地球
衛星軌道上に展開していた古代守の第5宙雷戦隊は再集結し、冥王星方向へ向けて発進していった。

そのころ、火星では「あさぎり」が撃沈されてしまったものの、遊星爆弾、第2群10基の迎撃をやめるわけには
いかなかった。

また、次の誘導用艦隊型駆逐宇宙艦の発進はとても間に合わない状況だった。

そこで、位置を知られる恐れを犯して早期警戒艦「シドニー」が反物質弾頭大型ミサイルの誘導を引き継ぐ事に
なった。

フォボスのミサイル工廠から長いプラズマ炎を引いて大型ミサイルが発射されていく、だが、ガミラスはこの時を
待っていたのだ。

前回の火星基地、詳細偵察時、遊星爆弾迎撃用大型ミサイルの発射ポイントは発見出来なかった。

そして、論理上、宇宙空間で利用する物をわざわざ重力井戸の底である惑星上で製作、運用するとは
考え難かったため、ガミラス冥王星前線基地の首脳陣は必ず、ミサイルの組み立て発射基地は火星衛星
軌道上にあるとふんでいた。

だから、今回の時間差攻撃はその位置を確かめ、攻撃する意図も含んでいたのである。

土星宙域に陣取っていた早期警戒艦「シドニー」は撃沈された「あさぎり」に変わって反物質弾頭大型ミサイルの
誘導を引き受けるために、全速力で木星宙域に入っていった。

しかし、その姿は木星の浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇に発見されてしまったのである。

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「ミサイル、遊星爆弾群の衝突コースに乗りました。 あと20分後には命中します。」戦術士官の報告に
「シドニー」の艦長はホッと胸をなでおろした。

「良かった、なんとか間に合ったぞ。このポンコツも捨てたもんじゃないな。」艦長はコンソールをポンと叩いた。

その時である、「シドニー」の船体が大きく揺れた。

「どうした!探査主任!」艦長が呼ばわった。

「ガミラス艦・・・だと思われます。 ただ、今までのガミラス艦とは違い、異様に小さいです。」探査主任は
当惑していた。

元々は軽巡航宇宙艦だった「シドニー」は小ぶりだとはいえ、100mを超える全長を持つ、それに比べ、今、
攻撃してきたガミラス艦は小型で有名なゆきかぜ型突撃駆逐宇宙艦より更に小さい直径50mの円盤型を
した艦だった。

いや、もはや、このサイズになると艦というより、艇、ボートのレベルでしかない。

この船は木星の浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇であった。

しかも武装はほとんど持っていない、彼等は車両の出入り口を開け、そこから搭載している戦車の砲を
撃ってきたのだ。
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「見敵必戦か、敵ながら見上げた根性だな。」艦長はそのパトロール艇の戦意を称えた。

「だが、攻撃してくる者を黙って見過ごす事は出来ない! 主砲で反撃しろ!」

「シドニー」は軽巡航宇宙艦だったころから6インチ連双フェーザー砲塔3基と軽武装だった。

早期警戒艦に改装するにあたり、武装は最小限度の6インチ連双フェーザー砲塔1基に減らされていた。

だが、今、相手にしているパトロール艇はその位の軽武装でも充分だった。

「シドニー」のフェーザー砲2連射でパトロール艇は沈黙した。

その時である戦術士官が慌てて報告した。

「大変です。 遊星爆弾の軌道が大きく変わりました。」

「何! 迎撃が成功した訳ではないのか!」

「はぁ、迎撃用反物性弾頭大型ミサイルは爆発せず、そのまま外宇宙に向けて遠ざかっていきます。」

「遊星爆弾の新しい軌道を計算しろ!直ぐにだ!」艦長は嫌な予感を感じていた。

「大変です!遊星爆弾群の新しい目標は火星、オリンポス山です!」

「何! それでは本当の目標は火星の前線秘密基地だったのか!」

「直ぐに火星基地に警報を伝えろ・・・、」艦長がそこまで言った時、沈黙していたパトロール艇が最後の力を
振り絞って搭載戦車の砲を「シドニー」の機関部に打ち込む事に成功した。

「シドニー」は警報を発する事が出来ないまま爆沈した。

ガミラス・パトロール艇の搭載戦車の砲塔の中でも名も無いガミラス兵が微笑んだまま息絶えていた。

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 2投射目のガミラス遊星爆弾群10基が木星軌道で大きく軌道を変えたのは普通の遊星爆弾とは違い、
軌道修正用の補助エンジンとその制御装置とプログラムを積んでいたからだ。

そして、1隻の駆逐型ミサイル艦がそれを使って地球直撃軌道から火星、オリンポス山に目標を変更する様、
軌道を変えたのだ。

「シドニー」の哨戒をあてにしていた火星前線秘密基地は自らのコスモ・レーダーに遊星爆弾群を感知するまで
その奇襲に気が付かなかった。

いや、感知しても遊星爆弾攻撃は地球に向かってなされるものとの固定観念が混乱を生み、何も出来ない
まま、遊星爆弾10基の集中爆撃を受けてしまった。

火星の運行軌道が変わるかと思われるくらいの大爆発がおさまるとオリンポス山のあった場所には巨大な
クレーターが口を開けていた。

それは地球軍が基地にしていた地下の冷えて固まったマグマ溜まりの上に出来ていた大空洞が完全に
潰れた事を表していた。

そして、死火山だと思われていたオリンポス山の地下深くにはまだ溶けたマグマ溜まりがあり、そのマグマが
噴出して巨大なクレーターの中に流れこんで火星秘密基地、壊滅の最後の仕上げをした。

この作戦の最後の仕上げとして、遊星爆弾を誘導した駆逐型ミサイル艦と高速宙母は共同して火星の衛星、
フォボス近傍の空間にあった、地球軍の遊星爆弾迎撃用大型ミサイルの建造・発射基地を叩き、壊滅させる
事に成功、意気揚々と冥王星に引き上げていった。

対する地球陣営には重苦しい空気が流れていた。

遊星爆弾攻撃を防衛する出城的な役割の火星秘密基地が叩かれたのだ。

そして、地球軌道上の突撃駆逐宇宙艦による防衛はやはり完全ではなく、10基の遊星爆弾の内、3基の
阻止に失敗していた。

「申し訳ありません。 我々がもっとしっかりしていればこんな事には・・・。」古代守は司令部で藤堂長官、
沖田少将、伊地知少将に頭を下げていた。

今回の遊星爆弾、3基は陸地ではなく、大西洋に固まって落ちた、その結果、200mの高さを超える大津波は
大西洋沿岸の大陸や島、その全ての表面を洗い流し、不毛の土地としていた。

幸い、1発目の示威で行われた遊星爆弾攻撃の結果、地表は「核の冬」を向かえていたので人類はその殆どが
地下に生存の場を求めて移住していた。

このため、人的被害は最小限度に食い止められたが、それでも億を大きく超える人命が失われた。

「古代少佐、悔やんでも始まらん。 我々の迎撃システムには大きな穴がある様だ。 君一人の責任ではない、
あまり自分を責めるな。」藤堂長官は古代守の前に進むとその肩に手をおいた。

「しかし・・・。」何か古代が言いかけると今度は沖田少将がそれを制した。 そして、もう行け、と合図した。

古代は海軍式の敬礼をすると自分の艦へ帰っていった。

それを見送った藤堂と沖田は伊地知少将の方に向き直った。

しばらく嫌な沈黙が3人の間に流れた。

早期警戒艦「シドニー」が戦略偵察艦の艦隊という有り得ないものを発見した時点で司令部まで報告が
上がっていればもしかしたら結果は違っていたかもしれない・・・、そうした思いが藤堂にも沖田にもあった。

伊地知少将の独断専行が生んだ悲劇なのかもしれなかった。

だが、沖田は黙って首を振った、あの戦略偵察艦の任務が何だったのか、未だに判っていない、
そして「朝霧」を攻撃した攻撃機がどこから来たのかも不明だ。

ガミラスに遊星爆弾の軌道を大きく変更する能力がある事も判った。

早期警戒艦と突撃駆逐宇宙艦の組み合わせだけで遊星爆弾を迎撃し切れるだろうか・・・。

沖田はこれから続くであろう、長く苦しい戦いを思った。

だが、わしは決して諦めない、ガミラスを太陽系から放逐するまで決して諦めない!と決心を新たにするので
あった。

                                                   

                                                    ヤマト発進まで1277日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-28 21:00 | 本文 | Comments(0)