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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

18.地球圏制宙作戦

シュルツは今月の遊星爆弾命中成績表を見て渋い顔をした。

「ガンツ、地球側の遊星爆弾迎撃施設や迎撃基地を殆ど叩いたと言うのに60%の命中率だというのは
どういう訳だ。 命中率が悪すぎるぞ! 現場がたるんどるのではないか?」

「司令、今、遊星爆弾を発射している現場の技術は芸術的なものに育っています。

それこそ、フェーザー砲で隣りの敵艦を撃ちぬく位の精度です。

命中率が悪いのは悔しいですが、地球側の迎撃が的確だからです。

浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇が得た情報によると地球側は衛星軌道上に新型駆逐艦を
常駐させ、遊星爆弾の飛来とともに行動、迎撃している様子が観測されています。

ですから、この軌道上の駆逐艦群を叩く必要があると私は思います。」ガンツは再び地球圏の奥深く、
艦隊を送り込む作戦を提示した。

「確かに、この駆逐艦隊は排除する必要があるな。 だが、前の様にこの艦隊は地球本土に基地を
持っているのではないか?

だとしたら、その基地も叩かないと結局、いつまでもイタチゴッコでケリはつかないぞ!」

ガンツはゴクリと唾を飲み込んだ、敵本星に対する攻撃、それもまだ、戦力を大きく残している相手に
対する攻撃だ。

こちらもある程度の損害を覚悟しなくてはならない。

木星会戦並の戦闘規模になる事が予想された。

ガミラス艦隊は再建されてはいたが、シュルツの直接上司のゲールは今度、艦隊を大きく傷つけたら
シュルツやガンツを許さないであろう。

土星会戦、木星会戦、地球ー木星間の通商破壊戦、土星ー冥王星間の交通保護戦、どれも少なからず
艦隊に損害をだしたが指揮していたのは生粋のガミラス人であり、名将の誉れ高い、レッチェンス大将だった
から許された損害だったのだ。

もし、仮にゲールが許してもガミラス大本営は殖民星であり、被征服星であるザルツ出身の兵で固められた
冥王星前線基地そのものを無能者の集まり、サボタージュをする反逆者としてシュルツやガンツのみならず、
1兵卒にいたるまで処分する恐れが高かった。

「何を青い顔をしている。 お前は今はガミラス軍人だが、誇り高いザルツ軍人でもあるのだぞ! 
ガミラス人みたいな顔をするな」 シュルツはガンツをからかった。

「ですが、司令、敵の本拠を突くのですぞ!こちらの損害もただでは済みません!」ガンツは焦っていた。

「果たしてそうかな?」シュルツは机に両肘をついて掌を顔の前で組んだ姿勢のまま言った。

「ガンツ、お前がガミラス本星、大本営に勤めていたとして、もし、いきなり、少数の艦載機による攻撃が
あったらどうする?」 そう言うとシュルツは悪戯っぽく微笑した。

ガンツは質問の意味が解からず当惑したがそれでも精一杯の知恵を絞って答えた。

「防空隊に迎撃を命じますが・・・。」

「それだけか?」 シュルツがたたみ掛けるとガンツは慌てて付け加えた。

「艦載機の母艦を捜させ、それも排除、撃沈します。」

シュルツはウンウンと微笑しながら頷いた。

「では、話を変えて、もし、攻撃されたのがこの冥王星前線基地だったら、どうする?」

「この基地は浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇が木星軌道から土星軌道を固めています。

更には、深宇宙方面にも警戒艦を常備配置しているのでその様な奇襲を受ける事はありません。

充分な時間を持って艦隊で迎撃する事が出来ます。」

ガンツは何を当たり前の事を今更聞くのかとシュルツの真意を図りかねた。

「そうだろう、意外と心臓部の警戒は薄いものだよ。  奇襲があってから対応する羽目になる、これは
大ガミラスとて変わらん、

たぶん、今までの戦いぶりからして地球軍も前線にいる部隊は勇猛果敢だが、戦線後部にいる連中は
その場、その場の対応しか出来まい。」

シュルツがそう思ったのは火星の地球軍秘密基地を攻撃した時だった。

自分達が攻撃しているのは地球を狙う遊星爆弾だという、固定観念があり、遊星爆弾で自分達が
攻撃された時、その攻撃の意味が判らず、何も出来ないまま、遊星爆弾の集中爆撃を受けて火星秘密基地は
崩壊したのだ。

「では司令、今回の作戦、もう腹案があるのですね。」ガンツは今までとはうって変わったシュルツの積極的な
対応ぶりに何があったのだろうと訝りながらも喜びを隠し切れなかった。

「うん、それでだな・・・。」シュルツはガンツに作戦計画の腹案を話し始めた。

そして、新作戦の準備として、再び戦略偵察の任をおびて高速宙母が2隻、発進して行った。

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 高速宙母は地球に接近するにあたり、ワープを最大限に用いた。

幸いな事に宇宙空間を航行する艦艇と違って天体は規則正しい法則に従って太陽の周りを自転しながら、
公転している。

その未来位置を計算するのは容易だった。

だから、2隻の高速宙母は1隻は北極上空へ、もう1隻は南極上空へワープ・アウトした。

木星会戦の時のガンツ隊の様な大気圏上層ギリギリを狙う、危ないワープではなく、大気圏から充分に離れた
余裕を持ったワープ・アウトだったが、それでも地球の早期警戒網は2隻の宙母を探知出来なかった。

シュルツの言うとおり、地球の目は冥王星方向からくる遊星爆弾に向いており、自らの早期警戒網の
ど真ん中にガミラス艦がワープ・アウトする事態など全く、考慮していないのは明らかであった。

古代守に「ガミラス艦はワープ出来る事を忘れてはならない・・・。」と注意した早期警戒艦「たかお」の艦長、
永倉大佐ですら、ガミラス艦は地球の早期警戒網の外にワープ・アウトしておもむろに警戒網を潜って
潜入すると言う固定概念を持っていた。

その結果、やすやすと地球の両極の上空に専位した2隻のガミラス宙母はその艦載機、42機を放った。

ガミラス高速宙母の艦載機の定数は1隻あたり、攻撃機、20機、偵察機1機であったが、今回はその艦載機の
全てを偵察機にして短時間で地球の地表をくまなく偵察する計画であった。
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しかし、いくら不意を突かれたとはいえ、地表の上空を多数のガミラス機に蹂躙されたままでいるのは
地球防空隊にとって耐え難い事であり、緊密な連携は出来ないものの、各地で防空隊がスクランブルを
かけてガミラス偵察機の迎撃に上がってきた。

だが、その時点でガミラス偵察機の任務は殆ど終わっており、偵察結果も自らの母艦にデータ送信した後で
あった。

ガミラス宙母はデータを回収し終わると、地球防空隊に追いかけ廻される偵察機を見捨てて離脱にかかった。

偵察機の機上ではガミラス・パイロット達が皆、一律に離脱する宙母の方を向いて敬礼していた。

そう、彼等は地球防空隊に追い掛け回されているのではなく、防空隊を宙母に向かわせない様、引き摺りまし
ていたのだ。

離脱する宙母の艦長の目には涙が浮かんでいた、これは全て予定の行動だったのである。

宙母2隻は帰りがけの駄賃として月の周りを1周して最後の偵察データを取るとすぐさま、ワープに入り、
地球圏を脱出していった。

そして、宙母が月軌道に達した頃を見計らって生き残っていたガミラス偵察機は一斉に自爆した。

これは地球人に偵察機が有人機ではなく、無人機であると思わせ、偵察に来たのが宙母で編成された
機動部隊である事を隠蔽するためであった。

ガミラスにとって有人航空兵力の有用性が前2回の戦闘で明らかになったための隠蔽工作であったが、
折角育てた有能なパイロットを犠牲にする今回の様な作戦はさすがにガミラスでも問題視され、偵察機を
無人化する方向で新たなる開発が行われる事となった。

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 ガミラス冥王星前線基地は木星会戦の時の様な喧騒を再び迎えていた。

42人の勇士の命と引き換えに得られた地球本土及び月面上の遊星爆弾迎撃設備や駆逐宇宙艦の
発進基地を叩くのだ。

ただし、今回の出撃の主役は駆逐型ミサイル艦であった。

駆逐型デストロイヤーは艦隊戦では大きな力を発揮するが、こと地表の拠点攻撃などにはかえって
駆逐型ミサイル艦の方が向く。

もちろん、駆逐型デストロイヤーも作戦には参加するが、あくまでも主役は駆逐型ミサイル艦であり、
駆逐型デストロイヤーはその支援、といえば聞こえは良いが、とどのつまり護衛をする事になってしまった
のである。

これは普段の艦隊戦の時とは立場が逆転しており、護衛艦を戦艦で護衛する様なものであった。

駆逐型デストロイヤーの艦長達は面白くなかったので士官食堂で酒を飲んでくだを巻いていた。

そこにガンツ中佐が入って来た。

酒をのんでいた連中はガンツの姿を見つけるとその周りを取り囲んで愚痴を言った。

最初は受け流して自分の食事をしていたガンツであったが、一人の艦長が「あんな小船共に何が出来る!」と
言った所で立ち上がり、その男の顔をしたたかに殴った。

たちまち、男は吹っ飛び、机や椅子をなぎ倒して倒れた。

「やりやがったな!」くだを巻いていた男達は一斉にガンツに飛びかかろうとした。

「ついてこい!」ガンツは普段、柔和な、場合によっては頼りなくさえ見える風采の上がらない男であったが、
今、男達の前にスックと立った姿はそんな雰囲気は微塵も無い、叩き上げた軍人の姿だった。

ガンツはそれ以上、何も言わず、歩いてゆくと、エア・ロックの前で簡易宇宙服を身に着け始めた。

艦長達が躊躇しているとお前たちも付けろと無言でうながした。

一行がエア・ロックを出て基地の片隅に行くとそこは墓地だった。

今までの戦闘で戦死した勇士を葬っているところだ、もっとも、戦場は宇宙なので遺体も遺品もなく、
ただ名前だけがそっけない金属板に刻まれているだけだったが・・・。

ガンツはその巨大な金属の墓碑ではなく、その隣りの小さい墓碑の前に止まると姿勢を正し、最敬礼をした。

一人の艦長がその墓碑に書かれている言葉を読んで、「あっ!」と声を上げた。

そこには、42名ものガミラス兵の名前とその所属が高速宙母航空隊である事が記されていた。

それは、帰還を期さない今回の偵察任務に殉じたパイロット達の墓碑であった。

作戦行動の準備で基地中が喧騒の中にある時、この様な墓碑を作っている暇などあろうはずがない・・・。

「そうだ、これは彼等が自分達で残していったものだ。 お前達も艦長を任されている身だろう・・・。
 これに恥じない行動をとれ!」

ガンツは一喝するとそのまま後も見ずに基地の屋内に戻っていった。

ヘルメットは彼の息で曇り気味であり、中は良くみえなかったが、ガンツの頬には確かに涙の跡があった。

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 木星空域には撃沈された早期警戒艦「シドニー」に変わって、欧州連合の早期警戒艦「ドーセットシャー」が
任務についていた。

「ガミラスめ、調子に乗りやがって、遊星爆弾の投射数を増やしてきやがった。」情報士官が独り言の様に
いった。

「どうした、ジョー、また遊星爆弾を探知したのか?」 艦長が問いただした。

「ええ、今までの最大投射数を遥かに越えます。 今のところ約20発ですが、次々と新しい遊星爆弾が観測出来ます。

途切れる様子はありません。 これは地球圏にいる突撃型駆逐宇宙艦のみならず、艦隊型でも、さらに
旧式な艦でも総動員して迎撃しないと間に合わないかもしれません。」

「何! それはまずい、直ぐに防衛本部へ警報とデータを送れ!」 艦長がそう命令し、送信が終わるのを
待っていた者がいた。

浮遊大陸哨戒基地からやって来ていたパトロール艇である。

パトロール艇の艇長は「ドーセットシャー」の警報とデータ発信が終わるのを待って早期警戒艦でも
探知出来ない遥か遠方で待機していた地球圏奇襲艦隊に出撃開始の合図を送った。

次の瞬間、「ドーセットシャー」はガミラス艦隊の只中にいた。

早期警戒艦「ドーセットシャー」は元々、重巡航艦であり、連双フェーザー砲塔を4基持っていたが、
早期警戒艦に改装するにあたり砲塔2基を降ろして、探知設備設備を増強していた。

しかし、ワープの出来るガミラス艦は「ドーセットシャー」が探知出来ない遠方からパトロール艇に誘導されて
ワープ・アウトすると同時にフェーザー砲の槍ぶすまを「ドーセットシャー」に浴びせた。

ただでさえ、地球艦はガミラス艦のフェーザー攻撃に弱い、しかも古いタイプの巡航艦はいかに重巡と言えども
戦艦より大幅に防御力が劣る。

たちまち、「ドーセットシャー」の戦闘能力は奪われた。

しかし、丁度、「ドーセットシャー」の第1砲塔の真前に駆逐型ミサイル艦が1隻、差し掛かってしまった。

駆逐型ミサイル艦の装甲は薄い、地球の弱いフェーザー砲でも撃ち向ける位であった。

「ドーセットシャー」の生き残り砲塔員はその幸運に感謝しつつ、最後の力を振り絞って駆逐型ミサイル艦に
1撃を浴びせた。

だが、その時、ミサイル艦を護衛していた、駆逐型デストロイヤーが1隻、2隻の間に割り込んだ。

「ドーセットシャー」と駆逐型デストロイヤーは本当に舷側を擦るほど接近していた。

ここまで接近すると、いくら弱いといってもフェーザー砲である、駆逐型デトロイヤーは装甲を打ち抜かれて
しまった。

ただ、その駆逐型デストロイヤーにとって幸運だったのは打ち抜かれたのが居住区だった事で、開いた穴は
直ぐに隔壁を閉鎖する事でそれ以上のダメージを負う事はなかった。

助かった駆逐型ミサイル艦の艦長は直ぐに自艦を身を挺して救ってくれた、駆逐型デストロイヤーに感謝の
通信を送った。

「なあに、何時もは君等に守ってもらっている身だ。 たまには立場が逆転する事もあるさ。」

駆逐型デストロイヤーの艦長は笑って応えたが、その頬にはガミラス式の絆創膏が貼られていた。

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シュルツの予想通り、地球本土の防空はザルであった。

今、地球側の迎撃部隊は全て冥王星方面から飛来する30数個の遊星爆弾に注意を奪われ、月軌道内、
地球絶対防衛圏内へワープ・アウトしたガミラス艦隊に気が付かなかった。

ガミラス艦隊の内、駆逐型ミサイル艦40隻が地球本土に、10隻が月面に攻撃に向かった。

また、駆逐型ミサイル艦を護衛してきた5隻の駆逐型デストロイヤーは遊星爆弾迎撃に向かって待機していた
駆逐宇宙艦隊に背後から襲い掛かり、それを全滅させると地球衛星軌道上にある人工構築物を手当たり
次第に破壊した。

1時間後、地球の表面に露出していた宇宙船基地は一つ残らず破壊されていた。

月面の裏に設けられていた駆逐宇宙艦基地も同様だった。

そして、最後の仕上げは囮として発射された遊星爆弾30数個であった。

この遊星爆弾群は地球の迎撃駆逐宇宙艦隊を誘き出すのが主任務であったが、迎撃されなければ
地球表面地下に設けられた地下ドックの類を爆撃する様、プログラミングされていた、辛うじて残っていた
地下ドックや基地も破壊しつくし、このガミラスの制宙作戦(ファイター・スイープ)はまるで軍事教本に出て来る
課題の様に完璧に行われたのだった。

だが、そんなガミラスも大きな見落としをしていた。

それは月の表側(地球から見て)にあった地下工場施設を見落とし、破壊し損ねた事である。

多分、ガミラスにしてみれば、常に外側を向いている月の裏側(地球から見て)こそ、艦隊基地であり、
地球圏防衛の要だと考えたのだろう、攻撃前の戦略偵察の時、一応、月の表も偵察していたのだが、
艦隊基地がないと解ると、攻撃目標から外してしまったのだ。

また、月の裏側には廃艦駐機場があり、それがいかにも艦隊基地に所属する大駐機場に見えたのかもしれ
ない。

ともあれ、地球は何もかも失うと言う最大の悲劇だけは避ける事が出来たのだった。



                                                     ヤマト発信まで833日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-30 21:00 | Comments(0)