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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

19.脱出戦艦「やまと」型試案

 「技官、あの人は一体、いつまでここに居るつもりでしょう?」 真田は秘書役の女性士官にたずねられたが、それは彼にも解らなかった。

大山造艦技術大佐は真田に見せられた捕獲したガミラス艦のエンジンの解析に掛りっきりになっていたのだ。

それも食事も睡眠もエンジンの脇でとり、1日15時間は働いていたであろう、幾ら、ここが秘密保持が厳密な
軍技術部であってもここまであからさまに調査、解析をやられてはガミラス艦の秘密を技術部が握っているのを
宣伝している様なものだった。

<もう、2週間になるものな・・・。好い加減に一度、打ち切ってくれないものかな、奴だって休暇は1週間だった
はずだぞ?

伊地知参謀長が捜しまわっていなければいいが・・・。> そう考えた真田は大山に一度、解析を中断させる
ためにガミラス艦のエンジンが保管してある室に入っていった。

しかし、そこに大山は居なかった、いや、あれほど散らかっていた室は綺麗に片付いており、誰かが
そのエンジンを解体して分析していた後はなかった。

秘書官にたずねたが、彼女も知らなかった。

<まっ、何時もの事だ。 しかし、自分で退去したって事は奴め、何かを掴んだな・・・。>真田は自分が
歯の立たなかったガミラス艦のエンジンの解析を2週間でやってのけた大山の技術に嫉妬に似た複雑な
感情を持った。


 大山が造艦部に返ってくると部下が任せておいた構造計算データを大山のコンピューターに送って来ていた。

その結果を見ると大山は直ぐに部下達を呼び寄せた。

「悪いが機関出力と機関重量はこの数値で計算しなおしてくれ・・・。」 大山は部下達にぶっきらぼうに言った。

設計変更は何時もの事なので部下達は別に気にしなかったが、その数値を見た部下の一人が不審そうに
たずねた。

「大山技官・・・。この数値、間違っていませんか? 重量が 1/4 で 出力は8倍ですよ。 出力/重量比が
32!なんて信じられません!」

大山は悪戯っぽく笑うと一言言った。 「ガ・ミ・ラ・ス!」

それを聞いた部下達は直ぐに全てを悟った。 そして直ぐに自分が果たすべき仕事に向かって散っていった。

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1週間もすると大山の元に計算結果が届き始めた、しかし、それを見た大山は何かに彼が気付いた時の癖が
出た。

髪の毛を掻き毟ってフケを飛ばすのである、当然、彼の机はフケまみれだったが、もう誰もそんな事を気に
するものは居なかった。

彼は腹心の部下である森田技術大尉を呼ぶと「大和」型の主武装を反物性ミサイルからフェーザー砲に
切り替えられないか、相談した。

「フェーザー砲はガミラスに適いませんよ。 やはり、「やまと」の主武装は反物性ミサイルでなければ。」 

森田は否定的だった。

「しかし、森田、反物性ミサイルはいくら資材を積んでも戦闘中は製造が間に合わない、フェーザーなら
エネルギーさえあれば戦闘し続けられるんだ。 幸いエンジンの出力の大幅アップは目処が付いた。 
可能性はないだろうか?」

森田もこの「やまと」型を「箱舟」として使う場合、反物性ミサイルを主武装とする事の非合理性には気が
付いていた。

だが、主武装をフェーザーに変えると言う考えまでは浮かばなかった。

確かにフェーザーに主武装を変更すれば、反物性ミサイルの搭載量を大幅に減らせる、それは何より、装甲を
大幅に増やせる事を意味していた。

沖田提督が言っていた様に、移民の搭載は考えない方針だったので積むべき荷重(ペイ・ロード)は変わらない、だとすれば、装甲を大幅に増やせる事は「やまと」型の生存性を大幅に高める事になるのだ。

森田は大山のコンピューターを借りて新エンジンでのフェーザー砲の出力アップの可能性を計算してみた。

だが、その結果は否定的だった。 ガミラスはどうやって問題を回避しているのか、解らなかったが、地球で
手に入れられる材料でフェーザー砲を作っても今の1.5倍の出力が限界で、それではガミラス戦艦とほぼ
同等の性能にしかならない事が予想された。

しかも、フェーザーの砲としての寿命(命数)は大幅に減る事が解った。

これでは太陽系内での戦闘だけを考え、地球圏での補給や修理が可能であるなら、それでも良かったが、
他星系まで長距離の航行をしなければならない時、この欠点は重大であった。

だが、大山はこの可能性をどうしても捨て切れなかったので、森田に「やまと」型フェーザー主兵装試案を
作る様に命じた。

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 実は大山は元々、「箱舟」計画には反対であった。

だから本心ではガミラス冥王星基地を叩ける性能を持った戦艦を2隻造って戦隊を組ませ、ガミラスを
太陽系から追い出す事を夢見ていた。

しかし、そのままではガミラスによって人類や地球の生命が滅ぼされる事に変わりは無かった。

だからこそ、ガミラスを追い出した後、地球を再生させる、それが彼の意思だったのである。

そんな大山の思いを察してか、森田技術大尉の作ってきた「やまと」型フェーザー砲主兵装試案は驚くべきもの
だった。

前に大山が伊地知参謀長に提示した反物性ミサイル主兵装案と基本的な構造・配置は変らなかった。

細長い船体の中央部に艦橋がそびえ、その前部の甲板ににVLS(垂直発射方式)の反物性ミサイルセルが
並ぶ、前後部の軸線方向に多数のミサイル発射管社が覗き、そして艦底は着陸床を兼ねて最大厚の装甲とし、戦闘時は敵にこの装甲板を向け続けつつ、この装甲の陰から敵に攻撃を加える設計であるのは同じだった。

しかし、森田案では今、地球で製造可能な最大口径18インチのフェーザー砲を3連双2段の砲塔にして2組
用意、それを右舷と左舷に振り分けて搭載、最大厚の装甲ごしに発砲出来る様にしていた。

この配置の場合、装甲を敵に向け続ける限り、前後、左右に死角は存在しない。

当然、反物性ミサイルVLS(垂直発射セル)の数は半分以下に抑えられていた。

この設計は欧州連合の装甲艦、「シャルンホルスト」級と同じ思想であったが、「シャルンホルスト」級は
通商破壊艦として常に戦闘をリードする事を前提としてこの思い切った装甲、武装配置を取っているのに
対し、「やまと」型はなるべく戦闘は避けて脱出するのが使命で戦闘はやむなくするものであったため、
どうしても戦闘は敵にリードされがちになるので大山はこの装甲配置極限案には疑問を持った。

前に自分が反物性ミサイル主兵装案でこの装甲配置極限案を使ったのは反物性ミサイルのVLSを極力沢山
積む為の妥協案だったからだ。

その事を森田に話すと森田は言った。「だからこそ、『やまと』型は2隻必要なのです。 互いに不利な方向を
カバーしつつ、航行する、それがこの案の大前提です。 それと、もう一つ、今までに無い装備があります。」

彼がそう言って指差したのは艦首だった。

通常、今までの地球艦は紡錘形をしていて艦首は尖っていた、しかし、森田の設計では艦首の下半分は
今までの地球艦の様に紡錘形の先端をもっていたが、上半分は大きく花が開いた様に拡がっており、
その中央には巨大な穴が開いていた。

「これは超大型荷電粒子砲です。発射口の部分の内径は2mですが、ロート型に広がった誘導部をその後に
持っています。」

「これは・・・、もしや、敵艦隊に包囲されかかった時、血路を開くための決戦兵器か!」 大山は驚いた。

「ええ、荷電粒子砲は地球では戦闘時、デブリを生みやすい兵器としてここ30年くらい使われなくなって
いますが、狭い宙域ではなく、広い宙域で使用する分にはデブリの発生は何の問題もありません。

また、ロート型に拡がった誘導部でビーム方向をコントロールしてやれば艦隊の様に広がった敵にも
対処出来ます。

12門のフェーザー砲とあわせれば、前方方向の破壊力はガミラス艦を上回ると考えられます。

しかも、2隻同時の攻撃が可能ですから、この戦隊の前に立ち塞がる物はたとえそれがガミラス艦隊と
いえども原子の雲にかえるでしょう。」

大山は森田の案は勝れていると思ったが、既に2隻の戦隊行動を前提としている点に不安を持った。

また、フェーザー砲の妙数が少ない点も未解決のままだった。

総司令部ではたぶん、2隻の戦隊運用か、1隻づつ反対方向に脱出させ、生存率を高める方を選ぶか、
まだ決めかねているだろう。

設計で造艦部が主導権を握る事も考えたが、大山はそうした政治に係わる決断をするのは苦手だった。

彼はもう一人の腹心、荒川技術少佐を呼び出した。

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 真田は後から大山が「これだけ解った。」と言って送ってきた、ガミラスのエンジン解析結果みていた。

さすがの大山もワープの原理や機構までは解析出来なかった様だ、彼はエンジンを小型・大出力化する事を
重点に解析していったのだ。

それが今の「箱舟」計画にまず必要とされる技術だったからだ。

だが、その報告書の中に真田は気になる箇所を見つけた、大山は最初、当然、ワープの秘密を探ろうと
このエンジンの解析を始めたはずだった。

しかし、その報告書の中ではこのエンジンの機構には地球で解っている超光速ワープ理論で理解出来ない
部分はほとんどないと言っていたのだ。

確かに真田が知っている理論物理の分野でもワープは可能とされ、その技術開発をしている内にガミラスの
侵略が始まり、防戦一方の地球軍にはそんな研究をのんびりやっている暇はなかっただけだった。

ただし、このエンジンの持っている理論上のワープ可能距離は数万キロが限度でそれ以上はどう見ても
無理だと大山は結論付けていた。

しかし、現実にガミラスは宇宙の深遠を渡って侵略に来ている、破壊されたガミラス艦から割り出された
航続期間はせいぜい数ヶ月だった。

この矛盾を理解する手段は地球には無かった。

これはガミラス帝国の構造体質に起因するものだったからである。

ガミラスはその歴史上、記録が残る時代から宇宙飛行を行い、近隣の星系に侵略の手を伸ばしていた。

そして、降伏した星を自らの内に取り込む融和政策を採っていた。

しかし、征服された側が何時までも大人しくしているとは限らず、反乱も絶えないのが実情だった。

そんな、いつ裏切るか、解らない連中に強力な決戦兵器を渡せないのは当然だったが、使用させる艦艇にも
制約を設ける必要があった。

反乱軍に駆逐型デストロイヤーはおろか駆逐型ミサイル艦の様な小船でも奪われて束になって襲ってこられ
てはたまったものではない。

そこでガミラスは大型戦艦未満の駆逐型とよばれる汎用戦闘艦は全て1隻では長距離ワープが出来ない様に
設計していたのだ。

1隻でも小ワープは出来るからワープの出来る艦が得意な一撃離脱戦法(ヒット・エンド・ラン)は使える。

しかし、少数の脱走者が1隻の汎用戦闘艦を乗っ取っても遠くに行く前に大ワープの出来る追跡艦隊に
追いつかれ始末されるという訳である。

ガミラスが殆ど単艦で行動せず、常に艦隊を組んで行動しているのには敵に対する威圧の効果もあったが、
こうした個艦能力の制約という面が運用者の心理的な負担となるため、彼等がそれを嫌ったためだとも
言えた。

真田はそんな事は知るよしもなかったが、理論的には可能だが、技術的には無理だという、現実が今度は
彼の技術者魂に火を付けた。

彼は制服の上着を脱ぐと、ガミラス・エンジンが保管してある室に向かって飛び出していった。


                                                     ヤマト発進まで787日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-31 21:00 | 本文 | Comments(0)