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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

21.脱出戦艦「むさし」の最後

地球防衛軍極東司令部の廊下を歩いていた大山造船技官は考え事に夢中で前を良く見ていなかった。

前から美しい妙齢の女性士官が歩いてきていたが、そんなものは目に入らなかった。

しかし、女性士官の方は大山に気が付いた。

服装こそ造船技官らしくきちんとしていたが、その髪はボサボサの伸び放題でその上、時々、頭を掻き毟るものだから辺りにフケをまき散らかしていたからだ。

「大山さん、お久しぶりです。 この前はいきなり技術部から消えたので驚きましたわ。」 女性士官は真田の
秘書だった。

「真田は何処にいる。 教えてくれ!」大山は彼女の挨拶など無視して自分の聞きたい事を聞いた。

彼は重要な用件で真田技官を捜していたのだが、心辺りを捜しても何処にも居なかったのだ。

秘書は悪戯っぽく微笑すると「後で連絡させます。」と言って廊下の先へ消えていった。

大山の鼻先には甘い香りが残っていたが、彼はそれを擦り払うと自分も造船部へ戻って行った。

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その日は真田からの連絡は来なかった。

大山は腹心の一人、荒川技術少佐が提出してきた報告書とデータを何度も読み返していた。

大山は森田の設計した脱出戦艦「やまと」型のフェーザー砲主兵装案を高く評価していたが、
高出力フェーザー砲の寿命が短いと言う問題を解決しろと森田には命じていた。

しかし、本当の問題はそこよりも何よりもガミラス艦が超光速航行が可能で地球艦は亜光速航行が精一杯だと
いう事なのには気付いていた。

いくら武装が強力でも超光速艦と亜光速艦では勝負にならない、今のままでは人類滅亡は必至なのだった。

そこで、彼は自分が捕獲ガミラス・エンジンを調査した時のデータを荒川に送り、再検討させていたのだ。

その結果、荒川はこのエンジン・システムにはリミッターが掛けられているのでは? という推測をして来た。

彼はガミラスの実態を知っている訳では無かったが、このエンジンが単独で発生させる空間婉曲フィールドの
数値はたかが知れているが、複数のエンジンを同時起動した時に生まれる空間婉曲フィールドは相互に
干渉して幾何級数的な数値に増大する事を推測していた。

それは単艦では数万キロの距離しかワープ出来なくても、2艦であれば数十光年のワープが可能な事を
示していた。

後の、1回のワープで千光年の跳躍が可能なイスカンダルからもたらされた波動エンジンの技術に比べれば、
まだカタツムリの歩みの様なワープであったが、現在の地球の技術にとっては飛躍的な進歩であった。

大山は荒川を信じてはいたが、問題が問題である、一人で判断するには大き過ぎると考え、真田と意見交換が
したかったのだ。

<この理論が正しいものならば、是非にとも実験してみる必要がある!>大山は大きな期待に胸を
膨らませていた。

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  そのころ、森田造船技官は18インチ・フェーザー砲の改良という、本来の専門分野から外れた開発命題を
与えられていたが、”餅は餅屋”と割り切って南部重工の技術部を訪ね、その門を叩いていた。

出てきたのは、まだ、20代後半の若者だった。

「技術開発部砲頓兵装課長の南部です。」若者は名刺を差し出した。

「南部・・・。 もしかしたら、社長のご子息ですか?」 森田は驚いた。

「ええ、まあ、そんな所です。 ここにいるのも親の七光りです。 お役に立てるかどうか・・・。」彼は控えめ
だった。

しかし、今は危急の時だ、森田は解決すべき問題を率直に話した。

幸い、南部重工業は地球防衛軍極東部の武器調達の大手であり、「箱舟」計画にも既に係わっていたので話は
早かった。

「要するに、フェーザー砲の出力を大幅に上げても砲の寿命が下がらない様にすればいいんですね。」
南部課長は言った。

「出来るんですか?」森田はあまりにもあっけなく問題が解決しそうな雰囲気に呆れた。

「ええ、本当のところは実験してみないと判りませんが、理論上は可能です。」彼は自信がありそうに答えた。

「どうするのですか? いや、それは企業秘密ですね。」森田は質問を取り下げ様とした。

「いや、秘密でもなんでもありません。 簡単な事です。」南部課長はサラリと言うと説明してくれた。

光速兵器は普通、破壊力のあるビームの発生部とそれが飛ぶ方向を決める誘導部からなっている。

原子分解力線であるフェーザー砲も基本的な構造は変わらない。

今、問題となっているフェーザー砲の出力を上げるという命題は本来なら、フェーザーの発生部の出力を上げる
必要があるのであるが、このフェーザー発生部が高出力化に耐えられず、フェーザー砲の寿命が短くなって
しまうのであった。

しかし、最終的に敵艦に命中した時点で必要な出力があれば、フェーザー発生時の出力はそれほど高くなくて
も良いはずであった。

では、低出力のフェーザー・ビームをどうしたら高出力化出来るのか、それは誘導部で足りない出力を更に
加えてやる、つまり、誘導だけではなく、再加速をする事で、ビーム発生出力を抑え、誘導部の再加速で
足りない出力を補うと言う考え方であった。

「ただ、この方式の場合、普通のフェーザー砲に比べ、長い砲身が必要になります。 このため、有効な技術だ
と判ってはいたのですが、無重力、真空で慣性力が大きく働く環境下では照準のための砲身の安定が難しく、
採用されなかったのです。」南部課長はそこまで言うと森田の顔をみた。

森田は希望と絶望を一度に味合わされたといった、困惑した顔をしていた。

「森田さん、『箱舟』計画は人類の一縷の希望です。 なんとしても実用化してみせますよ! 
安心して下さい。」南部課長は力強く、森田の設計を後押ししてくれる事を約してくれた。

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大山はやっと真田に会う事が出来た。

そして自分達、造船部で出した結論を説明した。

「ふーむ、ガミラス艦は何故、複数いないと長距離ワープが出来ない様にしてあるんだろう、単艦でも
ワープ出来なければどんどん戦闘艦を失ってしまうぞ。」

「いや、真田、ガミラスの事情はどうでもいい、肝心なのは、このエンジンが2基あれば数十光年の長距離を
ワープ出来るって事なんだ。」

「そうか! 「箱舟」にこのエンジンを2基装備すれば大ワープ出来るんだ!」

「だから、小規模なワープ実験をやってみたいと思うのだが・・・」大山がそこまで言った時、真田はまったを
掛けた。

「いや、大山、この件は慎重に取り組む必要があるぞ。 俺の解析結果だとワープは繊細な技術だという事が
判った。

もし、実験に失敗して時空に歪みを残してしまうと実験船が時空の狭間に引っ掛かって高次元から低次元へ
エネルギーの流入が起こる可能性がある。

そうなると我々のいる宇宙は大量のエネルギーの流入に耐えられず破壊される恐れすらあるんだ。」

大山も最新の理論物理学くらいかじっている、真田の心配は痛いほど判った。

「それに、ワープの実験をやるとガミラスに探知される恐れがある、彼等は長年に渡ってこの技術を使ってきた
と思われるからだ。

敵がワープの出来る文明だった場合もあったと考えるべきだ。

もちろん、杞憂かもしれないが、奴等との戦闘報告を見ると、彼等はどんな場合でも躊躇なくワープを行って
いる。

そう、これは我々が自動車を動かすに近い感覚だ。

単なる移動手段だけではなく、応用や派生技術が沢山あると考えるべきだと俺は思う。」

大山は腕組みしたまま唸った。

「確かに色々と派生技術を持っていそうな感じはあるな。」

「特に探知装置がワープ先の空間を走査出来なければ、危なくてワープなど出来はしないからな。」

大山が言っているのはワープした先の空間に別の物質が存在した場合の事を言っているのである。

全く同じ空間に2つの物質が同時に存在する事は出来ない、たとえ、旨く互いの原子が互いの原子空間に
はまり込む事が出来ても許容出来る原子間距離が大幅に狭まり、結局、大爆発を起こして全ての原子は
光子となって飛び散るのだ。

これを「物質重複による爆発」というのだが、ワープする以上、ワープ先の空間に何も無い事が
確認できなければ、常にこの「物質重複による爆発」の恐怖と戦いながらの航行となる。

これではいくら強靭な精神を持つ種族でも長期間の航行には耐えられない、そこでワープを実用化していると
いう事は、ワープ出来る距離の先まで探知出来るレーダーの様なものも持っているはずなのだ。

また、ワープは空間に歪みを作って長距離を跳躍する技術である。

当然、船が跳躍した後、歪んだ空間は元に戻るが、その時、起こる時空の振動が「時空震」である。

これはワープの規模、船の大きさや跳躍距離が大きければ、大きい程、観測され易いと考えられる。

すなわち、ワープの実験を行えば、ガミラスの知るところとなり、集中攻撃を受ける羽目になるかもしれない
のだ。

ワープを単なる移動手段ではなく、交通手段にまで昇華させているとしたら、これ位の技術は持っていて
しかるべきだと二人は考えた。

「かと言って、『やまと』、『むさし』が発進した後にテストを行うのは危険すぎるな。」大山はやはり、科学者
だった。

実験による一歩々の積み重ねこそ、進歩を生む、これが彼の信念だったからだ。

真田は今が非常時であり、新技術であっても、ある程度、ぶっつけ本番は止む終えないとは思っていたが、
ワープの件だけは別であった。

失敗がこの宇宙全体の破滅に繋がる恐れがある以上、やはり、制御できる範囲内で極小規模な実験は絶対
必要だと感じていた。

「問題が大き過ぎるな。 藤堂長官の判断を仰ごう。」大山と真田は「箱舟」計画上層部に報告する事にした。

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 「こちら、早期警戒艦『あたご』、遊星爆弾数量5。火星軌道を通過中、迎撃艦隊を誘導します。」

月面の地下奥深くに設置された駆逐宇宙艦ドックから「ゆきかぜ」型突撃駆逐宇宙艦が発進してきた。

彼等は1年前のガミラス地球圏制宙作戦の生き残りであり、その時の戦訓で基地のドックも少数の
駆逐宇宙艦を分散配置して生存性を高めていた。

「こちら、第1迎撃小隊、『みねかぜ』、誘導進路に乗った。 3分後に自艦射撃指揮システムでの迎撃に
切り替える。

『あたご』誘導を感謝する、早々に電波管制に入られたし。」第1迎撃小隊、旗艦「みねかぜ」の艦長、
進藤大尉は「あたご」がガミラスに発見されない様、自分から電波を出さない「電波管制」に入る事をもとめた。

1年前のガミラスの地球圏制圧作戦の時、多くの早期警戒艦が宇宙に出ていたが、「電波管制」を敷いていた
ため、ほとんど全ての艦がガミラスの攻撃を免れていた。

もっとも、これにはガミラスの戦術が大きく関与しているのも事実だった。

普通、敵の目や耳である偵察機や探知システムは極力、潰して戦いに望むのが地球の戦術だが、ガミラスは
あえてそれを残し、敵がその情報によって縛られる事を重視していた。

大抵の軍は偵察結果に元づく作戦を立てる、探知システムからの情報によって軍を動かすものだ。

だが、しかし、そこで欺瞞情報を偵察させたら、どうなるか、探知システムの情報をある程度、伝えさせた
ところでその探知システムを破壊したら、どうなるか、全く違った情報が敵に流れ、現実の戦闘局面との
違いで敵を混乱させるのがガミラスの常套手段だった。

だから、ガミラスは敢えて探知システムや偵察機、偵察艦は狙わない方針だったのだ。

ただし、今、実施中の地球に対する遊星爆弾による戦略核攻撃はちょっと例外だった。

この攻撃は戦略攻撃であると同時に地球に対する惑星改造の意味が大きかった。

すなわち、単なる戦略核攻撃なら、既に地表は「核の冬」を迎えており、このまま放っておいても人類が
絶滅するか、降伏するかは時間の問題だったからである。

しかし、地球の環境を恒久的にガミラスの環境に合わせるとなると、まだまだ遊星爆弾の投射量は不足して
いた。

だから、地球側に遊星爆弾の迎撃を許す事は惑星改造の完成の遅れに繋がり、ひいてはシュルツ率いる
冥王星前線基地全体が責任を問われる事になりかねないのだ。

「地球陣営の遊星爆弾迎撃システムの要はやはり、早期警戒艦だと思われます。」ガンツはシュルツに
火星軌道付近の制宙を再び提案した。

シュルツも地球側の迎撃態勢の粘りに少々焦りを感じていた。

だが、地球側の早期警戒艦はアクティヴなレーダー探知より、パッシブな光学探知を主として用いていたため、
その存在を知るのは容易ではなかった。

「我が軍は今までの戦術上、敵の探知システムや偵察システムを攻撃する事に慣れていない、どうすれば
良いと思う?ガンツ・・・。」

「小さめの遊星爆弾を投射し、敵にアクティヴな探知システムを使う様、誘導してみるのが良いと思います。」

ガンツの提案は通り、ガミラスは地球の早期警戒艦狩りを始めた。

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 ガンツの作戦は小ぶりの遊星爆弾を数個、地球に向けて投射する、多分、早期警戒艦は光学探知では
それを見つけた時には迎撃の突撃駆逐宇宙艦の誘導が間に合わないであろう。

間に合えば更に小ぶりの遊星爆弾を今度は数を増やして投射するだけである。

地球に対する被害は相対的に減少するが、地球防衛艦隊にしてみれば、迎撃網をスカスカに打ち破られるのは
気持ちの良いものではない。

当然、早期警戒艦はより精密でより早い時期に探知が出来るアクティヴなレーダー型の探知を行うはずである。

その時こそ、ガミラスは長年、悩まされてきた、地球の早期警戒システムを根絶出来るはずであった。

「そろそろ、引っ掛かってもよさそうな物なんだがな。」木星の浮遊大陸を基地としている駆逐型ミサイル艦の
艦長はつぶやいた。

彼は5隻の僚艦と共に木星と火星の間の空域に潜んでいるであろう、地球の早期警戒艦を狩る
ハンター・グループの1員なのだ。

彼の戦隊と同規模の戦隊が後4個、この空域には貼り付けられていた。

「大変です。浮遊大陸哨戒基地から早期警戒艦の迎撃が何故、失敗したかと問い合わせてきています。」
通信士が艦長の顔を見ながら報告した。

「何! こちらではアクティヴな電波放射は何一つ確認出来なかったぞ! 哨戒基地、何が起こったのか
詳細に連絡されたし!」当惑した駆逐型ミサイル艦の艦長はすぐさま浮遊大陸哨戒基地に連絡を入れた。

すぐさま、事態の詳細が連絡されたが、それによると小さめの遊星爆弾をガミラスは少しづつ小さくしながら
投射し続けたのだ。

しかし、地球側は的確に哨戒、探知し続け、迎撃してきた。

しかも遊星爆弾の大きさが小さく為り過ぎて大気圏で空気との摩擦で燃え尽きる寸前までの大きさでも的確に
処理して見せたのだ。

この位の大きさになると、もはやミサイル攻撃は必要ではなく、「ゆきかぜ」型の突撃駆逐宇宙艦の5インチ・
フェーザー砲でも充分であった。

「くそっ 馬鹿にしやがって! やはり早期警戒艦などを狩るより、敵の駆逐艦を狩る方が確実だ。」ガミラス
駆逐艦の艦長は作戦を無視して自分の戦隊を地球圏へワープさせて地球の迎撃艦隊を討ち取ろうとした。

しかし、地球の早期警戒網は直ぐにそれを探知、迎撃艦隊を地球の陰に退避させてしまった。

ガミラス宙雷戦隊はワープして地球の衛星軌道付近に現れたが、地球艦隊の姿は影も形も無かった。

罠に掛った事を知ったガミラス宙雷戦隊が再びワープで脱出しようとした時、地球の裏側から反物質ミサイルが
15発も衛星軌道に沿ってガミラス宙雷戦隊に襲い掛かった。

確実に一隻のミサイル艦が反物質弾頭の餌食となった。

そしてその他のミサイルはワープして脱出してゆくガミラス艦のワープ・フィールドに巻き込まれて消えていった。

あの宙雷戦隊はワープ明けに反物質ミサイルと物質重複を起こして消滅するであろうが、それを確認する事は
適わなかった。

本来、地球艦隊にしてみれば、地球の衛星軌道上で反物質弾頭を爆発させるなど普通では考えられない
暴挙なのだが、今、地球の迎撃艦隊が持っているミサイルは遊星爆弾迎撃用のものしかなかったので
しかたなかった。

また、今回の迎撃で地球が放射能汚染されるとしても、すでに幾十発の遊星爆弾を受けて汚染が進んでいる
状況では汚染の度合いの進行は五十歩百歩であった。

地球軍による遊星爆弾迎撃は7割以上成功しているとはいえ、地球の放射能汚染は着実に進んでいたからだ。

赤くそまりつつある地球の姿を見て一筋の涙を見せた古代守であった。

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「えっ、何だって?」部下から声を掛けられた森田造船技官は辺りに轟く喧騒の中、質問を問い返していた。

「お客さまです。ドック南の事務所棟へ来てくださいとの事です。」それだけ言うと部下は自分の仕事に
戻っていった。

森田は来客の予定はなかったので不審に思いながら現場を後にした。

彼の後には巨大な影があった。 そしてそれは見るものが見れば判る宇宙船の船体部分だった。

事務所の会議室に着くと森田はやってきていたのが南部重工の南部課長だったので驚いた。

「課長、わざわざどうしたのです。 フェーザー砲の改良の件ならメールでも良かったのに・・・。」森田は
課長に微笑んだ。

しかし、南部課長は険しい顔つきで森田を見ていた。

「やはり、まだ、こちらには連絡が来ていないのですね?」

森田は困惑した表情で南部の言葉に頷いた。

「『むさし』が、アリューシャンで建造中の『むさし』が遊星爆弾にやられました。」

「そ、それはいつ・・・。」そう聞くのがやっとだった。

「昨日の13時です。 ドックに落ちた遊星爆弾は比較的小型でしたが船台上の『むさし』は船殻を大き
くえぐられ、再建不能の状態です。」南部課長は押し出す様に言った。

それもそのはずで今、森田がいる九州、坊ケ崎の秘密地下建造ドックで建造中の『やまと』より建造工程が
少し早くすすんでいたアリューシャン列島の秘密地下ドックで建造されていた『むさし』には新型の
フェーザー砲の製造工場も隣接して設置されていたからだ。

当然、そこには南部重工業の社員も多数、派遣されていた。

森田は南部の気持ちが痛いほど解った。

だが、南部課長はそんな悲しみを振り払うかの様に話始めた。

「やはり『やまと』は九州、『むさし』はアリューシャンと大きく離して建造ドックを設けたのは正解でした、
建造中の不便は大きかったですが、共倒れになるよりはましでしたからね。

ところで『むさし』に積む予定で製造していたフェーザー砲ですが、今までの無砲身フェーザーの倍の口径、
22口径を予定していましたが、「箱舟」が『やまと』一隻になった以上、『やまと』の主砲は確実に遠距離から
ガミラス艦を破壊できる威力が必要と考えます。」 南部課長はここで一度、言葉を切った。

森田はその意味を解し切れず、当惑した表情になった。

「今回の「箱舟」計画に必要なフェーザー砲の口径は45口径以上です。 それ以下ではガミラス艦との戦闘に
時間が掛りすぎて危険な局面を迎える事になります。」

口径、これは砲の直径を表す言葉ではない、砲身の長さを表す言葉である。

砲身の長さが砲の直径の何倍あるかで砲身の長さを現しているのである。

すなわち『やまと』型に予定されているフェーザー砲の大きさは18インチ(45.7cm)であるから、今までの
無砲身型だと約5m、22口径で10mになるはずであった。

砲身長が10m程度であれば砲耳の位置を工夫すれば砲身のほとんどを砲塔の中に収める事が出来るし、
砲身の運動によって起こる運動量(慣性力等)の制御もなんとか出来るレベルであった。

しかし、45口径、約21mもの長さの砲身はもはや砲塔内に収まりきるものではない。

また、真空、無重力の条件下での砲身運動時の慣性力たるや凄まじく大きいものになる事が想像された。

「『やまと』型の基本設計を見直す必要がある・・・という事ですか?」森田は問題の大きさに打ちひしがれた。

南部は黙ってそれに頷いた。

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ガミラスの冥王星前線基地近傍にある遊星爆弾製造、投射施設では喧騒が渦を巻いていた。

「シュルツ司令、とうとう切れたみたいだな。」忙しく手を動かしながら兵の一人が同僚に声を掛けた。

「ああ、どうやら地球方面の迎撃システム破壊に失敗したらしい。

それで敵の迎撃が間に合わない位の頻度で遊星爆弾を見舞おうと考えたんだ。」

「それにしては命令された遊星爆弾のサイズが小さくないか?」男は疑問を素直に口にした。

「シッ、お偉方がやる事だ、俺達一兵卒が口を出すと面倒な事になりかねないぞ! 黙って手を動かせ!」
そう言われた兵は仕方なさそうに作業の手を早めた。

前線基地の司令室ではガンツが苦虫を噛み潰したような顔でスクリーンを見ていた。

そこには遊星爆弾投射施設から次々に発射される遊星爆弾の姿があった。

「どうだ、作戦は順調か?」 ガンツの後で声がした。

シュルツ司令だった。

「はい、今朝から10基は地球にむけて遊星爆弾を投射しました。これから夜にかけてもう10基の投射を
予定しています。」

「ウム、よろしい。地球人め、遊星爆弾の雨霰だ。 とても迎撃出来る量ではないぞ、フフッ」シュルツはニヤリと
した。

「司令、ちょっと質問しても宜しいでしょうか?」ガンツは恐る々聞いた。

シュルツは<なんだ?>という顔をしたが別にガンツを咎める様な事はしなかった。

「今回の一連の遊星爆弾攻撃の件ですが、何故、小ぶりの遊星爆弾ばかりを投入しているのですか? 
設備的には今の10倍の大きさの遊星爆弾でも投射出来ます。 その方が敵も迎撃し辛いと思うのですが、
いかがですか?」

「確かにおまえの言う事ももっともだ。 しかし、ガンツよ、大きい遊星爆弾の発射間隔はどれくらいになる? 
せいぜい、1日1~2基がいいところだ。 それではまた敵に迎撃されてしまう。 大きいから簡単には
破壊されないだろうが、軌道を変えられる恐れは充分ある。

わしは小ぶりの遊星爆弾を大量投射して敵の迎撃システムが機能しなくなる事を狙っているだけではない、 
幸い、木星は我々の手に落ちた。 地球や月にある資源やエネルギーだけは直ぐに底を突く、迎撃しようにも
ミサイルを作れなくなるんだ。

そこで大型遊星爆弾を投射して最後の仕上げをする、それがわしの計画だ。」

ガンツはシュルツが随分と指揮官らしくなって来たと思った。

                                                     ヤマト発進まで650日
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by YAMATOSS992 | 2012-06-15 21:00 | 本文 | Comments(0)