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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

22.戦艦「英雄」、「栄光」の大改装 と 宇宙戦艦「ヤマト」の登場

 ガミラスは地球圏の懐深くに5隻の駆逐型デストロイヤーに率いられた4個の宙雷戦隊を地球の大気圏上層
ギリギリのところへワープで送りこみ、地球軌道上や地表にいた艦艇や施設を残らず叩いて大打撃を与えた
はずだった。

しかし彼等は地球の衛星である月が1大工業施設として稼動しているのを軽く見ていた。

ガミラスの攻撃時、じっと息を潜めていた月は形ばかりの攻撃しか受けず、その地下深くでは木星会戦から
辛うじて帰還した2隻の戦艦が大改装を受けていたのだ。

日本艦隊の「英雄」と「栄光」である。

2隻は「箱舟」計画に使われる新テクノロジーの実験艦に選ばれたのだ。

「箱舟」計画は激化するガミラスの攻撃で居住することが不可能になった地球から選ばれた人達を脱出させる
最後の希望だった。

エンジンは元々装備していた反物質炉から破壊したガミラス艦から得た情報で作られた準波動エンジンへ
換装された。

それによってワープも理論上ではあるが、実現出来る見込みが立ち、今までの地球型のエンジンより5割増しの
出力が得られた。

また、「箱舟」は単艦でガミラスと戦いながら長期の航行を余儀なくされる事が想像されたため、通常の移民船
では考えられない位の強武装が求められていた。

そこで南部重工業が新しく開発した多段加速式フェーザー砲が主兵装に選ばれたが、「箱舟」の一隻、
『むさし』の喪失によって更に強力な加速による破壊力増大が求められたため、その実験も行う事になった
のである。

このフェーザー砲は今までに無かった大口径18インチであり、、また、今までと異なり、ビームの加速装置を
多段に備えるため、長い砲身を持っていた。

通常、真空、無重力の宇宙空間で用いる砲の砲身は慣性モーメントの制約上からも短い方が良いのだが、
今の地球はそんな事で贅沢を言っていられる場合ではなかった。

そして、多段に分割されたフェーザー・ビーム加速装置により、この砲は光速兵器にも係わらず、発射時に
反動を伴う点が今までのフェーザー砲とは異なっていた。

南部重工業の努力によってこの反動吸収には成功したが発砲時にはまるで実体弾を撃っている様に
見えるため、この砲はもはやフェーザー砲とは呼ばれず、「ショック・カノン砲」と呼ばれる事になった。

また、普通、実験艦は1隻しか作られないものだが、今の地球の置かれている現状を考えると実験即実戦で
効果を挙げる事が必要だった。

実験としては大きな成果でも実戦的に見た時小規模な成果しか挙げていないとやたら敵の目を引き付ける
だけで直ぐに対抗策をこうじられる恐れが大きかったからである。

実用に耐える威力を持って一気に成果を上げるには最低2隻で戦隊を組む必要がある・・・。

日本の地球防衛軍上層部はそう考えたのだ。

また、この2隻は「箱舟」計画の実施エリアを重点的に防衛すると共に、「箱舟」出発時にはその護衛艦として
一緒に旅立つ事も考慮されていた。

しかし、今までとは比較にならない程、長砲身のショック・カノンの装備は問題だった。

今までのフェーザー砲塔を降ろして新砲塔を載せる案もあったが、12門ものショック・カノンを充分に
機能させるだけのエネルギーは新型のエンジンでも出せなかった。

そして一番問題だったのが長い砲身を真空・無重力の宇宙で精度良く安定させる事だった。

この解決策は用兵者である沖田提督から示された。

「艦首の軸方向に固定装備してくれ。船の躁艦ならわが軍の航宙士は針の穴を通す様な躁艦が出来る。」と。

それにこの案にはもう一つ利点があった。

従来のフェーザー砲等の武装を降ろす必要がないのである。

そしてこのフェーザー砲も機関の出力アップによって5割増しの威力を持つ様になっていた。
(もちろんショック・カノンとの同時使用は出来ないが・・・。)

結果的に「英雄」「栄光」はそれぞれ3門の18インチ・ショック・カノンを同心円状に艦首に配置し、

2隻で6門のショック・カノンの斉射が出来る様になった。

これは「英雄」「栄光」のリンク射撃に必要な最低限の門数でもあった。

2198年2月20日、第1艦隊は大改装後、初めての出撃を迎えた。

しかし、一度に遊星爆弾10個の襲来を迎撃したが1個しか撃破出来なかった。

幸い、本来の目的であった「箱舟」エリアへの遊星爆弾排除には成功したが、それにしても少ない迎撃率で
あった。

「真田君、この撒布界の広さはどうにかならんかね?」沖田は技術部の実質上の頭脳である真田技術士官に
相談した。

「提督、これを見て下さい。」真田は説明用のスクリーンについさっき終了した戦闘のデータを映しだした。

それは大きな円が二つほとんど重なりあっている図であった。

「この緑の円が「英雄」の散布界、青い円が「栄光」の散布界です。」

散布界とは同時に撃った複数の弾が着弾した時、どの位の範囲に散らばるかを表すものだ。

散布界はある程度広い方が目標を捕らえ易いとの考えもあるが、命中率を考えるとやはり散布界はギュッと
絞った方が敵目標に当たる可能性は増える、今回の戦闘時の散布界の直径は100メートル前後ある事が
スクリーンには示されていた。。

「確かに散布界は大きすぎるが、ズレはほとんどない、と言う事は2隻のデータ・リンクに問題があるわけでは
ないな。」

「そうです。 もともと単艦での散布界が広いのです。」真田は事も無げに重大な問題点を指摘した。


「それは困る! 改良のしようが無いではないか!」沖田は普段なら見せない狼狽した様子を見せた。

ショック・カノンは現在の地球防衛の要にもなる重要な装備だったからだ。

「散布界が広いのは3門同時に発射されるショック・カノンのフェーザー・ビームが互いに干渉しあって
ほんの僅かですが外側に弾きあっていると考えられます。」

「それが大遠距離となると大きな誤差になるわけか・・・。

と、言う事は3門を1門に減らす必要があるということか? 運用上それは痛いなあ・・・。」

「いえ対策はあります。 発砲遅延装置です。」

「発砲遅延装置?」 沖田はその奇妙な名前に戸惑いの顔をみせた。

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 「成功です! 6個の遊星爆弾を全弾、連射で仕留めました。」 「英雄」の艦長から地下都市、大本営に
いた沖田の元に報告が入った。

さすが真田君、大昔の技術にも通じていたとは・・・沖田は真田の無限とも思える知識とその応用力に舌を
巻いた。

発砲遅延装置とは1940年代に日本海軍で開発された射撃精度の向上技術である。

当時、日本海軍はワシントン軍縮条約により、新型の戦艦が建造出来なくなり、排水量1万トン以下の巡洋艦に
出来るだけの強武装を施して戦艦勢力の劣勢を補おうとした。

これが「妙高」型「愛宕」型の合計8隻の条約型巡洋艦(通称重巡洋艦)建造である。

しかし、この条約締結前に日本は強力な偵察巡洋艦を求め、20センチ連双砲塔3基6門を備える「古鷹」型
「青葉」型の合計4隻を建造していた。

「妙高」型や「愛宕」型は当然「古鷹」「青葉」型より強武装で20センチ連双砲塔5基10門と大幅に強化されて
いた。

しかし、実際に運用してみると「古鷹」「青葉」型より、「妙高」「愛宕」型の砲の命中率が異常に低いという
問題がある事が判った。

「古鷹」型の命中率が16%位の高い数字を示していたのに比べ、「妙高」型の命中率は4~5%という低い値
だったのだ。

これでは幾ら大砲を数多く装備していても意味がない。

海軍用兵者はその原因が判らず困ってしまった。

巡洋艦は高速を出す必要上、船体が細長いので射撃時に船体が捩れて命中率が下がるのでは? とも
考えられたが、実際は超音速で飛ぶ弾丸が互いに発する衝撃波同士が干渉して弾丸が狙った位置に落ちず
バラバラの着弾になる事が判った。

そして実用化されたのが連双砲の片方の砲を自動的に0.003秒発砲を遅らせる98式発砲遅延装置だった。

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「英雄」「栄光」のショック・カノンは3門が同心円状に近接して設置されている・・・。

真田はこの事から過去の日本海軍の技術であっった発砲遅延装置の様にで3門の砲、それぞれの発射
タイミングをずらして発射、フェーザー・ビームが互いに干渉しなくなる様にした。

効果はてきめんで着弾点で100メートル位あったビームの散布界直径は数メートルにまで減少した。

これは単装で装備した時と変らない散布界であり、リンクして発砲する「英雄」と「栄光」の散布界は半分づつ
重なりあうという充分に納得出来る状況になった。

また、機関出力が50%アップした事で通常のフェーザー砲の出力も上がり、近距離なら
駆逐型デストロイヤーにも損傷が与えられる様になったが、この事が後の冥王星遠征時に悲劇を生む事に
なろうとは沖田ですら気が付かない事であった。

この後第1戦艦戦隊は「ゆきかぜ」型突撃駆逐宇宙艦と共に遊星爆弾の迎撃にいそしみ、大改装後から
約1年間、地球の防衛に力を尽くしたのだった。

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藤堂、伊地知、大山、沖田の4人は会議室に集まっていた。

「どうだね、沖田君、この案でいけるかね。」藤堂はすがる様な目つきで沖田を見た。

「いくもいかないもないでしょう。 『むさし』を失った今、『やまと』は絶対に生き残らなければならない。 
そのためには大幅な設計変更もいたしかたありません。」沖田は伊地知の方をチラリと見た。

「『箱舟』計画責任者の伊地知君はどうかね。」藤堂は答えは解り切っていたが一応、伊地知の立場を考えて
意見を求めた。

「大山造船技官、貴様のせいだぞ! 勝手に設計変更を幾つも出しおって、わしが造船の事が解らないと
思って馬鹿にしとるのか!」 大山は伊地知の反応に困って藤堂や沖田の方を見た。

「伊地知君、大山君は設計変更がある場合は必ずわしや長官に報告していたぞ。 その報告メールの
あて先には君のアドレスも入っていたのをわしは確認している。」沖田は全面的に大山の味方をした。

「それに今度の様な大変更の場合はこうして我々を集めて報告しているじゃないか、許してやりたまえ!、
伊地知君!」藤堂長官にまでそう言われてはさすがの伊地知参謀長、いや「箱舟」計画責任者も黙る
しかなかった。

「それでは 変更点を再確認します。  先ず使用する機関ですが、ガミラス艦のエンジンのコピーを2基
使います。

これで我々の夢だったワープが可能になります。」

「これは我々に対して神の恵みですな。 長官」沖田は悲報が続くなか、しばらくぶりの吉報に頬が緩んだ。

「そしてこれが一番問題な部分なのですが、『むさし』が健在だった時には2隻でお互いの弱点である
上甲板面をカバーする事を前提に艦底の装甲を分厚くして簡単には打ち抜かれないように設計して
きましたが、『むさし』がいなくなった以上、『やまと』はどの方面から攻撃されても良い様に装甲を分散する
必要が出てきました。

また、主砲を18インチ45口径砲とすると砲身が長くなりすぎ、設計No,SBA-141の時の様に舷側に
3連双砲塔を2段重ねで装備するのは主砲の安定制御の問題も絡めて砲塔重量が大きくなりすぎます。

そこで主砲は18インチ45口径砲と変わりませんが装備位置を上甲板とし、3連双砲塔3基に別けて装備します。

この配置にすると主砲に多少の死角ができますが砲塔が1基減った分、重量が大きく節約出来、弱点だった
上甲板上に装甲の施された砲塔が艦橋を挟んで縦に3基並ぶ事になりますから、装甲重量の増加も最低に
押さえられます。

勿論、艦底側は砲頓兵装こそありませんが、ミサイルの装備はVLS(垂直発射管)型で装備する予定です。

艦低部の装甲の厚みもこの面を下に惑星表面へ着陸する事は考えていますので今までの8割の厚さは
確保出来る見込みです。」

「この姿を見ると昔の戦艦「大和」がそのまま宇宙戦艦になった様な姿だな。 大山君。」沖田は思った事を
口にした。

「そうだ、沖田くん。どうだろう、『むさし』が破壊された今、『やまと』の名前は縁起が悪い、かといって『大和』ではもっと縁起が悪い、いっその事、宇宙戦艦『ヤマト』というのは希望を感じさせないかな。」
藤堂も乗り気だった。

しかし、伊地知参謀長はその様な事よりももっと重要な問題で頭が一杯だった。

「艦長室はもっと安全な、そう『ヤマト』の艦内奥深くには出来ないのかね。」伊地知は思わずそう口走った。

沖田と藤堂は顔を見合わせた。

「ここが一番安全だと君が言うからそびえる艦橋の一番高い所でも承知したんだ。 今度の話だとやっぱり
ここは一番危ない箇所じゃないか!」伊地知は恥じも外聞も無かった、自分とその家族の安全だけが問題
だったのだ。

「やっぱり、わしが行こう。」沖田提督は皆の顔を見渡していった。

                                                    ヤマト発進まで585日
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by YAMATOSS992 | 2012-06-16 21:00 | 本文 | Comments(0)