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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

23.戦艦「栄光」の最後

 「なんたる事だ! 第4番惑星軌道上の迎撃部隊は排除したはずだぞ! 本星の第3惑星の艦隊や設備にも
大打撃を与えたはずだ。  どうして遊星爆弾の着弾率が低いのだ。」冥王星前線基地のシュルツ司令は
怒り狂っていた。

「なんとかしなければ、ガンツ!我々は処刑されるぞ!」

「司令、その事でしたら木星の浮遊大陸に置いた前哨基地から新たな情報が入っております。」ガンツは
新情報を報告した。

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 「沖田君、『英雄』と『栄光』の大改装は成功したようだね。」藤堂長官が沖田提督に話しかけた。

「ええ、一応、遊星爆弾を「箱舟」の建造エリアに近づけない事には成功しています。

しかし、地球上に落ちる遊星爆弾の全てを迎撃出来ている訳ではありません。

地球上の汚染は確実に進んでいます。 残念ながら「箱舟」計画の実施は避けられないでしょう。」沖田は
付き合いの長い藤堂長官には無念な本心を隠す事無くさらけだした。

「ウム、確かに・・・。残念だが・・・そうだな。 とはいえ、南部重工業が開発した・・・新兵器、ショック・カノンと
いったかな?

すごい威力がある様だな。

あれを使えばガミラス艦も一撃で葬れるとか聞いておるが?」藤堂長官は自分の不安も打ち消す様に言った。

「ええ、今までのガミラス戦艦なら確実に撃沈出来ます。 それだけが唯一の光明です。 「箱舟」の脱出に
きっと貢献するでしょう。」 沖田は遠くを見る目になった。

しかし、歴戦を誇る沖田提督もガミラスの戦艦だと思っていた艦が実はガミラスの量産型の標準戦闘艦であり、
駆逐型デストロイヤーと呼ばれる重防御型駆逐艦とも言うべき地球にはない艦種だという事は知るよしも
無かった。

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「それで、浮遊大陸の前哨基地は一体なんと言って来たのだ?」 シュルツ司令はガンツ中佐に発言を促した。

「どうやら敵は大型の砲艦を建造して遊星爆弾の迎撃を行っている様です。 

今までどおり、突撃艦による迎撃も行われていますが、かなり大型の遊星爆弾ですら、突撃艦と砲艦の
連携作戦で防衛されているのが浮遊大陸から発進したパトロール艦によって観測されています。」ガンツ中佐は
大遠距離から撮影した第1戦艦戦隊の映像をスクリーンに写しだした。

そこには遠距離で詳細は判らないものの、突撃駆逐宇宙艦を10隻ほど従えた大型艦が映っていた。

映像は動画で接近する遊星爆弾を突撃駆逐宇宙艦が粉砕すると地球落下軌道にある破片に向かって
大型艦がビームを発射、迎撃していた。

「この大型艦は木星会戦の生き残りではないのか?」シュルツ司令はガンツ中佐に尋ねた。

「たぶんそうでしょう・・・。しかし、何らかの改装を施して攻撃力を上げている様です。」

「改装?・・・か・・・。」シュルツは一人ごちた。

「記録映像は遠くて詳細はわからないのですが、ビームの色をみると今までのフェーザーより
かなり高エネルギーなのが判ります。

これは用心して掛らないと返り討ちに遭いかねません・・・。」ガンツは不安を隠しきれない様だった。

「戦艦クラスでは機動部隊による攻撃は効果が薄い・・・か? 宙雷戦隊によるワープを使ったヒット・エンド・ラン
(一撃離脱)攻撃は相手も突撃駆逐宇宙艦を擁している以上、迎撃される可能性が高いな。」シュルツは
再び腕組みをし直しした。

シュルツはもともと大マゼラン雲にあるガミラスの殖民星の出身で1兵卒から叩きあげて今の地位を築いた男
だった。

そのせいで若い頃は出世欲が強く、独断専行の常習犯だったが、歳をとってそこそこの地位を築くと今度は
保身に汲々とする様になっていた。

しかし、それは良く見れば慎重で頭を使った戦い方をする様になったとも言えた。

木星会戦はガミラスの戦略的勝利で終結したが、ガミラスは総司令のレッチェンス提督が戦死し、彼が
率いていた駆逐型デストロイヤー10隻と護衛の突撃艦多数、ガンツ少佐(当時)の別働隊でも
駆逐型デストロイヤー2隻を失っていた。

別の地区での戦闘で偵察用の重巡も4隻失っており、ガミラス側は戦術的には負けていた。

喪失分は本国に増援の艦隊を要請し、補給はされたが、その後の戦闘で更に5隻の駆逐型ミサイル艦を
失っていた。

増援要請をして数ヶ月も経たずに、また増援要請など出来るはずがなかった。

ガミラス冥王星前線基地の名誉にかけて・・・!

「ここは奇策をとるか・・・。」シュルツは顎をなでながらニヤリとした。

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 「遊星爆弾の群れが火星軌道を突破しました。 個数は10個。 超大型です。」 火星軌道に派遣している
軽巡「神流(かんな)」からの警報が月の地下深くに設けられた遊星爆弾迎撃司令部を通して月の陰に
隠れていた第1戦艦戦隊に伝えられて来た。

「第1宙雷戦隊、先行して遊星爆弾を攻撃せよ。」 「英雄」の艦長、山南大佐は配下の突撃駆逐宇宙艦隊に
突撃を指示した。

「了解しました。 後始末はよろしくお願いしますよ。」古代守は山南に敬礼すると宇宙の彼方を目指して消えて
いった。

「第1戦艦戦隊も所定の位置まで前進する。 第1戦速で加速せよ!」山南も第1戦艦戦隊を遊星爆弾の
最終防衛線として定められた位置まで急速に移動する事を司令した。

遥か宇宙の彼方で10個の爆発が次々に観測された。

超大型になった遊星爆弾はもはや反物性ミサイルの様な効果が限定される武器では粉砕出来ず、もはや
旧式兵器として使われなくなっていた核爆弾や反物質爆弾が再び用いられる様になっていた。

こうした爆発型の兵器は遊星爆弾を粉砕すると同時に粉砕された破片を地球落下軌道から外す効果が
あったのだ。

そしてそれでもまだ地球落下軌道にある大型の破片を第1戦艦戦隊がショック・カノンで狙撃、最低でも
「箱舟」エリアへの落下を防ぐのが彼等の任務だった。

「地球落下軌道にある地表まで達する恐れのある破片は4個です。」 司令部からもデータが伝えられてくる。

「砲術長、射撃シーケンス発令、ショック・カノンによる迎撃を始めよ。」山南艦長が司令を下した。

「よし、ショック・カノン、照準プログラム用意、「栄光」とのデータリンク良好か?」砲術長は部下に確認を求めた。

「「栄光」とのデータ・リンク完全です。射撃プログラム完了!いつでもいけます。」照準を合わせた射手が
報告した。

「よし、射撃開始!」砲術長が叫んだ。

「英雄」と「栄光」の艦首からそれぞれ3本のビームが捩られて1本にまとまった様になって遊星爆弾の破片に
吸い込まれてゆく・・・。

そしてその2本のビームは更に一点に集まり、遊星爆弾の破片、4個は次々と粉々に破壊されてとりあえずの
脅威は去った。

「至近距離に金属反応出現!左舷後方です!」副航宙士が叫んだ。

「何!ワープか?」山南大佐は艦橋後部の窓に振り返った。

そこには「栄光」の右舷100メートル位の至近距離に見た事のない大型戦艦が出現していた。

これもガミラス艦か?山南は一瞬、とまどったが直ぐに「前進全速! 取り舵一杯!」を司令していた。

「栄光」もその司令に従おうとしたがガミラス指揮用大型戦艦の3連双大型フェザー砲塔に捕らえられ、ビームを
無数に浴びて爆沈して果てた。

しかし、「栄光」は爆沈する時、煙幕とチャフ、フレアーを辺りに撒き散らした。

これでガミラス艦は一時的ではあるが「英雄」の姿を見失った。

しかし、「英雄」が回頭して敵艦に艦首を向けようとしていた時、ガミラス艦も砲塔をめぐらして「英雄」を
捕捉しようとしていた。

その時、大型戦艦の右側面に次々と爆発が起こった。

古代守率いる第1宙雷戦隊が敵艦発見の報に遠距離射撃で援護してくれたのだ。

ガミラス艦にはマイクロ・ブラックホールを利用した反物性ミサイルが効果的だったが今、宙雷戦隊が
装備しているのは遊星爆弾粉砕用の反物質ミサイルなので効果は今一つだったが、ガミラス艦の注意を
そらすには充分だった。

山南艦長は「英雄」をガミラス艦の左舷に回りこませる事に成功し、必殺のショック・カノンをガミラス艦の
機関室があると思しきあたりに叩き込んだ。

「ガンツ!脱出だ!直ちにワープ!」シュルツは大型戦艦を戦闘空域から脱出させた。

ガミラス大型指揮戦艦は機関室スレスレのところを「英雄」のショック・カノンに貫通され、白紫の煙を吐き
ながらも土星宙域まで小ワープで脱出する事に成功した。

「危なかったな。ガンツ・・・。」あたかも自分の指揮が正しかったかの様に得意げな顔をしたシュルツ司令に
ガンツ中佐は複雑な思いをいだいた。

確かに脱出のタイミングの指揮は見事だった。 あそこでもう一撃、ミサイルなり、ビームなり、攻撃を
受けていたらこの大型戦艦といえども帰還は難しかったろう。

しかし、この作戦そのものは無謀の極みだった。

今回の作戦では大型の敵砲艦の機関部を狙うつもりで敵艦の後部へ小ワープで接近、攻撃を加えて直ぐに
またワープで脱出する、ヒット・エンド・ラン(一撃離脱)攻撃を行う予定であった。

そのため、シュルツは一度で大きな破壊力を集中出来る指揮用大型戦艦を作戦に投入したのだ。

しかし、木星近傍からの撮影映像では敵艦は1隻に見えていたのだが、実際にワープで接近してみると
近接した雁型にズレた単縦陣を組んだ2隻の戦艦だった。

ガミラスが遠距離映像では単艦であると誤認する程、「英雄」と「栄光」は近接した艦隊を組んでいたのである。

作戦どおり、シュルツ艦は艦隊後方にいた「栄光」の破壊には成功した。

しかし、「英雄」の反撃を受けて大型指揮用戦艦も中破してしまった。

ガンツは戦死したレッチェンス大将がこの大型戦艦が配備された時、何故、艦隊指揮用として自分の乗艦に
選ばなかったか、本当に理解した。

軍艦、特に戦艦は殆ど性能の同じ僚艦とコンビになり、戦隊と成らなければ真の実力は出せないのである。

地球上の過去でも同じ様な事が起こっていた。

1940年、ナチス・ドイツ海軍は開戦と同時に大西洋上に幾多の通商破壊艦を放ち、戦果を上げていた。

そして、海軍上層部は就航したばかりの当時、欧州一と謳われた大型戦艦「ビスマルク」をその仕上げとして
大西洋上に出撃させようと考えた。

しかし、当時、僚艦になるべき同型艦、「テルピッツ」はまだ慣熟訓練中で戦闘に参加できず、性能が近かった
戦艦「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」の戦隊はフランスのブレスト港に閉じ込められていた。

「ドイッチェランド」級のポケット戦艦は大西洋上に散らばり、合同する事は不可能だった。

またポケット戦艦では合同出来たとしても性能が違い過ぎて「ビスマルク」の足を引っ張る事になるのは
明らかだった。

そこでドイツ海軍司令部は重巡ではあるが、列強の条約型重巡より格段に強力な「プリンツ・オイゲン」を
僚艦としてつける事にした。

1941年5月18日、「ビスマルク」はゴーテンハーフェンを出撃、大西洋上での通商破壊作戦、
暗号名「ライン演習」に向かった。

英国艦隊は必死で迎撃、1941年5月24日、デンマーク海峡で「ビスマルク」を捕捉した。

しかし、英国艦隊は旗艦の巡洋戦艦「フッド」を砲戦開始から僅か8分で撃沈され、
僚艦の「プリンス・オブ・ウエールズ」も艦橋部に大損害を受けて落伍していった。

しかし、この戦いで自らも損傷した「ビスマルク」は重巡「プリッツ・オイゲン」を分離、単艦で修理と補給の
ため、フランスのブレスト港を目指したが、復讐に燃える英国海軍の執拗な攻撃のもと、ついに大西洋の
波間に消えた。

時に1941年5月27日 英国本国艦隊のほぼ全力を相手に戦った「ビスマルク」ではあったが、やはり、
同型艦の居ない単艦での出撃はいかに不沈艦といえども無謀である事を示した戦いであった。

ガンツ中佐にはその様な事は知るべくも無かったが、かつての上司、レッチェンス提督が要求した通商破壊用の
重巡12隻の派遣を取り消され、代わりに指揮用大型戦艦が一隻、送られて来た時、何故あれほど渋い顔を
したのか、理解した。

今回の作戦も同型艦二隻で行えば完全に成功した可能性が高い・・・。

いや、駆逐型デストロイヤーでも効果があったかもしれない・・・そう考えるとシュルツの作戦の甘さが悔しい
ガンツ中佐であった。

「こちらもやられたが、敵の砲艦も一隻は撃破出来たのだ。 これで遊星爆弾攻撃の効果は
もう少し上がるだろう。」帰還に成功し、冥王星前線基地のドックが写ったスクリーンを見詰める司令の
シュルツは到って楽観的な態度であり、ガンツ中佐はヤレヤレといった顔でシュルツの背中を見つめた。

                                                    ヤマト発進まで 213日
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by YAMATOSS992 | 2012-06-22 21:00 | 本文 | Comments(0)