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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

24.冥王星前線基地奇襲計画

「また、一つ遊星爆弾が地表まで達したか・・・。」藤堂司令はスクリーンに写しだされた遊星爆弾の着弾映像を
見て溜息をついた。

「このままでは「箱舟」計画の実施前に地球は滅亡してしまうぞ・・・。」絶望的な思いにかられ、つい弱気な事を
言ってしまう藤堂であった。

「その事ですが、長官、遊星爆弾の発射、ないしはコントロール基地の位置が判明しました。」総参謀長の
伊地知少将が報告した。

「何! それは本当か!」藤堂長官は意気込んで聞いた。

同席していた沖田提督もその言葉にキッと鋭い眼差しを伊地知総参謀長に送った。

「これまで飛来してきた遊星爆弾は太陽系の最外縁を取り巻く彗星の雲と呼ばれる軌道上、ランダムな
位置から発射されている様に観測されていました。

しかし、火星軌道にあった遊星爆弾の防衛ラインがガミラスによって撃滅されると発射位置が冥王星周辺に
偏って来たのが観測されました。」

「伊地知君、それは冥王星が発射基地だと言う事かね?」藤堂は参謀長にたたみ掛けた。

「はい、冥王星の地表から発射されている可能性はほとんどありませんが、少なくともコントロール中枢は
冥王星にあると思って間違いありません。」伊地知総参謀長は得意げに応えた。

「冥王星か・・・。 遠いなあ。 沖田君、どうだ。 敵の遊星爆弾コントロール基地を叩けるかね。」藤堂は
長年の親友でもある沖田提督に問うた。

「叩かなくてはならないでしょう。 何がなんでも・・・。 地球を今のままにはしておけません!」沖田は力強く
言った。

「とはいえ精神論だけではこの作戦は成功しません。 また、今の地球防衛軍の残存戦力を考えると
乾坤一擲の作戦になるでしょう。 もはや後はないと考えざるをえません。 藤堂司令、少し時間を下さい。」
沖田は藤堂に猶予を求めた。

しかし、伊地知総参謀長はそれを許さなかった。

「沖田提督、何を考えると言うのだね。 残存戦力を全て投入して作戦を実施する・・・。それ以外に
何があるのかね!」伊地知総参謀長は乱暴に言った。

「それは特攻するに等しい無謀な作戦です。 確かに冥王星は遠い、遠すぎます。 だからこそ作戦が
必要なのです。」沖田提督は穏やかに言った。

「伊地知君、沖田君に任せてみようじゃないか・・・。 沖田君、基本計画を3日後までに提出してくれたまえ。」 

「判りました。 それでは三日後に基本計画を提示します。」沖田は約束すると地球防衛軍本部を後にした。

防衛軍本部入り口の前には志願兵の長い列が出来ていた。

ここに到っても諦めようとはしない人々がこんなにもいるのだ・・・。

見ておれ!悪魔め! お前達の思い通りには決してさせないぞ !!

沖田は自分の負った責任の重さに身震いする思いだった。

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「やっぱり「栄光」の損失は大きいな。」山南大佐は「英雄」の艦橋で今日、仕留め損なった遊星爆弾の事を
思った。

「寺内君、すまない、今日も完全な防空は出来なかった。」 沈んだ「栄光」の艦長だった寺内大佐に心の中で
詫びた。

18インチショック・カノンの威力は絶大だったが、1隻では破壊力が限られてしまう。

「英雄」は3門のショック・カノンを艦首に同心円状に配置しており、破壊力は大きかったが、遊星爆弾も
大型化しており、突撃宇宙駆逐艦が反物質弾頭で砕いてもまだ破片は大きく、「英雄」1隻の
ショック・カノンでは一撃で粉微塵にするには足りず、2~3連射が必要だった。

「栄光」が健在なら2隻での連携射撃でかなり大きな破片でも一撃で粉微塵に出来、地球上にまで達する
遊星爆弾は無くせるものを・・・。

「英雄」1隻でどこまで持ち堪える事が出来るか・・・。 


山南大佐は遊星爆弾が飛来する方向の宇宙空間を何時までも見詰めていた。

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 ガミラス側も初めて体験したショック・カノンの威力に対策の必要を感じていた。

シュルツは一隻しかない砲艦に何が出来ると相手にしていなかったが、ガンツ中佐はあの砲が量産されて
それを積んだ戦艦がこの基地に襲来する危機感に囚われていた。

しかし、ここは前線基地、仮に新技術は開発出来ても量産は出来ない。

それでもガンツ中佐は撮った記録を技術士官に見せ、対抗策を講じる様、命令を下した。

限られた技術しか使えない技術士官達は困ったが、何とか対策を一つ生み出す事に成功した。

もともとガミラスの艦隊主力は駆逐型デストロイヤーと呼ばれる汎用の戦闘艦で量産が効くのと同時に
この大きさの戦闘宇宙艦としては非常に重防御で、小型戦艦、ないしは重防御駆逐艦と呼べるものであった。

これは地球側には無い艦種で地球側は戦艦だと思っていた位である。

この地球の戦艦には無い、高機動、強兵装、重防御は地球側の知らないオーバー・テクノロジーに
由来していた。

それはエネルギー転換型装甲だった。

ガミラス艦の装甲は単なる金属板ではないのだ。

エネルギーを与えれば与える程、強度が増すしろものだった。

もちろん、発生エネルギーには限りがあるから絶対無敵の装甲にはならないのだが、それでも通常の装甲
とは違って、発生出来るエネルギーに限りがある軍艦のエネルギーの効率的運用を可能にする技術だった。

つまり、航宙時は推進機関に多くエネルギーを廻し、攻撃時には兵装に、防御時には装甲にエネルギーを
廻すという方法で限られたエネルギーをより効率的に使うという思想のもと、量産された傑作艦だったのである。

但し、航宙、攻撃、防御、それぞれの行動時その部分の分配比率が増すだけで、航宙時には攻撃も防御も
出来なくなる訳ではなく、普通、航宙時、航宙に6、攻撃に2、防御に2、位の割合でエネルギーを分配していた。

戦闘時は 攻撃に3、防御に4、航宙に3、位の分配だった。

しかし、これではショック・カノンの攻撃に耐えられそうも無かった。

そこでガミラスの技術士官のひとり、ミッターマイヤー技術少佐の班は思い切った案を出した。

地球艦隊を迎撃する必要があるのは冥王星近傍の空間での戦いだけである。

他の空間、例えば木星宙域に地球艦艇が進出して来た場合は機動部隊で充分対抗出来ると考えたのだ。

冥王星近傍での迎撃戦に戦いを限定すればガミラス側は圧倒的に有利になる。

地球から冥王星を攻撃するには地球艦隊はワープ出来ないので長躯遠征しなければならず、機動部隊に
よる斬減作戦が使える。

更に、地球艦隊は冥王星にまで達する事が出来ても、帰還を考えると高機動は出来ない、すなわち航宙能力が
限定されると言う事だ。

こうした事を考えると航宙能力を落としてより装甲にエネルギーを廻す事が出来そうだった。

その案を部下から聞いたミッターマイヤーは更に大胆な改良をガンツに進言した。

それは冥王星空域まで遠征して来た地球艦隊の迎撃時、エネルギー転換装甲の転換率を100%にすると言う
ものだった。

地球艦隊は長躯、遠征して来ているので高機動は出来ない、それならば装甲と兵装にエネルギーの大半を
廻してしまい、更に防御時には装甲に100%のエネルギーを、攻撃時にはフェーザー砲に100%の
エネルギーを廻してしまうと言うものだった。

攻撃時には装甲板は本来の金属板の耐性しかなくなるが、もともとが軍用艦なので構造強度を上げる目的で
厚めの外板を持っていたため、そこそこの防御力を発揮する事が期待された。

この案はガンツ中佐のみならず、シュルツ司令にも承認され、実行に移された。

そしてこの改良は地球防衛軍にとって致命的な損害を与える事になるのである。

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「沖田君、この作戦計画、本気かね?」藤堂長官は額に汗を浮かべながら言った。

前回、沖田を批判した伊地知総参謀長ですら、息を呑んで何も言えなかった。

「ええ、私としてもこんな無茶な作戦はやりたくありませんが、物理法則には勝てません。 

それだけ、冥王星が遠いという事です。」 沖田はガミラスを攻撃する作戦を説明し終わるとスクリーンから
振り向いた。

沖田提督の出した案は遠征艦隊の各艦に推進剤の増装を出来るだけ沢山付けるだけではなく、兵装を
極力降ろして艦の軽量化を図るというものだった。

今、地球防衛軍、(といっても日本艦隊だけであったが・・・)が派遣出来るのは戦艦1、突撃駆逐宇宙艦15隻
が精一杯だった。

突撃駆逐宇宙艦の主兵装は誘導弾なので決定的な戦力の低下にはならないが、戦艦「英雄」は
フェーザー砲を大半降ろしてショック・カノンと誘導弾のみに兵装を絞ろうと言うものだった。

伊地知総参謀長は沖田提督の覚悟に呑まれながらも反論を述べた。

「こ、この作戦には一つ欠点があります・・・な。」

いぶかしげな藤堂長官の顔つきを無視して彼は言葉を続けた。

「ショック・カノンは外して行って下さい。 もし「英雄」が撃破された時、ガミラスに秘密が漏れたら、
「箱舟」計画に支障を来たします。」

「いい加減にしたまえ! 伊地知総参謀長! そんな詰まらん事に拘っていたら成るものも成らんぞ!!」流石に
藤堂長官は怒った。

しかし、沖田提督は達観していた。

「確かに機密は漏れては困りますな。 どの道、ショック・カノンでは艦隊戦は難しい・・・。フェーザー砲塔1基と
誘導弾でガミラス艦隊に立ち向かう事にします。 それとこの作戦、実は陽動です。」

沖田は思わぬ事を言った。

「陽動・・・!?」藤堂と伊地知は二人ともあっけにとられた顔をした。

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 三日前、沖田提督は地球防衛軍本部から帰る途中、地球防衛軍技術部に寄った。

そして、真田技術少佐に面会した。 「真田君、どうかねガミラス艦の駆動機関の解明は進んでおるかね。」

「はあ、解明は済んでおり、理論は確率したつもりですが、実動試験が禁じられているので、それが本当に役に
立つものなのか、判らない状況です。」真田は唇を噛んだ。

「やはり「箱舟」計画優先か・・・。」沖田の頭の内には伊地知総参謀長の顔が浮かんだ。

「地球防衛軍上層部は「箱舟」計画をぶっつけ本番でやるつもりなのでしょうか? ワープは空間を弄る
技術です。

小規模な実験を行って何が起こるか、確かめないと危険すぎます。」 真田は幾ら伊地知総参謀長に
説明しても聞いてもらえなかった不満を沖田提督にぶつけた。

「そこだ、もしワープに失敗した場合、何がおこるのかね?」沖田は真田の思いもしない事を聞いた。

「ワープ機関の規模にもよりますが、もし、「箱舟」クラスの船がワープに失敗すると3次元と4次元の間に
挟まってこの宇宙そのものが消し飛ぶ恐れがあります。 だから小規模な実験がどうしても必要なのです!」

真田は沖田に詰め寄った。

「箱舟」が地球を脱出した後、ガミラスの追撃を振り切るためにワープした時、もしワープに失敗すれば自らが
爆沈するに留まらず、この宇宙そのものを道連れにする危険があるのだ。

伊地知総参謀長はそうなれば憎いガミラスも同時に滅ぼせるのだから本望だとうそぶいていた。

「ガミラスがワープを実用化している以上、その危険は少ないな。 もし、その危険が深刻なものならガミラスに
よってとっくにこの宇宙は消滅しているはずだ。」 物理学者でもある沖田提督は落ち着いて分析してみせた。

「総参謀長も同じ意見でした。 提督、提督も小規模実験には否定的なのですね。」真田は残念そうな顔を
隠さなかった。

「確かにわしも単なる実験には否定的だ。 しかし、君の技術は実戦に使ってもらいたい。 実は今日は
その相談に来たのだ。」沖田は真田の思わぬ事を言った。

「実戦・・・ですか?」沖田の大胆な発想に舌を巻く真田であった。

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 「地球最後の防衛艦隊の行動が陽動? どういう事かね? 沖田君」藤堂長官はいぶかしげに沖田に問うた。

「はい、長官、我々は遊星爆弾による戦略核攻撃に絶滅寸前に追い詰められています。

しかし、戦略攻撃はなにもガミラスの専売特許ではありません。

こちらも長距離誘導弾を用意して敵の遊星爆弾のコントロール中枢を戦略攻撃するのです。

そしてその誘導弾弾の到達時間と艦隊攻撃の時間を微妙にズラせば、艦隊の攻撃に気を取られたガミラスは
本命の誘導弾の攻撃を迎撃出来ないだろうと考えられます。」

沖田は大胆な作戦を口にした。

「まだコントロール中枢の場所は冥王星のどこだか特定できていないはずだが・・・。」藤堂長官は大きな疑問を
沖田にぶつけた。

「長官、伊地知総参謀長がそれを掴んでいないはずはないではありませんか、そうでしょう。総参謀長!」

「もちろん、掴んでいますとも、でなければ地球最後の防衛艦隊はどこへ向かえば良いのか、
判らなくなります。」伊地知総参謀長は判明したガミラス冥王星最前線基地の場所を慌てて付け加えた。

「それでは作戦の詳細の検討に入ってくれたまえ。頼むぞ!沖田君」藤堂長官は沖田提督に命令した。

                                                     ヤマト発進まで153日
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by YAMATOSS992 | 2012-06-23 21:00 | 本文 | Comments(0)