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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

25.冥王星会戦 出撃編

 「日本の地下都市には夜があるのね。」フローラーはホテルの窓辺で外を見ながら言った。

<姉貴はロマンチストだからな。俺は燦々と太陽が照っていたっていっこうに構わないぜ。>公園のベンチに
座った、フレイヤは古代守の左腕に顔を埋めながら心の中でうそぶいた。

「まさか君が来てくれるとは思わなかったよ。 ワルキューレ・・・。」 守は天井を見詰めながら言った。

<その名前で呼ぶのはやめて・・・。あなたまでヴァルハラに送りたくない・・・。>フローラーは頭を振った。

ヴァルハラとは北欧神話に出て来る大神オーディーンの宮殿である。

戦死した勇者の中でも勇猛な勇者がオーディーンによって選ばれ、その魂を迎えにゆくのがワルキューレと
呼ばれる女神達なのである。

本来、フローラー・ライニック大佐、フレイア・ライニック中佐は欧州連合軍の重巡艦長である。

二人はフローラーがシャルンホルスト、フレイアがグナイゼナウを指揮して2隻で戦隊を組み、土星宙域で
土星から採取した水素とメタンの資源を冥王星へ運んでいたガミラスの輸送船団を狙って通商破壊戦を
挑み、1年半もの長きに渡ってガミラスを悩ませた実績を持っていた。

二人は、補給の為、訪れた木星のエネルギー・プラントで古代守に出会った。

しかもその時、古代は「ゆきかぜ」で宇宙空間を漂っていた。

ガミラスの通商破壊艦隊を撃滅したが自らの艦隊も推進剤切れで漂流する羽目に陥っていたのである。

呆れた二人であったが、フローラーは推進剤をプラントまで辿り着ける量、分けてやった。

 プラントに着くと僅かな暇を盗んで何事にも積極的なフレイヤは直ぐに古代守に粉をかけた。

本来なら単なる恋人同士になるはずだった。

しかし、ライニック姉妹は普通の姉妹ではなかった。

守は知らないがフレイヤ姉妹は二人で一人なのである。

恋心など強い感応力で直ぐに判ってしまう。

フレイヤもまた姉のフローラーが守に強い恋心を抱いているのを感じていた。

無理も無い、二人は大型戦闘艦の艦長とはいえ、まだ20代の女性なのだ。

だが古代守の心にはすでに一人の女性が住んでいた。

彼女はもはやこの世の人ではない。 ガミラス遊星爆弾の犠牲になったのだ。

守は彼女に地球防衛のためその身を捧げる事を誓っていた。

愛を告げるフレイアに守はその事をはなし、フレイアの愛を受け入れられない事を告げた。

<死んだひとに何を義理立てしているの!>フレイアはもう少しで叫びそうになった。

しかし、フローラーの心がそれを押し止めた。

<この戦いは苦しい、絶望的ですらあるわ。 戦い続けるには、誰しも理由が必要なのよ。>

<俺達の理由は、いや俺の理由はどうなるんだい!>去ってゆく古代守の後姿を見詰めながらフレイアは
思った。

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 「真田君、紹介しよう。 欧州連合の防衛軍、フローラー・ライニック大佐とフレイア・ライニック中佐だ。

今回の奇襲作戦で君を作戦宙域まで運んでくれる。」沖田は真田にライニック姉妹を紹介した。

「真田さん? 欧州連合でもお名前は窺がっております。 今回、作戦に協力出来て嬉しいですわ。」
フローラーが挨拶した。

「残念ながらまだ、作戦の詳細は発表出来ない。 しかし、少数精鋭である君達の協力が是非必要なのだ。」
沖田は辺りに気を配りながら言った。

ここは防衛軍の施設ではなく、地下居住区の片隅だった。

何故、沖田は会見の場を防衛軍施設内にしなかったのか、ライニック姉妹は不審に思った。

しかし、真田は技術者らしく、説明を始めた。

「沖田提督のおしゃる通り、詳細はまだ、話せません。 しかし、大まかなお話はしておかねば、お二人の
協力は得られません。」

「今回、我が地球防衛軍、日本艦隊は全力をもって、ガミラス冥王星前線基地を攻撃します!」

ライニック姉妹は息を呑んだ。

「冥王星! 無茶だ。あんな遠くで行ける軍艦は無い!」 フレイアは思わず叫んでいた。

「沖田提督、まさか武装を降ろして、航続距離を伸ばすつもりですか?」フローラーは落ち着いてはいたが、
その声には非難がこめられていた。

確かに今の日本艦隊の艦艇でも積めるだけ推進剤の増装を積み、武装を降ろして軽量化に努めれば辿り
着けない距離ではない。

しかし、それではただでさえ性能に差のあるガミラス艦隊とどう戦うと言うのだ。

「これは日本の伝統、特攻じゃないのかよ?」フレイアは抗議した。

「そうだ、この作戦だけしか行わなければ・・・な。 この遠征は陽動だ。 本命は別にいる。」沖田は落ち着いて
応えた。

「陽動? まさか本命と言うのは・・・。」フローラーが戸惑いを見せた。

「真田君と君達だよ。」沖田は事も無げに言った。

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 欧州連合の重巡、シャルンホルスト、とグナイゼナウで編成された特別遊撃艦隊がひっそりと地球から
旅立ってから三日後、艦隊は火星と木星の間に散らばる小惑星帯に到達していた。

「やれやれ、艦長席とは随分座り心地の悪い椅子だな。」大山はグナイゼナウの艦長席に座らされていた。

「贅沢だぜ。 大山さん、計器の付いている席で今開いているのはそこだけだ。

そこはこの艦のあらゆる部署からの情報が一点に集まる唯一の場所、お客さんのあなたには都合が
良い場所じゃないのかい?」フレイアは主躁艦席からおかしそうに話かけた。

確かにここに座っていればこの艦の内外の状況は手に取る様に判った。

これから大山は冥王星前線基地戦略攻撃の指揮を執るのだ。

ここは小惑星帯だが決して岩塊が密集して漂っている訳ではなかった。

宇宙空間の他の宙域に比べれば漂っている岩塊が濃いと言う程度であったが、それでも複数の岩塊が
数個、固まって漂っている所もあった。

大山はそうした小惑星密集帯の一つに艦隊を着けさせた。

「これから本作戦の詳細を説明します。」大山は作戦室に集まったライニック姉妹他、艦隊幹部士官を
一通り見渡した。

「まず初めに本来、来るはずだった真田技術少佐は防衛軍ドック関係者に大幅な欠員が出たため、転属に
なってしまいました。

私は「箱舟」計画の実務責任者、大山技術大佐、今回、私が本作戦を指揮します。」

「「箱舟」計画?」フレイアが不振な顔をした。

「大佐!それは軍機です!!」部下が慌てて制した。

「お偉方が何と言おうとかまわん! 我々の間に秘密があっては本当の協力は出来まい!」分厚いメガネの
レンズの下には男の目があった。

フローラーは古代守とは違った男の魅力に頬を赤らめた。

大山は語った。

地球防衛軍、日本艦隊では迫り来る地球滅亡の時に備えて地球脱出計画を立てている事。

その「箱舟」のエンジンとして捕獲したガミラス艦のエンジンを拡大コピーした物を積む予定である事。

そのエンジンは超光速航行を可能にするワープの技術が使われている事。

そのエンジンの解析は終わっており、理論は確率した物の、実地試験を行わないと真に実用化出来ない事。

今回の戦略攻撃はその実地試験を兼ねたものである事を告げた。

「その「箱舟」とやらで日本人だけが逃げるつもりなんだな?」フレイヤが詰問した。

「知らん!」大山はただ一言、言って笑った。

「少なくとも俺は乗るつもりはない。 俺の分、人なりDNAデータなり積んでいけばいいさ。」

<男の決めた事 ・・・か>

「負けよ。 フレイア 、さあ大山大佐、作戦の説明を続けてちょうだい。」フローラーは大山を促した。

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同行してきた工作艦「明石」から技術者達が出てきて宇宙空間に六角形の構造物を作っていた。

<あれがワープ・ゲートになるのね。>フローラーは自分達の作戦の要になる装置の建設を見やった。

「姉貴、俺たちの作戦宙域はもっと冥王星よりだぜ。 そろそろ出発しなければ予定時刻に遅れちまうぜ。」
フレイアが急かした。

「そうね。私達は私達の仕事をしましょう。 ゲルハルト、作戦宙域へ前進半速!」フローラーの命令を受けた
バルクホン大尉はシャルンホルストを巡航速度まで加速させた。

 今回のガミラス冥王星前線基地に対する戦略攻撃は極秘である事を必要とした。

万が一にも地球側がワープ技術を手にしている事をガミラスに知られてはならないのだ。

そのため、発射される戦略誘導弾は通常のミサイルではなく、ガミラスと同じ遊星爆弾を使用する事になった。

そしてワープ機関は遊星爆弾にではなく、ワープ・ゲートとして宇宙空間に設けられた。

工作艦「明石」は火星ー木星間にある小惑星帯から岩塊を加速、ワープ・ゲートを使って冥王星近傍に岩塊を
運ぶ。

超空間を潜りぬけた遊星爆弾は楕円軌道を描きながら冥王星前線基地を襲うはずだった。

シャルンホルストとグナイゼナウは航続距離の許す限り、冥王星に近づいて弾着観測を行うのだ。

単に攻撃だけで良ければ弾着観測は必ずしも必要ではない、しかし、今回は「箱舟」のエンジンの実用化と
いう大きな使命があった。

危険を冒してでも弾着観測は絶対に行わなければならなかった。

そしてライニック姉妹にとってははもっと大きな意味があった。

日本艦隊の残存艦全てによる陽動作戦である。

<一体、何隻が帰れるのだろう・・・。>楽観的なフレイアですらその任務の困難さに顔を曇らせた。

日本艦隊には古代守の「ゆきかぜ」も参加する事を姉妹は確信していたからである。


                                                     ヤマト出撃まで145日
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by YAMATOSS992 | 2012-06-24 21:00 | 本文 | Comments(0)