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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

26.冥王星会戦 奇襲編

 「冥王星まで距離3万km、ガミラス艦隊の姿はありません。」探査主任が定時報告をした。

沖田はそれを聞きつつ、ガミラス艦隊の出現を確信していた。

<奴等は狡猾だ・・・。前方から表れるとは限らん。>

しかし、沖田は<このままガミラス艦隊の迎撃を受けずに冥王星の地表付近に侵入出来れば・・・。>と
いう、希望的観測に心が揺れた。

この作戦は戦略遊星爆弾攻撃のための陽動作戦ではあったが、沖田は本気で冥王星前線基地を攻撃する
つもりだったからだ。

冥王星前線基地から冥王星地表上で約2000km離れた地点の上空、約1000mの高度で進入を開始する、
この時点ではまだ、冥王星地表上にガミラス前線基地の姿は見えない、そのままの高度でガミラス基地を
目指して突撃駆逐宇宙艦を突撃させ、地平線にガミラス基地が確認出来た所で突撃駆逐宇宙艦は反物性
ミサイルではなく、反物質ミサイルを15隻で3基、計45基もの反物質ミサイルで基地の施設破壊を狙うのだ。

迎撃に上がってきた敵艦は戦艦「英雄」がフェーザー砲で迎え撃つ、冥王星まで遠征するために必要な
推進剤を出来るだけ多く積むため「英雄」は12門あるフェーザー砲のうち、9門を降ろしていた。

外観上は砲塔は残っていたが中身は抜き取られ、推進剤タンクに置き換わっていた。

エンジンを「箱舟」計画で使用するエンジンの技術を応用して出力を50%上げる事に成功していたので
フェーザー砲塔1基3門でもガミラス戦艦の装甲を貫けるはずであった。

配下の突撃駆逐宇宙艦は元々、外装式の補助タンクを付けられる構造になっていたのでその補助タンクを
大型化、ミサイルを殆ど下ろして反物質ミサイルを1連射出来るだけにしていた。

「英雄」の大改装で装備した3門の18インチ・ショック・カノンは機密保持のために降ろして来ていたが、
伊地知の言うとおり、「箱舟」計画で使用するテクノロジーは出来るだけ秘密にしておくべきだと沖田も
思った。

もっとも重量の制約上、ショック・カノンを残すとフェーザーは全門降ろさなければならなかったので沖田と
してもより融通が利くフェーザーを採らざるを得なかったのが本音だった。

「ガミラス艦隊出現、超弩級戦艦6、巡洋艦8、護衛艦多数、高速接近中!」探査主任から報告が入った。

この時、迎撃してきたガミラス艦隊に戦艦はおらず、駆逐型デストロイヤーが最大の艦だったが、
地球艦隊にして見れば、重防御型駆逐宇宙艦という地球には無い艦種は超弩級戦艦に等しい存在だった
のだ。

「総員戦闘配備、砲雷撃戦用意!」沖田の凛とした命令が飛ぶ、そこへ敵艦隊から通信が入った。

「地球艦隊ニ告グ。直チニ降伏セヨ!」その内容は地球軍を馬鹿にしたものだった。

「返信はどうしますか?」通信士が間の抜けた事を言ってきた。

「『馬鹿め!』と言ってやれ・・・。」沖田はその通信士の事を含めて言った。

「はぁ?」通信士はまだ自分の間抜けさに気付いていなかった。

「『馬鹿め!』だ!」さすがに沖田も声を荒げて命令した。

「地球艦隊より返信!『馬鹿め!』、どうぞ。」その通信士は何処までも空気の読めない男だった。

沖田はガミラス艦隊とのその奇妙な遣り取りに苦笑した。

<しかし、この調子ならもしかしたらガミラスの裏をかけるかもしれない・・・。>沖田は僅かな希望を持って
ガミラス艦にフェーザー砲攻撃を命じた。

射撃指揮システムがガミラス艦を捕らえ、照準プログラムが走る、「撃て!」沖田の命令一下、「英雄」に
残された砲塔1基、3門の14インチフェーザー砲がビームを吐き出し平行した単縦陣を作っていたガミラス
艦隊の1番艦に命中した。

しかし、50%も出力が増していたにも係わらず、「英雄」のビームは空しく跳ね返された。

<何! こんなはずでは・・・。>沖田は心の中で狼狽したが、さすが老勇、微塵もそれを顔に出さなかった。

ガミラス艦隊の反撃が開始され、多量の推進剤の質量に足をとられ、身動きがままならない地球艦隊は
次々とガミラス艦のビームの餌食となっていった。

このビームも沖田が今まで戦ったどのガミラス戦艦より強力だった。

只の一撃で「ゆきかぜ」型突撃駆逐宇宙艦が爆沈してしまうのである。

<これではまるでマリアナの七面鳥撃ちだ・・・>沖田はグッと唇を噛んだ。

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フローラーはシャルンホルストの射撃指揮席でカール・ツァイス製の大望遠鏡で冥王星方向を観測していた。

幾つかの光点が煌いた。

「始まったわ! 日本艦隊がガミラス艦隊と交戦し始めたわ!」フローラーは大山に告げた。

「『桃、投げる』、「明石」が第一弾を放った。」大山はグナイゼナウの艦長席で「明石」からの暗号超光速通信を
受けた。

「少なくとも、超光速通信は使えそうだな!」フレイアがはるか数十光分、離れた工作艦「明石」からの通
信成功を喜んだ。

しかし、一向に予定宙域には遊星爆弾は出現して来なかった。

「失敗か! 通信士! 「明石」からの通信は入ってこないか?」大山は応急の配線で蜘蛛の巣だらけの様に
みえる通信席へ呼びかけた。

「はい、何も言って来ません。」通信士は大山に告げた。

<やはり、あの突入速度ではワープ・ゲートに入っても超空間を抜けられず、中にに閉じ込められたままに
なったな・・・。>大山は確信した。

<『桃、投げる』の暗号を打って来た以上、「明石」は超空間に消える遊星爆弾を観測しているはずだ。>

「通信士、『醜女、防げず。』と「明石」に連絡を!」大山は通信を命じた。

「了解!『醜女、防げず。』と連絡しました。」通信士が報告する。

この暗号は第二弾を予定の角速度で打ち出す事を司令するものだった。

工作艦「明石」の艦上で通信を受けた森田技術大尉は遊星爆弾のワープ・ゲート突入速度を予定通り
上げる様に指示した。

再度、『桃、投げる。』の暗号連絡が来た。

しかし、今度も遊星爆弾出現予定宙域には何も現れなかった。

<おかしい! 今度は角速度も充分なはずだが・・・。>大山はいぶかしんだ。

「遊星爆弾発見! 冥王星を飛び越えているわ。」 フローラーが行方不明の遊星爆弾を見つけた。

シャルンホルストやグナイゼナウの本来の任務は通商破壊である、大遠距離での測的はお手の物だった。

しかもフローラーは地球防衛軍一の好射撃手だ。

普通の艦や測的手には見つけられない目標も見つけられるのだ。

大山は頭を掻き毟った、辺りにフケが飛び散る。

「おいおい、俺の船をあんまり汚さないでくれよ。」フレイヤは顔をしかめた。

「通信士、シャルンホルスト、ライニック大佐を呼び出してくれ!」フレイヤに構わず大山はフローラーへの
連絡を要求した。

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沖田の耳には次々と味方突撃駆逐宇宙艦、爆沈の悲報が入る、<もう、やめてくれ!>沖田は自分の作戦の
失敗で次々と味方艦が失われてゆくのが耐えられなかった。

しかし、老勇、沖田はこんな時どうするべきか、は骨の髄まで知っていた。

まだ若かりしころ、内惑星戦争の時、その当時、敵だったドイツ艦隊のシェーア大佐(元地球防衛艦隊総司令、
木星会戦で戦病死)と剣を交えた時、優勢だった日本艦隊は只一隻残ったシェーア大佐の指揮する戦艦と
支援の宙雷戦隊2個に戦線をかき回され、日本艦隊は旗艦を撃沈されてその他の艦も大破、中破が
続出するという敗北を喫してしまったのだ。

あの時、日本艦隊はドイツ艦隊をほぼ壊滅させ、勝利まで後一歩という所までシェーア大佐を追い詰めていた。

しかし、シェーア大佐は自分の艦を盾にして2個の宙雷戦隊を日本艦隊の真近まで接近させ、そこで
宙雷戦隊を日本艦隊に突撃させて戦局を逆転させたのだ。

もちろん、シェーアの指揮していた戦艦「ラインラント」は旧式ではあったがドイツ艦らしい重防御を誇る艦だ。

しかし、その性能をフルに発揮させたのはシェーア大佐の力量だった。

この時の体験は沖田に不屈の精神の重要さを再認識させ、彼はシェーアを敵ながら尊敬出来る提督として
一目置かせていた。

だから、シェーア大将が地球防衛軍の総司令官に選ばれた時、その下で働ける事を本当に喜んだものだった。

<起死回生の手はないものか?>沖田は自問したがその答えは外からもたらされた。

「突撃艦17号、ガミラス突撃艦を1隻撃沈!」味方艦から戦果の報告が始めてあった。

「誰の船か?」沖田は問うた。

「護衛隊長、古代の『ゆきかぜ』です。」 沖田は出撃前の呉ドックで激しく言い合った青年を思い出していた。

「反物質ミサイル1連射しか搭載しないなんて私には考えられません。!」古代守は沖田に詰め寄った。

「私は護衛隊長です。 私の『ゆきかぜ』だけでももう1連射、反物性ミサイルを積む許可を下さい。」
古代守は戦艦「英雄」を護衛する護衛隊長に任じられていた。

反物質ミサイルでも艦隊戦に使えない事はなかったが、ガミラス戦艦の装甲は厚かった。

だから、古代守はどんなガミラス艦でも撃破出来る反物性ミサイルの搭載を強く望んだのだ。

「だめだ! 今は1隻でもガミラス基地に反物質ミサイルを叩きこめる艦が欲しい。 それに幾ら増装をつけても
重い反物性ミサイルを積んだら帰りの推進剤が足りなくなる! 我々は特攻しに行く訳ではないんだぞ!」

そう言うと沖田は自分の乗艦、「英雄」に向かったのだが、古代守は沖田の背に意味深長な言葉を
投げかけていた。

「提督、あなたはあなたの思惑で動けばいい、私は私で好きにさせてもらいます。」・・・と。

<古代め、今、ミサイルを使ってしまってはガミラス基地攻撃時に撃つミサイルが無くなるではないか!>

沖田は「ゆきかぜ」がなけなしのガミラス基地攻撃用のミサイルを使ってしまったものだと思ったが、
本当は古代守は「ゆきかぜ」の整備状態が悪く、帰還が望めないのを知り、帰りの分の推進剤の搭載を全て
とりやめ、その分、積めるだけの反物性ミサイルを積んでいた。

「さぁ、次の獲物を片付けるぞ!」部下達に声を掛けて古代守の指揮する突撃駆逐宇宙艦「ゆきかぜ」は
ガミラス艦隊の只中に分け入っていった。

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 大山とフローラーは協議を始めた、フレイヤには二人が何を言っているのか、まるで判らない、
本来、士官学校を出ているのだからフレイヤも全くの素人と言うわけではなかったのだが、それでも
さっぱり判らなかった。

<それでいい>フレイヤは自分の分担は躁艦だと割り切っていた。

彼女は一度、操縦桿を握れば重巡、グナイゼナウで航宙戦闘機も振り切れる自信があった。

大山とフローラーの協議が終わった。

大山は今度は超光速通信で工作艦「明石」を呼び出す様に命じた。

そして平文で長々と指示をだした。

「知らねえぞ・・・。ガミラスに見つかっても!」フレイヤは嫌味を言った。

大山はそれには構わず、シャルンホルストに注視した。

シャルンホルストの両舷に突き出た三連双二段に重なった12門の11インチ主レーザー砲塔がゆっくりと廻る。

そして、止まると同時に12条の大口径レーザー・ビームが宙を切り裂いた。

そのビームの到達点に「明石」が発射した遊星爆弾があった。

レーザー・ビーム着弾の衝撃で僅かに軌道を変えた遊星爆弾は冥王星前線基地への直撃ラインに乗った。

「離脱!」大山は命令を下した。

「おい、待てよ! まだ命中するかどうか判らないじゃないか!」フレイヤは抗議した。

<大丈夫よ! 私を信頼なさい。 フレイア >フレイアの頭の中にフローラーの声が響いた。

フレイヤが振り向いて艦長席を見ると大山が親指を突き立てていた。

ワープの実験は大成功だった、後は地球の遊星爆弾がガミラス前線基地に命中してくれる事を祈るばかりだ。

第1特務戦隊は全速力で地球圏を目指して脱出して行った。

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 「第1特務戦隊から連絡あり、暗号、『黄泉比良坂(よもつひらさか)閉じる!』です。」通信士から報告が
入った。

「おおっ!ワープ実験が成功したな!」沖田は思わず機密事項を口に出してしまった。

しかし、今、必死で戦っている部下達はそんな事を気に留めていられる状況ではなかった。

「我々の艦隊はあと何隻残っているか?」沖田はおもむろに呼ばわった。

「突撃艦が1隻です。」 「誰の船か?」「護衛隊長、古代の『ゆきかぜ』です。」

「これまでだな。 撤退しよう!」沖田は目的を果たせたので何時までもガミラス艦隊と戦うつもりは無かった。

「逃げるんですか!艦長!」部下が悲痛な声を上げた。

「このままでは全滅するだけだ! 撤退する。」沖田は部下達に命令した。

しかし、古代守の「ゆきかぜ」は後に続こうとしなかった。

「古代、どうした。後に続け!」沖田は『ゆきかぜ』の古代守に直接通信で呼びかけた。

「提督、申し訳ありません。 私は命令違反をしました。 『ゆきかぜ』は片道分の推進剤しか積んでいません。 

代わりに積めるだけ反物性ミサイルを積み、作戦に臨みました。

ですから、『ゆきかぜ』はもはや帰還不能なのです。

命令違反は重罪です。 罰として私はここに留まって殿を務めます。 提督は早く撤退を!」

それだけを言うと古代守率いる「ゆきかぜ」は群がるガミラス艦の只中に突撃していった。

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 今、ガミラス冥王星前線基地は勝利に沸きかえっていた。

地球軍の冥王星前線基地攻撃艦隊を退けたのだ。 

敵は旧式戦艦を残し、ほぼ全滅した。

今までの戦闘から言って当然の結果だったがそれでもガンツは嬉しかった。

<良かった! あの強力な砲を備えた戦艦は居なかった。>自分が地球人を買被りすぎていたのか、と
反省もした。

 しかし、反対にシュルツ司令は訝しげな顔をしていた。

今回の地球艦隊来襲に合わせ、新兵器、反射衛星砲も待機させていたのだが、そのコントロール・ルームから
不審な報告が来ていたのだ。

地球艦隊との会戦が始まって直ぐ、地球軍とは反対の方向から侵入して来た隕石があり、その軌道を
計算すると冥王星前線基地を直撃するコースだったので直ぐに反射衛星砲を起動、衛星反射のプログラムを
組んで迎撃、その隕石を排除した旨の報告だった。

<まさか・・・な。>シュルツはこれが地球軍の攻撃かもしれない・・・。と一瞬、疑ったが、直ぐに頭の中から
その恐れを振り払った。

<もう地球軍には抵抗する力は残っていまい。  遊星爆弾を落とし続けるだけだ。>シュルツは勝利の報告を
するため司令室で母星との通信回路を開かせた。

                                                     ヤマト出撃まで137日
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by YAMATOSS992 | 2012-06-25 21:00 | 本文 | Comments(0)