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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

30.冥王星防衛戦線

 「ガミラス艦隊探知! 戦艦4、重巡航艦2、軽巡航艦2、駆逐艦10、輸送艦と思しき大型艦を2隻伴って
います。」

広瀬艦長は土方提督の顔を見た。

土方は目をつぶって下を向き、靴先で床を突いた。

これは彼が何か、不満を持っている時のクセである。

「探知主任! ガミラスの巡航艦の区別がここからつくのか?」広瀬は探知主任にツッコミを入れた。

「はい、探知出来た巡航艦の数は4隻です。 しかし、伴っている駆逐艦の数は10隻、これはガミラスの
標準的な宙雷戦隊2個分です。

宙雷戦隊の旗艦は軽巡、すなわち探知出来た巡航艦の内、2隻は軽巡のはずです。 

そして残りの巡航艦2隻はガミラス艦隊が標準編成なら威力偵察用の重巡のはずです。」

「はず・・・か。 君の推論はいい、探知機器から得られる情報だけを伝えたまえ!」広瀬は訓練学校を優秀な
成績で出てきたはずの新しい士官にうんざりとした顔で注意した。

「まあいい、 訓練を続けたまえ。」土方は広瀬と同じ気持ちだったが、贅沢は言っていられない。

本来なら傍らにいるはずの優秀な士官候補生達は「ヤマト」に乗って宇宙の彼方だ。

土方のとりあえず、手を付けるべき任務は更に若い士官候補生達を一刻も早く使い物になる様にする事だった。

<さあーて、次はどう出る、ワルキューレよ・・・。>土方はたった2隻しかいないはずの装甲艦で仮想敵を
演じているライニック姉妹の手腕に舌を巻いていた。

幾ら新米で経験が少ないと言っても一応、訓練を積んだ探知手達である。

それを全て欺いて標準的なガミラス艦隊が本当に来襲してきたかの如く、誤情報をさりげなく流しているのだ。

これは単なる電波妨害(ECM)とは違う、電波欺瞞(EMD)と呼ぶべき高等戦術だった。

戦力的に圧倒的に劣っていた通商破壊艦隊、装甲艦2隻と軽巡4隻で土星空域を荒らしまわり、1年半に渡って
ガミラスの通商路を脅かし続けたのも判る気がした。

地球艦隊が木星のエネルギー・プラントを守り切れず、地球艦隊の行動範囲は火星以内に押し込められた
ために活躍の場を失って地球で不慮をかこっていたが、冥王星会戦を陽動として地球独自の技術だけで
行われたワープ実験に協力して後にイスカンダルから送られた波動エンジンやワープ理論の確率に
大きな貢献をしたのも彼女達だった。。

 しかし、ライニック姉妹は今回の遠征には軽巡は連れてこなかった、というより、もはや、欧州艦隊に軽巡は
いなかった。

木星会戦の緒戦等、今までの長い戦いのなかで全て失われてしまっていた。

装甲艦「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」の2隻が欧州艦隊の大型艦、最後の生残りだった。

この2隻だけでガミラス艦隊を演じて見せているのだ。

「ガミラス艦隊、更に接近、ショック・カノンの射程距離に近づきます。」探査主任が報告する。

「ショック・カノン、射撃用意! 射程距離に入り次第、『英雄』とのリンク射撃を始めろ!」土方提督が命令した。

「提督! これは訓練ですぞ! 本気で撃ったら同士討ちになります!」広瀬艦長が注進した。

「かまわん! 見ていたまえ、本物の『戦士』の戦いを!」土方はライニック姉妹の実力を先程の接触で
看破したのだ。

「敵艦隊に照準完了! 『英雄』との射撃リンク良好! いつでも射撃できます!」測的手が言った。

「撃ち方始め!」戦術長の命令が艦橋に響いた。

リンク射撃、それは複数の艦が射撃データを共有し、あたかも1隻の船が射撃する様に精度良く攻撃する
方法だ。

「英雄」の艦首と「あたご」の艦首から3本づつの18インチフェーザー・ビームが更に高エネルギーを与えられて
白色に輝きながら仮想ガミラス艦隊を襲う。

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  ( ショック・カノン砲 の リンク射撃を行う重巡・『あたご』と戦艦・『英雄』 )


「なに!」広瀬は目を疑った、先頭艦はあたかもそのビームが見えているかの様に船体をひねってかわした。

光速で走るフェーザー・ビームの射線を見切る事など人間に出来る業ではない。

それでも「英雄」と「あたご」のリンク射撃は止まず、探知している目標に次々とビームを送りこんだ。

しかし、それらの目標の位置はことごとく、「シャルンホルスト」が送り込んだ欺瞞データであった。

ビームは次々と空しく宙を切って宇宙の彼方へ消えていった。

「うぬ・・・。」闘志を剥き出しにした、広瀬艦長だったが土方はおもむろに別の命令を発した。

「全艦、対ショック、対閃光防御! 光学探知装置のスイッチは全てオフにしろ!」

「まさか、波動砲・・・って、こちらは持っていません。 敵が撃ってくるのですか!?」戦術長はあおくなっていた。

「いいから黙って命令に従え!」広瀬艦長が部下の不手際に再び切れた。

「ガミラスは波動砲をまずは持ってはこまい、安心しろ。」土方は諭す様にいった。

全員が準備を終えたその時である。

艦隊が潜んでいた小惑星の集団の、(といっても外洋より少し小惑星の比率が高いといった程度の空間
だったが・・・。)小惑星の一つが猛烈な光を発して消滅した。

「ヒエ~ッ 今のはなんです。 光学探知機器の電源を落としていなかったら全艦隊の光学探知能力が
やられる所でしたよ。」
広瀬艦長はゴーグルをかけたままだったが、今まで見た事のない爆発に驚いているのは明らかだった。

小惑星が一つ確実に消えていた、しかし、その爆発で起こるであろう爆圧は全くなく、艦隊はピクリとも
揺さぶられなかった。

その小惑星の全質量は全て光子に変換されて飛び散ったのである。

光子に質量はない、だから爆風を生む事はないが、もし、光学探知装置が生きていたらその受光部は
たちまち焼けきれていただろう。

「これが『転移砲(ワープ・カノン)』だ。 波動砲の対極にある兵器だよ。」土方は感慨深げだった。

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 「判っておろうな! ヒルテン大佐、冥王星の基地奪還は我が帝国の名誉に係わるのだ。 幸い、基地を
落した「ヤマト」は今、我がバラン星基地を目指して航行中だ、太陽系内にはもはや我々に抵抗するだけの
戦力は残っていまい!

必ずや冥王星基地を奪還し、速やかに地球に対する遊星爆弾攻撃を再開するのだ。」
銀河方面軍作戦司令長官、ゲールは新たに太陽系方面司令に任ずる予定のヒルテン大佐に激をとばした。

「はっ! デスラー総統万歳!」ゲールの命令に敬礼で応えるヒルテン大佐だったが、部下の作戦参謀であり、
副指令予定のグルト少佐はこの作戦は慎重をきすべきだと思っていた。

あの冥王星基地をたった1隻で滅ぼし、脱出したガミラス艦隊も悉く沈めた「ヤマト」を作った地球陣営・・・。

絶滅寸前のところで、この反撃である、他の勢力の助けがあったとしか、思えなかった。

かと言って、ガミラスが今、戦っている他の勢力は有力なものでもとても他星系の援助を出来るものは無い。

と、すれば、地球に救援の手を差し伸べたのは全く未知の勢力だという事になる・・・、それもかなり強大な
勢力だ。

これは「ヤマト」などとは比較に成らない大問題だった。

<ともかく、冥王星の奪還作戦は相手の出方を良く見極めて行う必要がある・・・。>グルトは重巡による偵察を
まず行う様、進言した。

しかし、ヒルデンは違っていた。

「もはや、太陽系は青気吐息だ。 『ヤマト』がいれば話は別だが、今の状態で我々に抵抗出来る力などあろうはずがない!」そう言って艦隊を航行編成のまま、堂々と太陽系の方面へ進めていった。

確かにヒルデン艦隊は大型戦艦こそ、いなかったが、駆逐型デストロイヤー4隻、重巡6隻、軽巡に率いられた
宙雷戦隊4個とかなり有力な艦隊で「ヤマト」がいない今、普通に考えれば、冥王星を再奪還するには
充分な戦力と言えた。

グルト少佐は他星系勢力の干渉の可能性を訴えたが、<そんな兆候は何処にもない!>と相手にして
もらえなかった。

<ともかく、油断せず、王道を歩むしか、あるまい・・・。>グルト少佐は艦隊編成をしっかりと見直した。

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 「ガミラス艦隊発見、これは訓練ではない!座標・・・。」早期警戒艦の装備をそのまま残している「あたご」から
地球艦隊全軍に警報が走った。

予てからの計画通り、ライニック姉妹の第1偵察戦隊が飛び出してゆく。

2隻の装甲艦は他の艦とあまりに設計思想が違うので土方は偵察艦隊として使う事にしたのだ。

また、「転移砲(ワープ・カノン)」を含めた新装備も機動力があってこそのものだと彼は思っていた。

「あっという間に消えていきましたね。 まるでワープしたみたいに・・・。」戦術長が感心して言った。

「お前はまだ、実際のワープを見た事がないんだな、 今のがそうだ。」広瀬艦長が得意げに言った。

「えっ、ワープは『ヤマト』しか出来ないはずでは・・・。」戦術長は戸惑っていた。

「確かに、人類史上初めてワープを成功させた船は『ヤマト』だ。 しかし今は他の船でも出来る艦もある。

特に、『シャルンホルスト』、『グナイゼナウ』の様な機動力を武器にする艦には真っ先に装備したんだ。

ただし、『ヤマト』の様に1千光年なんて大遠距離をジャンプする必要はない、1光時も跳べれば充分だがな。」広瀬は親指を立てて見せた。

しかし、1光時といったら約11億kmである、それを一瞬で跳ぶとは、今までの地球艦では考えられない
航行力だった。

「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」はその能力を目一杯使って、ガミラス艦隊の後方にワープして専位した。

<ガミラス艦隊はこちらに気付いている様子はないわね。>フローラーはフレイアに心の声で話かけた。

<確かにな、こいつら俺達を舐めきっている様だな。 少し、遊んでやるか・・・。>

<適当にしておきなさいよ。 でも、転移砲(ワープ・カノン)の射撃リンクだけは成立させておいてよ。>

<了解! じゃ、行ってくるわ!>フレイアはそう言い残すと「グナイゼナウ」をガミラス艦隊の前にワープ
させた。

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 「地球艦出現! まるでワープして来たみたいです!」戦術士官が驚きの声を上げた。

「馬鹿な! 地球艦で辛うじてワープ出来るのは『ヤマト』だけだ。 探知手! お前が接近を見逃したのだろう!」ヒルテン大佐は部下を叱咤した。

「司令! 敵艦が突撃してきます。 迎撃命令を!」グルト少佐が迎撃を促した。

しかし、部下達は「グナイゼナウ」の突撃の凄まじさに耐えられず、迎撃命令が出る前にフェーザー砲を
撃ちかけた。

だが、フレイアは「グナイゼナウ」を単座戦闘機の様に操って次々とビームを避け、あっという間に
ガミラス艦隊の只中に侵入していた。

こうなるとガミラス艦隊は同士討ちを恐れて攻撃出来ない。

反対に「グナイゼナウ」にとっては周り中、的は選び放題だった。

しかし、「グナイゼナウ」は沈黙したままだった。

「そうか! 『ヤマト』以外の地球艦はこちらの装甲を破れるフェーザー砲を持っていないんだな!」
ヒルデン大佐は狂喜した。

「右舷の艦艇の相対位置を下げさせます。 そして、左舷の艦艇に攻撃させましょう。」グルト少佐が進言した。

「よし、それで行こう! 地球艦め、お前の運命もこれまでだ、覚悟しろ!」ヒルデン大佐はグルト少佐の意見を
始めて取り入れた。

右舷のガミラス艦隊が相対位置を下げ始めたのを見て、フレイアはガミラスも地球も考える事は同じだと思った。

<姉貴、用意はいいか、ガミラスはこっちの思う様に行動してくれているぜ。>フレイアは姉に呼びかけた。

<判ったわ、敵艦の位置情報はリンク・システムで全部把握したわ。 そちらも光学探知装置を閉まって。>
フローラーが応えた。

<よし、全部閉まった、いつでもいいぜ!>フレイアの思考が終わるか、終わらない内にガミラス艦の砲撃が
始まった。

フェーザーを撃ちかけて来たのはガミラス艦の中でも大口径の砲を持っている重巡航艦であった。

そのフェーザーの口径は39.9cmもあった、しかし、「グナイゼナウ」も主装甲面、一番装甲の厚い艦底部を
そちらに向けていたのでガミラス重巡のフェーザーも弾き返した。

だが、さすがのフレイアも大口径フェーザーの命中で艦が揺さぶられるのは気持ちの良いものでは無かった。

<姉貴! 早くしてくれよ! こっちはそう持たないぜ!>

フレイアの悲鳴に応えるかの様に攻撃を加えてきていたガミラス艦隊の先頭艦が猛烈な光に包まれた。

ヒルデン大佐は自分の艦のスクリーンがいきなり、真っ黒になり、何も写らなくなったのに驚いた。

「一体、どうしたのだ! あの地球艦はどうしたんだ!」

「判りません! 外部監視カメラを切り替えてみましたが、外周のカメラは全部、死んでいます!」

<あの光がカメラを殺したのか・・・。 それにしても反対舷の右舷のカメラも殺すとはなんと強い光なんだ。>
グルト少佐は驚嘆したが、まさか、カメラだけではなく、艦隊そのものに損害が出ているとはさすがの彼も
思わなかった。

5分後、ヒルデン艦はようやく、予備カメラに切り替える事が出来たが、そこに写った物を見たヒルデン達は
その目を疑った。

艦隊の外周を固めていた、重巡航艦、6隻が全て姿を消していたのだ。

艦隊通信で呼びかけてみたが応答は全く無かった。

しかし、地球艦の姿もなかった。

<こちらがめくらになっているうちに相打ちになったのか・・・。 しかし、一体、何が起こったんだ?>
グルト少佐は眉をしかめた。

6隻の重巡が地球艦と戦闘をし、相打ちになったとしたら、何らかの戦闘の痕跡があるはずだった。

いくら、ヒルデン艦が外部監視カメラを破壊されていたとはいえ、外部で6隻の重巡が破壊される様な戦闘が
あれば僅かでもそれが感じられる衝撃があったはずだ。

それに人体には感じられなくても計器にはなんらかの記録が残るはずだった。

しかし、そこには、何の記録も残されてはいなかった。

何か、不気味なものを感じつつ、ヒルデン艦隊は冥王星を目指して最後のワープに入っていった。


                                        ヤマト発進から4ヶ月 人類滅亡まで243日
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by YAMATOSS992 | 2012-07-20 21:00 | 本文、追記 | Comments(0)