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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

40. 漢(おとこ)の艦(ふね) (6)

 ラング艦長の招集がかかった時、メルダは第一主砲塔の中で通常のビーム砲とビーム・カノン砲の違いに
ついて説明を受けていた。

「では軍曹、私は砲身がある砲の方が旧式で無砲身の砲の方が新型だと思っていたのだが、決してそうでは
ないのだな。」

メルダは主エンジンに繋がっている太いエネルギー伝道パイプに触れながら 兵装担当の兵に聞いた。
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「はい、一般的には無砲身の砲の方が真空、無重力、の環境下では陽電子ビームが安定させやすく、命中率も
上がるのは確かです。

ですが、更に大出力を生むにはどうしても陽電子ビームの加速装置が大きく長くなります。

それが砲身として砲塔の外にはみ出したものが、陽電子ビーム・カノン砲なのです。」軍曹は得意げに答えた。

「だが、いくら出力が増しても命中させられなくては宝の持ち腐れではないのか?」 メルダは痛いところを
突いて来た。

だが軍曹はニヤリとした。 「砲身一本一本が一機の戦闘機だと思って下さい。 少尉は戦闘機乗りだから
お判りでしょう・・・。」

軍曹がそこまで言った時、メルダの左手に巻いた情報端末のバイブレーション機能が働いた。 

非常召集の合図だった。

さりげなくモニター表面を見ると[艦長・第一会議室]となっていた。

「軍曹、申し訳ない。急用が出来た。 許せ。ビーム・カノンの説明はまた後で聞かせてくれ。」メルダは略式の
敬礼をすると早足で砲室を後にした。

メルダが出てゆくと若い上等兵が軽口をたたいた。

「美人でしたね。 悪くない気分でしょ。軍曹。 俺も 今夜あたり、彼女の部屋へ忍び込んでみようかな。」

「フッ、『綺麗な花には棘がある』って言葉を知らんのか、貴様は。」

「それにあいつも我がザルツを侵略した『ガミラス』の一員だ。 それも尖兵だった航宙艦隊司令、ディッツ提督の
娘だぞ。」

軍曹は上等兵を睨みつけた。

「おお怖っ、 俺なんか、可愛すぎて『征服されたい!』って思っちゃいますけどね。」 別の兵がちゃちゃを
入れた。

「若いお前たちにはわからん・・・。あの悔しさ、惨めさはな・・・。」軍曹は若い頃、ザルツ軍でガミラスの侵略軍と
戦った経験があったのだ。

爆沈する旗艦。 彼の隣りで宇宙服が破れて死んでゆく戦友・・・。敗戦後の長かった窮乏生活、薬も手に入らず
死んでゆくに任せるしかなかった家族や隣人・・・。 

遠い目になった上官を見て部下達は心配になり声を掛けた。 「軍曹・・・。」

声を掛けられて我にかえった軍曹は言った。

「すまん。 つい、昔を思い出してな。 さあ皆、仕事に戻った戻った。」彼は辛い思い出を払うかの様に部下を
持ち場に戻らせた。

<だが、悔しいがメルダ・ディッツ少尉が人を惹き付ける魅力に富んでいるのは確かだ。あの力、ザルツの
ために使えないだろうか・・・。>

ヘルム・ヘクトル軍曹はつい、そんな思いにかられてしまった自分を笑った。

**********************************************

 「ザー・ベルク総統ばんざい! すみません、遅れました。」メルダが会議室に着くと他のメンバーは全て
揃っていた。

「全員、揃った様だな。 さて、今回は重要な報告がある。」ラングは皆を見回した。

「皆も異常に気付いていると思うが、本艦は只今、遭難状態にある。」 <やはり・・・。>メルダは表情には
出さなかったが、心の内は不安でいっぱいだった。 

空戦や通常空間の航法なら自分の腕に自信もあったが、宇宙船のゲシュ=タム・ジャンプ航行には全くの
素人だったからだ。

ラングはスクリーンに次元断層の模式図を映し出した。

「これを見て欲しい。 本艦はガミラス標準時間で本日の6:00のゲシュ=タム・ジャンプ時に次元断層に
落ち込み、脱出不能となってしまった。 

通常空間の中にこの泡状に見えるのが次元断層で形成された閉鎖空間だ。 我々は今、ここにいると
考えれば良い。」

スクリーンに映し出された宇宙空間には幾つもの楕円形の空隙が表示され、中央の空隙に「EX-178]を
示すマークがその中にあった。

そしてスクリーンは「EX-178」の周りの次元断層空間を映し出した。

通常空間から差し込むと思われる光が浅い深度の海中の様な雰囲気を醸し出していた。

だが、それ以上にメルダにとって衝撃的だったのは無数の難破船が浮いていた事だった。

彼等はこの空間からついに脱出出来ず死滅したものと思われた。

ラングは続けた。

「この光景を見ると皆、不安を感じると思う。 私もそうだ。 しかし、私は以前、『次元潜航艦』乗りだった。 

その時見た空間の状態は難破船こそなかったが、この空間と変わらない、そして私は今まで必ず異次元から
浮上、生還してきた。

だから今度も必ず生還出来る! 残念ながら『次元潜航艦』と本艦では主機関の構造が違うので闇雲に
ゲシュ=タム・ジャンプを繰り返しても脱出は出来ない。

しかし『次元潜航艦』の主機関、ゲシュ=ヴァール機関の原理は判っているから、今、技術部と機関部が全力で
改造に全力で本艦の『ゲシュ=タム機関』を『ゲシュ=ヴァール機関』として使える様に改造に取り組んでくれて
いる。

だから、諸君は私と技術・機関のスタッフを信じて今まで通りに通常の任務をこなして欲しい。 頼む。」
ラングはそこに居た将校、下士官全員に頭を下げた。

長い沈黙が流れた。  

「艦長!」と呼ばわる声にラングは顔を上げた。

「主砲のジェネレーターに不調が出ています。 オーバー・ホールしたいんですが宜しいですか?」砲術長が
望みを言った。

「備品倉庫も今までの長い航行で乱雑になり、整理が必要になっています。 」主計長も申し出た。

「よし、皆の気持ちは良く判った。 各部署に戻り、部下達を指揮してくれ。 解散!!」ラングは満面の笑みを
讃えて宣言した。

集められた将校や各部門の責任者の下士官達が出てゆくとメルダはラングに話しかけたが、ラングはちょっと
待つ様に指示した。

そして彼は全艦放送のスイッチを入れるとマイクを手にとった。

「全乗組員諸君! 私は艦長のヴァルス・ラングだ。 これから話す事を落ち着いて聞いて欲しい・・・。」

ラングは今「EX-178」が置かれている状況、そして、それに対して進めている対策について話した。

そして最後に付け加えた。 

「我々はこの次元断層から必ず脱出出来る。 だから、それまで各部署の長の指示に従って各自、自分の
任務を遂行して欲しい。以上だ。」

「ところで、なんだね。 ディッツ少尉。」 マイクを置き、艦内放送のシステムのスイッチを切るとラングは
メルダの方を振り返った。

「艦長、さしでがましい様ですが、何時までこの空間に留まらなくてはならないか、判らない以上、エネルギーの
無駄使いは極力さしひかえるべきなのではないのでしょうか。」 メルダは自分の意見を言った。

「艦内照明も最低限度まで落し、艦内コンピューターの端末も使用を控えさせ、食事も調理のいらない非常食に
切り替えるという事かね。

脱出用にゲシュ=タム・ジャンプ機関の改造をやっているチーム以外、息を殺してじっとしているという訳だ。」ラングは腕組みし、目を瞑った。

「生意気なようですが、私は今の状況から考えてそれがベストだと思います。」 メルダは臆さずはっきりと
自分の意見を言った。

「良い意見だ。 上官の命令でも盲目的に従うのではなく自分の信念に基づいて意見を言うのは良い事だ。 
だが今の意見では七十点だな。 理由は自分で考えてくれたまえ。」 そういうとラングはその場を立ち去ろうと
した。

「艦長!」メルダは再度、ラングを呼び止めた。

「理由は自分で考えなくては身にならないぞ。」ラングは振り返らずメルダにビシッと言った。

「艦長、違うんです。 次元断層脱出にかかわるかもしれない別の情報があるんです。」 メルダは訴えた。

「何だと? 何故、黙っていた。」ラングは振り返ると厳しい目付きでメルダを見た。

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「この部分の構造はどうなっていますか?」メルダは先程スクリーンに映し出された通常空間に泡状に
存在している次元断層と通常空間の境界部分を指し示した。

「次元潜航艦が次元断層内から潜望鏡で通常空間を観測出来る事を考えるとそんなに厚くないと考えられ
るが、構造となると専門家でないと判らないな。  どうしてだ、少尉。」ラングはメルダの意図が判らなかった。

メルダはゴクリと唾を飲み込むと思い切って言った。

「実はこの艦に乗艦する前、転属の挨拶を父にしたのですが、その時、一つの機密事項を聞かされたのです。」

メルダは父である航宙艦隊総司令、ガル・ディッツ提督からグリーゼ581で繰り広げられたテロン艦との
興味深い戦闘の話を聞かされていたのだ。

そのテロン艦はなんとグリーゼ581の近傍で前に立ち塞がった恒星のフレアを一撃で薙ぎ払って追撃してきた
ガミラス戦艦から逃れたという話だった。

いくら強力でも陽電子ビーム砲では戦艦が楽に通れる通過口をフレアに穿つ事など不可能だった。

ディッツ提督は愛娘が好戦的民族で知られるテロンの戦艦、それもデスラー総統の罠を食い破る程の強敵に
出会う事を恐れたので、本来なら機密事項であるデスラー総統の御前での出来事をメルダに伝えたのだ。
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メルダは父の心配したテロン艦の武器の強力さがゲシュ=タム機関が艦をジャンプさせる代わりに破壊力を
展開させるものではないかと考えた。

「なるほど。 本艦のゲシュ=タム機関の力を一気に解放して境界面を破ろうという訳か!機関長に相談して
みよう!」 ラングは機関長に呼び出しをかけた。

呼び出された機関長はメルダの案を聞いて感心した。

だが、問題がある事も指摘した。 「境界面を破るにはゲシュ=タム機関に貯えたエネルギーを一気に放出する
必要があります。

ですがそうすると折角、境界面を破壊して脱出口を形成しても自力で脱出する力も失う事になってしまいす。」

メルダは自分の考えが浅かった事を後悔した。

また、自分で考えてもゲシュ=タム機関に貯えたエネルギーを一気に放出するには特別な機構が必要なの
ではないかと思えた。

「すみません。無駄な時間を取らせました。」メルダは一同に頭を下げた。

ラングは目を瞑ってじっと考えていたが、再度メルダに訪ねた。

「問題のテロン艦の登録番号か、艦名はわかるか? 少尉。」

戸惑いながらメルダは答えた。 「登録番号はわかりませんが、艦名は確か『ヤマト』だと父は言って
おりました。」

ラングは微笑みをたたえながら、艦内通信システムで「航路部」を呼び出した。

「シュンダ・ローレン大尉か、艦長だ。本艦はテロン艦『ヤマト』に関する情報を持っているか? 調べてあったら
こちらのモニターに送ってくれ。」 通信を切るとラングは一同の方を振り返って言った。 

「起死回生の一打になるかもしれんぞ。 少尉。」

大型のガミラス艦や艦隊は常に位置を本星に報告する義務があった。

メルトリア級航宙巡洋戦艦である「EX-178」も二等航宙装甲艦であったが最大級の艦であったので定時の
位置報告は欠かしていなかった。

地球の艦でも定時報告は行われていたが他の艦や艦隊がどこにいるかといった細かい情報まではやりとりして
いなかった。

しかし、ガミラスでは自艦の位置を報告をすると同時に他艦や他艦隊の位置情報も入手していた。

これは小さな星雲とはいえ大、小マゼラン星雲という広大な宙域を勢力下に治めていたガミラスにとっては
必要な処置だった。

いくらガミラスの航宙艦隊が強力で数が多くても、とても全ての宙域を常時制圧する事など不可能だったからだ。

そこで他勢力の急な侵攻や大規模な反乱などがあった時、戦力の集中運用を可能にするための処置として
互いの艦や艦隊の位置情報を常に共有しておく様になっていった。

「EX-178」は次元断層に落ち込んで以来、航宙艦隊本部との連絡が取れなくなっており、情報は十数時間
前のものではあったが全ガミラス艦隊の位置情報を持っていた。

航路部から連絡が入った。 一同が注目するなか、ローレン大尉は報告した。

「残念ながら『ヤマト』という名のテロン艦の情報はありませんでした。」その報告を聞いて一同は肩を落した。

「但し、奇妙な登録番号と名前を持つ艦の記録がありました。」ラングの眉がうごいた。

「登録番号ZT-00001、艦名は『フェローサ(ザルツ産の水鳥の名)』です。 出発点はどこだか不明ですが、
グリーゼ581星系を間違いなく通過しています。」ローレン大尉は言った。 

「登録番号ZT-00001か・・・。ゾル星系テロン船ー第1号の意味だとするとまず間違いなく『ヤマト』と見て間違い
あるまい。」 ラングは顎を右手で撫でまわしながら言った。

「我々がゲシュ=タム・ジャンプに失敗して次元断層に落ち込んだ宙域を通過する確率はどの位ある?」

「その前の通過点の記録も含めて検証してみると99%以上です。但し、問題の宙域をゲシュ=タム・ジャンプで
通過してしまうとここにくる可能性は薄くなります。」 大尉はあくまでも慎重だった。

しかし、ラングは違っていた。

「くるさ。『ヤマト』は必ず来る!」自信ありげに言い放った。

<これだけの事でどうしてここまで確信できるのだろう・・・。>メルダにはラングの自信の根拠が判らなかった。

ラングは副長にネルゲ大尉を呼ぶように指示した。

                                             漢(おとこ)の艦(ふね)-(7) へ続く
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by YAMATOSS992 | 2013-01-01 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)