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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

41. 漢(おとこ)の艦(ふね) (7) 最終話

  テロン艦出現の報に後部格納庫で出撃態勢を万全に済ませていた愛機、真紅のDWG262ツヴァルケに
メルダは乗り込んだ。
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搭乗を手伝ってくれたオルグ軍曹はメルダが何も武器を持っていないのを不審に思った。

「私は停戦と協同戦線をはるためにテロン艦へ使わされる使者だ。丸腰である事が武器になるのさ。」メルダは
さらりと言ってのけた。

「少尉らしいお考えですな。 幸運を祈ります。 ザー・ベルク!」オルグ軍曹はコクピットを閉めながらいった。

『減圧を開始する。船外服を着用していない者は至急退避せよ。』格納庫(ハンガー)内の減圧警報が流れた。

少しづつ空気が抜かれてゆく音がしたが、減圧が進むにつれ、その音は小さくなってゆく。

格納庫(ハンガー)の空気が完全に抜かれるまでの短い時間にメルダは自分が停戦の使者になった経緯を
思い出していた。

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「何っ!貴様、俺に停戦交渉の使者をやれと言うのか!」ネルゲはそれまで黙って話しを聞いていたが、
『ヤマト』と出合った後の話になると急に怖気づいた。

「これはある程度、階級が高い者がやる仕事だ。 本来なら私が行くべき所だが、ここは異空間、何が起こるか、
判らない以上、艦を離れるわけにはいかん。 

君に停戦及び共同戦線の交渉してもらうのが一番相応しいと思ったのだが・・・。」

「大尉以上の階級の者なら他に大勢いるではないか。俺は一等ガミラス人だぞ!」ネルゲは人差し指を
突き出して憤慨した。

「そうです。これは我々、一等ガミラス人のなすべき仕事です。」つかつかと歩み寄りながらメルダは言った。

「艦長、私は少尉です。 階級は少し低いかもしれませんが、一等ガミラス人です。 テロン艦への使者は
私に行かせてください。

それに私は戦闘機乗りです。 テロン艦まで愛機で一人で行けます。 他の人を使者とすると二人以上の
人間を危険にさらす事になります。」 メルダは停戦の使者に志願した。

「ですが、あなたは航宙艦隊総司令ガル・ディッツ提督の御令嬢です。危険な事は避けて頂かなくては・・・。」
副長がいった。

「私は戦闘機乗りです。 すでに充分、危険な仕事をしてますよ。 副長。」メルダはニコッと笑った。

「テロン艦への使者はディッツ少尉に行って貰う。 異存のある者はいるか?」ラングは言い放った。 

異儀を唱える者はいなかった。

「それでは解散、ディッツ少尉は残ってくれ。」皆が会議室から出て行くとラングはメルダとテロン艦との
打ち合わせ事項を細かく決めた。

その中には共同作戦の実施中はメルダはテロン艦に人質として残る事も含まれていた。

その話になった時、ラングの目に薄っすらと涙が浮かんだ。

メルダは驚いたが気付かないふりをした。

打ち合わせが終わるとメルダとラングは敬礼を交わして別れた。

しかし、メルダは後から声を掛けられた。

「ディッツ少尉、テロン艦へはナイフを持たずに行きたまえ。」

ラングは背を向けたままだった。
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「はっ! ザー・ベルク総統万歳!」メルダは艦長の後姿に敬礼した。

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 三日目の朝、テロン艦、「ヤマト」が来た。

愛機の中で発進命令を待ちながらメルダは「EX-178」で出合った今までの出来事を切れ切れに繰り返し、
思い出していた。

しかし、いつも最後に思い出すのはラングの言葉だった。

<「何があっても死ぬな。」って事か・・・。 ラング艦長・・・。>

格納庫(ハンガー)の空気が完全に抜かれ、ツヴァルケを甲板に固定していた索が外れているのを船外服姿の
オルグ軍曹が確認し、コントロール・ルームに発進OKの合図を出した。

それを見た管制官は発進口の上部の信号灯を発信OKにすると同時にメルダに発進許可を通信して来た。

メルダはゆっくりとスロットルを開き、愛機を加速させた。

そして離艦すると同時に脚を引き込み、テロン艦のいる方に愛機を旋回させた。

旋回している最中、周りに浮いている難破船の群れがメルダの視界の中で踊った。

<彼等も脱出しようと必死にあがいたのだ。 しかし力及ばず力尽きたのだろう。だが、自分達は必ずここから
脱出してみせる!

「EX-178」、いやラング艦長や仲間ともに!> メルダは心に誓った。

テロン艦からも迎えの戦闘機が来た。 それは空戦能力が高そうな軽戦闘機だった。
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メルダはその戦闘機の誘導に従ってテロン艦に向かった。

遠目には黒い塊にしか見えなかったテロン艦だったが接近すると無数の火器を装備した禍々しい外観が
はっきりと見てとれた。
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<これが好戦種族、テロンの戦艦、『ヤマト』・・・。>メルダは唾を飲み込んだが、覚悟を決めるとその格納庫に
愛機を滑り込ませた。
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 「沖田艦長。 保安部、伊東二尉、ご命令どおり、ガミラス人捕虜、メルダ・ディッツ少尉を連行しました。」
伊東は艦長室のドアをノックした。

「ご苦労、伊東二尉、メルダ・ディッツ少尉のみ入室させたまえ。」僅かに開いた扉の向こうには伊東に有無を
言わせぬ沖田の目があった。

「はっ、保安部は部屋の外で待機します。」伊東は面白くなかったが、艦長命令には従わざるを得なかった。

伊東はメルダの前をあけ、入室を促した。

一人で入れと言われたメルダは戸惑ったがテロン人に気後れしたと思われたくなかったので胸を張って大股に
歩いて入室した。

「ザー・ベルク!」メルダはあえて「総統万歳」とは言わずに敬礼した。

沖田艦長も国連宇宙艦隊式の敬礼で答礼した。

「沖田艦長、私を解放して頂けるとの事。感謝いたします。」メルダは銀河系外縁の小基地とは言え、「ヤマト」が
その存在を知っているのが不思議だったが、その考えを顔に出さない様に努めた。

「凛々しいな。 これがガミラスの将校服か・・・。」沖田はパイロット・スーツ姿のメルダしか見た事が
無かったのだ。

「愛機に軍服を積んでおくのはガミラス軍人のたしなみです。」メルダは沖田にラングと同じ様な『漢』の匂いを
感じていた。
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「わしは先ず、君に詫びを言わなければならない。」沖田はメルダの両肩に手をおいた。

「私個人としては君を『客分』扱いしたかった。

だが、本艦には『ガミラス』を肉親の仇として心底憎んでいる者が多数いる。

艦長としての私はこの艦の結束のため彼等の『感情』を無視する事は出来なかった。

また、『ガミラス』を敵として戦っている以上、君から取れる情報は少しでも多くとる必要があった。

だから身体の精密検査をさせたり、独房に入れて囚人服を着せ、あげくは古代一尉に尋問をさせたりもした。
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とても大きな屈辱だったと思う・・・まことに申し訳けなかった。」沖田は艦長帽を取りはしなかったが頭を下げた。

「わしは危なくヴァルス・ラング艦長が示してくれた『義』に『仇』を返すところだった。 すんでの所で部下に
助けられたよ。」

<古代戦術長だ。 彼が私の解放を進言してくれたのか!いや違う・・・。本当に力のあったのはラング艦長だ。 
彼が『ヤマト』との「漢と漢の約束」を文字通り命を懸けて守ったからこそ、沖田艦長も古代戦術長も心を
動かされたのだ。>

「今、私達とあなた方は敵対しています。 でも、私は短い時間でしたが『ヤマト』への乗艦を許された事を
一生の誇りに思います。」

メルダは胸を張り、直立不動の姿勢で言った。

その目に一点の曇りもないのを確認すると沖田は言った。

「地球では『子は親の鏡』と言うことわざがある。 君を見ていると君を育てたご両親が立派な方々なのが
良く判るよ。」

「有難う御座います。 沖田艦長、父母も喜ぶ事でしょう。 でも・・・。」メルダは直立不動のまま言った。

沖田は眉をしかめたが、構わずメルダは続けた。

「父は家名の誇りばかり気にしています。 

だから私を育ててくれたのは「EX-178」のラング艦長、愛機の整備兵や海兵隊長、その他、私が係わった
全ての人達です。」

「ふっ、『可愛い子には旅をさせろ。』・・・だよ。」沖田は自分の愛娘を最前線に送り出した父親の気持ちが
良く判っていた。

<『可愛い子には旅をさせろ。』? 何の事だ?>メルダの僅かな戸惑いを沖田は見逃さなかった。

「今は判らなくてもいい、未来は君達、若者の物だ。 ガミラスにしろ、地球にしろ・・・な。」沖田は微笑みを
浮かべて頷いた。
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「詳しい任務は言えないが今、『ヤマト』は地球の未来のために戦っている。 

もしも君と再び戦場で出会う事があったなら、その時は遠慮はしない。 

君も全力でかかってきたまえ。」沖田は軍人の顔に戻っていた。

「もちろんです! 沖田艦長!」メルダは最敬礼した。

「これで最後の会見を終わる。 メルダ・ディッツ少尉、退室したまえ。」沖田も敬礼で応えた。

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 解放されたメルダの操縦するツヴァルケは「ヤマト」の第一艦橋から少し離れた空間を飛びながら2~3回、
翼を振って挨拶すると意を決した様にガミラスの前線基地のある方へ飛び去っていった。

艦長室で一人その様子を見ていた沖田は「死ぬな・・・。」と呟いた。

彼の脳裏には戦死した者達、とりわけ、自分の息子、古代守、その他の若い部下達の顔が次々と流れて
いった。

沖田はもはや誰も殺したくないと思った。

「EX-178」ラング艦長の様な誇り高い戦士がいると判った以上、敵であるガミラス人もその想いの例外では
無かった。

若く、凛々しいメルダ・ディッツ少尉もまた、殺したくない存在になってしまった。

<しかし、まだまだガミラスとの戦闘は続くだろう・・・。後、幾つの命が散らなければならないのだろうか・・・。>
沖田は天を仰いだ。

艦長室の天井は硬化テクタイトの壁で出来ており、透明だった。
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そこから見える星の海は地球とガミラスの戦いなど知らぬげに唯、美しく輝きながら拡がっていた。



                                                漢(おとこ)の艦(ふね) 項了
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by YAMATOSS992 | 2013-01-02 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)