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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

43. 孤高の「赤騎士」 (2)

 そのころ、当のメルダ=ディッツ少尉は「ヤマト」の独房に閉じ込められていた。

飛行服は剥ぎ取られ、囚人服と思しき簡素な服を着せられていたが、空調は利いており、その簡素な服でも
不快さを感じる事は無かったが、やはり、捕虜となった屈辱は耐えがたかった。

だが、メルダはラング艦長の言葉を何度も噛み締めていた。
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<何があっても死ぬな! どんな屈辱にも耐えろ!生きて帰って来い!>テロン人の服など死んでも着たく
なかったが、こうする事で「ヤマト」の乗員が自分を生かし続けてくれるなら黙って受け入れようと思った。

すでに、医学的には精密な身体検査を受け、ガミラス人としては漏らしてはならない「種族としての情報」も与えてしまっていた。

今更、どんな服装をさせられてもそれに比べればたいした問題ではなかった。

ラング艦長の言葉がなければ「EX-178」の喪失を聞いた時、メルダは自決していただろう。

だが、自決したところでどのみち、死体からでもテロン人は医学データを奪うのは間違いなかったが・・・。

それに「ガミラスは憎むべき敵」との見解は乗員の中で一致していても「ガミラス人、個人はまた別のもの」と
いう見識があるのが彼女には全く理解しがたかった。

彼女は「ヤマト」で生きると決めた時、長時間にわたる尋問、酷い拷問や辱め、長い苦痛に満ちた死もあり得る
事を覚悟していた。

しかし、実際に捕虜生活が始まると最初に簡単な身体検査を受けさせられただけで、後は独房に監禁された
だけだった。

毎日、戦術長の古代進が尋問にきたがラチもない話を一方的にしてゆくだけだった。

監視の保安部員は二人ついていたが常に一人は女性だった。

風呂に入る時などは監視役としてその保安部員も一緒に入浴した。

もちろん、風呂の外では男の保安部員が不測の事態に対応して待機していた。

保安部長の伊東は女性保安部員の配備の必要性を尋ねられるとこういった。

「メルダ=ディッツ少尉はガミラス人といえども女性です。 

遺伝子情報まで我々と同じようですし、我々、男では対処出来ない問題が発生する場合が考えられます。

また、『女』を武器にする事も考慮しなくてはなりません。

安心して下さい。 監視につけてある女性保安部員は白兵戦のプロばかりです。

どこかの主計科上がりの航空兵とは戦闘レベルが違いますよ。」と伊東はせせら笑った。

<テロン人は好戦種族と聞いていたし、こうして「ヤマト」が単艦で航行しているのを鑑みると好戦的なのは
確かだと思う。

なのにどうだ。 私の扱い一つとっても贅沢でも非道でもない、監禁されているのは有難くないが、それでも
三日に一度は展望室での気晴らしが許されているし、風呂、体力維持訓練所(彼女が勝手に思っているだけ、
ガミラスにはスポーツ・ジムという概念がない。)に通う事が許されている。 

監視があるにしてもガミラスでは考えられない好待遇だ・・・。>

また、医療や娯楽といった面ではテロンはガミラスに大きく勝っていた。

メルダは前に佐渡船医に簡単な(メルダにとってだが・・・)身体検査をされたが、その後、MRIで撮った自分の
身体の輪切りの映像を何十枚も見せられた時には声も出なかった。

ガミラスでは人体の内部を知るには今だ解剖しか手段がなかった。

しかし、それとて、今、佐渡が示した様な仔細に渡る情報を知る事など出来はしなかった。

また、時間を決めて流れる艦内放送「YRAラジオ・ヤマト」で流される「多種多様な音楽」も新鮮だった。
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ガミラスにも「音楽」がないわけではなかったが「ガミラス」では国家」だけが「音楽」として許されたも特別な
ものだったからだ。

後は人工的な「音」といったら「通信」か「警報音」だけだった。

艦内放送「YRAラジオ・ヤマト」は彼女が閉じ込められている独房でも聴ける様になっていたので彼女は
この時間をいつしか楽しみにする様になっていた。

<確かにガミラスは軍事や兵器ではテロンに勝っている・・・。 しかし、その他の文明としての総合的な力は
テロンの方が勝れているのかもしれない。 それが証拠に『ヤマト』は単艦でここまでガミラスの支配圏へ
食い込んできている。

多分、彼等が我が先遣隊と戦った時、装備していた武器は自分達同士で和やかに戦争するための
ものだったのだろう。

その後、もう一度、彼等の母星の隣りの惑星空間で対峙した時はテロンは艦船、兵器は変わらなかったので
大損害をだしたが、ガミラス艦隊も大打撃を受けて後退、攻略軍の司令官は更迭されただけでは済まず、
処刑されたと聞く。

勝れた指揮官や用兵家が大勢いるのは明らかだ。

その後、テロンへの攻撃は遊星爆弾による戦略兵器攻撃に切り替えられたが、その間にテロンは対異文明
兵器の集大成である「ヤマト」を建造、それまで出来なかったゲシュタム・ジャンプさえ短期間で開発、
それを応用した次元断層すら貫ける大規模破壊兵器まで積んでいる・・・。>
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メルダは爪を噛んだ。

<この船は『竜』だ。 そういえば古代戦術長が『ガミラス本星の位置』を知りたがっていた。 いつも尋問とは
名ばかりの雑談しかしない男が『ガミラス本星の位置』だけはやけにしつこく真剣に聞きだそうとしていた。

やはり、この『竜』の目的地は『ガミラス本星』か! この船の目的は『復讐』か? だとしたら自分への
寛大な扱いは一体、何なのだ?>

メルダは頭を抱えて独房のベッドに腰掛けていたが、「YRAラジオ・ヤマト」が始まったので横になり、目を瞑って
スピーカーから流れる音楽を聴き始めた。
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その曲は「真っ赤なスカーフ」、そのメロディは哀切でその歌詞からは殺伐とした怨念の様なものは感じられ
なかった。

[必ず帰るから、真っ赤なスカーフ、きっとその日も迎えておくれ・・・] か・・・。

メルダはそのたゆたう優しいメロディに身体と気持ちを委ねている内にいつしか、深い眠りにおちていった。



                                            44.孤高の「赤騎士」ー(3) へ続く
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by yamatoss992 | 2013-05-12 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)