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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

44. 孤高の「赤騎士」 (3)

 「君達、三人には交替でガミラス人捕虜、メルダ・ディッツ少尉の警護・監視役をやって欲しいんだ。

もちろん、もう一人、男性保安部員もつける。 だから安心して任務に当たってくれたまえ。」

「ヤマト」の保安部長、伊東真也二等宙尉は自室に三人の女性保安部員を呼んで言った。
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「私はあんなガミラスの雌犬の面倒をみるなんて御免です! 勘弁して下さい!」一番若い剛力彩三等宙曹が言った。

「私はかまいません。 これも任務ですから・・・。」工藤明菜二等宙曹が応えた。

「そうよ、剛力ちゃん、相手は図らずも敵の只中に取り残された可愛そうなガミラス人よ。

それに遺伝子情報まで私達と完全に一緒の「人間」だという話も聞いたわ。

だから、同じ「女」として「男」の保安部員には出来ない、またはさせられない業務があると思うの。

私はひきうけますわ。 あなたも良いわね、剛力三曹。」 天海聖子一等宙曹が応えた。

「お姐がそう言うんじゃ、仕方ありません。 私もこの任務引き受けます。」剛力三曹もしぶしぶ引き受けた。

「有難う。 シフトは三人で決めて後で報告してくれ。 では、解散!」伊東二等宙尉は立ち上がって敬礼した。

三人の女性保安部員も敬礼すると、伊東の部屋から出て行った。

しかし、最後に出て行こうとした天海一曹だけは伊東の方を振り返ると、薄ら笑いを顔に浮かべながら言った。

「ガミラス人の彼女が日本式の風呂どうやってはいるかなんて、判る訳ありませんよね。

落ちていた石鹸で滑って床に頭を打ちつけたり、湯船に漬かるのが気持ち良くて転寝して溺れたり、自分の
未来に絶望して身体を洗うタオルで首を吊ろうとする恐れもあります。

そういう事が起こったら私達、『ヤマト』乗組員として後味悪いですよね・・・伊藤部長。」

「その通りです。 天海一曹。 良くお判りで助かります。」

伊東保安部長も自分の机の上で肘をつき掌を合わせて微笑んだ。
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メルダの独房の扉がノックされると扉が開いた。

そこには警護・監視役の女性保安部員、剛力三等宙曹が銃を向けて立っていた。

「メルダ・ディッツ少尉、入浴の時間です。 これを持って私達について来て下さい。」と言って洗面用具の
入ったプラスチックの洗面器を渡した。

それは異様な光景だった。

完全武装の女性保安部員にしたがうのは、囚人服にオフロ・セットを抱えたメルダ、その後には、これまた
完全武装の男性保安部員が付き従う・・・。

「くそっ、何だあれは! まるでお姫様扱いだぜ。 胸糞悪い! 『赤騎士』御一行様って訳か!」反メルダ派の
若い船務科員がこぼした。

「三尉、確かに『ガミラス』は憎いですが、彼女と彼女の船『EX-178』は俺達に『義』を示してくれました。

やはり、好敵手にはそれなりの礼儀を示さないと俺達の『義』がなくなり、『ヤマト』の誇りも失われて
しまいます。」 中年の船務科員は冷静な意見を言った。
 

「『ヤマト』の誇り・・・か。 そうだな。 それに彼女自身が遊星爆弾を投下した訳では無いだろうし・・・な。」

仲間の言葉に最初に「赤騎士」御一行様に反発を示したも若い船務科員落ち着きを取り戻した。

「上層部は彼女をこのまま『ヤマト』に置いておくつもりなのかな・・・。」

「わかりません、でもいつまでもこのままって、事はないでしょう。 何らかの形で彼女を『ヤマト』の船内から
排除する必要があるのは上の連中も判っているでしょう。」

通路を遠ざかってゆく「赤騎士」後一行を反メルダ派の乗組員達は見送ると自分の任務に戻っていった。

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自分も裸になった剛力三曹は大浴場の引戸を開け、自分が先に入ると裸になったメルダを招き入れた。

メルダはまるでガミラス総統府にあると聞くデスラー総統専用浴場の様な浴槽に目を丸くした。

ガミラスの入浴の仕方は殆ど日本人と変わらなかったが、広さは航宙艦隊総司令のディッツ家の風呂といえど
湯船には一人の人間が入れれば良いと言う考えがあったので慎ましいものだった。

「お前達はこんな宮殿の様な風呂に入るのか?」 振り返ってメルダは思わず剛力三曹に尋ねた。

「少尉、一人で入っていただく訳ではありません。 混浴ですが、我慢していただきます。」剛力三曹は
微笑んで言った。

そして洗い場にメルダを誘うと身体の洗い方を教えた。

メルダは身体の隅から隅まで洗うテロン式の入浴方法に感心した。

髪の毛までキチンと洗うそのやり方はガミラスでは病気の時にしかやらない入念なものだった。

身体についた石鹸をキチンと流すと二人は湯船に浸かった。

「ああっ こんな快感は生まれて初めてだ。」メルダは目を閉じて至福の時を味わった。
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その時、剛力三曹の目付きがキツイものに変わり、メルダに襲い掛かった。

保安部は格闘技のプロである、メルダはたちまち湯船の底に押さえ込まれてしまった。

呼吸が出来ず、もがくメルダ。 しかし、小柄な剛力三曹の身体は動かなかった。

「私の家族や友達はみんな、お前達に殺された。 そんな幸せそうな顔をされちゃあ、我慢出来ないんだよ。」

剛力はメルダを湯船の底に押さえ込む態勢を安定させるため身体をずらしながら言葉を続けた。

「私の小さい弟はお前達のばら撒いた敵性植物の吐き出す胞子の毒素に肺を犯され、少しづつ、それは
それは、少しづつ、ゆっくりと窒息して死んでいったよ。 お前はささっと溺れ死ねて幸せだな!」

剛力三曹はメルダを押さえつける手に力を加えながら得意げに笑った。

メルダは身体の自由を完全に奪われていた。

それは山本 玲と格闘した時とは全く違っていて、格闘技のプロとの力の差を思い知らされた。

メルダは覚悟を決めた。 <ラング艦長、申し訳けありません。 ここまでです・・・。>

突然、非常ベルが辺りに鳴り轟いて直ぐに外に待機していた男性保安員が入って来た。

その後、非常ベルを聞きつけた他の科の女性乗組員も入って来るとその男性隊員は直ぐ外に追い出された。

浴場は年長者も入るので突然体調不良になる事も考慮され、あちこちに非常ベルの紐が下がっていたのだ。

剛力三曹も暗殺を諦めた。  紐を引いたのは山本 玲だった。

「あんたも肉親を殺されたんだろう、何故、ガミラスの雌犬を庇うんだ!!」剛力は精一杯吼えた。

しかし、山本 玲は軽蔑し切った目で剛力を見やるだけで何も言わなかった。


                                            45.孤高の「赤騎士」ー(4) へ続く
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by yamatoss992 | 2013-05-13 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)