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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

45.孤高の「赤騎士」ー(4)

 古代はメルダの独房を日課の様に訪ねていたが、今回の「暗殺騒ぎ」の後ではチョッと訪ね難くなっていた。

しかし、古代はこのままメルダに詫びを入れず、うやむやにしておくのも自分の性に合わなかった。

そこで古代はメルダの独房を訪ねると扉が開くと同時に中に飛び込むと即座に頭を下げた。

「この度の不祥事、お詫びのしようもありません! でも、僕にはこれしか出来ません。」

古代は「土下座」した。 その頬にはいつの間にか涙が伝っていた。

「何をやってるんだ、お前は?」突然の古代の振る舞いにメルダはキョとんとしていた。

ガミラスには「土下座」と言う風習はなかったからだ。

しかし、涙の意味は同じらしかった。

「それに、何でお前、泣いているんだ?」古代の思い詰めた様子にメルダはかえって戸惑っていた。

「僕は悔しいんだ。 君を独房に入れる事が決まった時、『ガミラス人に報復したがる乗員の感情から君を
守る・・・という意味もこの措置には含まれているのだがね。』と副長に言われたんだ。

僕は『『ヤマト』にはそんな人はいません!』と言い切った。 しかし現実は副長の言った通りだった!

しかも、『そうした感情の爆発』から君を守る役目を与えられた保安部員が君を襲ったなんて・・・。」

「僕は何て甘かったんだ。 万死に値する!」古代は床を拳で殴りつけた。

扉が再び開くと保安部長の伊東真也二尉と剛力三曹が入ってきた。

「おやおや、先客があったとは! 戦術長、こちらの用を先に済まさせて貰いますよ。」

伊東二尉はづけづけとものを言いいながらもメルダに向かって頭を下げた。
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その時そっぽを向いていた剛力三曹の頭も手で押さえて頭を下げさせ、自分も頭を下げながら謝罪の言葉を
口にした。

「今回の『事件』を保安部は真に遺憾に思います。  この『犯人』には厳罰を与えます。 そして今後、
この様な『事件』が起こらぬ様、警備体制を見直しますのでとりあえず、ご安心下さい。 では失礼します。」
伊東はまるでどこかの政治家の答弁の様な心の篭らない一通りの謝罪の言葉を述べるとそそくさと去って
いった。

「何だ、あれは・・・少しも反省する気はないみたいじゃないか?」古代は伊東の態度に呆れた。

「『厳罰』と言っていたが、あの保安部員・・・彼女は処刑されるのか・・・?」メルダは古代の胸倉をつかんだ。

「彼女は立派な『戦士』だ。 『敵』である私に寸鉄帯びない裸で挑み、そして勝った。 山本がいなければ、私は
確実に殺されていた。 私は『ヤマト』にとって『敵』だ。 『敵』を倒すのは『戦士』の『務め』。 彼女が『務め』を
果たそうとして『罪』に問われるのは私には理解出来ない。」メルダは強く頭を振った。

「まあ、『処刑』となれば、上級幹部全体で『裁判』が行われる。 今のところ、そうした呼集は掛っていないから
保安部長の権限で出来る『厳罰』はせいぜい『部内での罰当番』くらいだろうと思うよ。 命まで取られる事は
ないから君は心配しないで良いさ。」古代はメルダの見えなかった一面を見て驚いた。

「 いまや、私は『ヤマト』の結束を乱す『元凶』でしか無い様だ。 すぐさま『処刑』して欲しい。

やはり、私の『命』は、『EX-178』のヴァルス・ラング艦長と仲間の乗組員と共に尽きるべきだったのだ。」
メルダは古代に偽ざる心境を吐露した。

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「出来ない! そんな事は出来ない! 君は『敵』である『ガミラス人』かもしれないが、協力して『次元断層』を
突破した『仲間』でもあるんだ。 

『EX-178』が無事だったのならいざ知らず、『ヤマト』の楯となって味方の砲火を浴びて散っていったのに、
君を『処刑』したら俺達の、『ヤマト』の『誇り』は一体どこへ行ってしまうというんだ!」古代は慟哭した。

<テロン人は好戦的だからこそ『誇り高い』種族なのかもしれない・・・。>メルダは改めて思った。

「『処刑』して貰えないなら呼吸を止めて自殺するしかないな・・・。 でもほとんど溺れて意識の無くなった私を
障害もなく蘇生させた『ヤマトの医術』を考えるとそれも無理だろう。 せめて『戦闘機のコクピット』で死ねたら
最高なんだがな・・・。 許されるはずもないか・・・。」メルダは自嘲した。

「君は『戦闘機のコクピット』を自分の死に場所としたいというのか?」古代は確認した。

彼には何か考えがある様だった。

「ああ、私を愛機に乗せて放り出して貰えばいい。 『ヤマト』に体当たりしたりなどはしないから安心しろ。

それでも信用出来なければ、推進剤を全部抜いてしまってもいいんだぞ。」メルダは自分の希望が叶えられそう
なので勇んで条件を古代に話した。

「上級幹部会議に掛けてみる。 少し状況は変わるかもしれないが・・・。」古代はメルダに約束して独房を
出て行った。

<少し状況が変わる・・・? 何の事だ?>メルダは古代の最後の言葉に不審を抱いたが、メルダは古代を
信用していたので黙って待つ事にした。

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 メルダの処遇について改めて上級幹部会議が開かれた。

「そうか・・・。 彼女がそんな事を・・・。」沖田艦長は古代の報告を聞くと溜息をついた。
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「殺してくれと自分から言ったなら、殺してやればいいんじゃないか! あいつを憎んでいる乗員は他にも
沢山いる。 

それにあいつは俺の『親父の死』を汚した。 生半可な殺し方じゃ済まさないぞ!」島航海長が毒づいた。

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「島、普段、冷静なお前らしくないぞ! それにな、彼女はこうも言っていた。

『テロンが先に発砲したと言うのは前線からの報告に過ぎない。 私自身が見た訳ではない。 さきの私の
不注意な発言で傷ついた者がいたなら詫びて欲しい。 済まなかったと。』

島、真実はそこに居た者にしか判らないんだよ。」古代は島に諭す様に言った。

沖田は先制攻撃命令を拒否して艦隊司令長官を解任された時の事を思い出していた。

島も実は山崎機関科士官から事の顛末は聞かされていた。

しかし、どうしてもその事実を受け入れる事が出来なかったのだ。

沖田は島大吾艦長が平和を望みつつ、司令部の命令は絶対だと信じて先制攻撃を仕掛けた事を責める気に
はとても成れなかった。

それにたぶん、ガミラスはどのみち「服従か、死か」の選択を迫ってきたのは間違いなかった。

沖田を含め地球人はそんな選択を迫られたら無条件に戦いの道を選んでいた事だろう。

「どちらが先に撃ったか?」なんてつまらない拘りなのだ。

<メルダはその事を知っている聡明な人物だ。 どうしても失いたくない人材だ!>沖田は島の顔を見た。

島はメルダの侘びの言葉に罰の悪そうな顔で言った。

「僕は彼女が悪いと判ってくれればそれでいいです・・・。」

「さて、本題ですが、艦長、本当にメルダを殺すおつもりですか? もしそうなら私は反対します。

これは私達の『人としての尊厳』の問題です。 相手が非情だからと言ってこちらも非情になっていたら争いは
永遠になくならないでしょう。

地球人はお互い同士、殺戮の歴史を繰り返して来ました。

私には今の地球が過去に流された人類同士の血によって赤く染まってしまったかの様に見える時があります。

『ヤマト』の旅は地球再生の為のものです。

かけらでも自分達の行動に恥じる部分があってはなりません。」真田副長が思いもかけず熱い気持ちを語った
ので古代は少し驚いた。

「私も先生の意見に賛成です。 でも、メルダにはもう二週間も無駄飯を喰わせています。

そろそろ働いて貰わないと勘定があいませんわ。」新見情報長が意味有りげにいった。
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                                             46.孤高の「赤騎士」ー(5)へ続く
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by yamatoss992 | 2013-05-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)