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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

46.孤高の「赤騎士」ー(5)

 「有難う、古代戦術長、 こんな華々しい死に場所を用意してくれて感謝する!」メルダは古代に握手を
求めた。
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「本当は僕は君に生きて欲しいんだが、ここまで来たら何を言っても無駄だな。  ま、精々うちの航空隊の腕を
鍛えてやってくれ・・・。」古代はメルダと握手を交わしながら苦笑いした。

「ルールはさっきも説明したが、君が単機で飛んでいると、どこからか、コスモ・ファルコンが襲ってくる。

各機、機関砲に120発の弾丸を持っているが、機関砲は1機6門だから一門20発の勘定だ。

まっ、この弾数じゃ二連射が精一杯だけど、実弾は貴重だから勘弁してくれ。 

弾丸を撃ち尽くした機体は機体は戦闘空域を離れて次の機体が再び襲ってくる。  機数は総数36機。

誰か一人は君を撃ち取れるだろう。」古代はキッと顔を引き締め敬礼した。

「こんな一方的な戦闘なんて虐殺以外の何物でもない。 俺達は御免こうむるぜ。」格納庫の壁際から声が
した。

航空隊隊長の加藤二尉と篠原三尉だった。
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「確かにメルダ機は停戦の使者として『ヤマト』に来た時から弾薬・ミサイルを全て降ろしていた。

そして規格が違うので『ヤマト』にある弾薬も積めない。

だからといってメルダは一方的に不利な訳ではないぞ。 遠山、説明してやってくれ。」古代は遠山整備士を
呼んだ。

「この機体は弾薬は積んでいないけど射撃管制装置は生きているんだな。 だからファルコンをロック・オン
出来るんだな。 

だからファルコンの方の全天警戒装置にプログラミングしてメルダ機が三秒間ロック・オンしたら射撃管制装置の
回路を絶つ様にプログラミングを付け加えたんだな。」遠山は親指を立てた。

「射撃管制装置が死んだ機は撃墜されたって判定されるわけか・・・。」篠原が笑った。

「勝手な事をするな! 今回の「実戦訓練」中にガミラスが襲ってきたらどうする。」加藤隊長が怒った。

「三秒間もロック・オンし続けられるパイロットなんてほとんどいませんよ。隊長。」篠原がなだめた。

「ウム。 確かにそうだな。 わかった。この『実戦訓練』実施してみよう。 航空隊はブリーフィングをしてから
出撃する。 出撃は三十分後だ。」加藤は篠原を従え、ブリーフィング・ルームに向かった。

「判った。  悪いがメルダ、出撃は三十分後だ。 」古代はコクピットに向かったメルダを止めた。

「そういえば、古代、お前は飛ばないのか? それに山本もファルコンで出撃するようだが・・・。」メルダは素朴な
疑問を口にした。

メルダは次元断層でみた山本のコスモ・ゼロに惚れていた、是非、戦ってみたいと思っていたのだ。

「山本は冥王星の戦いで戦死したパイロットの代わりにファルコンで編隊に入ってもらう。

そして、僕はこの訓練の監察官として100式空間偵察機で飛ぶ。 この戦闘をつぶさに記録し、今後の参考に
するためだ。」古代はメルダの疑問に応えた。

「私が何もせずに攻撃されるままになって撃墜されるとは思わないのか? それが私の本来の希望なの
だが・・・。」メルダは自分の希望した「処刑」がいつのまにか、「実戦訓練」になっているのが不思議だった。

「確かにそれは充分に考えられる結末だ。 だが、君が『ヤマト』に少しでも恩義を感じているのなら全力で
戦って欲しい。 これは『ヤマト』にとっても生き残る術の一つなんだ。」古代はメルダに懇願した。

メルダは自分の申し出が思いも描けない展開になった事に対して困惑した。 

**********************************************

 「コスモ・ファルコン」隊の展開が始まった。
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メルダもツヴァルケに飛び乗り、『ヤマト』第三格納庫から発進した。

第三格納庫つきの整備士、岩田新平と遠山清はそれを心配そうに見送っていた。

「大丈夫なんだな。 彼女はきっと帰ってくるんだな・・・。」遠山は誰に言うとでもなく呟いた。

「そうとも、我等が『赤騎士』がそんなに簡単にやられるもんか!」岩田も手摺を固く握り締めた。

メルダは愛機のコクピットの中、陶酔状態に陥っていた。

自分の『処刑』を申し出た時、まさかこのパイロット・スーツを着て、愛機のコクピットで死なせてもらえるとは
考えもしなかったからだ。

<古代戦術長には悪いが、このまま静かに死なせて貰おう・・・。 もう戦いはまっぴらだ。>メルダは目を
瞑った。

しかし、次の瞬間、ツヴァルケの全天警戒装置が敵の接近を告げた。

[警告、上方十二時方向から敵機接近、敵数三六!]

それを聞いたメルダは思わず操縦桿を思い切り下に下げ、ダイブしていた。

訓練で培った戦闘動作は思考を完全に上回ってしまっていたのだ。

<一度に全機で攻撃してくるとはあの加藤隊長とやら只者ではない!>

もうメルダは自分がさっき大人しく殺され様と思っていた事などすっかり忘れ去っていた。

コスモ・ファルコン隊は射程距離まで近づくと射撃指揮装置がロック・オンしていようがしていまいが、構わず
機関砲弾をばらまいた。

メルダが気後れして機体を反転させれば確実に機関砲弾が命中する弾雨だった。

だが、メルダは弾雨の恐怖に耐え機体を前進させ続けた。

一連射し終わったコスモ・ファルコンが次々とブレイクして離れてゆく。

メルダも機体をブレイクさせてファルコン隊が戻っていった方を見て眉をしかめた。
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三機は再度、反転してメルダの方に向かって向かってきたが、他の三十三機は「ヤマト」に帰艦して行った。

機関砲弾を打ち尽くしたのだ。 

<チッ 未熟な!! パルス撃ちも出来ないのか、こいつ等は・・・。>メルダは呆れた。

パルス撃ち、これはガミラスでは戦闘機乗りの基本の技だった。 

元々戦闘機が積んでいる弾の数は少ない、だから引き金を引く時、引きっぱなしにすれば直ぐに弾切れに
なってしまう。

だから、ベテラン達は皆、引き金をチョッと引いて直ぐ離すパルス撃ちを基本として戦闘に当たっていた。

一機だけ塗色の違う機と機首に大きくシャーク・マウス(メルダには何のマークだか判らなかったが・・・)を
描いた機が互いに尻を取り合う様に旋回しだした。

これは地球ではデス・サークルと呼ばれる防御陣形であった。

このサークルにいる敵機を撃墜しようとしてサークルに入り、どちらか一方の後尾に専位すると、もう一機が
メルダの後尾をとり、攻撃、撃墜するという「死の罠」だった。

しかし、メルダは鼻で笑うと旋回している機の斜め前方上から攻撃を加えた。

しかも、ロック・オンを三秒続けるために機体を機首を中心としてバク転する様な動きを見せた。

狙われたのは篠原機だった。

三秒間ロック・オンされた彼の機はたちまち射撃不能状態になり、戦線を離脱していった。

残った加藤機と山本機はしっかりと二機編隊を組みなおすとメルダの後尾を取ろうと必死で機動した。

今度はサッチ・ウイーブ戦法を取るつもりらしかった。

これはナチス・ドイツ空軍が編み出し、世界中の空軍が採用したロッテ戦法を米海軍が更に発展させたもので
ある。

ロッテ戦法が二機編隊が単に相互に扶助しあう事を前提に組まれたものであるのに対し、サッチ・ウイーブ
戦法は敵にわざと一方の機の後を取らせ、もう一機が横から忍び寄り、見越し射撃で攻撃するという、より
積極的な高度な技である。

今回、メルダのツヴァルケの前に山本のファルコンがわざと出て追わせ、S字飛行をしてロック・オンを
させない様にしている間に加藤機は逆S字飛行でわざと戦場を離れ、メルダ機に位置をロストさせた後、
再び接近をはかり、山本機を追っているメルダ機を横から見越し射撃で仕留める算段だった。

しかし、メルダの方が役者が一枚上手だった。

宇宙空間は当たり前だが空気がない、従って、飛行している方向と機体の向きにはなにも関係がない、
メルダは加藤機の接近を警報装置で知るとバーニャ・ノズルを吹かして山本機を追尾しながら、機首だけを
加藤機の方に向けたのだ。

加藤機は見越し射撃を行ったが、メルダ機の側面を捉える事を前提に射撃管制装置は働いていたので
いきなり射撃有効面積が減った目標、メルダ機には一発も命中弾を与える事が出来なかった。

たちまち、残弾0となり、加藤機の戦闘は終わった。

加藤はバンクを振ると山本の健闘を祈って帰艦していった。

山本はヘルメットの下でニヤリと微笑ってファルコンを反転させた。

<やっと、二人きりで戦えるわね。 遠慮はしないわ!! 覚悟!!>
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山本のパルス撃ちは他の誰よりも秀でていた。

既に一度、射撃しているのにまだ残弾を機関砲一門あたり一五発も残していた。

そして今の射撃でも五発、しか消費しなかった。 

<あと二射は出来る!>それは山本の執念だった。

だが、メルダも残る最後の一機のファルコンが山本機である事を確信していた。

<いいわ! いいわ! ぞくぞくする。 生きているって本当に幸せ!>殺し合い(?)をしているのにメルダは
好敵手と勝負出来る幸福感で一杯だった。

だが、このまま後を取らせ続けては何時、機関砲を喰らうか判らない。

彼女は愛機の機首を少し持ち上げた状態で逆噴射を行った。

山本のファルコンは減速が間に合わず、メルダを追い越してしまった。

<しまった!!>山本は自分のミスに歯噛みした、今度は追われる立場になってしまったからだ。
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<メルダ機に三秒間ロック・オンされたら負けだ!>ファルコンは重戦闘機だったが、高機動性を確保する為に
二次元ノズルを装備していた。

だから山本はそれを活かして進行方向を変えないまま、機体の向きを後方のメルダ機の方に向けて最後の
一連射を浴びせた。

今度は残弾六十発全部を一度に叩きこんでやった。

三秒ロック・オンするために普段より接近していたメルダ機には致命傷になるはずだった。

だが、それを予想していたメルダ機はスッと位置を下にずらし、難なく山本の最後の攻撃をかわしてしまった。

反対にあまりに無茶な機動をした山本のファルコンはエンジン・トラブルを起し、エンジンが爆発してしまった。
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「山本!!  脱出だ!! 直ぐ脱出しろ!!」メルダは思わず叫んでいた。

山本機のエジェクション・シートがギリギリで作動し、山本が宙に投げ出されると同時に主を失った
ファルコンは付近の小惑星に叩き付けられて大爆発した。

「山本ーっ」メルダは考えるより先に身体が動きが動いて山本の救助を行っていた。
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少し離れた空間に古代の操縦する100式空間偵察機は浮かんでいた。

「訓練終了です。 山本機が事故を起こしたましたが、メルダが無事、山本三尉を救出しました。」

「アナライザー、訓練記録は完全にとれたな。 それじゃ『ヤマト』に帰艦しよう。」古代はこのイベントが
どんな意味と結果を持つのか、いまだ気が付いていなかった。


                                            47.孤高の「赤騎士」ー(6) へ続く

                                             
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by yamatoss992 | 2013-05-15 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)
Commented by 宇宙零戦 at 2014-09-17 09:24 x
>パルス撃ちも出来ない
地球軍の宇宙戦は大気圏内戦の延長線ですよね。現代でも常識のはずなのに、これはおかしくないですか?
Commented by 宇宙零戦 at 2014-09-17 17:39 x
揚げ足を取りたい訳ではありません。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-09-17 17:55
現代戦の場合、会敵は一瞬なのでより短時間により多くの弾丸を敵に叩き込む事を教えられています。
第二次大戦でも弾丸を節約して戦うという考え方は一部のエースのみが用いていたのみで一日に何度も空戦を繰り返していた東部戦線の独空軍機でも一度の飛行で数度の空戦を繰り返す事は稀で弾の節約はそれ程必要ではありませんでした。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-09-17 18:53
それなのに何故、ガミラス・パイロットは”パルス撃ち”を求められるのかと言えば彼等は宙母を拠点として行動していますが、その宙母自体が中々補給を受けられない孤立した存在だと言う事が挙げられます。
ヤマトもまた補給を受けられない?存在です。
弾の節約は必要と考えます。