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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

47.孤高の「赤騎士」ー(6)

 「抗議を始める前に言っておく。 私を『赤騎士』などと呼んで讃えないでくれ!  『赤』はテロンでは撃墜王が
使う色だそうだが、ガミラスでは違う!

ガミラスでは機体を赤く塗られるのはその部隊で一番腕の悪い新米の証だ。」メルダはこう言い放った。

「教官・・・でいいんですよね。 ディッツ少尉。 何であれだけの腕を持ちながらあなたは『新米』なんですか?」
根本三尉が質問した。
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「貴様は『パルス撃ち』も出来ん『ヘボ』だな。 お前の機体はピンクにでも塗ってやろうか?」メルダは言った。

根本三尉は恥かしそうに頭をかいた。

「ガミラスではパイロットは実戦に配備されるまでに徹底的にしごかれる、やっと実戦に出られる様になっても

一番最初に与えられる役割は『囮』だ。 

だから自分の愛機を『赤く』塗られて一番目立つ様にされて実戦に臨むのだ。

そして先輩達は『赤く塗られた新米』に群がる敵機を順番に始末すると言う寸法だ。

しかし、次から次へと襲ってくる敵機を避け、撃墜してゆく内に「赤いヒヨコ」もめきめきと腕は上がる。

そして、新しい『新米』が補充されて初めて『囮』の任務から解放される。 

まあ、それまで生きていられればの話だが・・・。」メルダはサラリと言ってのけた。

この前の「実戦訓練」の時のメルダの技量は神掛ったものだった。

それでも「ガミラス」では「ヒヨッコ」扱いなのだ。

その事実に加藤隊長も篠原三尉もその他の飛行隊員も言葉が無かった。

地球での防空戦、冥王星での制空戦闘、どちらも地球の航空隊は圧勝して来た。

だが、その慢心はメルダとの「実戦」訓練」で無残にも打ち砕かれた。

いくら弾数に制限があったとはいえ、三十六対一の戦いに敗れたのだ。

この大敗北は僥倖かもしれない、これだけ叩きのめされたのに「戦死者」は無かった。

そして、そのメルダが自分から航空隊の教育をしたいと申し出たと聞く。

加藤三郎は考えられ無いこの幸運に思わず、「仏」に感謝していた。

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「ヤマト」の士官室は基本的に二人部屋だ。

山本玲は唯一人の女性航空兵だったのでその士官室を唯一人で独占していたのだが、メルダが独房から
解放されるとメルダと相部屋になる事になってしまった。

「お前と一緒の部屋で暮らす日が来ようとは思わなかったな。 しかし、寝首を掻かれるのは御免だぞ! 
勝負は宙だけにしたい。」メルダは山本に右手を差し出して握手を求めた。

「ガミラスは憎い。 家族や親戚、友達はもちろん、明生兄さんまで殺した憎い敵だ。 だが、あなたは、
あの壮絶な空戦の果て、自分のミスで愛機を自爆させてしまった愚かな私を自分の身の危険を顧みず、
助けに駆けつけてくれた。 しかも一寸、前まで私はあなたの命を取ろうとしていたのにだ。

私は恥かしい。 私はガミラス全体とガミラス人個人の区別も出来なかった愚か者だ。

こんな私で良ければ一緒に暮らす事をゆるして欲しい。」山本は両手でメルダの手を握り返した。

それを見ていた保安部長の伊東真也は言った。

「話は決まりましたね。 今まで付けていた女性保安部員は外します。 

山本三尉、代わりにディッツ少尉の面倒を看てあげて下さい。

ただ、ディッツ少尉の『捕虜』という立場は表向き変えるわけには行きませんので部屋の外に男性保安部員の
歩哨を一人つけさせて頂きます。

ディッツ少尉が部屋から出る時にはこの歩哨が同行します。

もちろん、必要に応じて山本三尉にも同行して貰う場合もあるでしょう。 

その時はよろしく! では。」伊東二尉は敬礼すると部屋を出て行った。

扉が閉まる直前、歩哨に立っている男性保安部員の顔が見えたがその男はキチンと敬礼しつつ、二人に
ウインクをして見せた。

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 情報長の新見薫一尉はほくほく顔で情報の整理にあたっていた。

「新見君、君の作戦は当たりだった様だね。」声を掛けたのは副長の真田三佐だった。

「当たりも何も大当たりですわ!
 
私がメルダの『処刑』を『実戦訓練』に切り替えてもらったのはガミラスの航空戦術の一端を垣間見るつもり
だけでした。

でもメルダはファルコン隊を全機退けてガミラスの航空戦力の強大さを教えてくれたばかりか、自分を『撃墜』
出来る様にファルコン隊を教育しなおさせてくれと申し出てくれました。

この講義や訓練はガミラスの情報を多量に含んでいます。

更に山本三尉と一緒に暮らす事で日常会話の中にガミラスの習慣や考え方の情報をつぶさに収集する事が
出来ます。」

新見情報長は新しいおもちゃを貰った子供の様だった。

「しかし困った問題が一つある・・・。 彼女の服装だ。 

航空隊の艦内服を支給するのが一番てっとり早いがそれではジュネーブ条約違反になる。
(敵国の軍服を着て戦闘行動をするとスパイ行為と見做されて即座に銃殺の対象となる。)

かといって囚人服のまま教壇に立たせるなんて『礼』を失した行為は我々の『誇り』が許さない。

どうしたものか・・・。」真田副長は妙に頭の硬い男だった。

「原田真琴 衛生士に『メイド』服でも借りたらいかがですか?」新見情報長は冗談を言った。
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「ご主人様、敵機はこうやって捻ってやって下さい・・・、ってか! 冗談いうな! 私は本気で心配して
いるんだ。」真田副長は受けない冗談で切り替えしたが、新見情報長は黙って目の前のモニターを操作した。

そこには囚人服に航空隊のジャケットを羽織ったメルダがいた。

「囚人服とはいえ『錨マーク』が入っていては軍服扱いになります。  『錨マーク』は『ヤマト』のシンボル
だからです。 

しかし、元々、あの囚人服は艦内服の下に着るアンダー・ウエアとして作られました。

ですから、一般の乗員に支給されているアンダー・ウエアに錨マークは入っていません。

だから、メルダにも『錨マーク』の入っていないアンダー・ウエアを支給すれば良いと思います。

そしてアンダー・ウエアだけでは格好がつかないので航空隊に支給しているフライト・ジャケットを羽織って
貰います。」新見情報長が説明した。

「フライト・ジャケットだって立派な軍服だぞ?」真田副長は懐疑的だった。

「階級章さえ外せば、フライト・ジャケットは軍服ではありません。 

あれは航空隊の士気を高めるために用意された伝統的なコスチュームです。

だから、階級章や『ヤマト』航空隊関連のワッペンを外せば、問題なく使えると考えます。

航空隊のマークを外したあと、『ガミラス』の国章をワッペンにして付ける事を考えましたが、さすがにそれは
一般乗組員の感情を逆撫でしかねないのでやめました。

しかし、メルダは愛機にパーソナル・マークと思しきものを付けています。

ですからそれを主計科でワッペンにして貰ってフライト・ジャケットに付ければいいんじゃないかと思います。」
新見情報長はモニターを真田副長に示して微笑んだ。
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「私のマークだ!! これを着て良いのか?」メルダは至急された新しいフライト・ジャケットに自分の
パーソナル・マークのワッペンが着けられているのを見て喜んだ。

「星は違えど同じパイロットだ。 フライト・ジャケットくらい無くっちゃ話にならない。 平田主計長の
心使いね。」山本三尉がメルダの新しい衣服と着替えを持ってきた岬准尉に言った。

「ええ・・・そうです。」岬 百合亜はこれが新見情報長のコーディネイトだという事は伏せておく様に
言い含められていた。

さすがに心理学の博士号を持つ彼女はメルダの心を開かせるのには何が必要か、充分心得ていた。


                                            48.孤高の「赤騎士」ー(7) へ続く
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by yamatoss992 | 2013-05-16 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)