ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

48.孤高の「赤騎士」ー(7)

 「この前の『実戦訓練』の時、ファルコン全機で一斉攻撃したのは見事だった。 加藤隊長。」

メルダはあの大胆な作戦に加藤隊長に一目おいていた。

「いや、なに単機なのは判っていたからロッテ(二機)編隊を組む必要はない、だったら多量の弾を浴びせて
一気にケリを付け様と思っただけだ。 

しかし、あの弾雨の中、アンタが機首を上げずに直進するとは思わなかった。

弾雨から逃れようと機首を上げればがら空きの背面をこちらに見せる事となる。

そうすればこっちの思う壺だったんだがな・・・。」加藤三郎は頭を掻いた。

「本当は私も、ファルコン隊に撃たれるまま撃たれて死ぬつもりだった。

でも訓練で染み付いた習慣からは逃れられないものだ。

機載のコンピュータがファルコン隊の接近を告げると同時に身体は戦闘モードに入ってしまった。」

メルダも恥かしそうに下を向いた。

「ディッツ少尉。 それが訓練の意味じゃありませんか、何も恥かしがる事はありませんよ。」篠原三尉が
フォローした。
e0266858_209124.jpg

「それで俺達の技量を上げるにはどうしたらいいんだ?」加藤二尉が質問した。

「ファルコン隊の面々が、まず、マスターすべきは『パルス撃ち』だ。

戦闘機につめる弾薬には限りがある。

一機、撃墜するのに全弾使ってしまったら戦力がガタ落ちになってしまう。 

特に『ヤマト』は単艦で長い航路を行く船だ。

兵力の無駄使いは物資・人心共に避け無ければない。」メルダは鋭い指摘を行った。

「具体的にはどんな訓練が有効なんだ?」古代戦術長が聞いた。

「簡単な事だ。 『イメージ・トレーニング』が一番効果的だ。 但し、暇さえあれば、常に行う、歩いていても
『イメ・トレ』を欠かさない位の覚悟は無いと上達は望めないがな。」メルダはサラリと言った。

「戦術面ではどうか?  『パルス撃ち』が出来た加藤と篠原が『デス・サークル』を試みた様だが、
君は簡単に突破してしまった。  あれはそんなに幼稚な戦術なのか?」古代はメルダに聞いた。
e0266858_15444735.jpg

「能力的に劣った機体が勝れた能力の機体に襲われた時の防御陣形としては悪くない。

だが、最新鋭の戦闘機がとる戦術としては消極的過ぎる。」メルダは容赦無かった。

「敵が攻撃してくるのを待つ戦術などおよそ戦闘機の取るべきものではない。

先手必勝、敵より先に相手を見つけ、敵がこちらに気付かない内にその大半を落す、これが空戦の鉄則だ。

その点、次に山本三尉と加藤二尉の見せたサッチ・ウイーブ・・・?か、これは勝れた戦術だ。」
e0266858_16313732.jpg

「これは『攻撃』にも『防御』にも有効な方法だ。 

ガミラスには編隊行動と言う概念がない。

だから『赤い囮』などという無残な事をする必要がある。

テロンでは古くから『ロッテ』と呼ばれる二機編隊を戦闘の最少単位としていると聞いた。

リーダーとウイング・マンで『攻撃』と『策敵・防御』を分担する考え方だ。 素晴らしい。 感心した。」

メルダはテロン人がいかに昔から戦い続けていたのだろうか、と内心、震えを感じた。

「しかし、そのサッチ・ウイーブでさえ、君はかいくぐった。 我々には何が足りないんだ?」古代は率直に
聞いた。

「戦術長、これ以上、ディッツ少尉に協力して貰っては彼女が『利敵行為を働いた』事になりませんか?」
篠原三尉が心配した。

「有難う、篠原三尉。 構わん。 私は生きてガミラスに戻るつもりはない。

それに『利敵行為』は『ヤマト』に『停戦の使者』として来たときからもう始まっていた。」メルダは遠いものを
見つめる様に言った。

確かに「ヤマト」に波動砲を撃たせて次元境界面を破ったあと「ガミラスの利」では「EX-178」は「ヤマト」を
置き去りにして単艦で脱出すべきだったのだろう。

だが「EX-178」の面々は「ガミラスの利」より「漢と漢の約束」の方を選んだ。

独房での尋問では決して自分の認識番号しか、言わないメルダだったが、「漢と漢の約束」を信じてくれた
「ヤマト」には絶大な敬意を払っていた。

「さて、さっきの古代戦術長の質問だが、何がたりないか?だって。 

お前達は大きな考え違いをしている。

貴様達の殆ど全てがテロンの防空隊の出身だそうだな。 大気のある場所を戦場としていたのだろう。

しかし、ここは宇宙空間だ。 大気は無い。  

大気が無ければ戦闘機の機動方法も変わる、その事を良く研究してみるんだな。

次の研究会はあさってだ。 

それまでに宇宙空間独自の機動方法を各自考えておく様に!」メルダは一方的に宣言すると教壇を
降りてしまった。

**********************************************

高空隊のブリーフィング・ルームを出ると監視・護衛役の保安部員が待っていた。

メルダの部屋からブリーフィング・ルームまで監視・護衛して来た男性保安部員ではなく、女性保安部員だった。

「工藤明菜二曹であります。 腹痛を起こした山中一曹に変わり護衛任務を行います。」敬礼しつつ、彼女は
申告した。

「判った。 宜しく頼む。」メルダも地球式の敬礼を返すと歩き始めた。

工藤二曹は右後にピタリと付いて歩いていた。

いつでも腰に下げたコスモ・ガンをメルダに打ち込める態勢だった。

「君の得意技は射撃か・・・。 そんなに『ガミラス』が憎いか?」メルダは前をむきつつ、工藤に問うた。

「『ヤマト』の内に『ガミラス』を憎いと思っていない人はまずいません。

でも、あの日、判ってしまったんです。 私。」工藤二曹はメルダの思わぬ事を言った。
e0266858_16261559.jpg

「航空隊の実戦訓練」がガミラス人、メルダ・ディッツ少尉を相手として行われるという事はたちまち艦内の噂に
なっていた。

当然、当日、非番の乗組員は左舷展望室に詰め掛けた。

そして、最初の内こそ、航空隊に声援を送っていた観衆達だったが、メルダが航空隊全機が放った弾雨を
避けきり、デス・サークル、サッチ・ウイーブと、航空隊が繰り出す戦術をメルダが次々と破った時、観衆は
沈黙していった。

しかし、最後に残った山本機との壮絶なドッグ・ファイトとその結果の山本機の自爆から、メルダが身を挺して
山本三尉を救出した時には大歓声が挙がっていた。

「赤騎士! 赤騎士!」とメルダの「ヤマトでの仇名」がいつまでも連呼された。

「あの時、私もあの場にいました。

そして、あなたが山本三尉を死なせたくなかったのを知った時、『ガミラス』は地球を滅亡に追いやろうとして
いるけれど、『ガミラス人』が皆、それを望んでいるわけではないのでは?と思う様になりました。」

工藤二尉は続けた。

「私も肉親、全てを『ガミラス』に殺されています。

『ガミラス』は憎んでも憎みきれない『敵』である事になんら変わりはありません。」

苦悩する様に下を向いた工藤二尉だったが、キッと顔を上げると言った。

「でも『ガミラス人』は違う、あなた等も私達と同じ人間です。

良い人も悪い人も、正義漢も卑劣な奴もいるのでしょう。」いつの間にか振り向いていたメルダに微笑んだ。

「それに私達、地球人の歴史は約1万年ありますが、語るのもおぞましい程、全てが血塗られたものです。

『ガミラス』の事を今更、責める事など出来はしません。」工藤二尉は目を伏せて、自嘲するのだった。

メルダは『ガミラス』はとんでもない『竜』を目覚めさせたのでは?と言う思いに捕われてしかた無かった。



                                            49.孤高の「赤騎士」ー(8) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)