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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

50. 友よ・・・。

 はじめに

 この物語は宇宙戦艦「ヤマト」2199をベースに私なりの解釈を加えたものです。

公式設定と異なっていたり、以前に私が書いた物語と食い違いを生じている部分もあります。

それを承知で楽しんでいただければ幸いです。 (YAMATOSS992)

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 フラーケンは自室にある、目の前の小さな机、というか、本が1冊置けるかどうかの僅かな出っ張りに小さな
グラスを二つのせ、ゴルケン(ガミラス産の蒸留酒)を注いだ。

そして、その一つを手に取ると一気にあおった。

<ウ~ッ カビとオイルの味がする・・・。 だが、これが次元潜航艦の味だ。 

ヴァルス、貴様との約束、結局、果たせなかったな・・・。>

もう一つのまだゴルケンが注がれたままのグラスを見やって、フラーケンは戦いの無情を思った。

 ヴォルフ・フラーケン中佐、彼は精強を持って鳴るガミラス航宙艦隊の中では珍しい、次元潜航艦という特殊
艦艇の艦長だった。
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次元断層を人工的に作り出し、その中の艦体を潜ませて敵艦に近づき、至近距離から魚雷攻撃を行うその艦は
「異次元の狼」と恐れられていた。

ガミラスの勢力がまだ弱く、周辺の惑星国家群が大きな力を持っていたころ、ガミラスの次元潜航艦は敵の
主力艦隊や輸送船団にとって見えない敵として非常にやっかいな存在だった。

しかし、今はガミラスの勢力は拡大し、通常の航宙艦隊も非常に充実してきている・・・。

 また、次元潜航の技術は極めて精密な操作を要求される微妙なものだった。

そしてやはり危うい技術だったゲシュ=タム機関は改良され安定したジャンプが出来る様になり、長短自在の
ゲシュ=タム・ジャンプが出来る様になると次元潜航艦の担っていた通商破壊、通商保護の役割は軽巡に
移っていった。

その結果、大型の艦は造れない、また、一度、次元潜航すると再び通常空間に戻ってこれられる保証はない、
という次元潜航艦はもはや新造艦は作られない旧式兵器と化してしまっていた。

フラーケンの艦、UX-01はその最後の生き残りなのだ。
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<そんな俺が生き残って、巡洋戦艦乗りのお前が逝くなんて・・・。>フラーケンは信じられないと言う風に頭を
左右に振った。

 戦死した彼の親友の名はヴァルス・ラング中佐、メルトリア級航宙巡洋戦艦<EX-178>の艦長だった。
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フラーケンは1等ガミラス人だったが、ラングは被征服惑星、ザルツ出身の2等ガミラス人だ。

士官学校自体も1等ガミラス用と2等ガミラス用で区別されていたので本来なら親友どころか、友人になる事も
有り得ない組み合わせだった。

だが、ヴァルス・ラングは違っていた、成績があまりに優秀なので1等ガミラスの士官学校へ編入されたのだ。

最初のうちこそ、2等ガミラス人という事で差別を受けたラングだったが、その高潔な人格はしだいに慕うものを
増やし、士官学校の教官ですら「ラングの進言なら・・・。」と動かすまでになっていた。

 だが、フラーケンは1等ガミラス人であるにもかかわらず、素行が悪く、校則を度々破って悦に入る典型的な
不良だった。

当然、優等生のラングは大嫌いであった。

しかし、ラングの方はフラーケンの素行を咎めはしたが、別に不良扱いは決してしなかった。

フラーケンにしてみればそれが更に燗にさわったともいえたが・・・。

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 事件は卒業を真近に控えた次元潜航艇躁艦訓練で起こった。

フラーケンが艦長、ラングが副長を務める訓練用次元潜航艇が浮上不能になってしまったのだ。
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「次元タンッ、ブローッ」艦長役のフラーケンは思いっきりベテランを装って命令を発した。

こんな時、指揮官が自信を失っていると乗組員が思ったらこの艇の士気は崩壊してしまうからだ。

「やめとき、やめとき、艦長、何度繰り返しても同じ事や、わしら、沈没したんや。」副長のラングがザルツなまり
丸出しのガミラス語でしゃべった。

「ラング、おまえ、その言葉使いはなんだ。」フラーケンは馬鹿にされたと思いラングを睨みつけた。

「言葉使い・・・。 あ、失礼しました。 怖くてついザルツ言葉が混じってしまいました。」ラングは鯱ホコばって
敬礼した。

あまりの落差に艦内のそここで失笑が漏れた。

「いくら成績優秀でもやはり2等ガミラス人だな。 死ぬのがそんなに怖いか、それでもガミラス軍人か!」
フラーケンはラングの頬を張った。

「コ、コワイものは怖いだ。1等でも、2等でもコワイものは怖いはずじゃん!! みんな!」ラングは両手を
広げて狭い艇内を見回した。

訓練用次元潜航艇に乗り組んでいたのは6名、その内、ザルツ人はラングだけだった。

フラーケンはもちろん、他の4人もラングの無様な姿を見て軽蔑し、自分だけはそうなるまいと決心し、今、
自分の出来る事に邁進し始めた。

3日が過ぎた。

彼等は希望を失いそうになるとうずくまるラングの惨めな姿を見て気持ちを奮い立たせた。

「フラーケン、いや、艦長、次元羨望鏡を上げてみたらどうでしょう。 うまくすれば次元境界面を突破して
通常空間に通信アンテナを出せるかもしれません。 そうすれば救助を呼べます!」探査主任が提案した。

艦長、探査主任と役割には上下はあるが、訓練生は皆、士官候補生なので階級は一緒だった。

「ムダ、ムダ、この深さじゃ次元境界面まで次元潜望鏡はとどきゃないさ」ラングはまたザルツ弁丸出しで
否定的な事を言った。

「黙れ!! 2等! 何事もやってみなければ判らん! それに少しでも境界面に近づければ通信も通じ易く
なる!」フラーケンは隔壁の傍にうずくまって文句をたれたラングを蹴飛ばした。

「艦長・・・。 そんな臆病な2等に構わず、次元潜望鏡を上げてみましょうよ。」探査主任が言った。

「判った。 次元潜望鏡を上げろ!」フラーケンは命じた。

次元潜航艇の潜望鏡は過去、地球にあった潜水艦の潜望鏡と違って超小型の次元潜航艇に索敵プローブや
通信アンテナを取り付け、本体とそれを有線で繋ぎ、それを浮上させて通常空間との接点を作るものだった。

地球の単位で言えば約300mの長さのプローブを繰り出したが、通常空間には達しなかった。

「ダメか・・・。」フラーケンはつい、潜望鏡を覗きながら呟いた。

「そーれ見ろ! これじゃ上部監視用のカメラを開いても通常空間は拝めやしないーさ。」ラングが囃し立てた。

「!」それを聞いたフラーケンはラングの真意に気付いてしまった。

「ラング・・・、お前。」フラーケンはラングに声を掛けた。

しかし、ラングは微笑んだが首を左右に振った。

フラーケンも何も言わず、首を縦に振った。

そして、「探査主任、上部監視カメラを作動させろ!」とフラーケンは命じた。

そしてその画面には通常空間がボヤケてはいたが写っていた。

次元境界面は厚い、通常空間がすぐそこにある位置までプローブが伸ばせたのは奇跡に近かった。

ここで通信を送れば救助される確率が高い。

「通信士、直ぐに救助信号を送れ!」そして、フラーケンは言った。

直ぐに捜索隊の返信が来た。

「喜べ!! 皆んな! 助かるぞ!」フラーケンは仲間に伝えた。

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 訓練用次元潜航艇は救助された、遭難から5日目の事だった。

「ヴォルフ・フラーケン士官候補生、この困難に良く艇内をまとめ、対処してくれた。感謝する!」 次元潜航艦隊総司令(当時)ガル・ディッツ提督が訓練用次元潜航艇の面々を謁見した。
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「いえ、私の力など微々たるものです。 

本当に讃えられるべきはいつ助かるか判らない長時間の遭難にも係わらず、自分の任務を遂行し続けてくれた
乗員達です。

そして・・・。」と言いかけた時、ラングが横からフラーケンを突いて首を横に振った。

「なんだね?」ディッツ提督は訝しげに訪ねた。

しかし、フラーケンは「いや、何でもありません!失礼しました。」と応えた。

 ガル・ディッツ提督との謁見は終わった。

フラーケンはラングの事を讃えようと思ったのだが、ラングは何故か、それを断わった。

<どうしてだ?>フラーケンは思いを巡らした。

そして、彼が、パニックに陥る寸前の艇内を纏めるために自分だけが2等ガミラス人である事を利用したのに
気が付いて愕然とした。

あの場には乗組員達が自分達より劣っていると思える存在が必要だったのだ。

ヴァルス・ラングにとっては自分が2等ガミラス人であった事は好都合だったに違いない。

しかし、その事が周囲に知られればザルツ人全体の立場が悪くなりかねない。

だから、ラングはフラーケンに口止めしたのだ。

フラーケンは自分が差別されている立場の2等ガミラス人である事さえ、指揮に利用出来るラングと言う男に
心底、敬服した。

そして、この時からフラーケンはラングに一目置く様になり、それはいつしか、友情に変わっていった。

士官学校を卒業して実戦に配備されるとフラーケンは次元潜航艦UX-01の艦長にラングはその副長に
選ばれた。

二人の息はピタリと合い、次々と戦果を上げていった。

しかし、5年前、ヴァルス・ラングは中佐に昇進すると同時に航宙艦隊へ転属になってしまった。

その時、二人は、また、何時か、それぞれが指揮する次元潜航艦で戦隊を組んで戦う約束をした。

だが、、次元潜航艦は旧式艦としてどんどん退役し、とうとう総統府の特務艦としてUX-01だけが残る事に
なってしまった。

 ヴァルス・ラング中佐はドメル少将(当時)の下に配属され、クリピテラ級航宙駆逐艦の艦長に任じられたが、
その勝れた指揮、勇猛な戦いぶりからケルカピア級航宙高速巡洋艦2隻をを与えられ、全艦隊の先頭をきる
強行偵察戦隊の戦隊長に任じられた。
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そして2年前、新型の陽電子カノン砲を積んで航空機運用能力もあるメルトリア級航宙巡洋戦艦が就航すると
そのテスト運用の任務が与えられ、「EX-178」の艦長になった。
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この時、現在はUX-01の副長をしているゴル・ハイニ大尉が「EX-178」の副長に選ばれ、一騒動起こすの
だが、これはまた、別の話としたい。

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「EX-178」はテロンの戦艦、「ヤマト」との戦闘で沈んだとの報告が銀河方面軍司令官ゲール少将から
なされていた。

テロン艦!? 「ヤマト」? フラーケンは不審に思った。

ゾル星系の惑星テロンは確かにしぶとい敵ではあったが、とても光速を超えるゲシュタム・ジャンプの技術など
持っていないはずだった。

それどころか、陽電子ビーム砲に有る程度、耐性のあるガミラス艦の装甲と違い、陽電子ビームで紙の様に
貫かれる装甲しか持っていないブリキ船ばかりではなかったのか?

だが、彼は思い出した、テロンの本星に侵攻しようとした艦隊が大敗を喫し、その後のテロン本星への攻撃は遊星爆弾によるロング・レンジ攻撃に切り替えられた事を・・・。

 テロンにはまちがいなく名将、知将がいる! その男がゲシュタム・ジャンプの技術を何らかの方法で
手に入れたのだ。

 そして、そいつがアイツを殺したのは間違いない!  『ヤマト』・・・この名を忘れまい!

フラーケンは目の前に残ったもう一つのグラスを手に取ると思い切り激しく飲み干した。


                                                       
                                                      友よ・・・。ー(項了)
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by yamatoss992 | 2013-05-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by 古世人 at 2014-07-22 06:54 x
ハイニが起こした騒動って結局何ですか?
Commented by YAMATOSS992 at 2014-07-22 13:20
これもその内文章化する予定ですのでお楽しみに!