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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

55.勇者の砦ー(2)

 そこには既に「ヤマト」からの使者が待っていた。 

テロンの船からの使者なのにそのパイロットはガミラスのパイロット・スーツとヘルメットを着用していた。
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「ヘルメットを脱がないのは艦内の空気が身体に合わないのからなのかね?」フラーケンがたずねた。

その言葉にパイロットは黙ってヘルメットを外した。

現れた真っ赤な髪、青い肌の美少女にあたりはどよめきに包まれた。

「ガーレ・デスラー、総統ばんざい!!」フラーケンが思わず敬礼した。 

その場にいた全員がそれに習った。

しかし、彼女は真っ直ぐのばした右手の指を顔の脇に当てる地球式の敬礼で応えた。
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「メルダ様、それは・・・。」フラーケンは非難したわけではなかったが、見た事の無い敬礼にとまどった。

「私は、テロンの宇宙戦艦『ヤマト』の特使として今、ここにいる。 

父上には申し訳ないが使命が終わるまで私はテロン人だ。」

「わかりました。それでは用件をうかがいましょう、特使どの。」

次元潜航艦戦術の父、ディッツ提督の愛弟子であったフラーケンは幼い時からメルダを良く知っていた。

そして、負けず嫌いで正義と名誉を何よりの美徳と考える彼女の並々ならぬ決心を感じ取っていた。

「今、『ヤマト』の中には緊急手術を必要とする重病人がいる。 貴艦と戦闘していてはその手術が出来ない。 
だから、手術の間だけでいい、停戦して欲しいのだ。」

ガミラス艦の乗組員達はお互い顔を見合わせた。 まだ事態がまだ良く飲み込めないのだ。

「だめだ!・・・といったら?」腕組みしたフラーケンは不敵に微笑した。

「お前ならそう言うと思ったよ。 フラーケン・・・。」メルダは悲しげに目を伏せた。

しかし、次の瞬間、彼女は右手を高く上げた。

そして手にしたちいさなリモコン・スイッチを皆に示した。

「フラーケン中佐。 ガミラスの軍人ならガミラス艦や軍用機には必ず自爆装置があるのは知っているな。」

「私の『ツヴァルケ』を後上甲板に固定したのは失敗だったな。 あの下にはこの艦の主機関がある。」

「へっ、そんな事をすればあんたの命もありませんぜ!!」副長が堪らず叫んだ。

「『命』? 私にとっては『名誉』の方が重要だ。『ヤマト』のテロン人は私がガミラス人である事を承知で
ガミラス艦に停戦特使として派遣したのだ。

私にはこの『信頼』に応える義務がある。 さあ、フラーケン中佐、もう一度聞く。 停戦するか !!」

メルダはフラーケンの鼻面に自爆用リモコンを突きつけた。

「私にもこの艦の120名の命を預かっている責任があります。 無駄死させるわけにはいかない。 判りました。

停戦に応じましょう。」

メルダの顔にほっと安堵の微笑が浮かんだ。

「ただし、こちらにも条件があります。 あなたにはこのまま本艦に残り、帰国して頂きたい。 

折角生きておられたのです。
 
お父上のディッツ航宙艦隊総司令にお顔をお見せになってください。」

「それとも、父上にまともに顔を合わせられない理由でもおありなら話は別ですが・・・?」フラーケンは鋭く切り込んできた。

メルダは空を見詰め、やがて顔をフラーケンの方に戻すと自爆リモコン・スイッチをその手に渡した。

「わかった。 それ位の事で停戦が成立するならこちらも願ったり適ったりだ。 発光信号機をかりるぞ。」

メルダは副長から信号機を受け取るとタラップを上って司令塔のキャノピー越しに停戦成立の信号を「ヤマト」に
送った。

**********************************************

「敵潜から信号! メルダからです。 『停戦成立』!」相原が弾んだ声で報告した。

「やった!! さすが『赤騎士』だ。」太田が歓声を上げた。

「待って下さい。 信号には続きがあります。『ヤマトのテロン人達よ。私は停戦の条件としてガミラス本星に
帰国しなければならなくなった。
 
今まで敵である私を『EX-178』からの使者として、『EX-178』が撃沈された後も変わりなく使者として遇して
くれた事を決して忘れない。

短い間ではあったが私は宇宙戦艦『ヤマト』に乗り込めた事を一生の誇りに思う。」

「やっぱり、あいつ、裏切るつもりだったんだな!」南部がいきり立った。

「南部君 !!」森雪がたしなめた。

ガミラス人の宇宙作業者達が「UX-01」にからみついたロケット・アンカーとその鎖を外したので島はそれを艦内に収容した。
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相原は続けて信号を読んだ。 「沖田十三、真田志郎、古代進、島大介、森雪、南部康雄、・・・・」メルダの知る
限りの「ヤマト」乗員の名前が続いた。

南部は自分の名前までメルダが知っていた事に嬉しいような悔しいような複雑な感情にかられた。

「わ、いや、岩田新平、やま・・・ 駄目です。 判読不能なまでに距離が開いてしまいました。」相原が双眼鏡を
古代に返した。

「最後の名前は遠山清だ。 岩田と遠山は第三格納庫でメルダの機体の面倒を見ていたからな・・・。」古代は
何か大事なものを失った様な喪失感にかられていた。

「でもこれで良かったんじゃないかな。 彼女も故郷に帰れるんだし・・・。」島がポツリと言った。

『ガミラス憎し』の塊だった彼もメルダの堂々とした戦士の生き様に感じ入るものがあった様だ。

「これはまず間違いなく、彼女の計画だ。 彼女は沖田艦長の、いや俺達のために時間を稼いでくれている
んだ。」古代は第一艦橋を見渡した。

古代の頭の中には次元潜航艦への使者の役目を快諾してくれた時、メルダの決意を読み取れなかった後悔が
渦巻いた。

<最初のこちらの計画では沖田艦長の手術の時間だけ停戦する予定だった。

だが、それでは手術は成功しても弱った身体の艦長を戦禍に晒してしまう。

それに、次元潜航艦と再戦したとして、今度はどうやって相手の位置を特定する・・・。 

また、ロケット・アンカーが通用する程、相手は甘くない・・・。

メルダは多分、相手が停戦に応じなかった時は愛機を自爆させても次元潜航艦を葬るつもりだったのだろう。

また、停戦が成立してもそれが短時間では沖田艦長の手術は成功しても回復には至らない。

次元潜航艦を「ヤマト」から出来るだけ長時間引き離すにはどうしたら良いか、メルダは知恵を絞ったに違いない。

メルダは次元潜航艦に自分をガミラス本国へ強制送還させれば大幅な時間稼ぎが出来ると考えたのだ。

もちろん、別の船に移されるとか、途中の基地に降ろされる場合もあるかもしれない。

だが、ガミラスにしてみれば「奇跡の船 ヤマト」に長期滞在した初めてのガミラス人将校・・・、少しでも早く、
直接情報を聞きたいに違いない。

だからメルダは自分はそのまま、次元潜航艦でガミラス本国に強制送還されると考えたのだろう。

その後に何が待っているかを承知の上で・・・。>古代は次元潜航艦が消えた空間をいつまでも見詰めていた。



                                                56.勇者の砦ー(3) へ続く
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by yamatoss992 | 2013-05-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)