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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

56.勇者の砦ー(3)

  メルダは艦橋の縁に張りついて「ヤマト」に別れの信号を送り続けていた。

フラーケンは黙ってその発光信号機を取り上げた。

「メルダ様。 もはや、『ヤマト』に信号が届く距離を越えてしまいました。

『ヤマト』のテロン特使からガミラス軍人に戻る時が来たのです。」

メルダは口をあけてはいたが黙ったまま、ゆっくりと左右に頭を振りつつ、フラーケンの腰に抱きついた。

気丈なメルダのそんな姿を始めて見たフラーケンは驚いた。

「そんなにあのテロン艦に未練があるですか! 航宙艦隊総司令、ディッツ提督の御令嬢がどうなされたの
です!」

驚いたフラーケンは自分も膝を付き、メルダの肩を掴み、顔を覗き込んだ。

メルダの顔は涙でくしゃくしゃだった。 そしてフラーケンの胸に顔を埋めて嗚咽を始めた。

「すまん、フラーケン。 私はただ、ただ、悔しいのだ。 情け無いのだ。」

「悔しい・・・。 情け無い?」フラーケンはその意味が解らず、ただメルダの肩をだきしめてやるのが精一杯
だった。

メルダは語った。

「EX-178」での一等ガミラス人、パレン=ネルゲの恥ずべき横暴の数々を。
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ボロボロだったメルダの愛機をたった一晩で新品同様に蘇らせてくれた二等ガミラス人の整備士達を、
特に彼等は何週間も前にツヴァルケの配備を知ってその交換部品を用意するという、周到さを見せてくれた
事を。

また、「EX-178」が次元断層に陥った時、機関部が脱出方法を模索する中、他の乗組員はパニックに陥る事も
無く、主砲のジェネレーターのオーバー・ホールや備蓄品の大整理など普段出来なかった大仕事を行い、
時間を無駄にする事がなかった事を。

そして、「EX-178」と「ヤマト」は次元断層で運命の邂逅を果たし、メルダが停戦と脱出方法の提案の使者と
して「ヤマト」に送られ、共同作戦の実施が即決、実行された事を。
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だが、「ヤマト」側でも「EX-178」側でも相手を信じきれない者がいたのは事実だった。

「EX-178」では誰だか判らないが「ヤマト」の波動砲で形成された次元断層の脱出口を「EX-178」だけで脱出する事を画策、「ヤマト」を曳航していた牽引ビームを切るという、裏切り行為が行われた事を。
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真実は不明だったがメルダはこの犯人は一等ガミラス人、親衛隊情報将校のパレン=ネルゲ大尉であると
確信していた。

牽引ビームが切られた時、「ヤマト」艦内ではメルダの監視役だった女性航空兵がメルダに銃を向けてきたが、
メルダはその銃を奪い、反対にその銃を返す事で戦意の無い事を示し、その女性航空兵もそれを受け入れて
くれた。
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そして「EX-178]の方でも、誇り高いラング艦長はそんな裏切りを許すはずもなく、反乱は直ぐに鎮圧されたの
であろう、牽引ビームは再接続され、二艦は文字通り手を携えて脱出に成功した。
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だが、脱出直後、裏切者が呼び寄せたガミラス艦隊に「EX-178」は撃沈されてしまった。
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しかも、古代戦術長から聞いた話ではあったが、ラング艦長はメルダがまだ「ヤマト」にいるという理由だけで
退去を拒み、友軍の集中砲火を浴びてまで「漢と漢の約束」を守りきった事を。

「何故、一等ガミラス人達は尊大で卑怯で事なかれ主義の奴ばかりなんだ !!

 ザルツ人を始めとする二等ガミラス人や好戦種族の癖に弱いと馬鹿にされていたテロン人の『ヤマト』は
何であんなに強く、そして、その乗員は気高いんだ !!

私は自分が一等ガミラス人である事を恥ずかしいと思う日が来ようとは思わなかった !!」

メルダはUX-01の甲板を泣きながら叩き続けた。

フラーケンも「友」の死の真相を知らされ憤懣やるかたなかった。

<敵の敵は味方・・・というが、『ヤマト』と停戦したのは正解だったのかもしれない。>フラーケンは「友」が
「漢」と認めた相手と正々堂々と戦えたのを幸運だったと思った。

<さて、この後の始末、どうしてやるか、慎重に考えねばなるまい・・・。>フラーケンは「猟犬」と仇名されて
いたが、決して頭の悪い「猟犬」ではなかった。

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「大将・・・。まずいですぜ。さっきから小規模な次元振を多数観測してやす。」部下のボルト・グランが報告した。

「複合次元断層が発生する予兆・・・と看るか?」フラーケンはグランの豊富な経験を信じていた。

ボルト・グラン曹長は黙って頷いた。

複合次元断層、それは次元断層の中にまた次元断層があると言う複雑怪奇なものだった。

例え、落ち込んでも、通常の次元断層なら次元潜航艦は難なく通常空間に戻れる。

しかし、複合次元断層の場合、幾つもの断層を越えなければならず、また、複数の同じ断層を堂々巡りする
はめに陥る可能性が高かった。

対策は簡単、一刻も早くこの場を立ち去る事だ。

「ゲシュタム・ジャンプ用意! 1光年も飛べば安全だ!」フラーケンが命令を発した直後、「UX-01」は猛烈な
振動に見舞われた。

「しまった!! 間に合わなかったか!」フラーケンは歯噛みした。

「UX-01」はその姿を通常空間から次元断層に移していた。

「ゲシュ=ヴァール機関始動! 次元ターンッ・ブロー!!」 「UX-01」は脱出を試みた。

しかし、次元断層境界面を何度越えても次元断層から逃れる事は出来なかった。
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ついにフラーケンは一つの命令を発した。

「前部魚雷発射管全門から亜空間魚雷を発射せよ。 

但し、炸薬は抜いて代わりに我が艦の遭難地点情報を発振する発振機を搭載せよ。」

命令は実行され、対「ヤマト」戦で残った魚雷、8発が次元断層の闇に消えていった。

「これは救助要請が目的なの?」メルダが気丈に訪ねた。

「いえ、これは、他艦への警告・・・。 次元潜航艦乗りの仁義です。」フラーケンは笑って応えた。

                               56.勇者の砦ー(3)(項了) → 57.烈光の使者 へ続く
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by yamatoss992 | 2013-05-30 22:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)