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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

59, 「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味(2)

 「七色星団の攻防」 1974年版「宇宙戦艦ヤマト」 における諸考察

1.何故、「ドメル将軍」はガミラスの通常兵力である戦艦、駆逐型デストロイヤーの艦隊を用いなかったのか?


 これは製作サイドや世間の「戦艦」に対する認識の有り方が大きく影響していたと考えている。

現実の日本帝国海軍の至宝、戦艦「大和」が大鑑巨砲主義の終焉を象徴する形での最後をとげた事が
大きかったのだ。
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現実の戦艦「大和」は1945年、4/7、坊ノ岬沖海戦で米機動部隊によって撃沈された。

この時、米軍は戦艦部隊の投入も一度は考慮したようだが、実際には空母機動部隊の航空兵力だけで「大和」
撃沈を果たしている。
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この結果、戦艦は航空機に適わないという認識が生まれ、「戦艦」という艦種を世界から消滅させるにいたった。
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確かに数百キロ以上の彼方から攻撃機や艦上爆撃機を放って攻撃出来る「空母」に比べ、「戦艦」は当時、
最強だった「大和」級でも最大射程距離は4万2000m(42キロ)でしかなかった。

これでは勝負にならないのは明らかだ。

また、この作戦に参加した空母は「エセックス」級7隻(排水量27,000 t ,搭載機数 90~100機),
「インディペンデンス」級2隻(排水量11,000 t 搭載機数 45機) と、大兵力で、これがもし、空母ではなく
「アイオワ」級の戦艦(基準排水量48,500 t )だったとしても、ほぼ4隻分に相当する兵力で「大和」に勝ち目は
全くなかったと言って良い。
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現実の坊ノ岬沖海戦では「大和」は魚雷10本、中型爆弾3~5発を喫して沈没した事になっているが、米空母
部隊の反復攻撃で述べ約1,000機の猛攻が行われた。

さらに当時は既に制空権も米国がしっかり握っていたため、本来、艦爆や艦攻の護衛を務める艦上戦闘機
「F6Fヘルキャット」ですら、500kg爆弾を2基、爆装し、更に5インチ・ロケット弾を一度に8本も「大和」へ叩き
込んだので「大和」の被弾は発表よりももっと多かったと推測される。

話が少しそれたので元に戻す。

つまり、「ヤマト」の最大のライバルである「ドメル将軍」は誰の目から見ても明らかに「ヤマト」より勝れた兵力を
持つ必要があったのだ。

それが三隻の「多層空母」と砲戦力も有する「戦闘空母」一隻のからなる「機動部隊」あった。
  旧第一空母
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 旧戦闘空母
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 旧ドメル艦隊そろい踏み
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「戦艦」の無力さを強調する様にドメルの旗艦は戦闘指揮艦「ドメラーズⅡ世」であり、殆ど戦闘能力を持たず、
かわりに「瞬間物質移送機」を装備して航空兵力を有効活用する役割を与えられていた。

つまり、「ヤマト」は戦艦というハンデを与えられ、ドメル艦隊は航空兵力を主体とする機動部隊という
絶対優位性を持つ様に設定されて「七色星団の攻防」という一大イベントに大いなる「クライシス」を演出した。

「ヤマト2199」の「七色星団の攻防」では触れられなかったが、旧「ヤマト」の「七色星団の攻防」では
星団内部に「暗黒星雲」を含み、ドメル艦隊はこの「暗黒星雲」内にに潜みつつ、「瞬間物質移送機」を使って
艦載機を「ヤマト」周辺に送り込んで攻撃を行った。
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この様子は現実の戦艦「大和」が米軍艦載機になぶり殺しにされた様を彷彿とさせ、クライシスを盛り上げる
演出として成功していた。

 だが、ここで行われた戦闘は地球上でかつて現実に行われた坊ヶ岬沖海戦の再現と言っても構わない程、
SFらしさを持っていない。

これは製作サイド内での対立、西崎氏を筆頭とする第二次大戦の再現を目的とする一派と「スタジオ・ぬえ」を
筆頭とする日本初のSFアニメを目指す一派の対立が生んだものだった事が明らかになっている。

自分達のSF的アイデアが悉く蹴られたSFアニメ派はとうとう逆に「「宇宙戦艦『ヤマト』」はSFアニメではない!
自分達は第二次世界大戦のパロディを行っているんだ!」というサインを作品の中に持ち込み始めた。

それは戦闘空母からドリル・ミサイルを抱えて発進してゆく重爆撃機が離艦後一度大きく沈み込み、それから
高度を回復して「瞬間物質移送機」の「ワープ光線照射エリア」へ移動する場面などが有名である。

「七色星団の攻防」が行われていたのは宇宙空間であり、そこには重力は働いていない。

従っていくら大質量があってもドリル・ミサイルを抱えた重爆撃機がそのような発進の仕方をするのは不自然で
ある。

だが、この演出は当時、全て手書きしかなかったセル画で膨大な手間が掛るのを承知で敢えて描いて見せた
当時のスタッフに賞賛の言葉を浴びせこそすれ、非難する気は全く出て来ない。

 科学的に間違っていても、視点を変える事で納得出来るものにするのがSFの持つセンス・オブ・ワンダーでは
なかったか?

また、「ヤマト」がSFである理由は実は何もなかった、単純に「宇宙物」=SFでなければならないという図式に
なっていただけなのではないだろうか?

それだけ当時はアニメもSFも揺籃期で様々な混乱が渦をまいていたというのが真相だったのではないだろうか。

現在は当時、「「宇宙戦艦『ヤマト』」はSFではない!」と主張していた方々も「ヤマト2199」に多数参加されて
おり、やはり、いくら反面教師として「ヤマト」を扱おうとしてもあの時若い情熱の思いのたけをぶつけた
「ヤマト」は不滅の存在として彼等や我々の心に深く刻み込まれ、既に日本アニメ界のDNAにすらなった感が
ある。

話がだいぶそれてしまったが本項では1974年の「宇宙戦艦ヤマト」の「七色星団の攻防」は
「戦艦」対「空母機動部隊」という「ヤマト」側に絶対不利な状況を作り出し、それに打ち勝つ事で物語を盛り
上げる演出が目的で作りだされたと言う事だ。

だから、空母も艦載機も当時の最新鋭の物が用意されていた。

「瞬間物質移送機」も新兵器として投入されてはいたがこれはドメル将軍が本作戦の為に特注させたもので
あった。

波動砲封じのためのドリル・ミサイルもまた特注品であり、ドメル将軍、いや、ガミラスが本作戦に賭ける
意気込みは半端なものでは無かった。
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ドメル艦隊の壮航式にはデスラー総統の激励の演説まで行われるという高い扱いだった。

しかし「ヤマト2199」では『七色星団の攻防」は1974年「ヤマト」とほぼ同じ展開で物語は進むが妻を反乱分子と
して拘束されているドメルの立場、ガミラス航宙艦隊の不在、使える艦艇は旧式の多層式航宙母艦三隻、
試作艦の要素が強い航宙戦闘母艦一隻、これだけは最新鋭のゼルグード級一等航宙戦艦「ドメラーズⅢ世」、
だが、使える兵士はまだ少年と言うべき若年兵と既に一度退役したと思われる老兵のみであった・・・。
  

次回は「ヤマト2199」の『七色星団の攻防」を分析し、航空宇宙兵力の有り方について論じるつもりである。


    60, 「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味(3) → (この項 続く)
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by yamatoss992 | 2013-07-16 21:00 | 考察 | Comments(0)