77, 「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味(19)
みたいと思う。
「メ」号作戦では強力なガミラスの陽電子ビーム砲の餌食となり、次々と撃沈される悲壮な姿が描写されたが、
唯一、戦果を挙げたのも「磯風」型突撃宇宙駆逐艦「ユキカゼ」であった。
「ユキカゼ」は後の宇宙戦艦「ヤマト」に搭載する目的で開発された試製空間魚雷を搭載していたため、戦果を
挙げられたと「設定資料集」ではっきりと語られたが、「磯風」型突撃宇宙駆逐艦の空間魚雷は非常に全長の
短い「短魚雷」で「ヤマト」用の試作品だったとしてもその弾頭だけが試作品と交換されていたと思われる。
つまり、この宇宙駆逐艦は搭載する兵器の交換が非常に簡単に行え、目的に応じた兵装を選択出来た事を
この事は物語っている。
もし、単に試製魚雷を試しに積んで「メ」号作戦に参加させるなら「村雨」型宇宙巡洋艦の方が相応しい。
それを敢えて「ユキカゼ」に搭載したのは「ユキカゼ」が先遣艦に指定されており、ガミラスと最初に戦闘を
交える可能性が高かった事もあるが、搭載兵器の融通性の高さも理由として挙げられる。
こうした兵装の戦術目的による交換は20~21世紀初頭の軍用機の運用に近い物を思わせる。
F/A-18E・F 戦闘・攻撃機
F/A-18E (単座、防空任務が主。)
F/A-18F (復座、攻撃任務が主。)
また、公式設定資料集[EARTH]によれば地球艦隊の内でも小型のコルベットに分類される艦であり、
戦艦、巡洋艦とは異なり、内惑星戦争時に活躍した宙雷艇の設計思想を受け継いで開発されたとある。
つまり、戦艦や巡洋艦とは全く違う設計思想で設計された艦なのである。
そして小型のコルベットという設定だが、小型=短航続力であり、内惑星戦争時の宙雷艇が基本となっている
という事であるが、この内惑星戦争時に使われた宙雷艇は一体、どんな艦だったのであろうか?
少なくとも第一次内惑星戦争の戦場は主に火星ー木星軌道と遠方であり、短航続力の宙雷艇が活躍する
余地は無い。
では第二次内惑星戦争ではどうであろうか?
第二次内惑星戦争では火星陣営は地球に対して遊星爆弾攻撃を行った。
これは日本に地下シェルターを多数、建築させる程激しく脅威的なものだった事が分かる。
地下シェルターによる防衛はあくまで受動的なものに過ぎない。
当然、能動的な防衛、即ち遊星爆弾の迎撃が行われたと考えられる。
内惑星戦争時に使われた宙雷艇とはこの地球の防空を担う迎撃艦だったのでは無いだろうか?
だからその思想を受け継いで建造された「磯風」型突撃宇宙駆逐艦もその主な任務はガミラスの遊星爆弾の
迎撃だったと考えられる。
但し、ガミラスの遊星爆弾による戦略攻撃が行われる前に行われたカ号作戦(第二次火星沖会戦)にも
地球艦隊の一翼を担って参加している様なので迎撃専用に建造されたのでは無いかもしれない。
後、「磯風」型突撃宇宙駆逐艦に特徴的なのは前部に三門の空間魚雷発射管と127mm対艦砲、そして
艦橋を守る装甲翼を備えている事である。
空間魚雷は対遊星爆弾用と考えられるが、127mm対艦砲は一体、何の為に装備している物であろうか?
敵艦の至近距離から攻撃を加えるために付いている様だが、ガミラス艦にそこまで接近するのは至難の
技だったのではないだろうか?
だから、私はこれも対遊星爆弾用の装備だったと推測する。
遊星爆弾の迎撃は必ずしもそれを破壊する必要はない、地球に落下する軌道から外しさえすれば良いので
ある。
127mmの砲弾でも当たり所によっては遊星爆弾の軌道を変える事が可能だ。
但し、「ヤマト2199」の物語の内では語られないが、ガミラスによる遊星爆弾による戦略攻撃が初まった時、
当然、地球側は迎撃作戦を展開したが、ガミラスも初期には遊星爆弾を艦艇で護衛して迎撃を阻止する戦術を
執ったと思われる。
「磯風」型はそうしたガミラス艦の妨害を退けて遊星爆弾を迎撃しなくてはならなかった。
だから、前部を集中的に守る装甲翼を装備しているし、駆逐艦にしては重装備である127mm高圧増幅光線
三連装砲塔を装備しているのもこうした戦術的運用をするためであろう。
そして進行方向に攻撃力と防御力を集中した配置は航空機型であり、突撃型と呼ぶに相応しい設計である。
だから、「磯風」型突撃宇宙駆逐艦は本来、「金剛」型宇宙戦艦や「村雨」型宇宙巡洋艦と艦隊を組む設計
思想の艦ではなかった。
それが、、「金剛」型宇宙戦艦や「村雨」型宇宙巡洋艦と艦隊を組んで冥王星まで遠征せざるを得なかった
メ号作戦がいかに切羽詰まったものだったか、想像に難くない。
「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味→ この項、とりあえず了。