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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

79. 灼熱のデート・スポット (2) 

 バレラスから少し離れた演習場の片隅に一台の車が止まっていた。

その日は風が強く、砂漠に造られた演習場は砂塵が舞って目も開けていられない位だった。

しかし、メルダ・ディッツ少尉は車の外で将校服のまま、飛行用ヘルメットを被り、手元のリモコンと
いうか、標的の戦車(古くなったサルバーーSーⅣ型戦車、標的用なので砲の中身は取外されていた。)を
操縦しているガミロイドへ操縦司令を送る指令機を操作していた。
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また、妹のイルダ少尉候補生とフォトム・バーガー大尉の勝負を見極めるイルダ側の立会人も勤めていた。

直ぐ脇にはバーガー側の立会人であるヴェム・ハイデルン大佐が砂塵に目を細めながら戦場(?)に目を
凝らしていた。

「すみません、大佐、妹の我儘にお付き合い戴いて本当に申し訳ありません。」メルダは大古参兵の
ハイデルンが立会人として来てくれた事に恐縮していた。

「何の、あのバーガーが仕出かした事、昔、奴の教官だったわしには見届ける義務がありますわい。
しかし、当の本人達は一体どうしたのですかな。 一向に姿をみせませんが・・・。」ハイデルンは
いぶかしんだ。

と、大空の一点に一機の機影が現れ、どんどん近づいて来た。

イルダ・ディッツ少尉候補生のDWG262ツヴァルケだった。
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その機首を黄色に塗られた機体はメルダとハイデルンの佇む滑走路に降りて来た。

「ゴメン、お姉ェ、遅くなった。」イルダはメルダ達の傍に機体を着けるとヘルメットも脱がずに挨拶した。

「イルダ! ハイデルン大佐に失礼だぞ! ディッツ家に恥を掻かすつもり!」メルダは妹のあまりの
非礼に妹を叱りつけた。

「ヘイヘイ、ハイデルン大佐、立会いご苦労さまです!」ヘルメットを取るとイルダはまるで人事の様に
ハイデルンに挨拶した。

「ハハハッ、少尉候補生でこの貫禄、妹君は大物になりますな。メルダ様。」ハイデルンは笑って許して
くれた。

メルダはヘルメットのバイザーを上げると黙ってハイデルンに深々と頭を下げた。

「お姉ェ、どうしてそこまで卑屈になるの? 家は航宙艦隊総司令の家系よ。一番偉いんだからこれで
いいのよ。」イルダはメルダがハイデルン大佐に気を使う意味が全く判らない様だった。
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「偉いのは父上だけよ! 同じ家系でも私達はガミラス軍のまだ下っ端なの!」メルダは妹の世間知らず
にも程があると呆れて怒る気力も失せてしまった。

「そうこう言っている内にもう一人、ヤンチャ坊やがやって来た様ですな。」ハイデルンが空を見上げて
呟いた。

惑星ガミラスは古い星である、表面の侵食が進み、内殻と外殻の二つの表面を持つ様になっていた。

首都バレラスは内殻の表面にあった。

メルダ達の居る演習場はバレラスの近傍ではあったが、外殻の方にあった。

住民はその殆ど全部が内殻に住んでいたので、外殻は本土防衛の為の軍事施設に当てられていたのだ。

内殻表面で戦う場合、背景が入り組んでいたのでお互いに相手を識別するのが難しく、戦闘は経験豊かな
バーガー大尉に歩があったが、バーガー本人はそんなハンデを喜ぶ男では無かった。

また、演習には墜落も付き物であり、住民の安全を考えると演習は自然と外殻表面で行われる様に
なっていった。

メルダはハイデルンが見上げた方向を見たが、そこには小さく輝く母星、サンザーしか無かった。

と、一拍置いてサンザーの輝きは急降下してきた航空機に隠され消えてしまった。

その機体はメルダ達のいる場所の直ぐ傍まで急降下で接近すると衝突の危険を感じとったメルダが身を
反らすのを嘲笑うかの様に引き起こして水平飛行に移ると着陸態勢をとった。

メルダが恐る々ハイデルンの方を見るとその姿は泰山の様に微動だにしていなかった。
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<さすが、古参の軍人の内でも豪胆を持ってなるハイデルン大佐、腹が据わっている・・・。>メルダは
改めて感心した。

そして、妹の方を見ると彼女も負けじと降りて来たバーガー機を見つめていたが、その機体が退役寸前の
大気圏内用急降下爆撃機DWE87スヌーカなのに気付くと眉をしかめた。

機体から降りて来たバーガー大尉はさすがに軍人生活が長かったのでそつなく一同に挨拶した。

しかし、イルダはバーガーが乗って来た機体が旧式なのが不満だった、馬鹿にされた様な気がした
からだ。

「イルダ様、バーガー大尉はこの機体と共に成長してきました。今では手足の様に操れます・・・。」
彼女の不満を感じ取ったハイデルンが意味深長に言った。

「それは私が負けるって意味? ハイデルン大佐!」イルダがハイデルンに噛み付いた。

「あまり先輩を舐めるなって意味よ。イルダ!」メルダが諌めた。

「まだるっこしいのは苦手です。 宜しければ勝負を始めたいのですが?」バーガーはさすがに
ハイデルン大佐の前では大人しかった。

「バーガー大尉、まさか、本気でスヌーカでツヴァルケと空戦するつもりではあるまいな。」
ハイデルンはバーガーに今日の決闘のルールの説明を求めた。

「まさか! 幾ら小娘が操縦する機体でも戦闘機と急降下爆撃機では勝負になりませんよ。」バーガーは
両手を広げながら頭を振った。

そして続けて説明した。

「戦闘機の目標が航空機である様に、急降下爆撃機の目標は地上に有ります。」バーガーが言った。

「それで私に戦車を動かせって訳ね。」メルダが司令機を指し示した。

「そうです。ガミロイドが一体、操縦しているはずです。 メルダ様には戦車を私の機から爆撃されない
様、逃げ回らせて下さい。 そして、そこのお嬢ちゃんには戦車を俺に破壊されない様に守って貰えれば
結構です。」バーガーの挑戦的な物言いにイルダは怒りを押さえ切れないようだった。

「それってアンタの機を撃墜しても良いって事? 私の機は実弾を積んでいるのよ?」イルダは意地悪く
微笑んだ。

「やれるもんならやってみな! 御嬢ちゃん。 実戦の恐ろしさ、骨の髄まで思い知らせてやるぜ!」
バーガーも負けていなかった。
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二人は一瞬、顔を付き合わせると直ぐにそれぞれの機に向かって走っていった。


                                   80. 灼熱のデート・スポット (3) → この項、続く
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by yamatoss992 | 2013-08-12 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)