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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

91. 使命の神託ー(10) 

 「くっ、駄目だ! 波動砲・照準機に『標的』が映りません!」南部が悲鳴を挙げた。
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「故障・・・か?」島が艦橋前面大スクリーンに映っている”第633工区”の姿と南部の波動砲・照準器を見比
べた。

「大スクリーンの映像はここまで『ヤマト』が低空侵攻するのに使った無人ドローン(偵察機)からの映像です。

波動砲の照準器は『ヤマト』本体に付いているので『総統府』の壁が邪魔をして照準出来ません。」太田が
絶望的な事を言った。

「むう・・・」一瞬、黙り込んだ沖田だったが、次の瞬間、若い力に賭けてみようと思った。

この迎撃は命中させれば良いと言うものではない。

確実な命中を狙って思い切り「標的」を引き寄せれば、波動砲のビームは単に「標的」を貫いて穴を空けるだけ
である。

穴があいたまま、六千万トンの質量がここに落ちてくる。

かといって「標的」が遠方にいる状態で波動砲を撃てば命中しない恐れがあるばかりか、命中しても波動砲の
エネルギーを持ってしても「標的」を破壊し切れず、大ブリの隕石が大量にバレラスへ降り注ぐ結果になり
かねない。

しかし、波動砲での迎撃は射撃・距離さえ的確なら、「標的」全てを原子の雲に変え、地表には何の被害も
もたらさない、完全な迎撃が出来るのだ。

「南部!何が幹要なのか、判っているな! 古代の脇で波動砲の発射を何度と無く見てきたお前だ。 

お前なら出来る!」

「はい!」南部は沖田の言葉にある事を思いついた。

「太田、無人ドローン(偵察機)は何機飛ばしている?」今の状況とは何も関係ない様に思える質問だった。

「はあ、二機でありますが、それがどうかしましたか?」太田は南部の質問の意味が判らなかった。

「しめた!これで波動砲が撃てるぞ! 太田、無人ドローンのホバリング位置を『ヤマト』の艦橋位置で固定!

但し、固定位置は艦橋を挟んで左右に別けてな!

”デスラーの落し物”を視界中央に捕えられる様、総統府の壁からは充分に離してくれ!

岬君、送られてくる映像を大スクリーンを二分割して両方同時に見れる様にしてくれ!倍率は今のままで
固定!」確信に満ちた南部の指示に太田も岬も迷う事なく従った。

沖田は南部のその姿に彼が今まで見えない所でいかに努力していたかを悟った。

南部は本来の波動砲照準器が使えない今、無人ドローンを使って目標の「映像」を得、それを頼りに自分が
「人間・測距儀・照準器」と化して波動砲を撃とうとしているのだ。

今や「ヤマト」第一艦橋の大スクリーンは巨大な照準器と化していた。

その左右の画像が上に偏り、左にも偏っていた。

「大きな修正が必要です。 航海長、一度、躁艦をそちらに戻します。」南部が島に要請した。
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「了解!艦尾下4、右2」 島が微調整するとスクリーン内の目標は上下・左右ともほぼ中央に合わさった。

そうすると二面に分かれていたスクリーンが一つになり、画像も一つになった。

しかし、その画像はまだ周囲がボケていてピントが合っていないカメラのファインダーを覗いている様だった。

だが、南部は本来の波動砲照準器は見ないまま、更に顔を上げて大スクリーンを見上げつつ、最後の微調整を行った。

波動砲・発射棹の左右に付いている微調整ダイヤルを指の腹で転がして「ヤマト」艦首を上下左右に微動させた
のだ。

落下して来る「633工区」の映像がクッキリとピントが合った様に浮かび上がった。

「修正角、上下角1度、右角2度、 波動砲発射態勢、整いました!」南部は艦長に報告した。

「艦を固定!アンカーを撃て!」すかさず司令を飛ばす沖田。
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『総統府』に突き刺さった「ヤマト」の艦首・左右にあるロケット・アンカーが固定物を求めて飛翔、新たな壁を
突き破って「ヤマト」を固定した。
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「固定は完了したな! どうだ、南部、照準は狂っていないか?」沖田は慎重だった。
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「照準再修正、 上下角0.05度、左右角0.00度、 ほとんど動いていません! 行けます!」南部が勇んで報告した。

「よし、波動砲発射態勢に入れ!全員対ショック、対閃光防御! 秒読み開始!」お馴染みの号令が飛ぶ、
しかしそこには照準器の状態を確認する「電影クロス・ゲージ、明度20」の報告は無かった。

「・・・5,4,3,2,1、」 何時ものカウント・ダウンを南部に代わり、砲雷長席に座った、北野一曹が行う。

「0!」 北野のカウント・ダウンがその時を告げた。

「撃て!」沖田が獅子の様に吼えた。
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南部の指が何の躊躇いも無く星一つを消し去る引き金を引いた。
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発射された波動砲の光条は『総統府』を完全に貫通し、空の高みを目指して何処までも昇って行った。
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そして、落下してくる大質量、”第633工区”に命中、原子の雲に変えた。
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その壮絶な光景を見たバレラスの人々は敵であるはずの「ヤマト」が自分達のためにその最大の武器を使って
くれたのがなかなか信じられない様だった。
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「ふう・・・。」危機を脱した第一艦橋には和やかな空気が流れた。

「南部、この危機の中、本当に良くやった。 ありがとう。」沖田は南部をねぎらうと共に褒めるのも忘れなかった。

「しかし、波動砲を照準器を使わないで射撃するなんて、あなたは本当に『大砲屋』なんですね。」太田が
ちゃかした。

「僕は知っていますよ。 南部先輩が暇さえ、あれば波動砲を撃つ『イメ・トレ』を欠かさなかった事を・・・。

自分が波動砲を任されていなくても何時か任される時が来ると信じてあらゆるシュチエーションを考え、努力して
いたのですね。」北野一曹が真実を告げた。

「そうだ、南部の努力が『ヤマト』と『バレラス』の臣民を救ったのだ。 改めて言う・・・。『南部戦術長、ありがとう』
沖田は立ち上がっって艦長帽を取り、頭を下げた。

「そんな大げさな、艦長、頭を上げてください。 北野!余計な事を!」南部は艦長に頭を下げられて恥かし
がった。

<俺は古代に負けたくなかっただけなんだ 。 「砲術」も、「恋」も・・・。> 南部は今は何もなくなったガミラスの
空を見上げた。

                                      92. 使命の神託ー(11) → この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2013-09-20 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)