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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

101. 使命の神託ー(20) ( 最終話 )

 「驚かないのですか?」 ベッドの上からしっかりと自分を見詰める沖田艦長に” 古代 守” は問いかけた。
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「メ号作戦、出撃の時、以来だな・・・こうして会うのは・・・。」 沖田はまるで ”幽霊” の様に半透明に透けて
見える ”古代 守” に ごく、普通に答えた。
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「いや、もしかすると戦闘の事以外の ”話” をするのは これが ”初めて” かもしれん。」沖田は眼前に広がる
大宇宙に目を遣り、眩しそうに ”目” を細めた。
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「沖田さん、あなたはもしかして、私が何をしに、ここに来たか、判るんですか?」古代 守は目をむいて驚いた。

沖田は黙ってそんな古代 守を愛おしげに見詰めた。

「古代、お前の残した”メッセージ” は女王、スターシャ から渡され、全乗組員がお前達の苦難の旅を知った。
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それは 『ヤマト』 の旅に勝るとも劣らない ”恐怖と絶望” の旅じゃった事だろう。」 沖田は古代 守をしっかと見据
えた。

「だが、お前は、お前達はその重圧に負けず、旅を続け、イスカンダルまで辿り付く事が出来た。」
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「ですが、・・・。」古代 守は言いかけた。

しかし、沖田は片手でそれを制し、言葉を続けた。

「なぁ、古代、我々の寿命はせいぜい百年前後だ。 遊星爆弾が落ちる様になってからはもっと短くなったろう。

しかし、今回、イスカンダルから供与されたコスモ・リバースを使えば地球を蘇らせる事が出来る。

もしかすると ”失った家族” も返ってくるかもしれん。

だが、それに必要なのはその星の記憶 ”星のエレメント” だそうだ。

詳しい事はわしには判らん。 しかしな、その中核となる ”星のエレメント” はその星を代表する記憶でなくては
ならないそうだ。

 
わしもそう思う。 

女王、スターシャは「我々が ”使命の神託” を持っているから ”コスモ・リバース・システム” を安心して渡せる
と言った、 と言うことは、 ”コスモ・リバース・システム” の中核となる ”記憶” も ”使命の神託” を持つ者の
”記憶” であるはず・・・。 そして、彼女はそれを既に確かめている・・・。  違うか? 古代・・・。」
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超常現象とも言うべき、”古代 守” の出現に驚くどころか、その存在意義まで分析してみせた沖田十三。

<この男の ”正体” は一体、何者なんだ・・・。>沖田を驚かせる事を覚悟でその前に姿を見せた
”古代 守”であったが、反対に自分が驚かされる事になろうとは思ってもみなかった。
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 古代 進は ”想い人” 、森 雪の亡骸を抱いて ”慟哭” していた。
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<地球防衛軍、司令部で出会い、『ヤマト』での旅を続ける内に自分では気付かない内に ”君” に惹かれて
いったと・・・。  ”君” がさらわれた時、そして、再び ”君” に出会えた時、どれだけ自分が ”君” を愛していたか、その気持ちに気付いた・・・。>「 ”君” のいない地球なんて何の意味がある・・・!」と古代 進は 森 雪 の亡骸を抱いて大粒の涙をあたり構わず散らしていた。
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古代はふと人の気配を感じて顔を少し上げた。
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目前に二つの ”球” が浮かんでいた。
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一つは ”青”、一つは ”金色” の球だったが、それはどちらも 神々しく、光輝いていた。

<進、”青い球” は地球の ”生命” 、”金色の球” はお前の ”恋人の命” だ、好きな方をとれ、但し、両方は
望めないぞ・・・。>古代 進には ”心” に聞こえてきたその声の” 主” が ”兄” ”古代 守” である事は直ぐに
判った。

<進、お前が選んだ ”球” の生命を 俺 は復活させる。 どちらを選んでも良い、お前の選択だ。 誰もお前を
責めはしない・・・。>守の心は ”慈愛 ” に満ちていた。

”兄” が ”弟” を思うその ”心” に ”時間” も ”距離” も関係なかった。

古代 進はそっと 森 雪 の亡骸を冷凍睡眠カプセルに戻すと、二つの ”球” が浮かんでいる場所に行き、
迷う事無く ”青い球” を選び、高く掲げた。

<良いのか? 進! 本当にそれで良いのか? お前は ”恋人” いない地球なんて意味がないと言っていた
ではないか。 本心で行動して良んだぞ!> ”古代 守” の ”記憶” にある弟はこんな周りに気を使って自分を
偽るような小さい人間ではなかったはずだった。

「沖田さんだってそうだった。」進は手に採った ”球” を掌の上に浮かばせながら言った。

「メ号作戦が ”陽動” だったと知った時、俺はあの人の事を 『なんて冷たい、なんて非道な男』 だと思った。
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でも、『ヤマト』 で旅を続ける内にそれは間違いだと言う事に俺は気付いた。

あの時、あの人は周りで部下が次々と死んでいっても決して引かず、ガミラス艦隊を引き付け続けた。
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『サーシャ・イスカンダル』 の宇宙船が無事に地球に辿り着ける様に、頑張ったんだ。
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”心で泣きながら” 攻撃命令を発し続けたんだ。」
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進は続けた、「そして、あの人は” 漢”(おとこ) だった。 それも、敵にも ”漢”(おとこ) がいる事を信じれる程
” 強い 漢(おとこ)” だった。
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だから、『ヤマト』 は脱出不能と考えられた『次元断層』からさえ、脱出、出来た。

惑星 ガミラスでの決戦時だってそうだった。

『ヤマト』だけなら直ぐに脱出、出来るのに、敵、ガミラスの”臣民”達が”暴君”の”愚挙で死ぬ”のは許さない!
とその場で敵の前に立ち塞がってその”暴力”を排除してみせた。」
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古代 守は 弟もまた試練の内、大きく育っている事に気付かされた。
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古代 進が選ばなかった ”金色の球” が、寂しげに浮かんでいた。
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「確かに俺の ”心” は ”雪” の復活を望んでいる、でもここで俺が ”雪” を選んでしまったら、その結果、
『ヤマト』の ”使命” が果たせなくなってしまったら、今まで一緒に戦って来た ”仲間の想い” はどうなる!

戦って死んでいった者達の”想い”はどうなる! あんたが今やろうとしている事は ”悪魔の誘惑” だ!

そんな ”誘惑” は、俺は、いや、”雪” だって選ばない! もう、いつだって俺たちは ”一人じゃない!” 進は
姿は見えずともそこにいるであろう 古代 守に 強い言葉を投げつけた。
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<ありがとう・・・。 ”進” を、”弟” を、こんな立派な ”漢”(おとこ)にしてくれて・・・。 沖田さん、感謝します。>
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古代 守 はかつて、スターシャに「あなたの 『使命の神託』 は ”何”?」と聞かれた時、答えられなかった自分を
恥かしいと思った。

<『使命』の『神託』・・・か、やっと、その意味が判った。 沖田さん、後は任せます。> 古代 守はもう迷う事なく
コスモ・リバース・システムを起動させた。 
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旧波動砲制御室内は青い光に満たされ、そこに居た技術部員達を慌てさせた。
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「コスモ・リバース・システム、出力どんどん低下していきます。」技術部員が絶望的な報告をした。
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「なんとしてでも出力を維持させろ!」真田副長・技術部長の悲鳴に近い命令が飛んだ。
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「『古代 守』の記憶が”量子の海”に散っていきます・・・。 システムの『再起動』は不能です・・・。」情報長の
新見 薫一等宙尉がポツリと言った。
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「『古代』、いや、『ヤマト』、これがお前の『意思』か、『意志』なのか!』 古代 守の”記憶”が宿っていたと思わ
れるコスモ・リバース・システムの中核部分に向かって真田は”怒り”をぶちまけた。
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 月が巨大な ”壁” となって視界を塞いでいたが、それを過ぎると赤く染まった痛々しい姿ではあったが、
”地球” がその姿を表した。
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乗組員は全員、地球の見える ”窓” に集まって自分達が ”帰還” 出来た実感を味わっていた。
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艦長室で沖田は佐渡医師に付き添われ、間近に迫った地球の姿を見ていた。

「佐渡先生、しばらく、わしを一人にしてはくれまいか・・・。」沖田の覚悟を秘めた言葉に佐渡医師は無言で
従った。

「佐渡先生・・・。 ありがとう。」 出口の扉に手を掛けた佐渡医師に沖田は礼をいった。

一瞬、扉を開ける手を止めた佐渡だったが、直ぐに扉を完全に開けてそこを潜り、扉を閉めた。

一人になった沖田は家族と一緒に撮った写真を取り出し、愛おしそうにその表面を指でなぞった。

そして顔を上げると言った。
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「地球か・・・。 何もかも皆、懐かしい・・・。」 そう言うと涙に溢れた目を閉じたが、次の瞬間、カッと開いた
その目には ”力” が溢れていた。
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腕は力尽き、垂れ下がって ”写真” は床に落ちたが、その ”心” はもう”遊星爆弾症候群”に犯された肉体を
離れ、”古代 守” が去り、使用不能になった「コスモ・リバース・システム」に移って、これを再起動させた。

「コスモ・リバース・システム」が勝手に再起動してゆく様を見た新見一尉が真田に聞いた。
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「一体、何が起こったのでしょう・・・。」
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「判らん、『奇跡』 というものが起こっただけだ・・・。」 真田も呆然と事態を見守るだけだった。
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かつて ”古代 守” の記憶の ”球” があった場所に今度は少し輝きの違う ”球” が浮かんでいた。
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その ”球” は 『使命の神託』 を得たものだけが持つ、 ”強い、そして、不滅の光” を放っていた。



                                                         
                                                     使命の神託 ー 了
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by YAMATOSS992 | 2013-10-10 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)
Commented by モー太郎 at 2013-10-11 07:04 x
『使命の神託』 完結 お疲れ様です。
うぅぅぅんラストは深いですね。
でも、そういう理解、解釈が王道だと思います。
納得の結末、そして感動の結末ですね。
Commented by yamatoSS992 at 2013-10-11 08:11 x
わざと「使命の神託」の本当の意味は文章では書かない様に努めました。
ヤマト2199本篇で不満だったのはスターシャが本心から地球人を信じて「コスモ・リバース」を
渡さなかった事。

古代守が「私心」から勝手に「コスモ・リバース」を使った様に見える事でした。

映像物語は言葉で説明してはならない、これは王道です。
しかし、第7章はキモの部分で失敗してしまったと私は感じました。
それが「使命の神託」を書こうとした動機でした。

Commented by モー太郎 at 2013-10-11 08:18 x
>古代守が「私心」から勝手に「コスモ・リバース」を使った様に見える事でした。

同感です。
兄弟愛の安っぽい感じになっちゃいました。
編集のせいなのか、はたまた監督は本気でそうなのか、分かりませんが。
創作『使命の神託』の解釈が、より自然で良いです。
Commented by YAMATOSS992 at 2013-10-11 08:56 x
全く私の意図したとおりのご理解を頂き、感謝の念に絶えません。

本来は「使命の信託」は(19)で終わり、”守”問題は次から続く話しで展開する予定でした。

でもやっぱり、ここでケリをつけたい誘惑に負けて(20)を作ってしまいました。 

次回からは「プラート 雷神の宴」、「星越えし果ての君」の2つの
シリーズを展開させますのでお楽しみに!