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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

105.プラート 雷神の宴(4)

 しかし、機関部を直撃された訳ではなかった「ユキカゼ」の艦体被害は軽微だった。

だが、もはや機関は運転不能、戦闘続行も不可能になっていた。
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古代 守は”総員退艦”を命じた。

ここ、「冥王星」周囲の空間では”国連宇宙軍の救助”はまず望めなかったが、”生きる努力”は出来る
だけ行うのが彼の信条だった。

しかし、後部の機関員は先程の爆発で全滅しており、前部艦体にいた火器管制員も先程の敵艦爆発時に飛んで来た破片で機密を破られ、四名が艦外に吸出され、残った一名も重症を負っており、何時まで命が持つか、判らない状態だった。

艦橋クルーは全員無事だったが、五名の要員に対し三名分しか、脱出カプセルは無かった。

しかし、古代 守は重症を負った乗員一名と艦橋クルーの内、一番、若い通信士をカプセルに入れると
打ち出させた。

残ったカプセルは一つ、残った人員は四人だった。

こんな絶対絶命の危機でしかも延命の機会が不確かだがある時、通常の人間達だったら醜い争いが起こるだ
ろう。

しかし、宇宙をその生活の場としている者にとって、こんな場面は極く、当たり前の出来事だった。

既に艦の機密は破れ、真空が辺りを支配していたが、残った四人のクルー全員は宇宙服を着用しており無事
だった。

石津副長が壁に取り付けてある小さな箱をとった。

そして蓋をあけるとその中には艦橋クルー全員分、五つのボールが入っていた。

石津は田中にその箱をボール毎渡すと田中はその内のボールを一つ取って捨てた。

そして、山根にその箱を四つのボール毎、渡した。

山根はその内のボール一つを取ると、耐真空ペンで×印を書き、箱に戻すと古代に渡した。

古代は皆にその×印の書かれたボールが箱の内にある事を皆に確認させると箱の蓋を閉め、二~三回振った。

そして、残ったクルーの内では一番若い山根にその箱の上面を向けた。

そこには丸い穴が開いており、宇宙服を着たまま、手を入れられる様になっていた。

籤引きである。
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宇宙で生きる者は生命の掛った、この様な究極の選択をしなくてはならない時、地位、階級に係わりなく、
”生きる権利”を平等に別けるため、籤引きで全てを決めるのだ。

しかし、山根は首を横に振った、とりあえず、権利を放棄すると言うのだ。

もちろん、皆が籤を引き終わり、誰も当たりがなければ山根が”勝者”となる。

しかし、彼はそんな臆病な目的で権利を放棄したわけでは無かった。

次の田中も権利を放棄し、石津も権利を放棄した。

「これじゃぁ、『籤引き』にならない・・・。 最初からやり直しだ!」守はもう一度、山根に箱を突きつけた。

「艦長・・・。 もうやめましょう。 皆の意思ははっきりしたじゃないですか。」石津が守と山根の間に
割って入った。

「皆、生き残るべきは”あなた”だと思っているんですよ。 チャッチャッとカプセルに入って下さい。」
石津は守をカプセルの搭乗口に追い立てた。

「皆・・・。」守は彼等の気持ちが嬉しかった反面、この危機的状況を作ったのは自分だと思っていたので
カプセルに乗る権利は自分には無いと決めていた。

もし、自分が籤にあたったその時は一番若い山根を無理やりにでもカプセルに詰め込み、打ち出すつもり
だった。

しかし、今の状況では皆が身構えている、とても不意を襲って山根を脱出させる事など不可能だった。

その時だった。 

脱出カプセルの内から異様な物体が姿を現した。

カプセルの上部が破られ、外から”何か”が侵入して来たのだ。

艦の機密が破れ、真空状態になっていたため、”音”が聞こえず、誰も侵入に気付かなかった。

”銃?”と思しき”武器?”を構えた”それ”は”人型”をしていたが、”顔?”についている”目?”と
思しき物は人間と違って”四つ”もあった。

守はその姿を見て絞り出す様に言った。

「ガミラス・・・!」
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 生き残った古代 守、石津 英二、山根 章、は田中の死亡を”ガミラス”に知れない様にしようと考えた。

田中が死亡したのが知られたら、その”遺体”はどの様に扱われるか、判らない、どんな”死者”を冒とく
する行為が行われるか、判ったものでは無いと彼等は考えたのだ。

彼等が入れられている牢獄に”ガミラス兵?”が食事を運んで来た。

その食事の内容は酷いものだったが、空腹は”最大の御馳走”と言われる通り、腹ペコだった彼等はその
運ばれて来た一杯の”塩味もしないスープ?”と”ボロボロのパン?”を貪る様に食べた。

食事を持って来た”ガミラス兵?”は彼等全員が食事を始めたのを確認すると元来た方向に帰って行った。

「どうやら、気付かなかったみたいだな・・・。」守が”ガミラス兵”が去っていったのを確認する様に鉄格子に顔を押し付けた。

しかし、幾ばくもしない内に”ガミラス兵”は”仲間”を四人、引き連れて戻って来た。

彼等は最初の一人とは違い、銃で武装していた。

古代達、三人の地球人に格子の外から銃を突き付け、部屋の奥へ下がらせた。
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そして、扉を開けると二人(?)の”ガミラス兵”が牢の中に入って来た。

古代は唇を噛んだ。 奴等は”田中二尉の死”に気が付いていたのである。

彼等は”田中二尉の遺体”を迅速に回収していったが、古代達にはどうする事も出来なかった。

 時計は取り上げられていたのでどれ位の時間が経ったのか、判らなかったが、今度もまた五人の武装した

”ガミラス兵”がやって来た。

彼等は三つの”キャリー・バック?”を運んで来ていた。
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古代達、地球人”捕虜”一人々の前にその”バック?”は横たえられ、”ガミラス兵”はその蓋を開けて、
内部を示した。

そこには”宇宙服”と思しき物が入っていた。

古代が恐る々それを指差して、次に自分を指差した。

”ガミラス兵”は姿勢を正し、直立不動の姿勢を取り、右手を挙げた。
(古代達は知らなかったが、これは”ガミラス式の敬礼”であり、同意のサインでもあった。)

「艦長!コイツ等の言う事を聴くんですか? ”田中 ”を ”始末”したコイツ等に従うんですか!」
山根 章 三等宙尉 が古代に詰め寄った。

「やめるんだ・・・。山根、今はコイツ等に逆らった処で何も変わらない・・・。下手をすれば死体が増えるだけだ・・・。」石津 一尉はそう言うと自分の前に置かれた”バック”の中に入っていた宇宙服を着用し始めた。

石津が宇宙服?を着ると”ガミラス兵”は彼の身体を隅からすみまで点検し、再び”ガミラス式の敬礼”をした。

「大丈夫か? 呼吸は出来るか?」古代は思わず走り寄って石津の肩に手を置いてしゃべった。

石津は何か、言ったが”ヘルメット越し”なので何を言っているのか、は判らなかった。

しかし、言葉が通じない事に直ぐ気が付いた石津は”OK”サインで問題の無い事を伝えた。

”ガミラス兵”に促され、古代と山根も”ガミラスの宇宙服”を着用、点検を受け終わると、

武器を持たない”ガミラス兵”が”着いて来い”と言う意味に取れる合図をした。

先頭に武器を持たない”ガミラス兵”、次に銃で武装した”ガミラス兵”が二人、その次に守達、
”ガミラスの宇宙服を纏った”三人の地球人、最期はやはり、銃で武装した”ガミラス兵”が二人と
油断の無い護送態勢で守達は艦外へ誘導された。

彼等の連れて行かれた場所は艦尾の砲塔の周りにある僅かな甲板だった。

ガミラス艦は曲線で彩られており、人が立てる”甲板”など殆ど無かったがそこには三人の”ガミラス兵”と
細長い円筒状の物体が置かれていた。

三人の地球人はその円筒の横に並ばされた。

一人の”ガミラス兵”がその円筒の端にある蓋を開けた。

その中身を見た山根が唇を噛み、まず”ガミラス兵”を睨みつけ、次に古代達の方を向いて涙を流した。

その円筒の中身は先程死亡した田中二等宙尉の”遺体”だったからだ。
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一段高い所に立った”ガミラス兵”が何かをしゃべりだした。

守達の着ている宇宙服の中にもその”ガミラス語”らしい言葉は通信回路を通して伝わってきた。

守はその言葉の意味は全く判らなかったが敵兵の言葉にも係わらず、その言葉が何か尊い響きを持って
伝わって来るのが不思議だった。
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”ガミラス兵”がしゃべり終えた。

そして、その”ガミラス兵”が合図すると先程、”棺”の蓋を開けた”ガミラス兵”が今度は”棺”の
蓋を閉め、甲板に”棺”を固定していた止具を外すと”棺”を宇宙空間に押し出した。

先程、”何か”をしゃべっていた”ガミラス兵”は右手を掌を上に守達の方へ差し伸べ、その手をゆっくり
”棺”の方に向けた。

「国連宇宙軍 二等宙尉、田中 卓二の霊に敬礼!」守は反射的に敬礼をした。

石津、山根もそれに習った。

驚いた事に”ガミラス兵”達も”ガミラス式の敬礼?”ではあったが、姿勢を正し、田中の棺を見送った。

それを見届けたかの様に、舷側から充分離れた棺は短い噴射をすると、彼等の視界から消えていった。
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そして、守は思った、< 、紛れもない・・・これは 『宇宙葬』 だ >と。

                                      106.星、越えし先の君(1)→この項、つづく
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by YAMATOSS992 | 2013-10-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)