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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

106.星、越えし先の君(1)

 それから随分と時間が経った、ある時、古代 守達は再び”ガミラス兵”達に牢の外へ連れ出された。

そして今度は船外ではなく、船内奥深くの小部屋に連れてこられた。

そこには机と中型のモニター・スクリーンしかない簡素な小部屋だった。

地球とは異なり、照明は床から生えた間接照明だった。
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そういえば、彼等が押し込められていた”牢”も室内にこそ、照明は無かったが通路にある照明はやはり間接
照明だった。

やはり、異文化の船に囚われているのだと言う実感が守達の胸を締め付けた。

 さて、部屋の奥には一人の”ガミラス兵”が後を向いて立っていた。
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彼は首の左に付けた小さな装置のボタンを押した。

そして言った。「プラートの ”雷神” 諸君、まもなく、この艦は 中継地点 に着く。

君達にはそこで 最終目的地 へ向かう ”別の艦” に乗り換えてもらわねばならない。

 そこで二、三、注意する事がある。」そういうと、かの”ガミラス兵”は守達の方に向き直った。

守達は唖然として声も出なかった。
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そこにいた”ガミラス兵”はお馴染みの四つ目の細マッチョではなく、極普通の地球人だったからだ。

だが、彼は守達の心を読んだかの様にいった。

「残念ながら私は君達 ”テロン” ではない、髪の色や目の色が違うだろう?」彼は自分の目や髪を指差した。

 「はぁ、地球人でも住む場所によって髪や目の色は違うから何んとも言えない・・・。 肌の色さえ
違うからな。」守は呟く様に言った。

まだ、目の前にいるのが ”ガミラス人” だと言うことが信じられなかった。

「肌の色まで多様だと・・・。その肌の色での差別はあるのか? プラートの ”雷神” よ。教えてくれ。」
地球人と区別のつかないそのガミラス人は詰め寄ってきた。

「どうしてそんな事を聞く? それに質問があるならまず名乗るのが礼儀ではないのか?

ガミラスでは違うというならこれ以上の質問には答えられない!」守はビシッと言った。

「確かに名乗ってから質問するのが礼儀なのは ”ザルツ” でも変わらん。

しかし、今、ガミラスに併合され、二等とはいえ ”ガミラス人” になった以上、軍上層部の意向には逆らえん。
必要以上の情報を君達に与えてはならないのだ。

私は 『プラートの雷神』 達を移送する様、命令を受けた。

だから、中継地点まで君達を運べば任務は終わる・・・。

しかし、”ガミラス” に併合され、二等臣民として差別されているのはとても悔しい。

だから、最小限度の抵抗ではあるが、本来、君達に与えてはならない情報を漏らす。」

再び後を向いた "ザルツ人” は誰に言うとでもなく語った。

「実際は判らないが 中継地点 から最終目的地まで君等を護送するのは ”一等ガミラス人達” だと予想される。

彼等は自分達と肌の色が違う二等臣民を差別し、酷い扱いをする。

君達は ”プラート” で獅子奮迅の活躍をした。

そして、その働きは我々の間では ”プラートの雷神” として讃えられている。
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この件は軍上層部に伝わり、” 『プラートの雷神』 を本部へ連行せよ” との司令が下った。

我々は君達の働きぶりを直接目撃している、だから、その武勇に相応しい待遇を出来る範囲内で与えた。」

<それで『田中二曹』の『宇宙葬』をしてくれたんだ。>守は急に眼前にいる敵に親しみを覚えてしまった。

「だが、この後、君達を護送する であろう、一等ガミラス人達 は 『君達の働き』 を見ていない。

加えて君達の肌の色は我々”ザルツ” 人と同じだ。

差別や嫌がらせ、挑発して手を出させ、惨殺しようとする動きはある、と思った方が良い。」

再び振り返った、その ”ザルツ人” は守の肩に手を掛けてその目を見詰めた。

「判りました。 ご忠告有難うございます。」守はその ”ザルツ人” に敬礼した。

「死ぬなよ! 君達が非業の最期をとげたら、君達と戦った 『我々の戦友』 達も死んでしまう。」

その ”ザルツ人、バル・ヤレトラー” は守の手を固く握った。

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<彼等 ”ザルツ人” は 『尚武の心』 が強い民族の様だ。 勇敢に戦ったものは例え負けても、死なない。

そして、それを打ち負かした者が次の戦いで死んでもその死に方が勇敢なものであれば、二人とも死なない。
そうして、彼等の”武人達”は永久に生きる続けるんだ。>古代 守は仇敵の内に戦友を見出し、複雑な思いに囚われた。

「あの話が本当なら、我々が連れてゆかれるのは、多分、”ガミラス” 本国でしょうね。」 石津一尉が的確な分析をした。

「戦病死した『田中二尉を ”粗末な扱い”をせず、キチンと ”宇宙葬” してくれたんですね。」 山根三尉は少し、不安が薄らいだ様だった。

「だが、その ”中継点” とやらで俺達を ”受け取る” 連中が今、俺達を護送している ”ザルツ人” の様に俺達を
”捕虜” として扱ってくれるのか、どうか、それは判らない。 

彼が ”軍機” を犯してまで俺達に忠告してくれたのは ”捕虜” としてさえ扱わない ”可能性” が高いからだ
ろう。」 守は冷徹な事実を言った。

「それって ”生体サンプル” って事ですか!」山根三尉が震え上がった。

「判らない・・・。 見当もつかない・・・。 ガミラス大戦が始まって九年も経つ、今更、地球人の ”生体サンプル” なんて必要ないだろう・・・。 やはり、指導者の気紛れって奴じゃないかな。 まっ、俺達は堂々と地球人と
しての ”矜持” を示すだけだ。」 古代 守は覚悟を決めた。

 守達はそれまで乗せられて来た航宙高速巡洋艦”ケルカピア”級から ”デストリア”級航宙重巡洋艦
に乗せかえられた。
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辺りは大小の軍艦が所狭しとドック入りし、また、数多くの艦が出発、帰還を行っていた。

ここはガミラスの大拠点らしかった。(守達はしらなかったが、ガミラスの大拠点”バラン星”であった。)

それまで守達を護送して来た”ザルツ人、バル・ヤレトラー”が”デストリア級”の乗降口の遥か手前で衛士に
制止され、そこで手を振って別れを惜しんでくれた。

守は複雑な気分だった。 

”ザルツ人”はメ号作戦・迎撃はおろか、地球に対する遊星爆弾攻撃を行っている張本人である。

憎んでも飽き足らない存在であった、しかし、彼等は守達をキチンと捕虜として扱い、非道な振る舞いは一切
なかった、更には戦病死した”田中卓二 二等宙尉”に対しては”礼”を尽くした”宇宙葬”まで出してくれた。

また、今後、訪れるかも知れない”苦難”についての”注意”を”軍機”を犯してまでしてくれた。
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<とうとう、彼の名は聞けずじまいだったな・・・。>守は”デストリア”級に乗り込みながら今後の”苦難”に思いを
はせた。

守達はいきなり”牢”にぶち込まれた。

艦長の”挨拶”位は期待していたのだが、”侮蔑に満ちた挨拶”すら無かった。

「どうやら、俺たちは人間扱いどころか、生物扱いすらもして貰えないかもな・・・。ただの貨物だぜ。」一番若い
山根三尉が履き捨てる様に言った。

はたせるかな、彼等の閉じ込められている牢獄に「食事」が運ばれてくる気配は無かった。

牢番をしているガミロイド(ヤレトラーとあった事で彼等が人間ではない事は推測出来た。)に食事の要求をして
みたが、全く無視された。

どれ位の時間が流れたか、彼等にはもはや検討も付かなかったが、筒状の物体が彼等に支給された。

その中身は僅かな「水」だった。

根本三尉が顔を綻ばせてそれを受け取った。

そして、蓋を開け、中身を飲もうとした。

しかし、その水の入った容器を守は叩き落とした。

「何するんですか! 艦長!」根本は守に喰ってかかった。

「俺たちは『生きた貨物』じゃない! ”知的生命体”としての待遇を要求する。」

「貴様達が我々の言語を解析済みなのは判っている。 言葉が通じないふりはさせないぞ!」

水の容器を持って来たガミロイドを通じて”主人”たる(一等)ガミラス人が話を聞いているはずだった。

そのガミロイド、何故か”三つ目”だったが、それがキシル様な声で話し始めた。

「”ザルツ人”は二等ガミラス人だ。 その”サルツ人”にすら”滅亡させられかかっている”劣等生物が、”知的
生命体”だと? 笑わせるな! 

お前達に与えた待遇は最高のものだ。 

そんな事も理解出来ないのか? やはり、お前達は本当に劣等生物だな。」

「これが最高級の待遇? ふざけるな、 食事も与えず、僅かな水分補給だけでで命を永らえさせる・・・。

これのどこが、最高級の待遇の待遇だ。 説明してみろ!」守は怒りに手が震えた。

" 三つ目 " の ガミロイド はヤレヤレといった風に手を広げた。

「食事を採らなければ”体力”は落ちる。 ”水分”も最小限度しか採らなければ”行動”する事もままならない。

当然、我々に対し”反逆”や”反抗”する事は出来なくなる。

私の受けた命令は”プラートの雷神”を本国に移送することだ。君達を”傷つけたり”、場合によっては”殺害”
する事は絶対に避けなければならないのでな。

そうした”危険”から君達を守る安全策を取ったまでだ。」 ” 三つ目 ” の ガミロイド は当然の様に言った。

「そうか、判った、”ガミラスの論理”は理解出来たが”地球人”としてその論理は断じて受け入れる事は出来ない。」 守は部下達の顔を見渡した。

誰もが守の「決意」を無言の内に理解していた。

「お前の『任務』は『我々』の『生きたままの移送』だと言ったな。

だったら、その『任務』不成功にさせてやる。

これから、どんな食料、飲料を持って来ても我々は拒否する。

『餓死』した死体を上官の下に届ければ良い。

我々は『地球防衛軍』の一員だ、こんな死に方ぐらいなんでもない!」守は言い放った。

「そちらの言い分は判った。 根競べになりそうだな。 せいぜい頑張ってくれたまえ。」

” 三つ目 ” のガミロイドは山根に渡した”水筒”を戻させると、他の三本の水筒は守達に手渡す事なく回収して
いった。

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 「艦長、もう少し”楽な”死に方は選べなかったんですかね。」石津二尉が皆を代表して守に聞いた。

「皆には済まないと思っている。 しかしな、これは『地球人としての矜持』の問題だ。

奴等に自分達のやっている事がいかに非人道的であると同時に目的を果たせないものであるか、思い知らせて
やる必要がある。  

その為には単なる”自殺”では駄目だ。 

奴等が正当と考える方法で失敗させる必要があるんだ。」

飢え、痩せ細ってはいたが古代守のその目には闘志が溢れていた。

 古代守達、三人は飲まず喰わずでこのまま「殉職」する覚悟を決めていた。

例え、艦を失い、仲間を大勢失ったとしても、そして自分達が「捕虜」となったとしても、まだやれる事はある!それが「地球防衛軍」のいや、「地球人」の「誇り」だった。

彼等が守達を「生きて」本拠に連れて行こうとするなら、「死んでやる」までだった。

しかも、守達の行動力を奪うため、食料も与えず、水だけで命を繋いで護送しようとしているなら、その「水」も
絶って「死」を向かえ、彼等、ガミラス人の中でいかに「非道な事」が行われている事を示そうと言うささやかな
抵抗だった。

三人は夜具も与えられず、「牢」の中央で寝泊りしていた。

この「牢」には「便器」すら用意されておらず、彼等は完全に「野性動物」扱いだった。

仕方ないので三人は「牢」の隅で用を足していた。

悪臭が充満し、三人の生活空間は自然と「牢」の中央になっていったのだ。

<ザルツ人は命令されて止む無く「遊星爆弾攻撃」をしているのだ。>守にはそう思えた。

ザルツの船は清潔で夜具もきちんと与えられ、1日置きだったが食事もあった。

多分、彼等の星、ザルツはガミラスの圧制下に置かれ、住民は「人質状態」にあるのだろう。

彼等”ザルツ兵”は”自分達の民族”のために戦って死んでいっているのだ。

”一等ガミラス人”こそが、守達、「地球防衛軍」が本当に”仇”にすべき相手だった。

数日後、守達の「牢」の前に「食事」と「飲料」が運ばれて来た。

運んで来たのは例の ” 三つ目 ” の ガミロイド だった。

「何の真似だ。 お前達の『施し』は受けぬと厳明したはずだぞ!」守は食事を運んできたガミロイドに宣言した。

「お前も気付いている通り、私達はガミロンによって造られた擬似生命体だ。 

だから天然の生命体については作動不良が起こっても対処のしようがない。

今、この艦にはお前達以外にも搬送している生命体がいる。

その生命体が作動不良を起こして生命活動が停止寸前なのだ。

その食事を食べて体力を回復し、問題を起こした”生命体”の命を救って欲しい。」 ” 三つ目 ” の ガミロイド は
実に事務的に希望を述べた。
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「ずいぶん勝手な言い分だな。 俺たちに別の『捕虜』を助けろと? どんな経緯があるか、判らないのに?」
石津二尉もあまりに勝手な言い分に腹を立てたようだった。

「何故、その生物の『生命』を助けなければならない、その理由を教えろ!」山根一尉も畳み掛けた。

しかし、 ” 三つ目 ” のガミロイドは「軍事機密」だとして何も語らなかった。

しかし、ただ一言だけ、言った。

「君達、”テロン”は”命”尽きようとしている者を前にしてそれを”見殺し”に出来る程、非道な生き物なのか?」と。

「それはお前達にこそ”当てはまる”俺たちに対する扱いは”非道ではない”とでも言うつもりか!」古代守は
怒りを爆発させた。

「”我々”は”我々”だ。 私は”テロン”の心のあり様について聞いている。

”他の無力な生命”が”死”に瀕している時、”テロン”は自分達の扱いを理由に”見殺し”にする程、”非情な
生き物”なのか、と聞いただけだ。」それだけ言うと ” 三つ目 ” の ガミロイドはその場を去っていった。

「牢」の鉄格子の前には「食事」が置かれたままになっていた。



                                      107.星、越えし先の君(2)→この項、つづく
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by YAMATOSS992 | 2013-10-20 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)