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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

111.星、越えし先の君(6)

 それから数日が経ったがスターシャ・イスカンダルが古代 守のもとを訪れる事はなかった。

守はスターシャを怒らせてしまったと勘違いしたが、本当はテロンから遣って来るはずの『ヤマテ』に託す
コスモ・リバース・システムの建造を始めたからだった。

スターシャがテロン艦の艦名を 『ヤマト』 ではなく 『ヤマテ』 だと思ったのは 『ガミラス』 の平文の通信を傍受
してテロン艦の艦名を知ったからだ。

この頃には恒星グリーゼ581でデスラー総統の罠を喰い破ったテロン艦 『ヤマテ』 の噂はガミラス文化圏を
駆け巡っていた。
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『ヤマテ』 がまだ壊滅戦や虐殺を行ったと言う情報は入って来てなかったがデスラーの罠を破るのに超兵器を
使ったと言う未確認情報もあり、スターシャに嫌な予感を感じさせた。

<サーシャやユリーシャが一緒なのだから、波動エネルギーの悪用はさせないはずだわ。>スターシャは
その嫌な予感を頭の内から追い出した。

「スターシャ猊下、古代 守様から訪問を要請する旨の連絡が入っておりますが、如何いたしましょう。」
コスモ・リバース・システムの組立を直接行っていたイスカンドロイドの内の一台が訊ねた。

イスカンドロイドは 皆、王都の内部Netに繋がっているのだ。

病室の守からの連絡など簡単に中継出来る。

「一(アルウ)時間後にこちらから訪ねる旨、連絡して頂戴。 私も少し休みたいわ。」スターシャはそれに応えた。

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スターシャが守の部屋を訪ねると守は床に正座してスターシャを待っていた。

そして、彼女がドアをくぐると両手を床について土下座した。

「イスカンダル女王、スターシャ様、先日の無礼、お許し下さい。 何が悪かったのか、愚かな私には未だ判りま
せんが、御気に触ったのは確かです。 重ねてお詫びします。」守は再度深く頭を下げた。

『土下座』 という謝罪方法を知らなかったスターシャであったが、守が本気で謝罪しているのはその気迫で
判った。

「私は別に何も怒ってなんかいませんよ。

地球の船 『ヤマテ』 がここに向かって長躯、十六万八千光年の旅をしています。

その船に渡す地球の環境を回復させるためのコスモ・リバース・システムの用意をしているんです。

しばらく、会いに来なかったのはそちらの作業に時間を執られていただけです。

別にあなたを避けていたわけではありません。」スターシャは守の肩に手を掛け、その謝罪に笑顔で
訂正した。

「実はお願いがあるのです。でも、その前に誤る事は誤って筋を通しておかなければ気が済みません。」

守はしゃちほこばってスターシャに尋ねた。

「私達を輸送していた捕虜護送船の乗組員はどうなりましたか?」

スターシャは悲しげに目を伏せた。
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「船長の 『サターニャ・ラストフ中尉』、副官の 『ゲルド』、あなたのお仲間も二人とも全て死亡しました。
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残念ですが、助かったのは 『古代 守』 さん、あなただけです。」

「・・・四人の遺体はどうなりました。」守は憂鬱な顔で聞いた。

「『三つ目のガミロイドの身体を持つ”ゲルド”』 は直ぐ区別がつきましたが、生身の三人の身体は
それは損傷が酷く、判別不能でした。

ですが、『サターニャ・ラストフ中尉』 はガミラスが遺伝子情報を持っていたので照合して確認、ラストフ中尉と
ゲルド副長の二人はガミラスの親衛隊が船の残骸と共に回収していきました。」スターシャは目を伏せたまま
だった。

「我々は 『ガミラスの親衛隊』 に攻撃されたんですよ。

良く私の事を追及してきませんでしたね。」 守は驚いて思わずスターシャに尋ねた。

「大丈夫。 回収部隊を指揮していたベルク・レクター大佐は本来の親衛隊員です。 古参兵なのです。」
スターシャは応えた。

「古参兵だと何が違うのですか? 親衛隊は親衛隊でしょうに・・・。」 守はいぶかしんだ。

ラストフ中尉やゲルド副長の話では親衛隊は血も涙も無い冷血漢の集まりだ と聞いていたからだ。

「ガミラスも昔は今ほど膨張政策に夢中ではなかったのです。

だから親衛隊員も武勇に優れているだけでなく、人格的にも高潔な人が選ばれ、それが彼らの誇りでも
ありました。」

スターシャは自分の進めるイスカンダル主義を曲解して武力による膨張政策を執るデスラー総統が恨めし
かった。

「しかし、今は『親衛隊』は純血でなければならないと言う考えを推し進め、とうとう総統側近を固める
『親衛隊員』は皆、『クローン兵』 になってしまった様です。」スターシャは守に驚くべき事を言った。
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「『ガミラス』では 『クローン培養』 で 『兵士』 を作っているんですか?

地球では倫理的に問題があると 『人間のクローン培養』 は禁止されているんですよ。

『神』をも恐れぬ所業ですね、『ガミラス』 らしい。

そのくせ、艦船にはまともな医療設備や器具すら装備していない。」守は肺炎になったのに充分な治療を
して遣れなかったサターニャ・ラストフ中尉の事を思い出だし、無念さを噛締めた。

守には 『クローン兵士』 が造れるのにも関わらず、注射器も存在しない世界なんて考えられなかったのだ。

スターシャも 『ガミラス』 の医療技術の偏りの異常さには問題を感じていた。

しかし、『イスカンダル』 の『医療技術』をこれ以上、『ガミラス』 に提供する事には躊躇いがあった。

どんな 『兵器転用』 をされるか、判らなかったからだ。

しかし、スターシャは古い知り合いであるベルク・レクター大佐を信頼していた。

「ベルク・レクター大佐は 『クローン兵』 ではありません。

彼は『親衛隊員』が誇り高く、尊敬される存在だった頃の数少ない生き残りです。

しかし、老齢という事もあるでしょうが、『下位の親衛隊員』 が犯した犯罪の後始末を遣らなければならないとは
全く気の毒な事です。」スターシャは折りしも空に昇って来た 惑星『ガミラス』 を睨み付けて言った。

そしてスターシャは一番肝心な事を守に話始めた。

                                       112.星、越えし先の君(7)→この項、つづく
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by YAMATOSS992 | 2014-01-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)