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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

113.星、越えし先の君(8)

 スターシャ・イスカンダルは自室である問題に頭を悩ませていた。

今、彼女は今、ここ、イスカンダルに向かっているであろう、『地球艦』、『ヤマテ』 に渡す約束の品、『コスモ・リバース・
システム』 を 『ハード』 的には完成させていた。
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しかし、『ソフト』 的に一つ、問題があった。

『コスモ・リバース・システム』 は 『イスカンダル』 のある 『サレザー恒星系』 内ならば問題なく作動出来た。

しかし、遠距離、特に 『地球』 などは十六万八千光年も遠方にあった、これでは停止状態から作動させる事
など望み様が無かったのである。

しかし、一つ、解決方法があった。

『人の魂が持つ生命の記憶』 さえ手に入れば、『ヤマテ』 が『地球』 に帰還するまでの間、『システム』 を『アイドリング』
状態にして運転させ続け、『ヤマテ』 が 『地球』 に帰還したら 『星の記憶を持つもの』 の『生命の記憶』 を再インストール
してやれば 『コスモ・リバース・システム』 は立派に機能する。

だが、その為には誰かの 『命』 を奪う必要があった。

そして、この事実が 女王・スターシャ・イスカンダル を苦しめていた。

最初、古代 守 を救出した時は彼の 『命』 を 『魂が持つ生命の記憶』 として使わせてもらう、つもりだった。

そして、彼が 『使命の神託』を 持つ者なら 『ヤマテ』 が 『地球』 に着いた時、『生命の記憶』 を再インストールする必要も
無くなる・・・。

だが、この前、「あなたの 『使命の神託 』 は何ですか?」 と言うスターシャの問いに守は充分な応えをする事が出来
なかった・・・、彼女は彼が 『使命の神託』 を受けていないと判断せざるを得なかったのである。

そして、何よりもサーシャ・イスカンダルを 『地球』 に送り出して以来、たった一人の生活を続けて来たスターシャ・
イスカンダルにとって 古代 守 は掛替えのない存在に成りつつあったのも確かだった。

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スターシャは 『ゲルド(三つ目のガミロイド)』 が 古代 守 に持たせ 『たメッセージ・カプセル』 を手に取った。
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(追記: 『ゲルド』が 『三つ目』 なのは 『ガミロイド』 の視覚構成による、上段の二つは普通に物を立体視するための
もの、下段の右は 『暗視カメラ』、下段の左は 『ガミラス・ネット・カメラ』 であった。
普通の 『ガミロン』 は 『PC等、何がしかのインターフェース』 を使わなければ 『Net』 にアクセス出来ない。
だから、 『直接Netアクセス権』 を奪う事で、 『ゲルド』 が 『ガミロイド』 ではない 『証』 にしたのである。)


このカプセルは本来、『ゲルド』 がもはや単なるガミロイドではなく、魂を持つ 『ガミロン』 である事をガミラスの上層部に 『証明』 するために持たせた物だ。

だから、映像もスターシャ本人の物だった。
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ゲルドはその映像の上に自分の映像とメッセージを無理やり上書きしていた。

その強引なやり方から、状況が余程、切羽詰った物であった事が伺われた。

その時、イスカンドロイドから 古代 守 の容態が急変した旨、連絡があった。

スターシャが守の病室に駆けつけてみると、彼はベットの上で寝ていたがその顔に生気は無かった。

「守!」 スターシャは思わず叫んでベットに駆け寄った。

そして彼の頬に手を当て、体温がいつもより下がっているのを感じるとイスカンドロイドにベッド表面の温度を
更に上げる様に支持した。

「スターシャ猊下、これ以上、寝床の温度を上げるのは危険です。

猊下が御自身の体温で古代様の身体を温める事をお勧めします。」 イスカンドロイドはとんでもない事を当たり前の様に
言った。

「・・・判ったわ。」 スターシャは一瞬、戸惑いを見せたが薄いドレスのまま、古代 守 のベットに滑り込んだ。

<あまねく、知的生命体の救済、それが『イスカンダル』の進む道・・・。

異星人だろうと何だろうと、死に掛けた知的生命体がいれば、そして救済する道があればそれを進むのみ>、サーシャ・
イスカンダルと彼女の旅立ちの時、抱き合って以来、感じる人肌だった。

しかし、スターシャが抱き付いた時、感じる 古代 守 の体温は以前、彼の手に触った時に比べても異常に低かった。

そして、彼女が抱き付いても彼は僅かに身じろぎしただけだった。

<守! また私を一人にしないで! 神よ、お救いを!> スターシャは自身が女神扱いされているのにも関わらず、
イスカンダルの 『古き神』 に祈っていた。

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 数日後、古代 守 は何とか峠を越えて回復に向かっていた。

しかし、スターシャの心は晴れ無かった。
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検査の結果、古代 守 は身体の衰弱が激しく、一旦は回復したが、今度、体温が下がるともう回復しないと判断せざるを
得なかった。

いくらイスカンダルの科学・医学が 『ガミラス』 や 『地球』 を凌ぐものでも今回ばかりは手の施し様が無かった。

「あなたの回復は残念ですが、もう、望めません。

イスカンダルに 『ガミラス捕虜護送船』 が不時着し、あなたが脱出時に負った傷は重症で輸血が必要でした。

しかし、地球人の血液など入手不能でした。

そこで、『生命』 を繋ぐのに必要な最低限の成分を含んだ人工血液(地球流にいえばリンゲル液)を処方し、当座は
それでしのぎ、その間にあなたの血液のサンプルを元に 『代替用人工血液』 を 『クローン培養』 して輸血しました。

しかし、やはり 『クローン培養』 など神をも恐れぬ 『禁断の技術』 でした。

たぶん、後から輸血した 『代替用人工血液』 が多分、本来のあなたの血液を再現し切れなかったのでしょう、

今、あなたの血液中には 『未知の抗体』 が、多量に発生しています。

それがあなたの血液中に入り込んだ 『代替用人工血液・成分(赤・白・血球、血小板)』 を攻撃・破壊しています。

もちろん、あなた本来の 『造血作用』 は無事なので 『新しい血液・成分(赤・白・血球、血小板)』 は造られていますが、『抗体』 による破壊作用の方が早いのであなたの寿命はそう長くありません。」 スターシャは守の『寿命』 がもう長く
無い事を敢えて率直に告げた。

もし、このまま 古代 守 が助からないとしても、彼には本当に 『死』 が訪れるまで 『前』 に進み続けて欲しいと願ったから
だった。

また、スターシャは本心では守が死亡したら 『ガミロン』 の 『ゲルド』 の『魂の記憶』 を 『ガミロイド』 に入れた様に守の 『魂の記憶』 を抜き出して 『イスカンドロイド』 に埋め込みたい誘惑にかられていた。
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しかし、『イスカンドロイド』 は女性形、守が好むとは思えなかった・・・。

このため、彼女はこの件は彼には黙っている事にした。

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「そうですか・・・。」 流石に 古代 守 も天を仰いでしばらく沈黙していたが、覚悟が決まった様にスターシャの方に
向き直って言った。

「ま、もう、とっくに何度も死んでいるはずの 『生命』 です。

とうとう、運が尽きたって訳ですな・・・。 

それと 『イスカンダル』 の 『クローン培養』 の技術は素晴らしいものです、決して 『悪い技術』ではありません。

あなたは私を助けるために 『クローン培養』 を使いました。

おかげで私は 『失うはずの命を拾う』 事が出来ました。

『技術』 は 『失敗』 して 『進歩』 する物だと 『地球』 では 『子供達』 に教えています。

『ガミラス』 では 『親衛隊』 に 『クローン兵』 を使っているそうですね。

<しかし、『ガミラス』 のクローン兵は非常に短命で、二十歳を越える事はなかった。

だが、この事はスターシャも知らなかった。>

『ガミラス』 に出来る事が 『イスカンダル』 で出来ないはずはありません。

『この結果』 は、必ずや、役に立つ時が来ます。 お気を落とされぬ様、お願いします。」 古代 守は最敬礼し、
そして、言った。

「それでは一つ、お願いがあります。」

「何の願い・・・ですか?」スターシャは不思議そうな顔をした。

「私の 『生命』 が尽きる前に、ここにやってくるはずの 『地球の船』 に宛ててメッセージを残したいのです。」 守は照れ
くさそうに言った。

「判りました。言いたい事を簡潔にまとめて下さい。用意が出来たら直ぐ記録を始めます。」スターシャは即座に
了解すると直ぐに記録を始められる事を守に告げた。

すると古代 守 は自分のベッドから降りてベッドから少し離れた床にあぐらをかいて座った。

「守さん! 床に直に座ったりすると身体が冷えます。 ベッドに戻って下さい。」スターシャが心配してベッドに戻る様、
促した。

しかし、守は笑顔で 『OKサイン』 を出したが、ここがイスカンダルである事を思い出して記録の開始を言葉で告げた。

「私はこんな有様ですが、一応、『戦士』 です。 寝床の上で 『メッセージ』 を送るなど 『戦士の誇り』 が許しません。 

平和主義の女王陛下は私の事を軽蔑されるかもしれませんが、『最後の我が儘』 だと思って許してやって下さい。」と、
守はスターシャに許しを請うた。

「しかたありませんね。 『最後の我が儘』 では・・・。」 スターシャは悲しげに微笑むと守の肩に国連宇宙軍の制服である
紺色のコートをそっと掛けてから、目でイスカンドロイドに記録開始の合図を送った。

「守さん、始めて下さい。」スターシャは守に記録の開始を告げた。

「私は国連宇宙軍 駆逐艦 『ユキカゼ』 艦長、古代 守 だ・・・。」 短い『メッセージ』だった。
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しかし、彼女にはそこに、二つ、気に掛かる部分があった。

一つは守が告げた事の内、彼が 『ガミラス』 の捕虜となった事は本当だったが、その理由として彼が『生体サンプル』
として『ガミラス』に送られたと告げた事だった。

記録が終わった後、彼女が彼にその事を聞くと、「私達が『プラートの雷神』 などと呼ばれて 『ガミラス』 本土に召喚され
たなんて恥ずかしくて言えませんでした。」と守は頭を掻いた。

もう一つは 『弟』 、『進』 と言う名前らしかったが、今まで兄弟がいると言う事を何故、黙っていたのか?その理由を
聞いた。

「あなた方、三姉妹は三人しか、居ない最後のイスカンダル人です。

にも係わらず、その内、二人をも十六万八千光年も離れた 『地球』 に 『救済の使者』 として派遣して下さった・・・。

その間、あなたはたった一人で孤独に耐えなければならないのを承知で・・・。

気丈に振舞っているあなたも私に兄弟が居ると知ったら、お二人の姉妹の事を思い出してしまい、あなたの『気持ちが
折れる』 様な気がして、私にも弟が居ると言う事を告げられませんでした。

意気地の無い私を許して下さい。」守は再び、彼女に頭を下げて侘びを言った。

<自分が『死に掛けている』 のに係わらず、私の事までも気に掛けてくれていたとは・・・。

彼はやはり、『使命の神託』 を持っている、自覚していないだけ・・・。 これで彼の死も無駄にはならないわ。>
スターシャは確信した。

これで古代 守はその身体こそ死してもその魂は 『地球』 の 『生命の記憶』 の基礎として永遠に残るのだ。
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スターシャはそれが嬉しくて思わず守に抱きついた。

守は一瞬、戸惑った様子を見せたが、何も言わずスターシャを抱き返した。

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数日後、イスカンドロイドから守が再び昏倒したと、スターシャに報告があった。

スターシャが急いで守の病室に駆けつけたが守の顔は前回より青褪めており、スターシャが添い寝すると守の身体の
冷たさは絶望を感じさせた。

スターシャは、しばらく、守を抱いていたが、その身体は冷たくなるばかりで、手足を微動させる事も無かった。

彼女は黙って起き上がり、ベッドの外へ出た。 

そして、『コスモ・リバース・システム』 を 『完成』 させるため、古代 守の脳内の 『魂の記憶』を 複写する作業を
イスカンドロイドに命じた。
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                                               星、越えし先の君 → この項、了
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by YAMATOSS992 | 2014-01-18 23:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)
Commented by この実・琴 at 2014-01-31 21:11 x
私は、実は2199のイスカンダルでのスターシャの成り行きにはスゴク
納得のいかない物を残したままで残念で仕方がありませんでした。
でも、ふとした経緯で、こちらの物語を読ませて頂き、大変感動致しました。私は「人の・きづな・と言うのを信じるのがとても苦手な寂しい人間です。でも、この物語の特にスターシャと守の会話を読み進む内に、自然と二人の間に確かな・きづな・があるのに気付かされました。私はイエスキリストを信じる者ですが、神様とも、そして、神様が私と関わらせて下さっている方々とも、・きづな・をもっと深めたいと心から想いました。これからも是非、この物語を続けて下さい。この物語も終わりはありますが、心の中にはきっと残り続けると想います。そして、何か小さな事でも自分が変る事が出来たらと願っています。この物語に出会えて感謝を心から申し上げます。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-02-01 08:27
この実・琴さん、ご訪問有難う御座います。

過分なお褒めのお言葉お恥ずかしい限りです。
実は私はこの「星越えし先の君」の前に「プラート、雷神の宴」と言う作品も書いており、実はこの二つは
一つの物語の前後編に当たっています。
そして、この「星越えし先の君」は前に書いた大長編「使命の神託」に繋がる仕掛けになっています。
2199本編では守は「異星人とも理解しあえる。」と言っていましたが、命を助けられればそう思うのは当たり前の事です。
憎み戦いながらやがて必要にかられて協力し、人は初めてお互いを理解できる様になると私は考えます。
そうした2199本編の不足分を補うためにこの物語を用意しました。

私自身、「きずな」と言う部分は意識して居なかったのですが確かに私の補完しようとしていたのは「人と人のきずな」の部分だったのかもしれません。

新しい見方を教えて頂き、感謝致します。
Commented by HAL0999 at 2015-03-06 11:17 x
YAMATOSS992さん、こんにちは
「かの名はアヲ・スイショウⅡ」の前にあったので
「星、越えし先の君」楽しく読ませていただきました。
リアルな描写に驚きました。
まさか医療の知識までお持ちだとはすごいです。
墓石の漢字のアイデアいいですねぇ。説得力がありますよ。

わたしは本当は2199で守を死なせてしまったのには共感できなかったのです。
スターシャと結ばれて、新しいイスカンダルを再建してほしいと思っていました。
「永遠に…」でも守はあっさりと自爆して死んでしまいます。
声優だった広川太一郎さんは、これに苦言を呈されていたそうです。

あそこまで丁寧に成長させていた守というキャラの死にしては、あまりにも…だと感じていました。
でも、この「星、越えし先の君」での守を見ていると、2199での守はたしかにこんなだったのかもしれないと感じました。

劇中ヤマトを見送るスターシャは思わせぶりにお腹を摩っているのですが、どうなんでしょうねぇ。
たんなる食べ過ぎだとは思えませんが…(笑)
また他のおはなしも読ませてくださいね。
ありがとうございました。
Commented by YAMATOSS992 at 2015-03-06 14:51
HALさん、いらっしゃいませ。

>まさか医療の知識までお持ちだとはすごいです。

そんな訳あるはずがないじゃありませんか!
(もしそう感じられたとするなら、”説得力”では無く、”納得力”があったと言う事でしょうか?)

守=コスモ・リバースとした点は私的には不満はありませんでしたが、26話で「地球を救う使命」と
「弟の幸せ」を天秤に掛ける様な利己的な男に描かれていたのは残念でした。

もっとも、沖田との”ネゴ”は付けて有る様な描写もありましたので良い方に取って書き上げたのが
『使命の神託』です。

この作品は20話と長いのですが私の作品世界の中心を成すエピソードですので、是非御覧下さい。

>劇中ヤマトを見送るスターシャは思わせぶりにお腹を摩っているのですが、どうなんでしょうねぇ。

出淵監督は業と未回収の伏線を多数残しています。
これもその一つです。

だから私も『星こえし先の君』で守とスターシャを一応、同衾させました。

しかし、あの状態で”事”に及べるとしたら守の性質は遺伝子レベルで”提灯アンコウ”並です。(笑)