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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

114.かの名はアヲ・スイショウⅡ(ア・ルー) (1)

 ガミラスの首都、バレラスの郊外の乾ドック郡は緊張に包まれていた。

新しいガミラスの指導者、ユリーシャ・イスカンダル・皇女が行幸に使う艦を選びに来ているのだ。

「全くもう、ガミラスには軍艦しかないの?」 ユリーシャ・イスカンダルは足早に歩きながら案内役の大本営参謀次長、
ガルデ・タラン次官に文句を垂れた。
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「いい、判ってる? 今度の領内巡行はデスラーが去り、領内に自由と平和が確保された 『証』 の為に行うの!

艦隊引き連れてなくても軍艦で訪問したんじゃ今までデスラーの圧制に苦しんでいた惑星の人々はいくら私が
イスカンダル人でも信じてくれないわ。」

「はぁ、しかし、我々も拡大政策を執り続け、侵入して来る外敵とも戦う必要上、軍艦を作り続けるしかなかったのです。

また、既に破壊されつくしましたが、 『第二バレラス』 の建造にも大きく力を裂かれました。

『無いものは無い』 のです。 ご理解下さい。 姫様。」

ガデル・タラン参謀・次官はデスラー総統が去って暴君はいなくなったものの、どのみち、 『支配者』 は家来に
『無理難題』を押し付けて来るものだとつくづく思った。

本来はネルン・キーリング大本営参謀総長が出てくる場面だったが、ある理由からユリーシャは敢えてタランを
指名したのだ。

ふと、ユリーシャの足が止まった。

「タラン、私、あの船が気に入ったわ。」彼女が指差す先にはかつて、デスラー統治時代、『魔女』 と忌み嫌われた情報相 『ミーゼラ・セレステラ』 の専用艦 『シャングリ・ラー』 があった。
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「あれは駄目です。 『ジレルの魔女』 の船だった艦です。 何がしかけてあるか、判りません。」タラン長官は即座に
反対した。

当然、ガミラスの領内に響き渡っていた 『ジレルの魔女』 の悪名とその象徴であるパープル色のハイゼラード級
一等航宙戦艦がこれからユリーシャが訪れようとしている被征服惑星で反感を買うのは目に見えていたからだ。

「タラン、かつての 『悪』 の象徴を飼いならした様を見せ付けるのも効果的な 『外交』 よ。

さ、ともかく、内を案内して。」 それだけ言うとユリーシャはさっさと 『シャングリ・ラー 』 の搭乗口に向かって歩いて
いった。

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 勝手に艦長用の操作盤を操作してこの艦の機能を確認してゆくユリーシャをタラン達は唖然として見つめていた。

「確かにこの艦は面白い装備を持っているわね。 この艦はたった一隻でも一艦隊を相手に出来るのよ。

ますます、私の船に相応しい。しかし、少し改良が必要ね。 タラン、この船を中央工廠に運んで改装して頂戴。

内容は主砲の撤去、ビーム砲、カノン砲共にね、 前方に向かって開いている魚雷発射管も全部撤去して頂戴。

但し、後部の副砲と後部方向を向いている発射管は全て残して。

また、撤去した発射管用の魚雷貯蔵庫は残して、貯蔵している物を後部発射管へ送れる用に改造してね。」

本来、艦長だけが知っている艦を起動出来る様にするためのパスワードをユリーシャは簡単に割り出すと 『シャングリ・ラー』 の艦内ネットワークに潜り込み艦内施設を隅々まで点検したのだ。

その様子を見ていたタランはその手際の良さにデスラーと運命を共にした兄、ヴェルテ・タランを思い出して涙した。

ヴェルテ・タランは国防相ではあったが優秀な技術者でもあり、第二バレラスの建造責任者を任されていた位であった。
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「これで 『足』 の充ては付いた・・・と。後は随行員の人選とスケジュールね。これはヒスと相談するわ。」

ユリーシャは 『シャングリ・ラー』 のシステムを全てダウンさせるとさっさとブリッジを後にしようとした。

 艦のシステムを全てシャット・ダウンされたので、ガデル・タランは慌てた。

『シャングリ・ラー』 のシステム立ち上げパス・ワードをまだ聞いていなかったのだ。

このままでは命令通りに 『シャングリ・ラー』 を改装しようにも乾ドックから出す事すら出来ない。

「ユリーシャ様・・・。」彼は彼女に呼びかけた。

その時、同時にユリーシャが振り返った。

「そうそう、この艦に積んである 『光の花園』 をもう少し量産しておいてね。

今は二セット分しか積んでないから、三セット追加して。  五セットは欲しいの。」

「『光の花園』 ・・・? 五セット・・・?」タランは自分が聞きたい事も忘れてユリーシャの注文に当惑した。

「知らないの? 全く 『ヤマト』 の乗組員じゃ考えられない 『セクト主義』 ね。」

ユリーシャはあきれ顔になったが、思い直した様に言った。

「ま、多分、あの 『魔女』 、この装備の事は秘密にしていたでしょうけどね。

あの『魔女』は劣勢時に例え、『シャングリ・ラー』一隻になってでもデスラー総統の 『デウスーラ』 を守り切るつもりだったのよ。
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ミーゼラ・セレステラ、 『ジレルの魔女』 と陰口を叩かれても 『総統に対する忠誠心』 は本物だったわ。」

ユリーシャはデスラー総統に尽くし抜いたあげく、総統脱出時には簡単に切り捨てられた哀れな忠臣を思った。

「『光の花園』 はこの艦の後部魚雷発射管とその弾庫に積まれているわ。 見ればその正体は直ぐに判る。

それとあなたが知りたいこの艦の起動パス・ワードは 『呪われよ! スターシャ・イスカンダル』 ・・・よ。」 とユリーシャは
続けた。

「はぁ? なんですって! 『ガミロン』 にはその言葉の入力は無理です。 恐れ多過ぎます。」 タランは途方に暮れた様に言った。

「だから、あの 『魔女』 はパス・ワードにしていたのよ。

安心なさい。私が新しいパス・ワードに書き換えておいたわ。

新しいパス・ワードはこれよ。」 ユリーシャは 『共栄圏・万歳』 と掌に書いてタランにだけ見せた。

『共栄圏・・・、か・・・。』 デスラー政権下では建前でしかなかったその言葉がユリーシャが示すと不思議と本当に異星人
とも宙を越えて手を取り合う事が出来そうにタランには思えた。

ユリーシャはイスカンダルの使者としてガミラスと交戦、滅亡寸前のテロンに赴き、星の海を渡る術を伝え、テロンの
『ヤマト』 は敵であるガミラスの首都 『バレラス』 をデスラーの暴挙による壊滅から救ってくれた。

その実績は異星人同士でも理解し合える事を表していた。

「タラン長官、私は総統府いや総合庁舎に戻るけどあなたはこの艦の改装に早速、掛かってちょうだい。

改装の期限は一週間。 その後、公試を行って完熟訓練には三日もあれば十分でしょ。

使う船はハイゼラード級、同型艦はたくさんあるわ。 操艦要員や内部運営要員に問題はない。

後は 『光の花園』 の運用要員をどうするかね。 ま、これはおいおい、考えましょう。 

あっ、宙雷戦の要員だけはベテランで固めてね。」 さっさと自分の注文だけ言うとユリーシャは去っていった。

「やれやれ、ユリーシャ様も無茶苦茶おっしゃりますね。

『シャングリ・ラー』 の改装だけで1ヶ月は掛かりますよ。 それを一週間でやれとは!

デスラーでもここまで無茶は言わないでしょう。」 ユリーシャがドアの向こうに消えると同行していた部下がこぼした。

「ヘルダー君。 私はそうは思わない。 確かにユリーシャ・イスカンダルは大したお方だ。

ガミラスの未来を託すに相応しい。 さすがにディッツ提督はお目が高い。」 ガデル・タランは感心して見せた。

「ヘルダー君、ガミラスは膨張政策を止め、むしろ、領土の縮小政策に転換した。

そうなると何が変わると思う?」 タランは実直そうな壮年の士官に質問した。

「軍縮・・・って事ですよね? あっ、そうなると兵器はともかく、軍人が大勢、余ります。」 ヘルダー中佐は的確に答えた。

「そうだ。直接戦闘に当たる軍人は喜んで転職する者が多いと考えられるが、砲火を直接浴びる事の無い後方任務の
整備兵や造艦屋達にとっては職を奪われるに等しい暴挙と感じるかもしれん。

だから、ユリーシャ様はその余剰人員を旨く使って改装の工期を早めろとおっしゃっているのだ。

それに三交代制にすれば一週間でも工事を休み無く続けられる。」

「三交代ですって、もう各戦線は講和条約を結んで撤退が進んでいるんですよ。

そんな突貫工事を命じたら現場は何事が起こったのかと困惑しませんかね。」 もともと第707航空団参謀だった
カウルス・ヘルダー中佐は慣れない業務に戸惑っていた。
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「大丈夫さ、それよりも我々もユリーシャ様に頼ってばかりいないでこれからの雇用の確保に尽力する必要がある。」
タラン達は先程、ユリーシャが言った『光の花園』 の正体を確かめる為、艦尾方向に歩きながら話し合った。 

ユリーシャ・イスカンダル・皇女が 『シャングリ・ラー』 の改装やそれを使ってのガミラス圏内の御行幸するのはなにも
外交のためだけでは無かったのだ。

雇用を作り出し、臣民の生活を保障するのも政権を預かる者の使命だとタランやヘルダーは肝に命じた。

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 二人が魚雷が後部魚雷格納庫に着き、内部に入ると戦艦用の大型魚雷がギッシリと格納されていたが、その内の
八発は従来の魚雷やミサイルとは全く異なった形をしていた。

敢えて言えば四枚の花弁を持つ 『花の蕾』 の様だった、タランは兄の兵器開発局で以前、良く似た物を見た事が
あったが、ヘルダー中佐は全く見た事がなかった様だった。

「・・・これは一体、何でしょう? タラン次官。 」戸惑いながらヘルダー中佐はタランに訊ねるしかなかった。

「反射衛星・・・。」 タランは 『魔女の悪知恵』 と 『ユリーシャの応用力』 に関心するしかなかった。



                                   115.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(2)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-01-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(5)
Commented by モー太郎 at 2014-01-22 12:12 x
実に楽しく、リアリティのある創作、ありがとうございます。
楽しまさせて頂いております。

今回のお話しは、ほぼ全て、YAMATOSS992さんの創作なのでしょうか?
わたくし、設定集とか買って読んでいないので・・・・・・。
設定個々が しっかり根付いているものなので、ちょっと知りたくなってしまいました(笑)。
お手数でなければ、コメントよろしくお願い致します。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-01-22 14:26 x
ほぼ、全て創作ですと言えればカッコイイのですが、残念ながらそうではありません。
基本的に役職はなるべく本編に忠実にしています。
(違うのはヒス副総統→ヒス首相、ユリーシャ・イスカンダル第三皇女→ユリーシャ・ガミラス女皇)
ユリーシャの横車でガデル・タランが皇室ヨットの選定に付き合ってるのは兄のヴェルテ・タランが
技術者だったのでキーリング参謀総長よりは話が通り易いとふんだからです。
ヴェルテ・タラン本人はデスラーと共に行方不明です。
(映像的には死亡した様に見えますが・・・。)        (次に続く)
Commented by YAMATOSS992 at 2014-01-22 14:30 x
しかし、彼が残した開発品は都度、利用させてもらってます。
また、軍事技術であればガミラスは地球が持っている物は全て持っていると考えました。
カウルス・ヘルダー中佐は本編では親衛隊に逮捕されるシーンしか出て来ませんが、あの後、即決裁判で
有罪になり、収容所惑星(第17収容所惑星以外の収容所惑星)に送られ、
収監されていましたがディッツ提督達、反政府勢力が解放したと考えました。
(第17収容所惑星で、ディッツ提督はヤマトと別れた後、他の収容所惑星の解放に向かった旨、
ナレーション(沖田?)で語られます。)
しかしながら解放され、名誉も回復したとしても元の役職には既に後任者が就いています。
そこでディッツ提督の計らいでガデル・タランの補佐官にしました。

私の創作はヤマト2199の設定を極力、重視して、その各々を自分の想像力で繋ぐやり方をとっています。
(コスモ・ゼロの補助座席の様な、どう見ても現実的に可笑しい物は修正しますが・・・。)
つまりは殆どパクリの塊です。
そのつもりで気楽に楽しんでやって下さい。
Commented by モー太郎 at 2014-01-22 20:52 x
ご丁寧なお返事ありがとうございます。
物語の周辺環境、応用転用は補完の創作ですから、当然だと思います。
そうでないと話の整合性なくなりますからね。
わたくしが、凄いなぁと今回思ったのが、
『シャングリ・ラー』の取り上げ方、そして『光の花園』 の設定、
そしてなによりパスワードのくだりです。

それでは 続き楽しみにお待ちしております。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-01-22 21:20
『光の花園』、まだ内容説明していないのにもう機能は分かっておられる様ですね。
モー太郎さんも凄いです。