ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

116.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(3)

 ユリーシャは艦橋に上がるとまず、艦長用のコンソールに 『パスワード』 を入力し、艦内 Net に侵入した。

しかし、ヘルダー中佐が言った通り、艦内中枢のコンピューター・システムの一部にどうしても侵入出来ない部分が
あった。

自分の船に不透明な部分を残したまま、『行幸』 に出かける訳には行かない・・・。 ユリーシャは最後の手段を取る事に
した。

この船には 『シャングリ・ラー』 だった時代には無かった 『玉座の間』 があった。

艦橋内部は元々のガミラス風の無骨なインテリアだったが、『玉座の間』 の内部だけは 『イスカンダル風』の優雅な
ものに変わっていた。

そしてその中央にはこの船が航行中、彼女が座る 『玉座』 があった。

しかし、普通の椅子とは異なり、リクライニング機能も付いており、仮眠も取れる様になっていた。

いや、実は、これはその様に見せ掛ける為の装置であり、本当は彼女が 『ヤマト』 に搭乗していた時、
最初は 『自動航法室』 の中枢として 『ヤマト』 の艦内 Netワークに接続されていた時と同じ様にユリーシャ自身の
精神が直にこの船の艦内 Netワークに侵入出来る様にする為のものだった。
e0266858_18295248.jpg

この 『玉座』 をフルに活用すればユリーシャ一人でもこの船を操れる・・・。

ユリーシャは 『玉座』に座ると直ぐに頭の後ろに艦内 Netワーク接続用の端子を取り付け、ネットワークの奥深くに
文字通り『潜って』 行った。


艦内 Netワークの内で各々の装置がユリーシャにはどの様に見えているのか、我々には分からない。

しかし、アクセス出来ない部分は ”黒い箱” の様に見えたと表現するのが一番、相応しいと考えられる。

ただ、ユリーシャがその”黒い箱”の外見を隅々まで点検すると一か所だけ小さな◎があり、そこだけ色が少し明るく
なっていた。

<ここが 『アクセス・ポイント』 だわ!>ユリーシャはその箱に手(?)を伸ばしたが直ぐにその手を止めた。

<これは地球人が言っていた 『パンドラ』 の箱かもしれない・・・。 ここで開くのは危険だわ・・・。>

迂闊に開くと 『災い』 が撒き散らされてしまう・・・、この場合は 『コンピュータ・ウイルス』 である可能性が高かった。

ユリーシャはヘルダー中佐を呼び出した。

中佐は 『玉座の間』に入ろうとしたが、部屋の前の扉の所で二人の女性衛士に止められてしまった。
e0266858_1832181.jpg

「私はユリーシャ様のお召で参上したのだ、そこを開けて通して欲しい。」ヘルダー中佐は訪問の理由を述べたが
女性衛士達は頑固だった。

「ユリーシャ様は誰も入れるな! との仰せです。」女性衛士達はデスラー親衛隊の生残りだったにも係らず、自分達を
救ってくれたユリーシャに全てを捧げる覚悟なのだ。

「何を下らない押し問答をしてるの!」ヘルダー中佐の後ろからユリーシャの叱責が飛んだ。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)!」 女性衛士は二人とも両手を胸の前で交差させ、片膝をついて礼をした。

ヘルダー中佐が振りかえると艦橋の前面上方に設置されているメイン・スクリーンに非常に乱れた雑音だらけの
ユリーシャの映像が映っていた。
e0266858_923248.jpg

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)! ヘルダー中佐、お召により、参上しました。」ヘルダー中佐も両手を胸の前で
交差させ、片膝をついて礼をした。

「そんな儀礼はいいから、直ぐやって貰いたい事がある、これから示す中央コンピューターの記憶部分を 艦内 Net から
切り離して隔離して欲しいの。

それも電子的にだけで無く、完全に物理的に切り離して欲しい。 わかった?」ユリーシャは一方的に命令した。

ヘルダーは艦橋のメイン・スクリーンに今度は綺麗に映し出された模式図を凝視した。

ヘルダー中佐はコンピュータについては元々、素人だったが、 『シャングリ・ラー』 の改装に当たっての作業指示の
必要上、彼も玄人裸足の専門家になっていた。

ユリーシャが示す模式図は次第に深い階層に降りて行ったが、ヘルダー中佐はキチンと理解し、ユリーシャの指示した
場所を特定すると部下を連れて中央コンピュータ室に向かって行った。

**************************************************

ユリーシャは艦内 Netワークの内から ”パンドラの箱 ” が完全に取り去られたのを確認すると 『玉座』 を降りて
ヘルダー達が待つ情報分析室に向かった。

その手には万一に備え、自分の頭に繋ぐ艦内Netワーク接続』用の端子を手に持っていた。

彼女が到着すると机の上に置かれた問題の ”パンドラの箱 ” の周辺には幾つかの情報処理端末が置かれており、
各々の機器はケーブルで繋がれていたが、”パンドラの箱 ” 本体にはまだ何も接続されていなかった。

「やるわね、ヘルダー中佐! 疑似 Netワークを構築してくれたのね。」ユリーシャはヘルダー中佐が自分のやろうと
している事を的確に予想してくれたのが嬉しかった。

「はい、単純に端末に接続しただけでは Netワークを検知せず、真に ”箱 ” を開く事は出来ないでしょう。

ですが、最小限度の Netワーク を接続してやればそれを艦内 Netワーク と勘違いして ”箱 ”は開くと思いました。」
ヘルダー中佐は実に有能だった。

「『コンピュータ・ウイルス』 を検知する機器もその 疑似 Netワーク の中に接続してあるわね? ヘルダー。」ユリーシャは
にこやかに聞いた。

「もちろん、最新型ハード・ウイルス検知装置を組み込んであります。」ヘルダーは颯爽と答えた。

<この男は使える!>有能な部下は何にもまして重要な 『宝』 だった。

これで自分が、 ”パンドラの箱 ” に 直接、アクセスしなくて良くなったと、ユリーシャは胸を撫で下ろした。

「それでは ユリーシャ 様、 ”箱 ”と 疑似 Netワーク を接続してよろしいですか?」ヘルダーはユリーシャに許可を
求めた。

その問いにユリーシャは無言で頷いた。
e0266858_9105450.jpg

”箱 ”と 疑似 Netワーク は接続され、電源を入れると ”モニター ” にパスワードを要求する画面が出て来た。

「 『パス・ワード』 は私が入れるわ。」ユリーシャはこの入力だけは ”ガミロン ” にやらせるのは気の毒だと考えた。

それはこの 『パス・ワード』 が例の 『呪われよ! スターシャ・イスカンダル』 だと考えられたからだ。

実際、ユリーシャがこの 『パス・ワード』 を入力してみると Netワーク が接続され、案の定、『コンピューター・ウイルス検知装置』に次々と 『ウイルス』 が顕われた。

その種類は多様で ”データ消去型 ”、”データ増殖型 ”などと言った、矛盾するもの、果ては何処にデータを送るのか? 『トロイの木馬』 型 など考え付く限りの 『ウイルス』 が閉じ込められていた。

「危なかったですね。 船に取り付けたまま、この ”箱 ” にアクセスしていたらとんでもない事になっていました。」
ヘルダー中佐が顔を引きつらせた。

ユリーシャは有象無象の 『ウイルス』 の群れの中に一つの 『フォルダ』 がある事に気付いた。

「あれは何かしら? ヘルダーはどう思う?」ユリーシャは画面に映っている 『フォルダ』 を指さした。

「この ”箱 ”は『 魔女 』が残した物です。 その『フォルダ』 も 碌なもんじゃ無いに決まっています。 他のウイルス共々、消去してしまいましょう。」ヘルダーは削除を求めた。

「あら、ヘルダー、あなた、もしかして、この外した部品をクリーニングして元に戻す気だったんじゃないでしょうね。」
ユリーシャは横目でヘルダー中佐を睨んだ。

「いえ、他の 『ハイゼラード級』 から同じ部品を取り寄せて交換するつもりでした、『 魔女 』 の ”箱 ”が入っていた部品など危なくてもう二度と使えません、廃棄すべきです。」

ヘルダー中佐はしゃちほこばって応えた。

「戻さないんだったら、開いてみましょうよ。 とんでもない物が出てきても閉じられた Net だし害は無いわ。」ユリーシャは
好奇心が抑えられないようだった。

<しょうがない女皇、いや、姫様だな・・・。>ヘルダー中佐は苦笑いするとその『フォルダ』 を開く操作をした。

さて、何が起きるか、ユリーシャだけでは無く、ヘルダー中佐とその部下達も息を呑んだ。

しかし、現れて来たのは極普通の文章、たぶん、『デスラー』総統 の『演説原稿』 だったのだろう、幾つものバージョンが
あり、ミーゼラが如何にデスラーに尽くそうとしていたかが窺われた。
e0266858_942750.jpg

「やっぱり、『 魔 女 』も 一人の 『女」 だった様ね。」ユリーシャはいつの間にか涙を流していた。

「この ”ユニット ” を彼女の遺体として埋葬して頂戴。 但し、墓碑に 『魔女』 の言葉は使わないでね。 お願いよ。」
ユリーシャは、いつの間にか、ここに辿り着いたヒス首相にポツリと言った。

「分かりました。葬儀は密葬、墓は共同墓地でよろしいですか?」ヒスが了承した。

「ええ、それで構わないわ・・・。」彼女も自身に確認する様に言った。

ヘルダー中佐とその部下はユリーシャの心に深く感じ入る物があったらしく、無言で素早く敬礼した。

**************************************************

数日後、ガミラスの共同墓地に真新しい ”墓” が一つ建っていた。

その墓碑銘は 『ミーゼラ・セレステラ』 元デスラー政権、宣伝情報相 ”愛に生き愛に死ぬ” 』 と 刻まれていた。



                                    117.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(4)→ この項、続く
[PR]
by YAMATOSS992 | 2014-01-25 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)