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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

117.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(4)

 「本当に私で良いのですか? 高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、私は船の運航なんて全くの素人
です。」

『皇室ヨット』 に生まれ変わった 『シャングリ・ラー』 の船橋で新任船長候補がユリーシャに訊ねた。

「しょうがないでしょ、ガミラスには 『艦長』 はいても 『船長』 はいないんだから・・・。

この船は、いくら 『皇室ヨット』  とは言っても最小限度の武装はしている・・・、『艦長』 経験者じゃ、どうしても 『戦闘』 に
向かってしまうわ。

それに・・・。」ユリーシャは言い淀んだ。

「それに?」船長候補は問い返した。

「長い航行の間、ずっと顔を就き合わせるのよ。 私、『ムサイ小父さん』 は嫌よ、かと言って 『若い男』 では何かと噂に
なっても困るわ。

しかし、貴女は 『女』、しかも、 『外交官』 の娘、だから遠隔地へ出かけて交渉する術も私より長けていると踏んだの。」
ユリーシャは本音を言った。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、過分なるお言葉、有難う御座います。 

しかし、私は本当に戦闘は出来ませんよ?

『何か』 や 『誰か』 に襲われた時はどうするおつもりです?」新任船長候補のドメルは訝しげな顔をした。

「大丈夫! 『ディッツ提督』 が歴戦の強者を護衛に付けてくれるわ。 戦闘になったら 『その男』 が指揮を執る事に
なっているから心配要らないわ。」ユリーシャは太鼓判を押した。

「私はその 『歴戦の強者』 の指揮に従って 『船』 を動かせば良い・・・と言う事ですか? でも私は 『戦闘』 その物が
出来ないのです。」ドメル船長候補は丁重に断った。

「エリーサ・・・、辛い事を思い出させてしまった様ね。 御免なさい。 でも今回の 『行幸』は デスラー達が荒らした宙域に
『平和と秩序』 が 『確保』 された事を示す為にどうしても必要な事なの。 貴女には決して戦闘はさせない! 
もし、戦闘が始まってしまったら貴女は船長室にこもってしまって構わない、その時はこの船の指揮も『ディッツ提督』 が選んだ 『歴戦の強者』 が執る事になっている、艦隊Netはこういう時の為にあるのよ。 
貴女は航行と外交に徹してくれれば良いの、いえ、そうして欲しいわ!」ユリーシャは懇願した。

エリーサ・ドメルはしばらく瞑目していたが、もう一度目を開くと決意を込めて言った。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、判りました。 私には過ぎた大任ですがお受けさせて頂きます。
但し、本当に戦闘は出来ません! それだけは御勘弁して下さい。」エリーサ・ドメルは船長に就任する事を承知した。
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ユリーシャは無言で手を差し伸べた、エリーサはその唐突な行為にどうしたら良いか解らずとまどったがユリーシャは
左手でエリーサの右手首をつかみ、自分の差し伸べた右手を握らせた。

「なんて恐れ多い・・・。」エリーサはそれ以上言葉が出なかった。

「これは 『握手』 と言うの、『テロン』 の習慣よ。

『全て合意した証』 に行うの、そしてこれはお互いが 『友人』 になった 『証』 でもある・・・。』ユリーシャは握った手の力を
少しだけ強めた。

女皇の手に触れるなどあまりにも恐れ多いと震えを感じたエリーサだったが、こうしたユリーシャの分け隔てない行動がガミラスの将来を変えて行く物だと考え直し、自分も手を握り返した。

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「キャプテーン、やっぱり宇宙海賊(宙賊)に転職しましょうよ。

平和になっちまったガミラスに俺たちの居場所はありませんぜ。」根っからの戦争屋、ゴル・ハイニ大尉は上司に詰め
寄った。

「俺も出来たらそうしたいところなんだが、エネルギーや食糧は他の船から奪えるとして艦の補修や修理、特にこの艦は
次元潜航艦だ、頻繁なオーバー・ホールは欠かせない、でないと安心して 『潜る』 事なんて出来はしないぞ。」ハイニの上司であるフラーケン中佐は血気にはやる部下を抑えるのに懸命だった。

<それに本艦の主兵装、亜空間・魚雷は戦艦級の大型魚雷だ、戦艦を襲って魚雷を奪うなど正気の沙汰ではない。>
これを言うとかえってハイニは面白がって戦艦に対する略奪行為をしたがると困るのでフラーケンは黙っていた。

だが、フラーケン自身も気が付いていなかったが、亜空間・魚雷は次元境界面を越える為の装置が積まれていた。

亜空間・魚雷、こればかりはガミラス本星か、そこから送られる補給艦に頼るしかなかった。

次元潜航艦 UX-01 艦長、ヴォルフ・フラーケン中佐は 『猟犬』と呼ばれ、恐れられていたが、『ガル・ディッツ提督』 は
しっかりと 『猟犬』 のその首に首輪と鎖は付けていた。
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「それから、今度、イスカンダルから来たユリーシャって女皇、『ヤマト』 から拉致した美女でしょ、『惑星・レプタポーダ』
での啖呵、格好良かったですね。」ハイニ達はあの時のユリーシャが森・雪であった事を知らなかった。

「ああ、男でもなかなか、ああ言う有無を言わせない威圧感のある行動はとれない・・・、俺達なんか危うく 『ボーゼン』
所長を殴って軍事法廷送りになるところだった。」フラーケンは苦笑いをした。

「彼女の新しい方針は極力、政治体制は変えないが、軍備は縮小するって事らしいですけど、デスラー総統が
いなくなって 『総統府』 はなくなったんでしょ。
『総統府』 付きの俺たち 『次元潜航艦』 も失業って訳ですよね。」ハイニにはそこが一番不満なところらしかった。

「いや、『ガル・ディッツ提督』 によれば、俺達は今度は 『皇室』 付きになるそうだ。」フラーケンもあの小娘の下働きかと
思うと何か、面白くなかった。

「平和になるのがそんなにご不満?」開いていたUX-01のハッチから女の声がした。

「誰だ! ここは機密区画、簡単には入って来れないはずだぞ!」フラーケンは拳を握りしめ、緊張して声をかけた。

「『ディッツ提督』から通信が入っています。」メッツェ一等通信兵曹がフラーケンに言った。

「繋いでくれ!」フラーケンはハッチからの謎の声に注意を向けながらメッツェに答えた。

「あーっ、何だ、女皇・ユリーシャ様が、そっちに行っておられるから案内して差し上げて欲しい、
それと少し、話があるそうだ。」 『ガル・ディッツ提督』 が極まり悪そうに話した。

ユリーシャの訪問が事後承諾であるのは明らかだった。

「ずいぶんと急なお話ですな、『提督』、女皇が単身、こんな秘密ドックに来る事など考えられない!
何か裏があるのですか?」フラーケンは詰め寄った。

「何も裏なんてないわよ。 早く中に案内して頂戴。」ハッチの外からまた、声がした。

フラーケンはハイニに <迎えに行け!> と目で合図した。

ハイニはヤレヤレといったポーズをするとハッチに繋がるタラップを昇って行った。

彼がハッチから頭を出すと機嫌の悪そうな顔をしたユリーシャが一人で立っていた。

「全く、ドックを警備しているガミロイド達は直ぐに私を認識して扉を開けてくれたのに、あなた達はなんて疑い深いの!」
ユリーシャはいつもマイ・ペースだった。

ハイニはハッチから出るとそこにいるのが自分達が ヤマト』 から拉致した 『ユリーシャ』 姫に間違い無い事を確認すると
『礼』 をした。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、歓迎致します。」 ハイニ自身は決まったと思っていたが、
彼は軍隊式の右手を曲げて掲げる敬礼をしていた。

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「しかし、本当に一人で来られたのですか? 護衛も付けずに?」フラーケンはまだユリーシャが大胆にも単身で行動している事が信じられなかった。

「ええ、皇居から一人で車を運転してここまで来たわ。 大丈夫、私には 『守護天使』 が付いているから、心配無用よ。」
ユリーシャは得意のオトボケで誤魔化した。

「それより、この艦の中枢コンピュータはどれ?  私が直接、この艦の艦内 Netワークにアクセスして必要な情報を
とるわ。」ユリーシャは当たり前の様に言ったが、この行為は相手を心の中まで裸にする非常に失礼な行為だった。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、残念ですが、本艦は非常に古い艦です。 中枢コンピュータも艦内 Netワークも存在しません。

ですから、各機器の配置・機能と性能は御自分でお確かめ戴くほかありません。」フラーケンはやんわりとユリーシャの
要求を断った。

本当は中枢コンピュータは原始的な物であったが在るにはあった、しかし、艦内 Netワークは本当に存在して居なかった
から、まんざら嘘ではなかった。

「そう、分かったわ、雑っとでいいから艦内を案内して頂戴。」ユリーシャはハイニに先導され、フラーケンに後押しされる
形で艦内を巡って歩いた。

「しっかし、狭い艦ね。 しかも汗臭いわ。 『ヤマト』艦内の の清潔さが夢の様だわ。」ユリーシャは遠慮が無かった。

「古い艦ですからね。 昨日、今日出来た『ヤマト』 の様には行きません。 これが次元潜航艦の環境です。 我々は我慢して戦わねばなりません。 まっ、それももう終わりのようですが・・・。」フラーケンは彼女の言葉に反発した。

「その点は大丈夫よ。 残念ながらあなた達の力はまだまだ必要なの。」ユリーシャは肩を落とした。

「 『軍縮』 を推し進める貴女に何故 『戦闘』 しか能の無い我々が必要なんですか?」フラーケンは訳が分からなかった。

「それはね・・・。」ユリーシャは次元潜航艦の乗組員全てを集めて今回の訪問理由を語った。

しかし、それは皆を唖然とさせるとんでもない事だった。

「 『皇室ヨット』の 『艦長』を 『私にやれ!』 と言うのですか?」フラーケンは次元潜航艦を降りるつもりなど、更々
無かった。
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「正確に言うと 『皇室・巡航・戦艦』 だけど、細かい事はどうでもいいわ。 そして、UX-01を降りる必要は無い、いや、
むしろ、UX-01の艦長も続けて欲しい。 俗に言う兼任って奴よ。」ユリーシャはまた、無茶苦茶を言った。

「どうやって、二隻の艦を同時に指揮するんです! 私にはそんな能力はありません、あればとっくに 『提督』 になっています!」フラーケンはそう言ったが、ある事を思い出した。

彼は若き時代、親友だった 『ヴァルス・ラング』 と 『次元潜航艦・戦隊』 を組み、宇宙狭しと暴れ回った経験があった
のだ、そして、その時の戦隊長はフラーケンだった。

<ラングが生きていてくれれば、この話、快諾出来るのに・・・。>フラーケンはラングが戦死した事を心から悔しいと
思った。

「艦隊・Netを使うのよ。 そうすれば、フラーケン、貴方はUX-01にいるまま、『皇室・巡航・戦艦』に色々な命令が出せるはずよね。 メッツェ一等通信兵曹。」いきなり話を振られたメッツェは慌てて答えた。

「艦隊・Netは平時には有効ですが、戦時には敵のECM(電波妨害としておく。)に依って使えなくなる恐れが強いです。 また、こちらのNetに敵の侵入を許す恐れがあり危険です。」

その話を聞いたユリーシャは<こいつら、全く、みんな、馬鹿正直なんだから!>と思ったが、ここで切れては話が進まないと考え、ヒントを出す事にした。

「次元ソナーを扱っているのは誰?」乗組員の皆の顔を見回しながら言った。
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「私ですが、・・・。 あっ!」メッツェ一等通信兵曹はある事に気が付いたのだ。

「次元振動波を使った通信システムを構築し、それで二隻の間に艦隊・Netを張れば、妨害や傍受される心配も外から侵入される心配もありません。」とユリーシャに得意げに報告した。

「『人』 のやる事だから、『完璧』は在り得ない・・・、そうやって貴方達も敵の裏を欠いて戦果を上げてきたんでしょ。 
油断をしては駄目よ。」ユリーシャは釘を刺した。

「この艦は次元潜航艦で次元断層内に、『皇室・巡航・戦艦』は通常空間にいる・・・、そして二隻は艦隊Netで一つに
繋がっている、極端な場合、完全に同じ座標にいてもお互い違う空間にいるのだから何も問題は無い、外部からNetに
侵入される恐れも大幅に減る・・・、いけますよ、この案。」フラーケンは再び 『戦隊』を指揮出来る喜びに打ち震えた。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、 『皇室・巡航・戦艦』の 『艦長』お引き受け致します。」フラーケンは
謹んで 『艦長』 の任を引き受けた。

「有難う、フラーケン、でも、 『ちょっとだけ、悪い事をしたなぁ』 って思うことがあるの。」ユリーシャは申し訳けなさそうに
言った。

何の事だかわからず、怪訝な顔をしたフラーケン達にユリーシャは再びとんでもない事を言った。

「私の船、実は顔が二つあるの、一つは外交用の 『皇室ヨット』、もう一つは何がしかの理由で戦う必要が出来た時の
『皇室・巡航・戦艦』、この二つの顔を使い分けて今回の 『行幸』は行うつもりなの。

『皇室ヨット』の時の 『船長』 はエリーサ・ドメル、戦死したドメル将軍の未亡人よ。 『皇室・巡航・戦艦』の時はフラーケン、
貴方に 『艦長』をやってもらうわ。」

「はぁ! 都合の悪い時だけ助けろって言うんですか? そんな勝手な事、皆が承知しません。」フラーケンは乗組員に
同意を求めた。

しかし部下達はニヤニヤ笑いをするだけだった。

「ユリーシャ様の『皇室ヨット』はきっと 『女』が 満載ですぜ、大将! 自分だけそんな天国に行こうとしても 『神様』 が
許してくれないって事ですよ。」ハイニがフラーケンの肩を叩いた。

<確かに艦隊Netで一体化していれば態々、 『皇室・巡航・戦艦』 に乗り移る必要もない、住み慣れたUX-01にいた方が
気楽かもしれない。>どのみち、 『皇室ヨット』 の護衛は 『提督』 から命じられた事だった。

<完敗だ!ユリーシャ様はあの 『魔女』 より食えないお方だ。>フラーケンは負け惜しみの様にユリーシャに言った。

「ユリーシャ様の『皇室ヨット』?『皇室・巡航・戦艦』?の艦船名は何と呼べばいいんですか?」

「私のフネの名前は 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 。」ユリーシャは誇らしげに言った。
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「初代の 『アヲスイショウ』 は地球着陸時に失ったわ、だからこのフネはⅡ世、(ア・ルー )よ。」

「これが 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 の性能・兵装の諸元よ。後で詳しく見てこの内容で出来る戦術と戦略を良く研究
しておいてね。」ユリーシャは小さなデータ・スティックを取り出してフラーケンに渡した。

「これは超最高機密ではないですか! 私なぞ、単なる護衛にこんなに簡単に明かして良いのですか?」フラーケンは
困惑した。

「違うわ、あなたは 『皇室・巡航・戦艦』『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』の艦長、『戦闘』 の最高責任者よ。単なる護衛では
ないわ。 この艦の全てを知っておく義務がある!」ユリーシャの言葉にはフラーケンとその部下に対する絶大な信頼が
込められていた。



                                   118.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(5)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-01-27 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by 古世人 at 2014-07-05 17:48 x
このシリーズも読み返しております。ところで、サーシャの宇宙船の名前は何ですか?
Commented by YAMATOSS992 at 2014-07-05 18:33
公式設定資料集では「シェヘラザード」となっていますが、その名前の根拠は不明です。
ユリーシャの乗艦の名を「アヲ・スイショウ」としたのは雪を連れ出して抱擁したのが「アオ・スイショウの原」
だったり、別れ際に「アオ・スイショウ」の苗を雪に贈ったりと、特別な思い入れのある物だと感じたからです。