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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

118.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(5)

 眼下の乾ドックからゆっくりと上昇してくる艦を見つめて 『ガル・ディッツ』 提督は言った。

『美しい、実に美しい船』 だ・・・。 そうは思わんか、メルダよ。」

『確かに美しい、これが」ハイゼラード級一等航宙戦艦、しかも、『魔女』 の艦だったとはとても思えません。」 娘の
メルダは答えた。

おりしも 上昇を続ける『アヲ・スイショウⅡ(ア・ルー)』 は二人の目線の高さを越えようとしていた。
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「しかし、武装をほとんど降ろして後部の副砲と後部魚雷発射管四基と言うのは少し少なすぎて心配です。」メルダは
素直な感想を言った。

「お前もまだまだだな、ユリーシャ様の方が余程、 『戦艦の本質』 を理解しておられる。」ディッツは小さく笑った。

「良いか、戦艦の本質は 『防御力』 だ、『攻撃力』 ではない。」ディッツの発言の意味をメルダは図りかねた。

「はぁ? 『戦艦』 の価値は 『攻撃力』 ではないのですか?」メルダは再度、父に訊ねた。

「 『防御力』 だ。 それに 『皇室ヨット』 に相手を殲滅する能力は必要ない・・・。」ディッツは自分達が犯してきた 『誤ち』 に
思いを馳せた。

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 ガミラス女皇の皇室のヨット 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)は惑星オルタリアへ向かっていた。

惑星オルタリアはデスラー政権時代、過酷な重税に怒りを発し、反乱を起こしたが親衛隊の無慈悲な攻撃を受け、焦土と
化した惑星だった。

だが、そんな廃墟の惑星にも僅かではあったが、生き残った住民がいた。

ユリーシャはガミラス帝星の暴挙を謝罪し、共栄圏・再建の援助をする為にまず、この惑星を選んだのだ。

「二回目のゲシュタム・ジャンプの用意が出来ました。」航行士が告げた。

「よし、ゲシュタム・ジャンプ!」ドメル船長の命令が飛んだ。

「ですが、よろしいんですか? このまま跳んで・・・。 ドメル船長・・・。」別の航行士が船長に訊ねた。

艦橋の前面上方にある大型スクリーンは四分割されて 皇室ヨット の前後左右の空間が映し出されていたが、そのどの
画面にもクリピテラ級駆逐艦とデストリア級重巡が跳梁跋扈し、皇室ヨットに砲火を浴びせ続けていたのだ。
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「それに船長は戦闘はされないと宣言されていました、ここは 『艦長』 の出番かと・・・。」

「あら、ちょっと強い風が吹いているだけじゃない。 『戦闘』 なんてする必要は無いわ。」ドメル船長は涼しい顔だった。

皇室のヨット 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)は『ゲシュタム・フィールド発生装置』 を三基も積んでいる、しかも『ヤマト』や
『シャングリ・ラー』と違い、メインのゲシュタム機関(波動エンジン)からエネルギーを取っているのでは無く、三基ある
『ゲシュタム・フィールド発生装置』 それぞれに専用の小型のゲシュタム機関(波動エンジン)が設置されているので
通常出力ならほぼ無限の展開時間を持ち、最大出力でも1時間は防御フィールドを展開出来るのであった。

(『ゲシュタム・フィールド発生装置』 は 『ヤマト』の 『波動防壁』 と同じ物である。)

これは魚雷発射管を大幅に減らした為、その空いた空間を利用してクリピテラ級のゲシュタム機関を三基、設置出来た
のが大きかった。

スクリーンの隅に映っているフィールドの稼働率を示す”ゲージ ”は 1/3も示していなかった。

撃沈・大破するどころか、反撃すらしてこない 『皇室ヨット』 に 馬鹿にされたと勘違いした攻撃部隊の隊長は全艦
体当たり攻撃を命じた。

四方ハ方から突撃してくるクリピテラ級駆逐艦とデストリア級重巡、しかし、彼らが衝突する寸前に 『皇室ヨット』 は
ゲシュタム・ジャンプに入り、忽然と姿を消した。

突撃を敢行したクリピテラ級駆逐艦とデストリア級重巡は何も無くなった空間を虚しく通過するだけだった。

お互い接触した艦もあったが、幸いにも小破しただけで航行には支障が無かった。

「おのれ、『ユリーシャ・ガミロニア』 次は唯では済まないぞ! 」攻撃隊長は歯軋りをしつつ、撤退命令を出した。

その様子を監視用 『宇宙塵』 が見ていた、『ドメル船長』 がジャンプ前に落としていった物だった。

その八個の監視用 『宇宙塵』 は観測したデータを超光速通信でガミラス本星に送った。

「やはり、来ましたね。」ガデル・タランが嫌な予想が当たったので眉を曇らせた。

「さてはて、何処の誰が裏で糸を引いているのか・・・困ったものだ。」ガル・ディッツも溜息をついた。

「ユリーシャ様の方針に反対しているのは旧貴族の連中です。  マルド・ヴォッテル官房長、ダール・ヒステンバーガー
大本営作戦部長、そして、私の上司、ネルン・キーリング大本営参謀総長あたりが怪しいかと思います。」タランは情けない思いで一杯だった。

「タラン君、そう早く決めつけてはいかんよ。 儂や君だって元貴族だ。 軍縮で困るのは何も旧貴族だけではない、
名も無き一般の兵士達だって不満を持っている者は数多くいるはずだ。

それに、さっきの襲撃艦隊、撤退していったのは惑星ザルツの方面だ。 これをどう考える・・・?」 ディッツは首を横に
向けてタランの顔を真っ直ぐ見た。

「惑星・・・ザルツ・・・ですか?」タランは問題の複雑さに頭を痛めた。

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「我等の指導者は『デスラー総統』、唯一人だ! イスカンダル人の 『女皇』 なんて断じて認めん!」惑星ザルツの
統括官・カノン・バーレルは自分の机を叩いた。

彼はザルツ人だったが、名誉臣民として一等ガミラス人扱いを受ける身分であり、惑星ザルツの最高統治者でもあった。

もし、ガミラス・勢力圏の拡大が止まると言う事は戦争が無くなると言う事であり、住民の多くをガミラス軍に供出している
ザルツは糧を奪われるに等しい、それ程、ザルツはガミラス本星に依存しているのだ。

「『皇室ヨット、アヲスイショウ』 なんて可愛い名前を付けているから、どんな小舟かと思ったら駆逐艦の魚雷も重巡の
陽電子ビームも跳ね返す 『化物』 だったのか!」バーレルは今度は自分の椅子も蹴とばした。

「はぁ、しかも全く反撃もしなかった様で、こちらの送った艦隊も駆逐艦と重巡が接触事故を起こして小破した位で殆ど
損害は在りませんでした。」次官が報告を付け加えた。

「何だと! 次は 『ガイデロール級戦艦の一個・戦隊』を送ってやる! 何としても惑星オルタリアに『皇室ヨット』 を
辿り着かせてはならん!」

「統括官閣下、残念ですが、ザルツには故シュルツ大佐の 『シュバリエル』 しか、 『ガイデロール級戦艦』はありません
でした。
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その艦もドメル閣下の御配慮でシュルツ大佐のゾル星系」遠征の餞別として特別に贈られたものです。 

いくら二等航宙戦艦と言っても、我々、二等臣民には簡単に与えられる艦ではありません。」次官はバーレル統括官の
怒りを鎮め様とした。

「フフッ、大丈夫だ、当てはある、お前は乗組員の手当てだけしておけ、 『シュバリエル』 の時の人選記録や配置表は
残っているだろう。」バーレルは不敵に微笑んだ。

「ザー・ベルク!」<統括官も・・・。無茶を言い寄る。> 次官はそう思いながらもガミラス式の敬礼をして統括官室を後に
した。

惑星ザルツの歴史は長い、そして、惑星ザルツはデスラー総統が就任した時にはもうガミラスの属国になっていた。

しかも、単なる属国ではなく、資源も丸々吸い取られる酷い扱いを受けていた、しかし、デスラー総統が就任すると彼の 『イスカンダル』 主義に基づき、待遇は大幅に改善された。

しかも、『武勇に優れた星』 との評価をしてくれ、『精兵』 を次々と採用、彼の 『イスカンダル』 主義に基づくガミラス
帝星圏 膨張政策に適応させた。

更に、戦線で 『勇猛に戦った者』や 『戦死した者の家族』は名誉臣民として一等ガミラス人扱いしてくれると言った厚遇
ぶりだった。

こうしたデスラーの占領政策は惑星ザルツの最高指導者もザルツ人である事を許したので表面上は自治惑星になった
様に思えた。

このため、惑星ザルツにおいてはデスラー総統の人気は絶大なものがあった。

だから、デスラー総統の死が確認されてもいない、地位を譲る意思表示をしたわけでも無いのに、幾らイスカンダル人が
ガミラス人にとって高貴な存在だったとはいえ、デスラー総統の意思に関係なく、ユリーシャ・イスカンダルがガミラスに
皇室を勝手に開くなどもっての他だった。

「ガーレ・ガミロン、『女皇』 の件でお願いがあってご連絡しました。」 次官が退室するとバーレルはどこかに連絡を
始めた。

「あの 『新・魔女』 の話はこちらでも聞いた。 その件だね?」 通信 モニターの向こうの人物は後ろ向きで顔は
見えなかった。




                                   119.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(6)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-01-29 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by HAL0999 at 2015-02-28 21:12 x
こんばんは、ここまで楽しく拝読させて頂いております。
感想は最終回まで読ませていただいてからにしますね。
どうも、この5話のみ「ヤマト2199 挿話」のカテゴリから外れているようです。
検索で見つけました。
exciteブログの仕組みはよく分かりませんが、カテゴリを修正されたほうがよろしいかもしれません。
ではまた、後ほど…
Commented by YAMATOSS992 at 2015-02-28 21:16
カテゴリー変更致しました。
御指摘有難う御座いました。