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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

119.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(6)

 ゲシュタム・ジャンプ明けの赤い光に何か嫌な予感を感じたドメル船長は探査主任の方を見た。

それに呼応するかの様に探査主任は報告した。

「ゲシュタム・ジャンプ終了。 惑星・オルタリアの惑星軌道の外縁に到達致しました。 しかし、進路上に妨害者と思しき
艦隊がいます。」

それは 『ガイデロール級二等航宙戦艦』 、二隻で組まれた 『戦艦・戦隊』 だった。
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「相手は 『ガイデロール級戦艦』、装備している陽電子ビーム砲は、先に相手をした 『デストリア重巡級』と同じだから、
こちらのゲシュタム・フィールドを貫く事は出来ない。

しかしながら、その装備している戦艦用大型魚雷がゲシュタム・フィールドを貫く事が出来るか、出来ないか、定かでは
ない!  私は 『戦闘状態』に入った事を宣言する! フラーケン中佐、  『船長』 から 『艦長』 への引継ぎをよろしく
お願いします!」 ドメル船長の決断は早かった。

「了解した。 『皇室・ヨット』 はこれより暫くの間、 『皇室・巡航・戦艦』 として私が預かる!」 艦橋 にフラーケン艦長の
立体映像が現れた。

そして艦橋以外の場所、機関室、火器管制制御室、や『光の花園』 制御室、と言った、 主要な制御室にもフラーケン
艦長の立体映像は出現していた。

『名のみ語られ、誰も会った事も見た事すら無かった ”猟犬 ” 』が今、堂々とその姿を表している、姿をあえて見せる事で
乗組員の士気を最大限に引き出そうとする彼なりの配慮だった。

「敵の状況を報告せよ。」彼が第一声を発した。

「 『ガイデロール級二等航宙戦艦』 、二隻で組まれた 『戦艦・戦隊』 です。 本艦の進路上を左舷を見せて立ち塞がって
います。 他の艦艇は姿がありません。」 探査主任が落ち着いて報告した。

<丁字戦法か、奴らはこれで全部の陽電子ビーム砲塔と三十三基もある戦艦用大型魚雷発射管が全て使える体制だ、
こちらはまず守りを固めよう!>フラーケンの頭脳が目まぐるしく回転した。

「ゲシュタム・フィールド艦首方向に最大出力で展開!  正面からの攻撃はこれで防ぐ、『光の花園』 も 一セット展開! 
フィールドを回り込んでくる魚雷は『光の花園』 で 対処する!」明確な確信に満ちた命令だった。

『光の花園』 の操作員は 『シャングリ・ラー』 時代の操作要員をそのまま採用していた、本来なら 『魔女』 の艦の乗組員
として忌み嫌われ、闇の世界で生きていくしかない運命だったが、それをユリーシャ本人が救いだし、しかも、再び、
『光の花園』 の操作要員にしたのだ。 

その数は四人、一基の反射板・誘導弾の反射方向の制御を一人が行う態勢だった。

「爺っ様達、反射板・誘導弾の位置制御はそちらに任せたわよ。」『光の花園』制御室の先任士官が火器管制室の宙雷戦
担当部員に呼びかけた。

「おうよ、娘っコ共に宙雷戦の奥義を見せてやるわい。」 宙雷戦担当の老兵が応えた、みれば宙雷戦担当者は初老から
ヨボヨボの老人ばかりで固められていた。

これもユリーシャの命令を忠実に守った結果だった、『宙雷戦の要員だけはベテランで固めて』と彼女は言っていた、
そして、ガミラス軍内でも飛び切り勝れた腕を持つ者を選んだ結果、この様な陣容となったのだ。
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陽電子ビーム反射板が装着された誘導弾が四基、発射され、それがそれぞれの定位置に着くと四枚の反射板を
開いた、その様は確かに 四ひらの『花』 が開いた様だった。

そして高速で航行している 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』の後部四方の上下左右にピタリと付けて相対位置を固定させ
続けているのは宙雷戦のベテランだけが出来る技だった。

ドメル船長はフラーケン艦長に指揮権を譲ったので船長室に引揚げようとした。

しかし、女皇・ユリーシャに 『玉座の間』 に来る様、命令された、彼女にとって 『女皇』 の命令は絶対だった。

『玉座の間』 の前の扉を守る女衛士も 『女皇』 の命令を聞いていたので素直に扉を開けてくれた。

ドメル船長が『玉座の間』 の内に足を踏み入れるとそこは宇宙空間だった。

「大丈夫、単なる3D映像よ。 この艦橋を中心として見た映像だから、床は見えてないだけよ、ちゃんと床はあるわ、
貴女もこちらに来て座りなさい。」と言って自分の左隣の一歩下がった位置にあるシートを勧めた。

「さて、『猟犬』 の戦いぶり、じっくりと拝見しましょう。」ユリーシャは両手の指を組んで合わせると言った、
その姿は 『祈り』 を捧げている様に見えた。

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「暫くぶりの軍服だ、この着心地、懐かしい、堪らんな、実戦はやはり良い!」カノン・バーレル・惑星ザルツ・統括官が
嬉しそうに言った。

彼は今でこそ、官邸の奥深く、フカフカの肘掛椅子に座っている惑星ザルツの最高責任者で名誉臣民だが、統括官に
なる前から生前に名誉臣民の資格を実力で得た、数少ない 『猛者』 の一人だった。

「しかし、デストリア級が太刀打ち出来なかったのだから、同じ口径、330mmの陽電子ビーム砲が弾かれるのは予想して
いたが大型魚雷まで通じないとは思わなかったな。」

「とんでもない 『化物』 です、しかし、所詮、人が作った物、どこかに弱点があるはずです。」 副長のまだ若い少佐が
進言した。

「その通りだ!戦闘は 『守っている』 だけでは、いつか、ジリ貧になって押し切られる、その事をあの 『女皇』 に解らせて
やる! 一気に畳みかけるぞ! 二隻揃って魚雷発射管・全門・斉射、陽電子ビーム砲も全門発射しろ! 打ち抜けなく
ても良い、敵のエネルギー・フィールドの負荷を少しでも多く掛けるんだ!」

バーレルの指揮は大胆だった、二隻の 『ガイデロール級戦艦』の全魚雷、一艦、三十三基、二艦で六十六基の大型
魚雷を 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』の全周方向から狙う形で発射した。

『皇室・巡航・戦艦』のザルツ艦隊に一番近い位置は前方だったので最大出力で前方集中させたゲシュタム・フィールドに
遮られたザルツ戦艦の大型魚雷は次々と爆発した。

エリーサ・ドメルは艦橋で平面なモニターでしか、敵魚雷やビーム攻撃を見ていなかったのでこうして3D映像で見ると
生身の自分が攻撃されている様でとても怖く、堅く目を瞑ってしまった。

「エリーサ、目をお開けなさい! いくら私達が 『平和』 を唱えてもそれを望まない者達も沢山いる・・・。 
この沢山の魚雷の雨はその 『意思』 の現れよ! 私や貴女は外交官として、直接、武器を振るう事は無い、 
でも 『言葉』で 『交渉』 する時にも一歩間違えば相手に 『魚雷』 や 『ビーム』 浴びせてしまう場合もある・・・。 
その事を忘れないで!」

エリーサ・ドメルは何故、ユリーシャが何故、わざわざ、こんな部屋を作ったか、判った様な気がした。

『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 の側面と後尾を狙って誘導されて来たザルツ戦艦の大型魚雷は 『光の花園』によって
阻止された。
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『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 は元々ハイゼラード級一等航宙戦艦であった、その主砲や魚雷発射管の大半を撤去し、
代わりにゲシュタム・フィールド発生装置を積んで防御力を飛躍的に上げてあったが、後部の副砲、連装280mm陽電子
ビーム砲塔四基はそのまま残してあった。

 しかし、この四基の砲塔は配置が悪く、全砲塔がフルに使える様にはなっていなかった。

デスラー総統に全てを捧げたミーゼラ・セレステラは自分の専用艦 『シャングリ・ラー』 を建造した時、その欠点を補う
装備を考えだした。

それが 『光の花園』である。 これは 『ヤマト』 が冥王星戦(メ2号作戦)で苦しめられた 『反射衛星砲』 と同じ技術を
使ってはいたが反射板を衛星ではなく、誘導弾に取り付け、高速で航行する母艦の後方、上下左右の少し離れた空間を
併行させて副砲から発射された陽電子ビームを反射、屈曲させてたとえ反対舷にある目標ですら狙える様にした
秘密兵器だった。

『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 はその装備を全て引き継いでいた。 

そして運用要員も 『シャングリ・ラー』 時代の要員を探し出して再雇用したので運用面の心配もなかった。

加えて反射板を適切な位置に配置させるために必要なベテラン・宙雷戦要員も確保出来、今回、初めての実戦で
六十六基の魚雷を全て阻止する事でその威力を十分発揮した。
(もちろん、ゲシュタム・フィールドによる阻止もあったが・・・。)

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「『魔女』 め、物理法則すら無視し、陽電子ビームまで曲げて見せたわい! しかし、どうやら、あの艦、後部にはあの
防御フィールドは持っていないようだな。」バーレルは顎を擦りながら言った。

「どうして、そう思われるのです?」副長が訝し気な顔をした。

「艦全部に渡ってあの防御フィールドがあればあんな 『手品』 は必要ない。 防御フィールドで守り切れない部分をあの
『手品』 で守っているんだ。 よし、次の魚雷の斉射はあの艦の後部に集中して行うぞ! 二番艦も含め、魚雷の斉射をかける! 主砲はそのまま打ち続けろ! 少しでも敵のエネルギー消費を増やすんだ!」バーレルの指揮は
『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 単艦に対してだったら適切だった。

しかし、実際には伏兵がいた、次元潜航艦UX-01である、フラーケンの実体はUX-01にいた、そして次元潜望鏡を出すと
直ぐ前にいる、 二隻の『ガイデロール級戦艦』の前部砲塔群に狙いを定めた。

<しっかし、昔の教官があの艦に乗っていようとは思わなかったな・・・、ここでしくじったら、また、あの 『カミナリ』 を
落とされかねない。 艦長が宙雷員に怒られたんでは様にならん!>

フラーケンは苦笑いをすると次元潜望鏡の視野一杯に迫った敵、一番艦の砲塔群に目掛けて魚雷を一発だけ発射した、
敵の戦意を挫く為の攻撃だったので極力、人的被害の出ない攻撃が求められたからだ。

二番艦も同様に上部主砲塔群に一発、魚雷を喰らって使える陽電子ビーム砲塔は下部の一基と副砲である四基の連装
280mm陽電子ビーム砲塔だけになってしまった。

「何が起こったんだ!」バーレルは揺れる艦橋の中でコンソール?に摑まりながら副長に訊ねた。

「判りません! 唯、第一、第二主砲は大破、使用不能です。 あ、上面の魚雷発射管十二基もやられています。 
二番艦も同様の攻撃を受け、損害を出した模様です!」副長が悲鳴を上げた。

「うろたえるな! まだ負けた訳ではないぞ! 下部魚雷発射管と下部陽電子ビーム砲は使えるか? 使えるだけの兵装を使って反撃するんだ!」

フラーケンはあれだけの損害を受けたのにも係わらず、使えるビーム砲塔全てと魚雷を撃ち続ける敵の戦意の高さが
嬉しくもあり悲しくもあった。

<強い敵と戦えるのは喜びだ。 しかし、あまりに強い敵との戦いは倒すか、倒されるかの戦いになってしまう・・・。 
彼等は降伏しようとはしないだろう、止めを刺してやるしかないのか・・・>フラーケンが止めの魚雷発射を命じようとした
時、艦隊Netにユリーシャが割り込んで来た。

「フラーケン艦長、貴方、まさか、あの戦艦に止めを刺すつもりではないでしょうね。 人死には御法度よ。」ユリーシャは
フラーケンの考えを正しく読んでいた。

「ユリーシャ様、ゲシュタム・フィールドは大丈夫ですが、『光の花園』はもう使用限界です。 誘導用の推進剤が尽き
かけています。 新しいセットを展開すれば良いのですが、『光の花園』はこの艦の切札、無駄使いは出来ません。」
フラーケンも必死だった。

「それに、 『ガイデロール級戦艦』 の下部は魚雷発射管で埋め尽くされています。 あそこに魚雷を当てたらまず、
確実に爆沈するでしょう。 後部のゲシュタム機関も魚雷が当たれば大爆発してしまいます。もう、手加減出来る限界は
越えたのです。」フラーケンは言い切った。

「駄目! そんなに簡単に諦めては駄目! 何か、手があるはずよ・・・」ユリーシャは爪を噛んだ。

「ユリーシャ様、差し出がましいようですが、要は敵艦の重要部分を機能しなくなる様にすれば良いのでは? 例えば
ゲシュタム機関とか、艦橋とか。」エリーサ・ドメルが脇から進言した。

「ドメル船長、ゲシュタム機関に魚雷を打ち込めないのは先ほど説明しました。 艦橋に至っては乗組員の大半が
あそこに集まっています。魚雷を打ち込んだら戦死者続出です。」フラーケンが即座に否定した。

「いや、流石にドメル将軍の 『妻』 ね。 フラーケン、攻撃は魚雷ではなく、陽電子ビーム・カノン砲で行う。 このまま最大
戦速で突撃し、敵艦隊を分断、その時、左舷副砲は敵一番艦のゲシュタム機関を、上部砲塔は二番艦の艦橋根本を
攻撃、艦本体から分離、機能しない様にする。」ユリーシャは 『ヤマト』 でテロン人と行動を共にするうち、いつしか、
その大胆な戦闘方法を身に着けていた。

「敵艦隊を 『分断』 するですと! それに本艦には陽電子ビーム・カノン砲は装備されていません!」

「フラーケン・・・。予習はちゃんとやっておく様に言ったはずだけど・・・。」ユリーシャが不機嫌な顔でフラーケンを咎めた。




                                   120.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(7)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-01 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by モー太郎 at 2014-02-03 12:39 x
創作投稿楽しく読ませて頂いております。
『光の花園』の使い方、そういう発想もあったのですね!!
わたくしの妄想では、相手のビームで、そのまま打ち返すイメージでした。
確かに、不戦、相手を殺傷しない、イスカンダル思想では、
理にかなった活用方法ですね。

『光の花園』こと、反射衛星は、凄いテクノロジーですから、
今回のような活用方法は、いろいろありそうですね。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-02-03 15:32 x
モー太郎さん、お楽しみ頂けて幸いです。

『光の花園』はモロ反射衛星砲の使用方法を流用しました。
ただ、このシステムは元々、セレステラがデスラーの盾となる為に
開発したものなのでイスカンダル主義とは相容れない攻撃兵器です。
しかし、その攻撃兵器も使い方次第だと言う事を訴えたかったのです。
モー太郎さんが不快に思われたら申し訳けなかったと思います。

でも、世の中、兵器=悪、という妙な主義・主張がまかり通っています。
それに少しなりとも楔を入れたかったのです。