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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

120.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(7)

フラーケンは『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 を敵の攻撃を物ともせずに接近させた、もとより、330mm陽電子ビームでは
通常出力のゲシュタム・フィールドですら打ち抜けない、だから今度は全艦を包むゲシュタム・フィールドの出力を最大に
し、接近して威力の増した330mm陽電子ビームと、『光の花園』 が撃ち漏らした大型魚雷を防ぐ事にした。

そして一番大きな変化は副砲が長い砲身を持つ 陽電子ビーム・カノン砲に代わっていた事だ。
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その延長砲身は各々の副砲塔の前の甲板に収納されていて、必要に応じて、自在椀によって各ビーム砲に接続される様になっていた。

陽電子ビーム砲と 陽電子ビーム・カノン砲とでは威力が格段に違う、330mm 陽電子ビームより 280mm 陽電子ビーム・
カノン砲の方が貫徹力は1.5倍くらい大きい。

自分の専用艦に高威力を求めたミーゼラ・セレステラは着脱式のカノン砲身を用意し、必要時には副砲にも高威力を
与える様に設計していた。

しかし、前にも言ったがこの副砲、配置が悪く、高威力の 280mm 陽電子ビーム・カノン砲に変わっても十分にその性能が
発揮出来るか、疑問だった。

しかも、 280mm 陽電子ビーム・カノン砲では威力があり過ぎて、『光の花園』 に使うと反射システムが焼け切れてしまう
事が解っていたので、フラーケンは役に立たないシステムとして忘れていた。

だが、今回はその280mm 陽電子ビーム・カノン砲を敢えて使う事をユリーシャは指示した。

敵艦隊左舷より、敵艦隊を突破、分断した直後、 一番艦は左舷の副砲を使って、ゲシュタム機関を、二番艦は
上部副砲塔を使って艦橋の根本を砲撃し、無力化する作戦だった。

だから、通常は突破・分断する作戦を取る場合、突破・分断後、最大戦速で離脱するのが普通だが、この砲撃を的確に
する為、フラーケンは突破・分断直前に最大減速を命じていた。

「副砲要員、準備は良いか? 勝負は一瞬で決まる! だが、訓練通りやれば大丈夫だ。」フラーケンは副砲要員が
『光の花園』 の運用訓練はしていたが、カノン砲の運用訓練をしていないのを知っていた、だから副砲を 280mm 陽電子
ビーム・カノン砲 にした時、確実に命中させられるか、不安を持っていた。
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しかし、<艦長が自艦の乗組員を信じられなくてどうする!>と自分で自分を叱咤激励した。

ゲシュタム・フィールドの利点はその効果を全艦に分散させたり、一部に集中させたり出来る事である、今、フラーケンは
両舷の防御を最大出力で守る様、指示していた。

前部、後部、上下部も通常出力での防御は維持させていた、だから、これはもう、最大出力でゲシュタム・フィールドを
展開しているのに等しい状態だった。

全周方向、最大出力でのゲシュタム・フィールド展開時間は一時間が限度だ、しかも、これまで、前方だけとは言え、
最大出力を出している、もはや、展開限界時間は二十分位が限度だと予想された。

「短期決戦だ! この一瞬に全てを掛ける! 副砲塔、発砲準備は良いか?」フラーケンは副砲塔要員に念押しした。

「大丈夫です! 発砲のタイミングはこちらに任せて下さい!」艦橋にいた若い砲術士官が応えた。

その声は自信に満ち溢れていたが、かえって、フラーケンは気負い過ぎないか、心配だったが、顔には出さず、微笑し、
頷いてみせた。

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「こんな・・・。 気違いじみている! あの 『化物』 は我が艦隊を分断する気です!」バーレルの次官が悲鳴を上げた。

「さすが、名将 『ドメル』 の 『妻』に恥じない指揮振りだな!  並みの艦長ではこうは行かない!』 公式には 『皇室・
ヨット』の顔しか発表して居なかったので 『皇室・巡航・戦艦』 の顔とその時の 『艦長』 フラーケン中佐の事は隠していた。

このため、バーレン達は今までの戦闘指揮が全て 『ドメル艦長』の指揮だと思っていた。

「火力を絶やすな! 敵艦に安全距離を割り込ませるな!」バーレンは無駄かもしれないと思いつつ、攻撃続行を指示
した。

<安全距離を割り込ませては、艦隊・分断を許さざるを得なくなる! 何としてもそれまでに沈めてやる!」しかし、そんな
バーレンの気拍も虚しく、『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 はザルツ艦隊を分断した、しかも通常なら速度を上げて遠ざかっ
ていくはずなのに、敵艦は反対に減速していた。

「くそっ、俺達を舐め切っていやがる! 安全距離の内側に留まり続けるつもりか!」

安全距離とは発射した魚雷が爆発しても母艦に損害を与えない距離である、また、当然、敵艦や僚艦が爆発しても
自艦が損害を受けない距離でもある。

だから、文字通り敵の懐に飛び込む、戦術は有効だった、だが、さすがに大ガミラスと言えども『アヲスイショウⅡ
(ア・ルー)』 程、重防御の艦は存在しなかったのだ。

『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 は敵艦隊の軸線を通り越した、副砲の280mm陽電子ビーム・カノン砲が強力なビームを
放った、が、敵旗艦のゲシュタム機関を狙った左舷砲塔も、二番艦の艦橋根本を狙った上部砲塔ビームも僅かに外れて
しまった。

<やはり、まだ無理だったか・・・。>フラーケンが次の命令を出そうとした時、二つの砲塔はビームを出したまま、砲塔を
僅かに右に廻した、ビームを薙いだのである。
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旗艦はゲシュタム機関の後部を、二番艦は艦橋根本を切り飛ばされた。

旗艦はゲシュタム機関を使用不能にされて、エネルギー供給を断たれ、 二番艦は艦橋を艦本体から切り離されて
しまい、指揮不能にされて、両艦とも無力化した。

「一発で当てられなかったのは、失態でしたが、ここまで接近出来れば、ガミラス艦といえども、ビームを薙ぐ攻撃が
有効になります。」先ほどの若い砲術士官が説明し、フラーケンがにこやかに頷いた。

「後がうまくフォロー出来たって、失敗したのは事実でしょ! 全く、結果オーライなんだから・・・。貴方達は・・・。」
ユリーシャが複雑な顔をした。

そうこうしている内に敵艦の乗組員、全員の救助が終了した事が報告された。

「敵艦の乗組員は全員無事?」ユリーシャがまず聞いたのは敵兵の安否だった。

「はい、最初のUX-01の雷撃時数名の宙雷員に軽傷者が出た様ですが、ホントのかすり傷です。
その他はカノン・バーレル司令官を含め全員無事です。」救助の指揮を執った士官が報告した。

「カノン・バーレル・・・って、惑星ザルツの統括官ですわ! ここは惑星オルタリア・・・。 なんで惑星ザルツの統括官が
妨害に来るのんでしょう?」ドメル船長が指揮権をフラーケンから返却されて再び艦橋に立っていた。

「はてさて、何故でしょうね。 それは会ってみれば判るわ。」ユリーシャはいくつかある会議室の一つにカノン・バーレルと
その次官を通す様に命じた。

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「何でしょう? ・・・尋問ですかね?」カノン・バーレルの次官が不安げに自分の上司に話かけた。
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「何でも構わん! 我々は艦隊戦では負けた・・・。 しかし、儂は生きている!生きている以上、抵抗は止めないぞ!」
カノン・バーレルは気炎を吐いた。

「良い心掛けね。 生き続けていれば色んな事が出来るわ。」  何時の間にか会議室の入り口に女皇・ユリーシャ・
ガミロニアが二人の女衛士を従えて立っていた。

ユリーシャは会議室に入るとカノン・バーレルとその次官が座っている席とテーブルを挟んだ反対側に座った。

「初めまして、私がガミラス皇室の女皇・ユリーシャ・ガミロニアよ。貴方々はどなたですか?」ユリーシャは相手の正体を
知っていたが敢えてトボケて見せた。

カノン・バーレルはニヤリと笑うと腰の後ろに隠していた護身用小口径拳銃を引き抜き、ユリーシャ目掛けて弾を浴びせ
かけた。

ユリーシャの体が着弾の衝撃に踊り、床に投げ出された。

バーレルは、弾が尽きて、拳銃がカチカチと音を立てるまで引き金を引き続けた。

「女皇・ユリーシャ様! おのれ!」女衛士がバーレルに飛び掛かろうとした、しかし、その時、バーレルは満足の笑みを浮かべ、拳銃をテーブルの上に置いて自身は腕組みして座っていた。

女衛士達はそんな彼を拘束しようとテーブルの上を跳ぼうとした。

「お止めなさい! エミル、ダフラ!」床に倒れたユリーシャが起き上がりながら言った。 

小口径とは言いながら至近距離でこれだけ多数の銃弾を受けて立ち上がれるはずはなかった。

バーレル達はおろか、女衛士達達も無事立ち上がって再び席に座った、女皇・ユリーシャ・ガミロニアに開いた口が
塞がらなかった。

「言ったでしょ、私には 『守護天使』 が付いているって、あっ、これはあなた達には言ってなかったわ、御免なさい、
驚かせてしまって。」ユリーシャは凄みのある声で謝罪した。

「『まっ、魔女だ・・・。」バーレルの次官が声を震わせた。

「『魔女・・・。』 失礼ね、 人聞きの悪い、せめて 『小悪魔』 って呼ばれると嬉しいな。」ユリーシャの得意のオトボケが
始まった。

「我々は 『反逆罪で死刑』ですな、しかし、今回の作戦は私の勝手な行動です。 惑星ザルツの住民には何も関係が
ありません。 また出来たら、この艦隊の乗組員も私を除き罪に問わないで頂ければ幸いです。」 バーレルはもう既に
覚悟を決めている様だった。

「『反逆罪』 ? それは惑星ザルツが、 ガミラスの支配下にあるからでしょ、 惑星ザルツが、ガミラスから『独立』して 『独自の惑星国家』 になってしまえば今回の事件は 『反逆』 ではなくなるわ。」

「はぁ、何ですと、『独立』 ?そうしたら、今回の 『事件』 はガミラスに対する 『戦線布告』 になってしまうじゃないですか! 貴女は惑星ザルツを切り捨てるおつもりですか?」バーレルは必死だった。

<ここは何としてでも 『自分だけの責任』 に止めておかねばならない! ザルツの民にこれ以上の悲劇を味あわせたく
はない・・・。>バーレルの気持ちに嘘は無かった。

「惑星間の 『国家間の問題』 になれば最初はまず、当然の事としてガミラスは、『事件の首謀者』の 『引き渡し』 を要求
するでしょうね。ガミラスにも惑星・国家としての体面がありますから。」ユリーシャは至極当たり前の事を言った。

「今のザルツにガミラス帝星を相手に出来る戦力は無い! やはり、私が『事件の首謀者』として処罰された方が双方とも
無駄な血を流さずに済みます。」何時しかバーレルの内に厭戦の気持ちが起き上がってきていた。
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「だ・か・ら、 『国家間の問題』 になれば、ガミラス帝星は直接、惑星ザルツを調べる事は出来ない、ザルツの惑星政府に
『テロの犯人の逮捕』 を依頼するしかなくなるわ。そうすれば、『逮捕したテロ犯』の引き渡しを要求された時、
『犯人は未だ捜査中』であるとか、『逮捕したが取り調べが終わっていない』とか、のらりくらりと引き渡しを先延ばしに
すればいい。その内、ガミラス帝星も 『この事件には強く抗議する!』 とか、 『遺憾の意』 を発表して終わりにするしか
なくなるわ。」ユリーシャは腹黒い提案をした。

「なんでここまでするんです! 私は惑星ザルツの統括・・・。」そこまで言いかけたバーレルはユリーシャに制止された。

「駄目よ。 あなたは 『名もなきザルツの愛国者、そして、惑星オルタリアに着き次第、脱走する・・・。 名前と身分を聞いてしまったら、それが実行出来なくなるじゃない・・・。」ユリーシャは釘を刺した。


                                   12 1.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(8)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-03 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)