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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

121.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(8)

 惑星オルタリアは衛星軌道上から見る限り、美しい自然の色を保っていた。
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しかし、ユリーシャが着陸艇で地表に向かうと親衛隊によって無残に破壊された都市、それも高度な文明を持っていた
事を表す壮麗な都市だった事が窺われた。

<ハイドレ・ギムレー・・・。 生きていればこの惨状を一緒に見て廻らせ、謝罪させる事が出来たのに、・・・。>
ユリーシャはこの惑星オルタリアの 『殲滅』 を指揮した親衛隊・長官が第二バレラスで戦死したのを残念に思った。

<彼は唯、死刑になるのには重すぎる罪を犯した、一生を掛けてその罪を償って貰わねばならなかった・・・。> しかし、同時に、この罪はガミラス帝星が犯した罪であり、その指導者を引継いだ自分の罪でもある、とユリーシャは認識して
いた。

都市周辺の山河も焼き尽くされ、損害を受けていない人を寄せ付けない険しい山々とその周辺の森林との対比が如何に
親衛隊の破壊が周到で徹底した物であったのかを彼女達に理解させた。
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ユリーシャは何か何時もと違う雰囲気に後ろを振り返った、そこにはいつもの女衛士が二人直立不動で立っていたが、
その頬には涙が伝わっていた。

「貴女達にも判るのね・・・。エミル、ダフラ・・・。」彼女達は沈黙したままだったが、ユリーシャは自分の部下が元親衛隊員
だったとはいえ、この惨状に 『涙』 する人の心を持っていた事が嬉しかった。

普段、衛士は感情を表に出す事など決して許されない、しかし、任務に忠実な彼女達ですら 『涙』 するしかない程、惑星
オルタリアは破壊されていた。

「しかし、住民の姿はまるで無いわね。 本当に親衛隊に殲滅されてしまったのかしら・・・。」 ユリーシャは疑問を口に
した。

「女皇・ユリーシャ・ガミロニア、進言してもよろしいでしょうか?」発言を求めたのは 『惑星ザルツの愛国者』だった。

彼はこの惑星オルタリアで部下と共に 『脱走』 する計画になっていたのでその下見にユリーシャに同行していたのだ。

「何ぁに? 言って御覧なさい。」ユリーシャは実戦経験豊富なカノン・バーレルの意見を聞いてみる事にした。

「もし、味方が少数で敵は大兵力、しかも装備も敵の方が圧倒的に勝れていると考えたら、私だったらじっと隠れて様子を
見ます。 気配は微塵も出さないでしょう。」バーレルは言った。

ユリーシャは確かにこの着陸艇が如何に無力なものでも、今のオルタリア人にとっては戦艦がやって来た様に感じられる
のかも知れない・・・と、考えを改めた。

「オルタリア人に気付かれない様、探査用の超小型ドローンを四方に放って、それが済んだら前の ”広場の真ん中”に
着陸させなさい。」ユリーシャは敢えて姿を見せてオルタリア人の好奇心を煽る事にした。

果せるかな、トンボ位の大きさの ”探査ドローン” が送って来た映像には ”小銃” や ”対戦車ミサイル発射筒” を持っているオルタリア人達がこちらを窺っている様子が写っていた。

そして、更に高い上空から観測した熱線探査映像には熱線を放射している大きな塊が蠢いていた。

可視光線を観測するドローンを潜入させてみると多数の女・子供、負傷した住民達だった。

その地獄絵図には戦闘慣れしているバーレルさえ、嘔吐感を抑えるのがやっとと言う位、酷いものだった。
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  ユリーシャは救急箱を手にすると彼等の元へ向かおうとした。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)、危険です。 それにそんな救急箱一つで何が出来るのです。 出直しましょう。」
バーレルが止めた。

「今、苦しんでいる人々がそこにいる! 僅かだけど手当ての手段も私は持っている! ここで行かなければ私は私から
逃げた事になってしまうわ。」ユリーシャの決意は固かった。

そして、こうも言った。

「私達がここに来た事を彼等はもう既に知っている・・・。 私達がここを去ったら、直ぐに移動しようとするでしょう。
その時、足手まといになる者達は切り捨てられかねない・・・。 だから、私が足止めしている間に貴方達は船に戻って
今度は 『アオスイショウⅡ(ア・ルー)』 毎、此処に来て本格的な救難活動をして欲しいの。」 ユリーシャの懇願に皆、
声も出なかった。

ユリーシャが惑星オルタリアの大地を踏むと二人の女衛士も後に続こうとしたが、ユリーシャは二人を止めた。

「エミル、ダフラ、危険を承知で同行してくれるのは有難いわ。・・・でも、気を悪くしないで、貴方達は一等臣民、もはや、
その肩書きに意味は無いけれど、その青い肌はどうしようも無く彼等の憎しみを煽るだけだわ。 私一人で行く方がずっと
安全なの。 御免なさい。 それに、この艇が母艦に戻るのに操縦者が必要でしょ。」ユリーシャが優しく諭した。

「悔しいんです。 過去とは言え自分の上司がここまで非道な男だったとは。 それを疑いもせず、ついて行った自分が
許せない、殺されてもいいから、私も連れて行って下さい!」エミル・ラストフ少尉が懇願した。

「有難う、でも駄目よ。 貴女は貴女の任務を果たしなさい。」ユリーシャは再度、彼女の同行を禁止した。

「エミル、私達の任務は本艦に帰って迅速に救難活動の準備をして、また、本艦毎、此処に帰って来る事よ。
あまり女皇を困らせては駄目よ。」相方の女衛士、ダフラ・ドーラン少尉が諌めた。

着陸艇が広場から飛立つとそこには両手に大振りの救急箱を持ったユリーシャ、一人が佇んでいた。

ユリーシャはその場でまず、大声で呼ばわった、「我はイスカンダル・第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル!!、オルタリアの
救援に参りました!」

しかし、先ず飛んで来たのは銃弾の雨だった。

ユリーシャは目を瞑ってそれに耐えた。 カノン・バーレルの時は護身用小口径拳銃だったが至近距離だったので身体が
跳ね飛ばされた。

しかし、今回は距離があったので弾は軍用の大口径だったが何とか耐えて、歩き続ける事が出来た。

次には対戦車ミサイルが飛んで来た、流石に今度はユリーシャも吹き飛ばされて大地に叩きつけられ、持っていた
救急箱の一つの止金」が壊れ、中身が辺りに飛び散った。

次の瞬間、ユリーシャはブチ切れた。

無事だった救急箱を後ろに隠すとつかつかと銃やミサイルを撃って来たと思われる崩れた壁に向かって歩み寄ると言い
放った。
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「意気地なし! いい! 貴方達は自分達の仲間の助かる確率を半分にしたのよ!」ユリーシャは無事な救急箱と
壊れた救急箱を交互に示した。

そして肩を怒らせて壁の割れ目を越えた。

そこには銃を手にしたオルタリア人が多数いたが、ユリーシャは完全に無視して負傷者の所に向かった。

まず、ユリーシャは手前にいた左半身に火傷を負った男の直ぐ側に膝を着くとその重度の火傷の表面に持って来た治療
キットの中から人工皮膚再生ガーゼを取り出すとそっと傷に被せた。

十秒程待つとピンセットでそっと、そのガーゼを引き剥がした。 10×20㎝位の狭い範囲ではあったが、男の火傷は無くなり、綺麗な肌に戻っていた。

「『魔女』 だ・・・、 『魔女』 が来たんだ・・・。」そんな奇跡を受け入れられない男達がユリーシャに再び銃を向けようとした。

ユリーシャは心の中で覚悟を決めた、< 私の『守護天使』、個人用ゲシュタム・フィールドの作動限界はとうに越えて
いる、次に撃たれたらもう防げない、でも私はこの惨禍を生んだガミラスの女皇として最後まで責任を取って治療を
続けるだけ・・・。>

男達のそんな動きを無視して治療を続けるユリーシャと再度、銃撃しようとする男達の間に小さな女の子が両手を広げて
割って入った。

「『女神』 様の邪魔をしないで! 私のおとうさんを助けて!」どうやら、ユリーシャが今、治療している男の娘らしかった。

たぶん、酷い火傷を負ったため、余命はもう無いと思われていたのだろう、それをユリーシャが治療できる可能性を示し
たのだ。

それでもまだ銃を構えた男達は引き下がる気配を見せなかったが、横から男の銃の銃身をむんずと摑まみ、銃を下に
下げさせた者がいた。

「長老!」武装していた男達は慌てて引き下がった。

「高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)、伝説は本当じゃった、 『あまねく星々、知的生命体の救済』 、おお、惨禍に
覆われ、滅びの道しかないと思われた時、 『女神』よ、あなたは舞い降りて下さった。 哀れなる我等にお力を!」長老は
正座してユリーシャに祈りを捧げた。

「我は 『イスカンダル第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル』、決して ”女神” などではありません。 しかし、皆さんを出来る
限り救いたいと言う気持ちはだけは持っています。

まもなく、私の 『船』 が本格的治療設備と医師団を乗せてここに来ます。 どうか、それを受け入れて我々に貴方々の
治療をさせて下さい。」ユリーシャはペコリと頭を下げた。

「おおっ、もったいない 『女神』さま・・・、いや、 『高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)』 、それはこちらからのお願い
です!」長老は再度、ユリーシャを拝んだ。
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「『高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)』万歳!」誰かが大声を張り上げた。そしてそれは合唱の様に重なり合い、怒涛の様な歓声となって廃墟の街に響き渡っていった。

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 「これから、志願兵を募る!」カノン・バーレル・ザルツ統括官はつい、昨日まで自分が率いていた 『戦艦・戦隊』 の
戦艦・乗組員、三百名に要請を行っていた。

「『任務』は惑星オルタリア全土に措ける生存者の確認と救助、生存集団の把握とその集団とユリーシャ様が交渉出来る
様にする 『下地』 作りだ。

簡単な任務と考えるかもしれないが、最初はユリーシャ様ですら攻撃を受けた。」ここでバーレルは言葉を切った。

「しかし攻撃を受けても、決して反撃はしてはならない! 同僚が殺されても撃ち返さない、自分の身をオルタリアの
自然の猛威から守るのに使えるのはザルツ兵常用の軍用ナイフだけだ。

更にこの 『任務』 には 『報酬』 も 『名誉』 も無い、最悪の 『任務』だ、それでも良いと言う者だけ一歩前に出て欲しい。」
カノン・バーレルは演壇上で一歩前に出た。

しかし、他に誰も一歩前に出てくれる者は居なかった。

「フフッ、当然だな。 さてはて、儂、一人でどこまで出来るか、やってみるしかないな・・・。」バーレルは自嘲した。
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「統括官・閣下、あなたは御一人ではありません! 私も行きます。」最後尾で手を振っている若い伍長がいた。

「私はデスラー総統を今でもお慕いしております。 でもこの惑星オルタリアで 『デスラー総統の名』 を騙って行われた、
親衛隊の暴挙を許す事は出来ません! 女皇の存在は認めたくありませんが、『惑星オルタリアを救済』 しなければ
ならないと考える点はたぶん、『デスラー総統』が健在であられても同じ様に考え、行動なさっていた事でしょう。」
若い伍長が決意を述べた。

「私も参加させて下さい。」最前列の右端にいた士官が一歩前に出た。

「私はガミラス臣民として、同じガミラス臣民を助けたい! ただ、それだけです。『報酬』 も 『名誉』 も必要ありません!」
その言葉は簡潔だった。

「『名誉』 はあります! この惨状を見て見無いふりをしたたら、私は『私自身の名誉』 を認める事が出来なくなります。」
別の士官も歩み出た。

「私も!」、「私も!」、志願者は次々に増えて行き、バーレルが気が付くと全員が志願していた。

「有難う、みんな・・・。」バーレルは涙をぬぐうと言った。 「ザルツ、万歳!(ガーレ・ザルツ)! 小隊編成が出来次第、
出発して貰う、それまで各自待機、惑星オルタリアの情報を出来るだけ叩き込んでおけ!」

「ザルツ、万歳!(ガーレ・ザルツ)」皆が唱和した。

兵士達が講堂を出て行くと次官がバーレルの側に来て言った。

「統括官、ユリーシャ様との打ち合わせではあなたはザルツに帰って政治体制の再編成をする予定だったはず
ですが?」

「お前が帰ってその仕事をやれば良い、元々、儂は何でも次官のお前まかせで何もしとらんかったではないか、独立惑星
ザルツの初代大統領にはお前の方が相応しい。」バーレルは恐ろしい事をヘロッと言った。

「とんでもない、私なぞ、あなたの様なカリスマ性は微塵もありません。」次官は大いに慌てた。

「少しはユリーシャ様を見習って、頭を使え、ヴォルト・ガンツ事務次官。」バーレルはガンツに秘策を授けた。



                                   122.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(9)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-05 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)