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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

123.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(10)

 「まもなく、大気圏を離脱します。」航宙士がドメル・船長に報告した。

「よし、第二宇宙速度に切り替えよ!」船長は指示した。

第一宇宙速度はその星の衛星軌道に乗る為の最低速度、第二宇宙速度はその星の引力圏から完全に離れ、惑星間
空間に出る速度を言う。

慣性制御で航行している 『皇室ヨット』 には第一宇宙速度も第二宇宙速度も本来は関係の無い事だったが、
航行の区切りとしてこの命令は出されるのだ。

それはまるで 『宇宙船乗りの儀式』 の様だった。

ドメル・船長が左耳に着けているイン・カムが鳴った、同時に探査主任が叫んだ。

「左舷より大型魚雷 六十六基、、接近、あっ、右舷からも大型魚雷 六十六基が接近しつつあります。」魚雷の映像を
モニターに映し出させたドメル・船長はムゥと唸った。
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敵はこちらからは見えない水平線の彼方から大気圏上層部をスキップする様に魚雷を撃って来たのだ、しかもその数は
片舷、六十六発、『ガイデロール級』 戦艦が二隻づつ、左右の空間に隠れている事が予想された。

しかもこの魚雷の撃ち方はかなり熟練した宙雷員を擁している事を示していた。

ドメル・船長の着けているイン・カムからフラーケンの声が聞こえた。

「ドメル・船長、UX-01は左舷の敵をまず無力化して来ます。」それだけ言うとフラーケンは通信を断った。

「宙雷要員、迎撃用多弾頭魚雷を両舷より二基づつ発射、後部副砲塔も待機!」ドメル・船長は矢継ぎ早に命令を
下した。

「船長・・・。 戦闘はなされないはずでは?」副長がフラーケン艦長が何時までも現れない事に不安を持っていった。

「これはあくまでも 『迎撃』、『戦闘』 では無い、 しかも、相手は無人の魚雷、遠慮は要らないわ!」しかし、すっくと立った
その姿はもはや、穏やかな 『船長』 の姿では無く、屈強な 『艦長』 の姿で、しかも、したたかさを漂わせていた。

宙雷員達は艦橋からかなり離れた艦底に近い部署にいたが、老齢な彼等はドメル・船長がドメル・艦長に変わった事に
いち早く気が付いた。

「あの娘もやっとやる気を出してくれたようね。」発射した迎撃用多弾頭魚雷を分離、その一発づつを的確に敵魚雷群に
誘導しながら老女(?)宙雷員が呟いた。

「『ドメル・将軍の妻君』 じゃ、こうなるのは時間の問題じゃったな。」別の老宙雷員がやはり迎撃魚雷の誘導を行いつつ
言った。

「儂は『光の花園』を展開するものだとばっかり思っておったが・・・。」別の男が疑問を呈した。

「お前はまだそんな事も解らんのか! ホントに 『宙雷バカ』じゃな!」宙雷要員を束ねる宙雷士官が呆れた。

「こんな大気圏に近いところであんな空気抵抗の大きな反射板を持った誘導弾を放ってもまともな誘導は出来ん!
お前はまだそんな事も解らんのか!」

「かなわんなぁ、『教官』には・・・、あ、儂も 『教官』 引退したんじゃった・・・。ハハハッ。」ここにいる宙雷員は皆、一度は
引退した老兵ばかりだったが、その腕は折り紙付きだった。

彼等の操った迎撃用多弾頭魚雷は一発につき二十発の子弾を持つ、だから、片舷二基の魚雷発射管で敵魚雷は
四十発処理出来る計算になる、しかし、百%命中させたとしても二十六発の未処理敵弾が出る、その処理をするのは
後部副砲の役割だった。

魚雷程度、ビーム砲で充分な対処出来る様に思える、しかし、元々ハイゼラード級戦艦であった
『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 は四基の連装280mm陽電子ビーム砲塔を持っていたが、一方向にはその半分しか
使えない無駄の多い配置であった。

『光の花園』 はその不備を補うための装備であり、これを展開出来れば四基の砲塔全てを有効活用できるのだったが、
これを使用するには少しではあったが準備時間が必要であった。

だが、その時間が取れない時の場合を改装責任者のカウルス・ヘルダー中佐は考えていた。

通常、ガミラス艦のビーム砲塔は左右旋回と僅かな仰角変化が出来るだけだったが、この艦の副砲塔は球状の形態に
造られ、二重の砲座でシンバル支持されていたので全周はもちろん、全天も射角に収めていた。

もちろん、艦体構造物などの障害で射界は一部制限されたが、それでも通常のハイゼラード級戦艦の後部副砲群の
1.5倍の火力を片舷で得ていたのである。

しかし、今回は処理しなければならない魚雷の数があまりにも多かった、だから砲術主任士官は部下の副主任と右舷と
左舷を手分けして迎撃する事にした。
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上部砲塔と左舷砲塔で左舷から迫る魚雷群を、下部砲塔と右舷砲塔で右舷から来る魚雷をたちまち、処理していった。

迎撃用多弾頭魚雷のを誘導する宙雷要員の技術も相まって、撃ち漏らした魚雷は唯の一発も無かった。

<次はどう来る・・・。>エリーサ・ドメルはこの攻撃がこれで終わるとは思わなかった。

<今の内にジャンプしてここを離れる必要がある!>ドメル・船長はゲシュタム・ジャンプして惑星オルタリアから至急、
離脱する必要を感じた。

もちろん、 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 の安全を確保する目的が主体だが、もし、万が一、 『皇室ヨット』 が大気圏
上層部で大破して地上に墜落すればまた、オルタリアに被害を与えてしまう、また、 『事故』 で 「襲撃者の船』 が
落ちても同じ結果を生んでしまう、それだけは絶対に避けなければならなかった。

「全力加速、方位、イスラン星系、最大ジャンプ!」ドメル船長の迷いのない的確な命令が艦橋の響いた。

『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 のゲシュタム・機関が最大出力を出し、艦の前方にゲシュタム・ホール(ワーム・ホール)が出現した。

しかし、 『ゲシュタム・ホール』 の直後に別の船がゲシュタム・アウトして来た。

その艦は山の様に大きく、しかも 『紅く』 染められていた。

「クソッ、」主任航宙士は減速しようとした、しかし、ドメル船長はそれを止めた。

「駄目よ! 今からジャンプを中止してもあの超弩級戦艦に突っ込むのは避けられない! でもゲシュタム・ホールは
僅かだけれど超弩級戦艦の手前に開いているわ、ジャンプは必ず出来る!」

「了解! 最大加速を維持します。」主任航宙士は不安どころかある種、爽快な気分を味わっていた。

対してゲシュタム・アウトして来た超弩級戦艦の艦橋はパニックに陥っていた。

本来、彼等は惑星オルタリアから飛立って来る、 『皇室・ヨット』 を衛星軌道上で戦艦部隊で迎撃し、それでも仕留められ
なかった時は超弩級戦艦でその進路を塞ぎ、ゲシュタム・ジャンプ出来ない様に足止めした上で撃滅する作戦だった。

だが、ドメル船長の指揮する 『皇室・ヨット』は衝突するかもしれない超接近ゲシュタム・ジャンプを敢行したのだ。

それはほとんど 『皇室・ヨット』 が超弩級戦艦の艦体に吸い込まれてゆく様だった、そして艦がエネルギー球と化して
空間に消える時、僅かに空間を走るのだが、それは超弩級戦艦の艦体に突入した反対側に艦体を貫き、虚空に消えた、
が、超弩級戦艦に損害は全くなかった。

「直ちに空間航跡をトレースしろ! 『皇室・ヨット』を追う、第一、第二・戦艦・戦隊も追従せよ!」提督席に座った男は肝の
据わった男だった。

艦長以下、この超弩級戦艦 『バル・ガル』の艦橋要員がパニックに陥る中、 この男は唯一人、冷静に状況を分析、取る
べき行動を指示していた。

男の名はダール・ヒステンバーガー、ガミラス帝星大本営作戦部長だった。
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次の訪問惑星 『ローム』 のあるイスラン星系に 『皇室・ヨット』は目的地である惑星ロームから遥かに離れた空間で敵を
待ち受けていた。

今度は 『光の花園』 も一セット展開させ、戦闘に備えていた。

これは万が一、戦闘が拡大しても惑星ロームに損害を与えない為の配慮でもあったが、襲撃者を確実に無力化、確保
する為の作戦でもあった。

近くに惑星があると襲撃者に隠れ場を与えてしまう恐れがあったからだ。

「ユリーシャ様、私が小破させて来た 『戦艦・戦隊』 は 『ガイデロール級』ではなく、 『ハイゼラード級』でした。」艦隊Netで
連絡して来たフラーケンは驚くべき事を言った。

「オルタリアで遭遇した先の 『ガイデロール級』と同じく前部主砲塔群と前上部魚雷発射管は使用不能にして来ました、
多分、あの状態ではジャンプは出来ないでしょう。

後はガル・ディッツ提督に救助と責任者の確保を要請をしておきました。」

「フラーケン、 『ハイゼラード級』と言うことは、ディッツ提督がこの一連の 『皇室ヨット』 襲撃事件の裏にいるかもしれ
ないって事になるわよ?」

この 『皇室ヨット』・『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 も元々 『ハイゼラード級』、ガミラスの戦艦群でも新型の330mm陽電子
ビーム・カノン砲を備え、打撃力では超弩級戦艦ゼルグート級に勝るとも劣らない力を持っていた、加えて三十三門も
ある魚雷発射管は 『ガイデロール級』と同じ航空機動戦力を持っている事を意味していた。

ユリーシャにはそんな新型戦艦を派遣出来る力のある人物はガル・ディッツ提督しか、考えられなかった。

「失礼します。女皇(ルード・ガミロニア)、私の知る限りでは 『ハイゼラード級』や 『ガイデロール級』 を動かせる』人物が
もう一人います。」ドメル船長の発言だった。

「それは・・・?」ユリーシャが質問をしかけた時だった。

「敵艦隊がゲシュタム・アウトしました。 敵は三隻です! 超弩級戦艦1、・・・こ、これは 『ゼルグート』級、
『ゼルグートⅡ世』 です。残る二隻は 『ハイゼラード級』です。」探査主任が報告した。
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「この三隻を一度に相手にするのは私一人では無理です。『ハイゼラード級』二隻は私が引き受けます。
ですが、 『ゼルグート』級のお相手はユリーシャ様、お願い致します。」フラーケンは徹底した現実主義者だった。 

出来ると判断すればどんな困難な任務も遂行するが、無理だと判断した事は決してやろうとはしなかった。

「ユリーシャ様は 『女皇』、如何なる場合も 『戦闘』 などと言う下々の行為をすることなど考えられません! 
『皇室・巡航・戦艦』・『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 の指揮は私が執ります。」ドメル『船長』が 『艦長』 に変わった瞬間だった。

艦内が歓声に溢れた。 乗組員達も皆、この瞬間が訪れるのを待っていたのだ。

確かにフラーケンは百戦練磨の達人だ、しかし、所詮は実体はUX-01にいて自分達と運命を共にしているわけでは
ない、この部分は艦隊Netではどうしても埋められない溝だった。

だが、エリーサ・ドメルが『艦長』に就任してくれれば、話は別だった、乗組員達はエリーサ・ドメルの 『艦長』 宣言を
絶大な支持の下、受け入れた。

「エリーサ、無理はしないで、私が艦内Netに潜れば、一人でこの船を操る事も不可能ではないのよ。」ユリーシャは
あれ程 『戦闘』 を嫌がっていたエリーサの気持ちの変化が判らなかった。

「高貴なる 『女皇』 (ルード・ガミロニア)有難う御座います。 しかし、我等、乗組員は 『女皇』 のお役に立つ為に乗艦して
おります。 そして 『人の力』 は数が集まる程、大きくなります。

確かに 『女皇』 お一人でもこの 『皇室・巡航・戦艦』を操れるのかもしれません。 でも全乗組員が力を合わせた時の
様には行きません。  『人の力』 を侮り無き様お願い申し上げます。」

ドメル艦長はユリーシャの驕りをさりげなく諌めた。

「判ったわ。ではあの化物、『ゼルグート』級超弩級戦艦をどう料理するつもり? 敵とはいえ、『戦死者』 を出すのは
禁止よ!」ユリーシャが念を押した。

「それは良く存じて居ります。 私が 『艦長』 を引き受ける気になったのもユリーシャ様の 『戦闘においても決して
敵味方、両方に戦死者を出さない』 事を徹底する主義に感銘を受けたからです。

実は私の亡夫、将軍・ドメルも『ゼルグート』級超弩級戦艦 『ドメラーズⅢ』に乗艦していました・・・。

詳細は省きますが、あの艦の重装甲はガミラスに存在する全ての戦艦の砲を弾きます。 魚雷も余程当たり所が良く
なければ損害を与えられないでしょう。

但し、欠点が無い訳ではありません、重装甲故に艦体が重くなり機動性は御世辞にも良いとは言えません。

そして、これが最大の弱点なのですが、最後部の砲塔は六基あるゲシュタム機関の間に無理やり割り込ませる形で設置
したため、付近の甲板の装甲が薄いのです。
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この部分なら本艦の280mm陽電子ビーム・カノン砲でも撃ち抜けるでしょう。 但し、その面積は狭く、狙撃するのは
非常に難しいのですが・・・。」ドメル・艦長は口ごもった。

しかし、次の瞬間、驚くべき、計画を発表していた。「『光の花園』をもう一セット展開、陽電子ビーム・カノン砲のビームを
二段階に屈曲させられれば狙撃は可能です。」

「無理です! 一度は反射出来るでしょうが、その一度目で反射板・誘導弾の反射システムは焼け切れます。」
『光の花園』要員の先任士官が反対した。

「一度、反射出来れば充分よ。 ノヴァル、それでは命中させる自信がなくて?」ドメル・艦長は先任士官を挑発した。

「で、出来ますとも、但し、反射システムが焼け切れますから反射角度が浅くなります。 あっ、そのために・・・。」
ノヴァルと呼ばれた士官は直ぐに全てを悟ったようだった。

「娘っ子も少しは出来る様になったようじゃな。 安心せい! 儂らが反射板・誘導弾の位置は全力で確保する。
 
お前達は心おきなく、反射角度の調整に力を尽くせ!」宙雷管制室から檄が飛んだ。

「副砲はカノン砲身を装着して待機! 百八十度回頭、艦尾を敵、超弩級戦艦に向ける、ゲシュタム・フィールドを最大
出力で艦尾方向に展開、前進半速、こちらに引き付けるのよ!」

ドメル・将軍が軍団の指揮の達人だったらエリーサ・ドメル艦長は個艦指揮の天才だった。



                                  124.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(11)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-13 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by 古世人 at 2014-07-14 12:02 x
>ドメル・将軍が軍団の指揮の天才だったらエリーサ・ドメル艦長は個艦指揮の天才だった。
確かに、ドメル将軍はドメラーズⅢ世の高(?)火力や防御力に頼りすぎてましたね。そのため、対ヤマト戦1戦目は主砲大破、2戦目は、撃沈という結果に・・・。ちなみに、沖田さんは、どちらのタイプですか?
Commented by YAMATOSS992 at 2014-07-14 16:08
沖田十三は寡兵の地球防衛海軍を率いて第二次火星沖会戦に勝利していますのでドメルと同じタイプの
軍人だと思われます。
ただドメルが政治面に疎い事から戦術的には勝れた指揮官であっても戦略的な思考は苦手で七色星団で
沖田の戦略眼により罠に誘い込まれ敗北しました。
ヤマト計画は人類の命運を左右する大戦略ですから、病気があっても戦略眼に勝れた指揮官として
沖田十三は選ばれたのだと思います。