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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

138.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (3)

 「しかし、『ギュンター・フォン・シェーア・大将』、その指揮の実力は本家、『ラインハルト・シェア・中将』に勝るとも劣らん。

だから、儂は『あれ』を彼に預けてみたいと思うのだがお前はどう思う? 土方・・・。」沖田はとんでもない事を
言い出した。

「『あれ』って新造の戦艦『艦番588号』の事じゃないだろうな、あれはまだ未成艦で『艦名』すら決まっていないぞ。
それに戦隊を組ませる僚艦もいない実験艦だ。 
戦力としての期待は出来ない。」土方は沖田の意見に否定的だった。

「しかし、『彼』を付けたら少し状況が変わるんじゃないかな。」沖田は再び薄く微笑った。

「『彼』? 誰の事だ?」土方は訝しげに尋ねた。

「『秋山真彦』三等宙将・・・。」沖田は痛ましそうに目を瞑った。

「史上最年少の提督か! 確かに『彼』ならこの難局を打破出来るかもしれん。
しかし、彼は『芹沢の懐刀』だぞ。 奴が簡単に手放すとは思えん!
人事局も『彼』にこれ以上名を成さしめるのに反対するだろうし・・・。」土方は言葉を濁した。

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「フッ、人事局も芹沢一等宙将も安全な地球本土に居座っておる。
しかし『秋山』は自ら願い出て観戦武官を買って出たと聞く。
彼が『芹沢』派であるかどうかなど今は問題では無い!
この問題に対する積極さが肝心なのだ。
芹沢一等宙将も人事局も 木星プラント群を守っている国連宇宙海軍総司令官の望みとあらば聞かざるを得まい。」
沖田はギロリと目を光らせた。

土方は艦隊司令を解任されても黙っていない親友、沖田の闘志に「この漢(おとこ)が味方で良かった。」 と つくづく
思った。

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重い木製の扉が目の前にあった。

しかも、その前に立っただけではその扉は開く事無く閉ざされ続けた。

<今時、手動開閉かよ・・・。>彼は呆れつつ、ドア・ノッカーを三回叩いた。

「だれか?」 内部から厚い扉に遮られてやっと聞き取れる返事がした。

彼は部屋の内部にいる住人に聞こえる様、出来るだけ大声で名乗った。

「ギュンター・フォン・シェーア国連宇宙海軍総司令官閣下、日本艦隊付武官『秋山真彦』三等宙将、お召しにより参上
いたしました。」

「よし! 入室を許可する。」 簡潔な返事が返ってきた。

秋山三等宙将がドア・ノッカーを兼ねる扉の引手に手を掛けると引っ張ったが重い扉はビクともしなかった。

<何か仕掛けがあるのでは?>と一度、引く手を離すと扉は内側から軽く開いた。

扉の内側には一人の老人が立っていた。

帝政ドイツ海軍の軍服、彼こそ国連宇宙海軍総司令官、ギュンター・フォン・シエーア大将に間違いなかった。

「引き戸と押し戸の区別もつかんとは50点の減点だな、まっ、入りたまえ。」シェーア提督が秋山に入室を促した。

しかし、秋山は入ろうとはせず、「私はこれで失礼します。」と言って敬礼し、回れ右をするとその場を去ろうとした。

「話も聞かずに帰る、いや、逃げるのか?」シェーア提督は容赦なかった。

「私は『減点主義の愚劣な司令管』の元では働きません!」秋山も負けていなかった。

「沖田三等宙将の推薦でも・・・か?」シェーア提督は秋山が思いもよらない事を言った。

<沖田三等宙将・・・、何故、芹沢一等宙将の敵が俺を国連宇宙海軍総司令の元へ推薦したんだ?>

同じ三等宙将といっても若い秋山には老獪な沖田ほどの経験は望むべくもなかった。

沖田は今回の敵との戦いが今まで地球人同士で戦って来た宇宙戦とは比較にならない苛烈な物になるであろう事を
予測し、それに耐えうる指揮官として秋山を選んだのだ。

<何故、日本宇宙海軍はこの若者を活用しようとはしないのだ?> シェーア提督は目の前で直立不動の姿勢を取り
続ける秋山を見て思った。

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 日本宇宙海軍の昇進は加点方式である。

小さな功績でも積み重ねれば確実に昇進に繋がり人材育成に役立つ・・・そうした目的で導入された制度だったが
『秋山真彦』の様な天才が入って来るとは予想出来なかった。

彼は『古代・守』の同期だったが、様々な兵器・艦艇の改良、運用方法の確立などの分野で功績を上げ、たちまち同期の
出世頭に成ってしまった。

古代・守がまだ一尉なのに『秋山・真彦』は三等宙将、提督になってしまったのだ。

人事局は将兵の得点を一括管理していたが、膠着した組織は『秋山』が功績を上げる度に得点を与え、気が付いたら
三十代前半の『提督』が生まれて来てしまっていたと言うお粗末な話であった。

ただ、芹沢一等宙将は秋山を気に入り、『参謀』として身辺に置いた。

そうすれば、秋山の功績は自動的に芹沢の物になり、秋山の異常な昇進にブレーキが掛けられる、そうした含みを
人事局も狙っていた。 (芹沢は最高位なので幾ら加点されてもこれ以上の昇進は無かった。)

だが、秋山本人は芹沢に世話になった恩義は感じながらも第一線で働きたいと言う思いが強く、観戦武官として
最前線の木星の防衛ラインにやって来ていた。

今、彼がエネルギー・プラント同士を繋ぐ通路の窓から見つめる方向の土星圏では米・ソの連合艦隊が敵と剣を
交えつつ、敵の情報を取っていた。

しかし、先程、最後の一隻、米戦艦『ワシントン』が撃沈された旨、報告が入った事を先程会談したシェーア提督から
聞かされたのだ。

<一矢も報いれなかったのか・・・。 悔しかったろう・・・。> 同じ軍艦乗りとして彼らの無念が胸を締め付けた。

「おい、そこに居るのは秋山?秋山じゃないのか・・・。」彼は後ろから声を掛けられ、振り向くと懐かしい顔があった。

「菅野、菅野一郎じゃないか! 士官学校以来だな!」 普段は尊大な無表情な顔をしている秋山も士官学校同期生に
会うと子供の様に顔を崩した。
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菅野は妙齢の女性を連れていた。

「仕事だよ。仕事。 勘違いするなよ!」 秋山の顔が不思議そうに変わったのを見て菅野一尉が言い訳した。




                                  139.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (4)→ この項続く


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by YAMATOSS992 | 2014-06-12 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)