ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

142.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (7)

 「『あれ』ってやはり『ヤマト』ですか? 世界最大最強の戦艦・・・。 やはり『ヤマト』しかないですよね。」副官は目を
輝かせた。

「フッ、世界最大最強の戦艦『大和』・『武蔵』か、『戦艦の時代』に幕引きをした戦艦だ、縁起でもない、『大和』・『武蔵』の
名は使えないな。」秋山は副官の言葉をにべもなく否定した。

「はぁ、じゃぁ何と名づけるんです!」副官は意外だと言う顔をした。

「今、日本が保有する宇宙戦艦の名前を全部言えるか?」秋山は当たり前の事を聞いた。

「はい、今、実働しているのは『コンゴウ』、『ハルナ』、『ヨシノ』、『ミョウコウ』、修理・改修中の『キリシマ』、建造中なのが
『ヒエイ』、『チョウカイ』、そして艦番588号です。・・・ あっ。」その全ての名が『山名』である事に副官は気が付いた。

今の日本には本当の意味での宇宙戦艦は存在しないと考えられているのだ。

本来なら日本の戦艦(宇宙戦艦)なら『長門・陸奥』の様な『旧・国名』が与えられるはずなのだから・・・。

日本の海軍(宇宙海軍)は最初の宇宙戦艦を保有出来た時、それがまだ列強に肩を並べられる艦か、自信が無かったのかもしれない。

だから、代わりに『準主力艦(装甲巡洋艦、巡洋戦艦、重巡洋艦)』に付ける名前の内、最高の名前である『コンゴウ』を
選んだ。

e0266858_09590009.jpg
「これも『明治・海軍』以来の伝統かもな・・・。」秋山は悪戯っぽく笑った。

「じゃぁ、秋山さんは艦番588号にも『山名』を考えておられるのですね! となれば、霊峰『富士(フジ)』ですか?」
明治時代の前弩級戦艦以来の名を告げた。
e0266858_09525233.jpg
「・・・フフッ、さてな。 俺の一存では決められん、上の意向も聞いてみないとならんしな。」秋山は副官をその場に残し、
ゲルハルト・フォン・ベア少佐が居る、『試製・陽電子ビーム砲』の到着現場に向かった。

**************************************************

カコーン・・・鹿威しの音が響いて辺りの静寂さを強調した。 ここは木星・プラントで働く人々が疲れを癒せる数少ない
休養施設『料亭・富士』の日本庭園だった。

小さな池に掛った橋の上で秋山は私服姿(とは言っても背広姿だったが)である人物を待っていた。

程なく和装姿の女将に連れられて二人の男がやって来た。

女将は皆に一礼するとその場を去り、後には二人の男が残されていた。

一人は柿渋色の和服に黒い帯を締めたこの庭園に相応しい出で立ちだったが、もう一人は日本宇宙海軍の制服を身に纏っていた。

「沖田さん、『お一人で』とのお約束だったはずですが・・・。」秋山はただ相手が二人連れだったから眉をしかめたのでは
ない、軍服姿の男が土方三等宙将だったからだ。

「我々は、君も含めて常に誰かの監視に晒されている、今更、変装しての密談などと無意味だ。」土方は鼻を鳴らした。

「やれやれ、この密談は『土方提督の説得』を沖田さんに頼むためのものだったのに、『本人』に来られてはこの会談の意味は無くなりましたね。」秋山は沖田の方に顔を向けて微笑んだ。

「そんな事はあるまい、お前が真実、人類のためだけに働いているのなら・・・な。」目深に被った日本宇宙海軍制帽の
陰に土方の鋭い目が光った。

長い、長い沈黙が三人の間に流れた。

「沖田さん、『キリシマ』を私に下さい。」秋山は沖田にとんでもない要求を突き付けた。

「馬鹿な! 史上最年少の提督とは言え、実戦経験も無い若造に大事な艦や乗組員を預けられるものか!」沖田では
無く土方が吠えた。

「言いたくありませんでしたが、沖田さん、貴方は第一次、第二次内惑星戦争では英雄でした。 
でも今回のファースト・コンタクトでは『ガミラス』に惨敗しました。
これは『ガミラス』との戦いが今までの人類同士の『和やかな戦争』とは違っている事を表しています。 
もはや指揮官が老錬だろうが新米だろうが状況に適切に対処出来る者が求められているのです。」秋山は傲慢とも
取れる発言をした。

「まぁそう言うな、土方。 秋山君、君の目論見を言ってみたまえ。単純な戦力増強ではないだろう。」沖田は秋山の
思惑を見抜いていたが、敢えて尋ねた。

「はい、今、『改・金剛』級の戦艦が急ピッチで建造されつつあります。  但し、この三隻は新たに『陽電子砲』を積む事に
なりました。

しかし、残念な事にアームストロング社とクルップ社の技術を合わせても砲塔に搭載出来る程に小型化する事は
出来ませんでした。」秋山は冷徹な事実を告げた。

「それで艦首に一門だけ搭載する設計にした訳か? しかし、それでは『三景艦』の再現になりかねんぞ。」土方も鋭く
切り込んだ。

「明治時代じゃあるまいし、リンク射撃の技術はハード・ソフト共に充分に発達しています。  三隻で戦隊を組めば
ガミラス艦一隻分位の戦力にはなるでしょう。」秋山は自分の計画を述べた。

「『戦隊』と言ったな? まさか、三隻、一個・戦隊で終わりではあるまい?」沖田は全てを見通していた。

「艦番No.588号は設計を大幅に変更して『陽電子砲』を三門束ねて」艦首に装備します。

これで少しはガミラス艦に近づけるでしょう。」秋山は秘策を明かし始めた。

「これで”形”だけは”戦艦二隻の一個戦隊”と言う訳か、だが、それではガミラスの圧倒的戦力には及ばない、 まっ、
元より寡兵なのは覚悟の上の作戦だがな。」沖田は下を向いて皮肉な笑みを見せた。

「欧州連合の力を借りて試製・陽電子砲の量産化は進めています、そして艦齢の新しい艦から優先して陽電子砲の
搭載を進めています。」秋山は説明を続けた。

「ですが、一番艦齢の古い『コンゴウ』、『ハルナ』、ファースト・コンタクトで中破した『キリシマ』の修理・改装は一番
後回しになります。」 折角戦力の一助になればとの考えで木星まで回航してきた土方宙将、中破した『キリシマ』の
ダメージ・コントロールを指揮して奮闘・帰投した沖田宙将には酷な言葉だった。

「ですが、新造艦の就役を待つ間、『コンゴウ』、『ハルナ』、『キリシマ』を遊ばせて置く訳には参りません。」 秋山が
それだけ言うと沖田と土方は顔を見合わせてニヤリとした。

「そう言う事なら喜んで儂の『キリシマ』を渡そう。 土方が持ってきた『コンゴウ』、『ハルナ』もな。」 沖田の返答に土方
宙将は承知しないと秋山は思ったが、案に反して土方は黙ったままだった。


                                  143.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (8)→ この項続く


[PR]
by YAMATOSS992 | 2014-07-08 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)