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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

143.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (8)

  漆黒の宇宙空間を疾駆する三つの影があった。

「リンク射撃の準備用意よいか?」戦隊長が確認命令を発する。

「三番艦リンク状態良好、二番艦もリンク射撃可能状態になりました。」砲雷長が報告をする。

「よし、艦長、進路そのまま、艦首を右舷90度に振れ!」司令席に着いた秋山は面室に指令を発した。

「進路そのまま! 姿勢制御面舵90度!」艦長の命令のまま、巨大なGに艦体を軋ませつつ、艦は大きく艦首を右舷に
向けた。

「二番艦、三番艦の射撃リンクはまだ成立しているか?」艦長が砲雷長に尋ねた。

「駄目です。 両艦ともリンク状態から外れてしまいました。」砲雷長が冷静に報告した。

「あっ、三番艦の射撃指揮装置が再接続、二番艦も復帰しました。」砲雷長が報告を訂正した。

「遅い・・・! 一撃目はともかく、二撃目は攻撃の本命だ。 チャンスは一度きりだぞ!」秋山は苦り切っていた。

何度訓練しても三隻が一体となった完全なリンク射撃の態勢を作れないのだ。

<シュミレーターでの訓練は順調だったのだが・・・。 やはり実艦での訓練は思うようにはいかない・・・、か。>訓練の
模様をプラントの防衛司令室のモニターで観察していた沖田宙将は隣にいた土方宙将の方を見やった。

「索敵・照準専門の艦を用意しよう、幸い我々にはまだ二隻の予備役戦艦がある。」土方が思いもかけない事を言った
ので沖田は驚いた。

「『ヨシノ』と『ミョウコウ』か、しかし、あの二隻も陽電子砲搭載改装をする予定で準備に入っとるぞ。」沖田は土方の
考えを計り兼ねた。

「幾ら数が揃った処で統率がとれなければ、烏合の衆、各個撃破されるだけだ。」土方はなおも必死で訓練を続ける
秋山の艦隊を見つめた。

「それこそ『三景艦』の轍を踏む訳にはいくまい?」土方は左後ろに居た沖田の方を見やった。

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 『三景艦』それは明治海軍が必要に迫られ建造した三隻の中型『防護巡洋艦』だった。

『松島』、『橋立』、『厳島』と言う『日本三景』(日本の美しい名所)の名が付けられた事にこの艦艇群に対する当時の
日本国民の期待の大きさが判る、しかし、その設計思想は当時としてはそれなりに素晴らしいものであったが実現出来る
技術力が日本には未だ無かったのは残念な事であった。

 明治初頭、『大日本帝国』は中国大陸を支配する『清』王朝と朝鮮半島の利権を巡って対立していた。

そして『清』は独国に二隻の30センチ連装砲塔二基を装備した甲鉄艦を発注、保有する事に成功した。

だが、明治維新を成し遂げたばかりで経済力に乏しい『大日本帝国』にはその様な財力は無かった。

そこで国産で出来る最大級の船体に清国艦『鎮遠』、『定遠』の備砲を上回る32センチ砲、しかも砲の口径は『定遠』級の
砲が20口径であるのに対し38口径と約二倍の砲身長を備えた強火力の砲を一門だけ備える対『定遠』級を目指した
特異な防護巡洋艦であった。

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しかも『橋立』、『厳島』は巨砲を前方向けて一門を搭載し、『松島』は後方に向けて一門を積むと言う艦隊を組んで
やっと一隻の戦艦に成ると言う机上の空論を体現してしまったクラスであった。

元々、対『定遠』クラスを目指して造られた『三景艦』は敵の射程距離の外から攻撃する事を前提とした訳ではないの
だが舷側装甲は無く防護甲板と言って機関部や水線下の部分を守る水平装甲甲板が唯一の防御手段だった。

『鎮遠』、『定遠』と放火を交えたのは『黄海海戦』唯一度であったが、『三景艦』の巨砲は全く役に立たず、代わりに
副砲の12センチ速射砲が『清国』艦隊を焼き尽くした。

役に立たなかったカネー砲は水圧を利用した半自動砲であり、当時としては画期的なものであったが、当時の日本の
造船技術が稚拙でこの砲を積むに相応しい大きさの艦体を用意出来なかったのが大きな理由であった。

何しろ、このカネー砲を旋回させると艦体が傾き、発砲すると艦の進行方向がズレ、一々、進路を戻さねば成らなかったと言われている。

しかも発射速度が遅く、のべ4時間半の海戦で発射された回数は松島4・橋立4・厳島5の合計たった13発だったと
言われる。

いくらなんでも一時間約一発と言うのは当時としても遅すぎる発射速度であった。

「機動砲」と名付けられたこの新型砲は水圧駆動を主に動力源としていたが、当時の技術ではそれをまともに動かす事
すら出来ず、また動いても直ぐ故障するという惨憺たる有様であった。

この軍艦造船技術の未熟さは「機動砲」に限らず、推進機関である三段膨張式レシプロ蒸気機関にも現れ、
「黄海海戦」では本来、殿艦を務めるはずの『松島』が『連合艦隊』旗艦として先陣を切って戦った、『橋立』、『厳島』は
機関が不調で後方に下がらざるを得なかったのである。

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日本宇宙海軍の諸士官が今回の『コンゴウ』型、『改・コンゴウ』型に対してガミラスに対抗する手段として『陽電子砲』
一門を艦首に搭載する案を聞いた時、真っ先に思い出したのがこの『三景艦』建造の失敗であった。

だが秋山真彦三等宙将は『三景艦』が失敗したのは「建造技術の未熟さ」の他に「運用・技術の非確立」が大きかったと
考えていた。

そしてその「運用」に必要な「乗員の訓練」が不足していた事も看破していた。

だから沖田宙将の「キリシマ」を修理半ばで借り出し、土方宙将が回航して来た『コンゴウ』、『ハルナ』も加えて実戦
訓練を繰り返していたのである。

<やはり、彼は天才だ、普通の指揮官ならシュミレーターでの訓練で満足してしまい実艦を用いた訓練までしてみよう
とまでは思うまい。>訓練の状況報告を聞いた国連宇宙海軍総司令ギュンター・シェーア大将は思った。

確かに今のシュミレーターは単に映像だけでなく艦の進路変更に伴う”G”の再現、ダメージを受けた状況の再現などが
忠実に行われる、しかし、やはり実艦での訓練は絶対必要な事を今回の実艦訓練結果は示していた。

だが、それ以上にシェーア提督が気掛かりだったのはガミラスの動向だった。

秋山達、ガミラスが来襲しないのは日本宇宙海軍の新造戦艦の改修とその乗員の訓練が続けられるので
僥倖と言えたが、土星会戦から二月が経とうとしているのに何故か、ガミラス艦隊の姿が木星近傍に現われないのは
不気味だった。

<ガミラスは既に木星に地球陣営の拠点であるエネルギー・プラント群が在るのを掴んでいるはずだ。

それなのに、何故、襲って来ない? 何故、我々に時間をくれる様な事をする?>やはり異星生命体のやる事は
理解出来ないとシェーア提督は思った。 
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木星衛星群の内、最外殻軌道を廻るパシェフェ衛星群の軌道に光学探知式の早期警戒衛星が紛れ込ませてあった。

衛星は完全に岩塊に偽装されていたため、電波発信さえしなければ『ガミラス』に発見される恐れは少なかった。

光学探知がレーダー探知に劣るのは大気のある場所での話である。

探知に必要な時間を考えれば光学探知はレーダー探知の半分の時間で敵を見つけられるのである。
( 但し、射撃指揮に用いる場合はレーダー照準の方が精度では勝れる。)

その衛星の一つが侵攻してくる『ガミラス』艦隊を探知した。

その主力艦の勢力は十隻と少なかったが地球陣営にとっては充分すぎる脅威であった。

秋山は直ちに迎撃用の艦隊の出撃を命じた。  

それに呼応して第一戦隊の「ヨシノ」、「ミョウコウ」、「ヒエイ」、「チョウカイ」が迎撃のため出撃して行く。

「第二戦隊、「フソウ」の出撃準備はまだ整わぬのか?」秋山は『改・金剛級』八番艦、艦番No588号の名を呼ばわった。

「只今、最終チェック中です。あと少し、ほんのチョットで良いから時間を下さい。」造船部から悲鳴の様な返事が来た。

「それなら機関回りのチェックを重点的に行ってくれ、それが終わったら即、出撃だ。 砲頓・射撃指揮装置回りの
チェックは航行しながら乗組員で行う。」それは秋山の悲壮な決意が垣間見えた瞬間だった。


                                  144.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (9)→ この項続く


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by YAMATOSS992 | 2014-07-17 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)