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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

144.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (9)

 <フソウ・・・? 艦番No.588号の名前は寄りにも依ってあの失敗戦艦『扶桑(フソウ)』の名を引き継ぐのか!」 秋山の
副官は呆れた。

「何で『扶桑』なんだと考えていたろう。」 秋山真彦は副官の方を振り返りもせず言った。

「判りません! なんで『改・金剛』級の中の最新鋭艦、艦番No.588号の名前があの失敗戦艦の名前なんですか!」
副官は納得往かなかった。

「君は大きな誤解をしている。 決して『扶桑』の名前は縁起の悪い物では無い。」 秋山は自分も『フソウ』の
最終チェックを手伝いながら言った。

「ではどう言う理由ですか! 私は納得いきません!」 副官は秋山に食い下がった。

「後にしろ! 今は『フソウ』の出撃準備に集中しろ!」 秋山は作業を続けながら副官を一喝した。

「りょ、了解しました。 最終チェックを続けます!」 副官は敬礼すると作業に戻ったがまだ納得していないのは
明らかだった。

軍艦乗りは縁起を担ぐ、特に自分の乗る艦の名前には皆大きな拘りがあった、これは軍艦が海上艦から宇宙艦に
変わっても同じだった。

<出撃準備が整ったところで、この艦の名前が何故『フソウ』なのか、乗組員全員に訓示しなくてはなるまい。>秋山は
長らく使われなかった名前の由来を思い出していた。

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最今、注目を浴びる様になった大日本帝国海軍艦艇であるが、その戦艦群の中で『扶桑(フソウ)』、『山城』の姉妹艦は
失敗戦艦、残念戦艦とか、散々な評価を受けている。
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確かにこの二隻は第二次大戦開始の時期では最古参の旧式艦と言われる事が多い。
(1941年の開戦時、1915~17年就役の艦齢約30年のベテラン艦だった。)

だが、第二次世界大戦(太平洋戦争)で最も活躍した戦艦群は『扶桑』級より更に艦齢の古い『金剛』級(1913~1915年
就役)であった。

日本戦艦12隻の内、八隻の虎の子戦艦が使い道のないまま後方任務に甘んじていた時、『金剛』級は空母を基幹とする
機動部隊に随伴、護衛として東奔西走していた。

夜陰に乗じてガダルカナル島の敵飛行場に接近し三式弾による艦砲射撃で滑走路に大損害を与えた事もあった。

何故、そんなオンボロ艦が『大和』、『武蔵』、『長門』、『陸奥』の新型艦を差し置いて活躍出来たのであろうか?

ここに用兵の妙があるのである。

 『金剛』級は本来、『巡洋戦艦』、英国流に言えば『バトル・クルーザー(戦闘巡洋艦)』として設計されていた。
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即ち、『速力こそ最大の防御』とする思想の元に建造された最後の『外注・軍艦』であった。 (完全外注は『金剛』のみ、
残り三隻は図面を譲り受けて『国内・建造』をした。

そして生まれた『金剛』級四隻による「世界最大、最強(当時世界最大の巨砲を持っていた)、最速」の巡洋戦艦部隊は
各国の羨望を集め、太平洋の平和を守る抑止力として実に三十年間に渉って君臨したのである。

これは後の戦艦『大和』、『武蔵』が世界最大の巨砲、46センチ砲を持っていたにも関わらず、秘密主義に徹したため、
抑止力としての効果は何も果たせなかったのと好対照であった。

しかし、そんな『金剛』型にも問題はあった。

それは『巡洋戦艦』であるため、その装甲板による直接防御力は『装甲巡洋艦』並みでしか無かった事である。

1916年、ユトランド沖海戦の結果、英国の巡戦は三隻も爆沈し、『速力こそ最大の防御』と言う思想が幻想である事が
明らかになった。

そこで海軍は新型」の主力艦(戦艦・巡洋戦艦)に水平・水中防御の強化を中心とする大改装を行った。

しかし、その結果、『金剛』級の速度は減じ、艦種分類は『巡洋戦艦』から『戦艦』に変更されてしまった。 (舷側装甲など
巡洋戦艦時代のままなのに、である。)

その後、国際的な海軍軍縮政策に基づく海軍戦略の変更により、高速・重火力の艦艇が求められた。

この艦艇は決戦に先立ち、魚雷戦巡洋艦となった重巡洋艦と駆逐艦からなる水雷戦隊に敵艦隊を攻撃させる時、
その防害に出てくるであろう米重巡洋艦隊を圧倒的な火力で排除出来る性能が求められた。

しかし、当時の日本には早急にその様な高速・重火力の艦艇を建造している余裕は無かった。

だから散々使い倒して後は廃艦を待つだけだった『金剛』級に更なる改装(第二次改装)を施してその任に充てたのだ。
(沈んで元々と考えた訳ではないだろうが・・・?)

その結果、30ノット毎時の高速を得た『金剛』級は『高速戦艦』(防御力は就役時と大して変わっていなかったのだが・・・)
として戦場を駆け巡る事が出来た。
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<要は軍艦は常に政治の道具だったと言う事だ。 しかし、今回の『対ガミラス』戦は少し様子が違う、文明の発達程度に
大きな差があって兵器の威力が違い過ぎる・・・。 奴らは我々に『戦争』を仕掛けて来ているのではない、『駆除』しに
来ているのだ。>秋山は悔しさのあまり唇を噛んだ。

<これを何とか『戦争』のレベル、『交渉』の余地のある『レベル』にするのが我々の任務だ。 それには我々の力を
ガミラスに認めさせる必要がある。>秋山の決意は悲壮だった。

「戦闘用意が整いました。 訓示をお願いします。」副官が報告した。

「よし、判った。」それだけ言うと秋山は艦内伝達放送のマイクを手に取った。


                                 145.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (10)→ この項続く


by YAMATOSS992 | 2014-07-21 21:00 | ヤマト2199 挿話

by YAMATOSS992