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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

147.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (12)

 「『ヨシノ』から入電!敵艦隊こちらの陽電子・衝撃砲の有効射程内に入りました!」通信士が報告する。

「本艦の射撃・指揮システムも敵艦影を捕らえました!」砲雷長も報告する。

「あっ、敵艦隊は横隊から単従陣に陣形を変えました。」情報士官が敵の状況変化を伝える。

単従陣、それは艦隊を一列縦隊に組む事を言う、日本では遠く鎌倉時代の水軍が『長蛇の陣』として用いていた
歴史ある戦法である。

この戦法は攻防どちらの場合にも簡単に運用出来、優れた効果を発揮するので有名だった。

ガミラスがこちらとの接触を前に陣形を横陣から単従陣に変えて来た事で秋山は敵司令官が唯者では無い事を
感じ取っていたが部下にそれを知られると士気が下がる恐れがあったので自信たっぷりな顔をして新たな命令を発した。

「構うな。こちらは鶴翼陣のまま突撃を続行する。 距離一万kmまで接近したら敵一番艦に向かって陽電子・衝撃砲を
発射する。」

本来、地球が試作に成功した陽電子・衝撃砲は有効射程距離はガミラス陽電子ビーム砲より長かったが、
それを敵に知られないため、また、砲撃の精度を上げるため、秋山は敵の有効射程ギリギリまで接近して砲撃戦を
開始するつもりだった。

「敵艦発砲! こちらも反撃します!」砲雷長が落ち着いて報告した。

「よし、砲撃戦開始! 『ヨシノ』から送られる敵位置情報を充分に活用せよ!」秋山は戦闘開始の命令を発した。

『ミョウコウ』、『ヒエイ』、『チョウカ』は射撃指揮・管制艦『ヨシノ』との射撃リンク・システムを利用し、艦の進路を微妙に
調整し、艦首に装備したたった一門の陽電子・衝撃砲の弾道(?)を同調させ、まるで一隻の艦の砲撃の様に単従陣で
迫るガミラス艦隊の先頭艦に直撃を与えた。

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このデストリア級航宙重巡洋艦は艦首の一番装甲の厚い部分を貫徹され、航行不能になった。

今まで簡単に蹴散らしてきた地球軍艦艇の思わぬ反撃にガミラス側の司令官は驚愕したが、それでも尚、ベテランの
彼はこの射撃が射撃指揮・管制艦の誘導である事を即座に見抜き、電波発振源が近傍にないか、走査させた。

『ヨシノ』が正確な敵位置情報と各陽電子・衝撃砲搭載艦の姿勢制御までコントロール出来るのはそれまで主砲だった
高圧増幅光線砲塔を降ろしてまで搭載した2基の合成開口レーダーによるものだった。

宇宙空間には大気が無いので光学照準の方が迅速な照準が出来る、しかし、その精度でははやはりレーダーの様な
アクティヴな探知システムが勝るのだ。

しかし、この長所は同時に短所でもある、敵にレーダー電波を逆探されたらこちらの位置はバレバレなのだ。

案の定、ガミラス艦隊はクリピテラ級航宙駆逐艦五隻で構成された宙雷戦隊を『ヨシノ』へ差し向けて来た。

こうした事態は秋山も予想していたのでガミラス艦に対してはで非武装に近い『ヨシノ』は遙か後方に置いて安全を
確保したつもりだったのだが、ガミラスがワープ(ゲシュタム・ジャンプ)を利用してその距離を一瞬で詰めれる事までは
予想出来なかった。

『ヨシノ』はガミラスの魚雷を受けて今度こそ「爆沈」してしまった。

「『ヨシノ』との射撃・リンクが切れました!  撃沈されたものと思われます!」砲雷長が不安を押し殺しつつ、報告した。

「フォーメーション ”B” に移行、射撃・管制は『ミョウコウ」に移せ、作戦を続行せよ!」秋山は次策を用意していた。
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だが、『ヨシノ』と違い、合成開口レーダーを装備していない『ミョウコウ』では『フソウ』、『ヒエイ』、『チョウカイ』、全艦の
射撃・指揮管制を行う事は出来なかった。

だが、秋山はこの問題に対する解決手段も用意していた。

実は建造途上で陽電子・衝撃砲の搭載が決まった『ヒエイ』、『チョウカイ』、『フソウ』と異なり、就役して何年も経つ
『金剛』級は改装に時間が掛り、『モ号作戦』に間に合わないと考えられ、最初は改装が見送られた。

しかし、ファーストコンタクトで中破した『キリシマ』が、その修理と陽電子・衝撃砲搭載改修の両方を行うと更に時間が
掛ると判った時、秋山は国連宇宙海軍上層部に意見具申した。

陽電子・衝撃砲を持たない最古参の『コンゴウ』、『ハルナ』、中破して戦力としての期待の出来ない『キリシマ』の三隻を
陽電子・衝撃砲の射撃訓練、それも高速運動中の射撃訓練に使い、残りの『金剛』級、『ヨシノ』、『ミョウコウ』には
外装式で陽電子砲を搭載すると言うものであった。

しかし、訓練を続ける内に射撃・指揮・管制を専門に行う艦の必要性が出て来て改装途中だった『ヨシノ』の改装を
再度方向転換する事になった。

これにより国連宇宙海軍・遊撃艦隊は射撃・指揮・管制艦『ヨシノ』、外装式陽電子砲搭載艦『ミョウコウ』、内装式陽電子砲搭載艦『改・金剛』級の『ヒエイ』、『チョウカイ』を第一部隊とし、建前上、『改・金剛』級であったが、大幅な設計変更を加えた内装式陽電子砲を三門持つ『フソウ』を第二部隊とした。
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『フソウ』が単艦なのに一部隊を成すのはこの艦が他の艦とは違い、一隻で射撃指揮も出来る、何よりも火力が他艦が陽電子砲一門の装備なのに対し三門と非常に強力なものになっていたからだ。
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<光学系照準装置が充実している『フソウ』は単独でも戦える! 探知システムを降ろしておらず、逆に強化してある
『ミョウコウ』が射撃・指揮を執れば他の艦も一艦の様に連携して戦えるはずだ!>秋山はリンク射撃の要、『ヨシノ』を
失っても尚、屈する事は無かった。

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「敵艦隊の射撃・指揮艦を撃沈しました。」砲雷長がガット副司令にに報告した。

先程、テロン艦隊に向かって発射した魚雷は新型の反陽子弾頭魚雷だった。

しかし、その大半はテロン艦に迎撃され、命中した一発も作動不良を起こし敵艦を屠る事は出来なかった。

だが、射撃・指揮艦『ヨシノ』を襲ったクリピテラ級一個宙雷戦隊は旧来のガミラス艦の主兵装、圧縮・陽電子弾頭を
備えた魚雷を使って『ヨシノ』を葬った。

「よし、敵の射撃・管制艦は処分した、これで次の反航戦は我々に有利になる! 全艦砲塔を左舷に回し、敵艦隊と
並んだ時、ビームの雨を浴びせてやれ!」彼は”勝った”と思った。

<まだまだ反陽子弾頭の実用化は時期早尚だったかもしれん。 圧縮陽電子弾頭でも充分に効果は上がるか?>

圧縮・陽電子弾頭、それは先程、ガミラス艦隊が使った反陽子弾頭と似ていた。

但し、使っているのは反陽子ではなく、お馴染みの陽電子を磁場で包み込んだものだった。

勿論、ビーム砲とは桁違いの密度で陽電子が詰められており、その威力は比べるものでは無かったが、より高威力を
求めるのが軍の常、陽電子の約1,000倍の大きさを持つ反陽子を使った反陽子弾頭を搭載する新型魚雷が配備され
始めていた。

そして、今回のテロン(地球)のズッピスト(木星)エネルギー・プラントの”殲滅”は反陽子弾頭の使用を前提として
立てられたものだった。

<圧縮・陽電子弾頭の魚雷では敵プラントの壊滅は難しい、かと言って性能が不安定な兵器で勝負するのは無謀だ、
これは総司令に報告し、兵器の選択の判断は司令に任せよう。>ガットは所詮、小物だった。

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 <敵艦隊が横陣から単縦隊に陣形を変えたのは隊列を一本に絞り、被弾率を避けるためか・・・。 しかし、それは
こちらも想定済みだ!>秋山は自分の読みが当たっている事に自信を持っていた。

彼が先に下した命令は”フォーメーションB”、これは鶴翼陣から梯形陣に陣形を変える事だった。

敵艦隊は完全に一列に繋がった単従陣だが地球艦隊は右前方の僚艦に続き、左後方に僚艦を置く梯形陣を
取っていた。

これは敵艦隊が左右上下に位置を変えても追従出来る隊形だった、<これもあの猛訓練の成果だ!>秋山は接近する
ガミラス艦隊を見つめつつ、その時を待った。

両艦隊の距離は十万kmまで詰まり、ガミラス艦隊は必殺の陽電子ビームを放ち、地球艦隊はそれを
リ・アクティヴ・アーマーで防ぎつつ更に接近した。

ガミラス艦隊のデストリア級は陽電子ビーム砲を三連装砲塔四基に別けて積んでいる、真横こそ全火力を集中出来る
ベストな態勢なのだ。

しかし、地球艦隊にとっては真正面に固定装備された陽電子・衝撃砲が使えない、回転砲塔に三連装に装備された
高圧増幅光線砲はガミラス艦に追従出来るがガミラス艦には効果が無い、最悪の態勢のはずだった。

だが、秋山には訓練で磨きに磨いた艦隊運動があった。

「『ミョウコウ』、敵艦隊残り九隻は全艦、照準範囲に入ったか!」『ミョウコウ』の艦首に装備されたフェーズド・アレイ・
レーダーがドップラー効果を利用して敵の位置情報を的確に各艦の射撃システムに流してゆく。

「敵艦、全艦照準域に収まりました!」『ミョウコウ』の情報士官が奮り立つ心を抑え切れず上擦った声で報告した。

「宮島、焦るな!反航戦だ! 交戦時間は短いがそのためのあの猛訓練だった事を忘れるな!」秋山は血気に逸る
情報士官を諌めた。

「『ミョウコウ』、『ヒエイ』、『チョウカイ』は先頭艦に火力を集中しろ! 本艦は最後尾の敵を狙う!」秋山は勝利の瞬間を
待っていた。
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「僚艦、被弾多数! リ・アクティブ・アーマーも限界です!」情報士官が悲鳴をあげた。

「敵艦隊との距離、十kmを切りました。 陽電子・衝撃砲、発射準備完了!」砲雷長がその時を告げた。

「よし!各艦左八点回頭(90度方向転換)、進路そのまま!」秋山は普通の人には理解不能な命令を発した。

艦隊の進路は変えずに八点回頭する、それは海上を走る艦船では考えられない運動だった。
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しかし、ここは宇宙、艦の回りは真空が支配している、当然、空気の抵抗も水の抵抗もない、だから艦の進行方向と
艦の向きは関係が無くなる。

秋山はこれを利用して艦首に固定装備するしか、無かった地球製陽電子・衝撃砲を艦全体を砲塔として運用出来る様、
乗組員全体にあらゆる艦隊運動の種類を訓練、習得させていたのだ。

全艦が進路を変えないまま、艦首を左に振り始めた所で秋山は陽電子・衝撃砲の発射を命じた。

地球艦隊の陽電子ビームが振り回される鞭の様にガミラス艦を襲った。

秋山は直撃では無く、ビームを薙ぐ様に使い命中率を上げたのだ。

予定通り、敵・二番艦(一番艦は既に撃破していた。)を大破、戦闘不能にさせる事に成功した。

そして『フソウ』が狙った殿艦は三本の陽電子ビームがよりを掛けた様に捩じり合わさり、一本のビームとなったものが
突き刺さり、たちまち爆沈した。

『フソウ』艦橋のみならず、全艦隊が、国連宇宙海軍本部がある木星プラント全体で歓声が上がった。

何しろ初めて目の当りにしたガミラス艦の撃沈である、木星圏いる人類は『フソウ』が挙げた戦果に狂喜した。

<敵の戦力はまだまだ残っている・・・。 この傷だらけの艦隊でどう対処するのか・・・。>

秋山には残り七隻のガミラス艦の動向が気掛かりだった。




                                 148.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (13)→ この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-08-03 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by モー太郎 at 2014-08-04 22:25 x
YAMATOSS992さん カキコご無沙汰しております。
「ふそう」シリーズ佳境ですね。
プチ創作エピソードも散りばめてあって、楽しく拝見しております。
確かにヤマトの衝撃砲については
いきなり圧倒的破壊力過ぎて、違和感があったのは事実です。
そういう意味で、今回の創作エピソードは、リアリティあると感じています。
波動砲無くても、あの威力の砲が搭載された艦が複数有ったら、
正直強すぎる(笑)
エネルギー源としての大型波動エンジン→ヤマトサイズ
繋がりますね。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-05 05:47
 モー太郎さんお久しぶりです。

私もキリシマやムラサメの艦首・衝撃砲がメ号作戦で活用されなかった事を非常に残念に思っていました。
何故なら、メ号作戦で使用し少しでも戦果を挙げていれば後でヤマトがそれを砲塔装備で登場した時、
波動エンジンを得たので砲本体はエネルギー源が波動エンジンとなり、システムとして全体にコンパクトに纏められたので旋回砲塔に搭載出来、小さな旋回砲塔でも、あの大威力を発揮する事に説得力が出ると
思っていました。

技術という物は積み重ねです、連鎖していなければおかしいのです。
その点、2199は波動エンジンの技術供与が1年間と少ないですが理論・研究の時間が地球側に
与えられました。

その技術が無かった時点で地球側が実戦配備出来たのが艦首・衝撃砲(陽電子砲)だったと考えたのです。(大型化の主な理由はエネルギー源の確保)モー太郎さんの考察された通りの設定です。
モー太郎さんの”読みの鋭さ”に感服しました。